あれから一日たって、ネビルが目を覚ました。
一番とばっちりだね。
まぁ、そんなこと言い始めたらセブルスが一番とばっちりなのかもしれない。
『やっほー。ネビル、お見舞い来たよー』
「禪!君こそ大丈夫なの?!」
クッキーとオレンジを籠ごと掲げてみせたら、逆に心配された。
『ん?もしかして、ロンかハーマイオニーに聞いた?』
「そう!どうして禪も無茶ばかりするのさ!」
『まぁ、私の場合は先生方と同じ立場で、守ることが義務でしたからね。ちなみに怪我などしていません』
さて、そろそろ気づかないだろうか。
「ぼ、僕!」
『ネビル。そろそろ声のトーンを落としてください。でないと――』
「そこ!お静かに!」
響くポンフリーの声。
『あー、遅かった』
続いてツカツカと彼女は歩み寄ってきた。
「もう少し、声のトーンを落として――あら、禪。来ていたのですか?」
『お久しぶりですポンフリー』
「貴女も危険な目にあったと聞きました。大丈夫なのですか?」
『見ての通り、無傷です』
「――貴女も一日ここで過ごしますか?」
『って、無傷!しかも昨日しっかりとスネイプ教授の監視付きで寝たので遠慮します!』
ほんとに、マジであのセブルスの心配症には困ったものだ。
まぁ、手ぇ出されなかっただけまし、かな。
「まぁ、あのセブルスが。そうですか……そう……」
『?』
「ああ、禪は気にしないでください。そう……あのセブルスが……」
そのままポンフリーは、ブツブツ言いながら去っていった。
なんなんだろう?
「ねぇ、禪。本当にスネイプ教授の部屋で寝たの?!」
ネビルが聞いてくる。
驚愕の顔をしていた。
『ま、まぁ?』
「何もされてない?!」
『大丈夫です』
それを聞いて、ホッとするネビル。
あはは、嘘です。
時、既に遅しです。
ただ、昨日だけに限ったら、真実です。
ちゃんと魔力大量消費したところを見て、セブルスは空気を読み切りました。
いやぁ、えらいえらい。
睡魔に逆らえないからうれしかったよ。
ネビルにちゃんと見舞いの品を渡し、ホグワーツの中を悠々と歩く。
校内は、”ハリーが除霊した!”という噂が飛び交っていた。
……って、いつの間にハリーはお祓い屋さんになった!?
あれかな、伝言ゲームとか見たく、いつの間にやら内容が変容してるんじゃ……
ちなみに皆が私に気づかないのは、ステルスモードを使用しているから。
大量消費した翌日に、魔法の行使とはしんどいかもしんないと思う。
でも昨日の魔力量だけでいけば、全体量の一割くらいしか使っていない。
連続使用……結構日頃からしてたから、まだマシなんだよね。
と、考えている内にセブルスの自室へと到着。
『セブルス~、ただいま』
「遅い。早く帰ってこいと言ったろう」
『これでも急いだんですよ?昨日の今日で、ステルスモード使って他の人から声かけられぬようにしてきたのに……』
「……それでも遅い」
むすっとした感じでいうセブルス。
え、それって?
ええ??
マジでセブルスが丸くなり始めてる?!だと??!
……ま、今のところ私限定か。
いい傾向だよね。
『そう言えば、なんか噂がへんてこになってるんだけど……』
「どの様にだ?」
『なんか、ハリーがエクソシストになってて、例の人がお化け扱いだった』
「……ある意味で合っておるし、ある意味ではそうなってて欲しかったな」
セブルスが複雑な顔をする。
確かに、お化け状態の人をハリーを含めた私達が追い払ったのは間違いない。
だよね、セブルス。
まだ生きてますなんて、しぶとい人でない方がうれしかったんだよね。
ましてや好きだった人を殺した相手がまだ生きてるなんて、いやーな事実だからね。
『大丈夫、セブルス。ぶっ飛ばしてやるから』
「禪のその自信はどこから来るのか……」
『?だって、なんか負ける気がしないしね。マイナス方面なら、私の方が勝ってるって!』
「はぁ……(心配だ……)」
「また一年が過ぎた!」
アルバスじいちゃんの声が響く。
あの事件から既に一週間は経過しており、ロンやネビルもポンフリーから退院の許しが出ている。
……ちなみにその後、無傷であったハリーがポンフリーに強制的に保健室で一日入院させらてたのだが…………。
ポンフリー含め、ホグワーツは心配性の塊だなぁ。
アルバスじいちゃんは皆に聞こえるように覚醒魔法でも使っているのか、結構隅にいても響く。
ちなみに私はグリフィンドールの最後尾にいた。
ああうん。
フィルチさんとかガン見してきてますけど、本当にそこでいいのかってくらいに見てきてますけど、いいじゃない。
後ろの方で見ていた方が、結構状況把握できるんだよ??
そのまま、アルバスじいちゃんはポイント結果を発表して行く運びのようだ。
うーむ、有名シーンってやっぱり、けたたましいって感じなのかな。
まぁ、今のところそれはスリザリンだろうな。
それよりも私は、早く目の前のモノを皿に盛りまくりたいのだが……
「一同、ご馳走にかぶりつく前に、この老いぼれのたわごとをお聞き願おう」
あ、やっぱ待ったが入った。
しかも、こちらをチラリと見てる。
私の大食い(主に甘味)を牽制(けんせい)してるのか…………。
「何という一年だったろう。
君たちの頭も比べて少し何かが詰まっておればいいのじゃが……」
っていきなり、貶(けな)し?
まぁ、心配症から出てる言葉なんだろうけど……
「さて、新学年を迎える前に君たちの頭がきれいさっぱり空っぽになる夏休みがやってくる」
ですねー。
夏休みってそういうものですよねー。
「それでは、ここで寮対抗杯の表彰を行うことになっとる」
ん。
してってください。
「点数は次の通りじゃ。
グリフィンドール:五六五
ハッフルパフ:三五二
レイブンクロー:四二六
スリザリン:六五五」
うおおおおお!
結果に歓喜するスリザリン。
あ~。
けっこう原作から外れた点数だね。
百点以上違う。
って、スリザリンうるさい!
ここは、クディッチの会場か!
というか、テーブルを手ではなくものでたたくって、貴族系のハズのところが、行儀悪い!!
点数があまりにも大きくなっているのは、どうも私がイチイチ点をコマめに稼いでいたのに張り合っていた為らしい。
……結局は、私の介入でもこういう状況になるのね。
「よーしよし、スリザリン。
よくやったと言いたいが、つい最近の出来事も勘定に入れればならんからのぉ」
そのアルバスじいちゃんの一言でシーンとなる一同(主にスリザリン)。
「駆け込みの点数がいくつかある。
では、読み上げるぞ?」
いつの間にやら作成されていた巻物を広げるアルバスじいちゃん。
点数は……九十点差か。
「まずは、ロナルド・ウィーズリー」
はい、主人公組のKY君ですね。
君はもっと雰囲気を掴めるようになってください。
某有名ファーストフード店公式キャラクターみたいな名前なんだから、ね?
「この何年か、ホグワーツで見る事ができなかったような最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに三十点を与える」
周りの人々が歓声を上げた。
双子なんかは、踊りそうになっている。
さすがは兄弟なだけあるね。
って、パーシーまで喜んでるよ。
この人はもうちっと視野と心の器を大きく持ってほしーいな。
そうしたら、ロンが尊敬してくれるよ??
「次に、ハーマイオニー・グレンジャー嬢」
あ、”嬢”つけた。
「火に囲まれながら、冷静な理論を用いて対処したことを称え、グリフィンドールに三十点を与える」
ふむ、そこか。
まあ確かにあのロジックって、レイ○ン教授とかでも使ってる結構わからなくなる謎だしなぁ。
それを解いちゃったこともビックリだよ。
あれ解けなくてゲーム止まってる人もいるって話だよ。
「次に、ハリー・ポッター」
あ、皆シンと静まった。
どんだけ注目してんの。
「その精神力と勇気を称え、グリフィンドールに三十点を与える」
あー、そう言うしかないよなー。
実際に戦ったの私だし。
「並んだぞ!」
「でも、こういう時って先着であっちが一位よね?」
「だな。同点の場合、そうしているらしーからな」
「または、何かで勝負つけるんだろ?」
「じゃんけん?」
「運じゃないか」
「さすがの有名人なんも形無しだな」
うわー。
けっこう歓喜の渦という表現がぴったりなくらいに歓声もあるのに、これだよ。
結構、貶してるよ。
嫌だね~。
こういううわさに流れやすくって他人に使われていそうな人って。
もっと自分を大事に、自ら動きなさいな。
「勇気にも色々とある。
敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいる。
しかし、味方の友人に立ち向かっていくのにも同じ勇気が必要じゃ。
そこで、ワシは、ネビル・ロングボトム君に十点を与えたい」
おおおおおおおおおお!
スリザリン以外から歓声が巻き起こった。
突然名前を言われたネビルは、最初きょとんとしていたが、次第に顔を真っ赤にしていく。
可愛い。
フツーに可愛いと思うよ、ネビル。
いつもの失敗癖が治れば、すぐにでも彼女ができそうな気がする……。
スリザリンは……一気にしーんとなった。
「して、最後は禪・蔡塔。
冷静に素早く問題を次々と解き、最速で目的地に着き、敵を打ち据えた勇気を称え、二十点を与える」
と、アルバスじいちゃんは締めくくった。
へ?
グリフィンドールどころか、皆が私を探し始める。
やばー。
ステルスモードで隠れようかな?
でも、あれだよね。
人の目あり過ぎて無理って話が……。
ん?
あれ、なんか背後に気配がある。
後ろを振り向くと、セブルスがいた。
おおい!
セブルスは、教員席にいるんじゃなかった??
てか、腐女子的においしいシーンなし?!
『どうしてこちらに?』
「また逃げるのかと思ったのでな、少し前に生徒側にいることにしたのだ」
『う、当りですけど、ちょい不審に思われるので、フィルチさんと一緒にいてください』
「逃げぬな?」
『……仕方ありません、ここは羞恥やらなんやら我慢して動きません』
私がそう言うと、セブルスは満足しフィルチさんの横へと行く。
セブルスが動いたのをハリーがばっと気配察知したのか、後ろを向いたため、皆が私を見つけてしまった。
うわー、なにこれ。
ちょい怖い。
スリザリンなんかからはスッゴイ鋭い目で見てくるし。
グリフィンドールからは、女神を見るように見てくるし。
レイブンクローとハッフルパフからは、やはりかみたいな視線が主だ。
「さて、ワシの計算が正しければ、飾りつけを変えなければならぬのぉ」
見かねたアルバスじいちゃんが助け舟を出すように、手を打って大きく両側へと腕を広げた。
すると、それが合図となっているのか、魔力の風が頭上を吹き抜け、飾りが緑と銀から赤と金へと変わる。
うーん、こういう魔法も教えてもらおうかな……。
視線にさらされながらも、私はいつも通りパンとサラダを取り、続いてデザートを食べ始める。
いついかなる時も食べる事ができなければ、負けるのだよ(あれ?なんにだっけ??)。
そんなこんなで食事を終えて、私はもう少し隔離されて魔力回復するべきと言われていたため、自室へと戻った。
ブオー
目の前で赤い蒸気機関車が出発の準備をしていた。
昨日、終業式だったから、まぁそうなるんだが……。
ちなみに部屋に帰ると、成績表を持ったセブルスが部屋の前で待ち構えてて吃驚したけどね。
どのタイミングで抜け出して待ってたんだよ。
ちなみに、他の人には、寮で返されたらしい。
しかもスリザリン以外は、監寮から返された(スリザリンは、あのヤンデレ先生ことシニストラ先生が返した)。
というか、その紙今ポケットに入れてるんだけどね。
「君は、帰らないの?」
思考の海におぼれていたら、ハリーが目の前にいた。
『ああ、私はダンブルドアの孫だからね。彼の傍が家なの。アルバスじいちゃんは今のところ、ホグワーツに住んでいるようだから、ホグワーツが家のようなものなの』
「いいなぁ……、ホグワーツが家だなんて食べ物も自由時間もあるじゃないか。僕なんておじさんの家に帰ったら、また狭い部屋に住む事になって、食事も少ししかもらえないし、手伝いもしなきゃいけないし、ダドリーの世話もしないと……」
『……いやいや、ホグワーツにずっといるのも大変だよ??始終、先生方の手伝いしなきゃいけないし、いろいろ調べ物を任されるし、おしゃべりとかしなきゃいけないし、来客がある場合は、その接待もしなきゃいけないし……』
「でも、狭くはないだろ?」
ため息をつくハリー。
そこまで言うとは、本当に家に帰りたくないらしい。
まぁ確かに、映画通りの状態ならば、嫌に決まっているな。
『ハリー、マグルに対しての魔法使いのルール知ってます?』
「魔法を使ってはいけない。見らえてはいけない。知られてはいけない」
『はい、正解。でもそれに、その親族は含まれないんですよ?ほら、ハーマイオニーのところとか考えてみてごらんよ。彼女、両親はマグルよ?という事は、納得とかしてもらうために一度は見せたことあるはずじゃない。なら、同じように”見せる”事はしなくとも、”匂わせれば”いいんじゃないかしら?”見せる”のは、大人だからこそできるやり方だって、アルバスじいちゃんが言ってたから、あえてそれで』
「……それって脅しって言わない?」
『そうとも言うわね。ま、試してみなさいな』
「…………うん、やってみる」
荷物は既に特急列車に乗っているらしい。
ハリーは、手を振った後列車に駆けてゆく。
まぁ、入れ知恵はこれくらいでいいだろう。
後は……餓死しなければいいなぁ……。
「禪!」
ん?
今度は誰だろう?
声のした方へ視線を向けると、ネビルとハーマイオニーがいた。
その後ろに意気消沈しているロンもいる。
え?
なぜにロンはそんな状態になった?
『えっと、ロンどうしたの?ものすごく落ち込んでるけど……』
「禪、そっとしておいてあげて」
『?』
ネビルが同情しながら言う。
「そうよ、禪。ただ、親に成績表渡したくないだけだから」
高校まで付いてまわる”成績表は親に見せたくない”っていう、やつですね。
どの世界にもあるようだ。
『って、ハーマイオニー言っていいのかい?それ。というか、ハーマイオニーは成績良かったのでしょう?』
「もちろんよ!でも魔法薬と薬草学でケアレスミスしちゃって、満点にはなれなかったわね。順位も一位じゃなくて二位」
いやいや、二位ってすごいから!
初っ端から一桁台(ひとけただい)とは恐れ入る。
やはり、成績優秀なだけあるようだ。
「それでも、二位だからいいよ。ぼ、僕なんか四百三十二人中、百五十五位だよ?」
『あら、ネビル意外と頑張ったじゃない?結構上位よ?それ』
意外とネビルはやれば出来る方らしい。
原作では結構、順位が下の方だった。
「まぁ、禪もハーマイオニーも教えてくれたし……」
「それもあるとは思うけれど、ネビル、貴方って植物のことに詳しかったでしょ?だから薬草学で点を稼げたんだわ!」
『そういえば、いつもスプラウト先生のところ行ってましたね……』
確かに、主人公組交えての勉強会なんてものもした記憶がある。
けっこう皆スポンジのように覚えていってくれたので、教える側としては助かった。
なにしろ、覚えるのは楽だが、教えるとなるとちょっと上手くないのという私。
こういうところで、教師には向かんのよなぁ。
「そう言う禪はどうなのさ?」
ネビルが聞いてくる?
『ん?』
「”ん?”じゃないわ。順位よ順位」
あ、そっか。
別にいつもいる場所がどうのこうのって方じゃなくて、本題の成績の方ね。
『ああ、これですか、ハーマイオニー。あ、どうぞ見てもらっても構わないので、どうぞ』
「え、見てもいいの?」
ポケットに入れていたそれをハーマイオニーに渡す。
『どうせ既にスネイプ教授とアルバスじいちゃんには、見られていますので、どうぞ』
というか、手渡したのセブルスだったし。
アルバスじいちゃんは、その後で押しかけてきた。
孫バカだよね。
「ちょっと!これ!」
『どうしました??』
「貴女、一位じゃない!」
『みたいですねー』
「呑気に言って!どうしたらこうなるのよ?」
『いつも通りにして、とにかくケアレスミスしないようにしました』
ケアレスミスだけが怖いんだよ。
大半は覚えてるから、細部をある程度覚えてしまえばこっちのものなんだよ。
今は英語だからいいけど、日本語なら漢字が怖いんだよ。
おんなじ発音だけど、なぜか違う文字当てたりしてるから怖いんだよ。
英語のスペルの方が幾分か楽!
数学なんて、何度”二乗”つけ忘れたり、”マイナス”を途中でつけ忘れて泣いたことか!
それに比べたら、ここはパラダイス!
「ウソでしょ、点数も満点……」
『うーん、まだ一年生だから先生方本気だしてないみたいなんです。だから、その点数とれたんですけど……』
「私、あんなに勉強したのに……」
『あー、えっとハーマイオニー。そう落ち込まないで。いろいろ引っかけもありましたし、ミスするのは仕方ないですから、ね?』
「そう……ね……」
ああ!
ハーマイオニーまでもが暗く?!
『学年が上がってゆくごとに難しさが上がるのですし、来年頑張りましょう?ほら、先生方の傾向とかつかむのも、実は二回目のテストからといいます』
「……そうね。そうするわ!」
あ、元気戻ったみたい。
よかったよ。
『で、もしかしてとは思うのですが、ロンそんなに見せたくないんですか順位』
「ええ。どうもネビルより下の二百番台らしいの」
『どうしてそんなことに?!あんなにスラスラ覚えてたのに!!?』
「テスト直前に双子にビックリ企画で脅かされたらしいの。だから、答えが頭から抜けちゃったんですって……」
『うわぁ~。それは……可哀想だわ。何してんの双子……』
まさか、そういう事になっているとは……
「禪~」
涙目でロンがこっちを見てくる。
うぁ……なんか子犬みたい……
「どうしよう……ママに怒られる……」
父親より母親が怖いらしい。
『事情が事情ですし、素直に話して、納得してもらうしかないですね』
「でも、ママはそんなこと聞いてくれないかも……」
うわぁ~。
結構沈んでるよ。
………………
…………………………
『しかたない。ハグリッド!皓は?!』
プラットホームで見送りをしているハグリッドに声をかける。
「おお、禪か。皓ならほれ、そこの外灯に」
て、そんな場所にいるのかい!?
あ、ほんとだ。
なんかデザインされてる金属部分に止っている。
『皓!おいで!!』
皓を呼び、肩にとまらせる。
即行でメモを書き、それを持たせて、飛びだたせた。
「禪、どうしたんだ?」
『ハグリッド、ちょいこの子らについて、キングクロス駅まで行ってくるわ』
「おいおい!お前さんはここに居ればよかろう!?」
『そりゃ、そうなんですけど、ロンがこの調子じゃねぇ……。それにハリーの現在の保護者の反応も気になるんですよぅ』
「……確かに。俺もそれは気になっちょるが……」
『でしょう?』
「禪の場合、車内販売かと……」
『若干それも気になるのは否めませんが、それは目的の端っこの位置です。サブミッションです。主な目的じゃないです』
やはり、私は甘党のイメージになっているらしい。
『さっき、皓にアルバスじいちゃんのところへ行ってもらったので、出発ギリギリで返事を持ってくると……』
「ああ。それで、皓なのか」
『他のふくろうでは間に合いませんからね』
皓は一番最速なのだ。
幸い、蒸気機関は出発するのに時間かかるし、出発しても初期加速がゆっくりだから、何とか間に合うだろう。
そんなことを考えて待っていたら、皓が戻ってきた。
その足にはなぜか庸が掴まれている。
『え、なんで、庸まで来たの……?』
庸を私の頭に乗せて放し、満足そうに肩に乗る皓。
アルバスじいちゃんの返事は、庸が銜(くわ)えていた。
『……』
「校長はなんと?」
『行ってきなさい、だって。あ、ついでにウィーズリー家について行ってもいいって。迎えに来てくれるらしいよ』
「そうか」
『じゃ、ハグリッド行ってくるね~』
「おう!気ぃーつけてな!」
無事に了解も得たので、そのまま機関車の乗車する。
『という事で、ロン。よろしく』
「禪、本当に家来るの?!」
『まぁね。双子は一発ずつ殴らなきゃ』
ゆっくり加速を始めた列車に揺られて、私は笑顔でそう言ったのだった。
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