知識とクディッチ

 

 乳製品と肉が食べれないというのは、意外と精神的にきた。

 

 ミ、ミルクティーが飲めれない。

 ケーキも食べれない。

 

 甘党の私にはかなり大打撃の一週間が、イースター休暇の最初だった。

 が、イースター当日になるとそれらが解禁された。

 カラフルに絵柄を描いた卵(と言っても二日前に私を含めたホグワーツ居残り組が絵つけしたんだが……)やローストされたラム肉(羊肉)、ホットクロスバンズという十字架の模様が入ったパン、ドライフルーツやバターをふんだんに使ったクッキーなどのお菓子の数々、いつもよりちょっとリッチになったパンケーキ。

 それらが大広間に大量に並ぶ。

 

うほぉい‼ケーキケーキ!

「禪、目が血走ってるよ…………」

 

 テンションが可笑しい私を見てハリーが言う。

 私の皿は既に甘味で埋まっていた。

 パンよりもパンケーキ、肉よりもお菓子だ!

 

『ハリー、私から甘味を取るとこうなるのよ。私の人生の三分の一は甘味で出来ているのよ!』

「……それ、威張って言うことじゃないよ」

 

 ハリーはため息をついて、私にチョコレートを渡す。

 

『それ、イースターバニー!』

 

 ウサギ型のチョコレートである。

 ウサギは多産型で、豊穣の象徴とされているのだ。

 

「これでも食べて落ち着きなよ」

 

にゃはー!

 

「……だめだこりゃ」

 

 

 私の戻らないテンションに、ハリーは諦めた。

 

 


 

 

 

 甘いもの解禁で、私は乱舞していた。

 毎朝運動しているから(雪が解けてから再開した)、新陳代謝が結構よくなっていたから、太りはしなかったし、吹き出物もできなかった。

 

 この体質と体力、前の世界で欲しかったよ……

 

 春休みみたいな短いイースター休暇を経て、再びホグワーツに活気が戻ってきた。

 

「イースター休暇中に見つかった?」

 

 学校に戻ってくるなり、ハーマイオニーは開口一番にそう言った。

 

「残念ながら、見つかってないよ」(ハリー)

「見つける前に、全て絵付けに忙しかったんだ」(ロン)

 

 すまなさそうに言う二人。

 

「いくらでも時間はあったでしょうに……」

 

 ハーマイオニーは頬を膨らませて、怒った。

 

『ハーマイオニー。美人顔が台無しですよ。頬を膨らませるのはやめてください』

 

 今はまだ年齢的に“可愛い顔”だが、ハーマイオ二―には数年で”美人顔”に属する部類に入る。

 

「くっ!」

『悔しがる顔もダメ。眉間に皺(しわ)が出来てしまいますよ?』

「あああ、もう!禪、そんなに注意しないで!気が散るわ!

『怒ってもダメ。ま、気楽に行きましょう。どうせ、時が来れば分かります』

「時って何よ!」

『どうせ、まだ調べ物続けるのでしょう?』

「もちろんよ!」

『なら、そのうち見つかりますよ。意外と身近な書物に書かれていますから』

 

 さらりとヒントを言う。

 

「ムキ―!」

 

 が、ハーマイオニーはそれに気づかずにさっさと部屋に行ってしまった。

 どうやら少し短気のようだ。

 足音の心なしかいつもより大きく、荒い。

 

 

「「禪、それ本当?」」

 

 蚊帳の外になっていたハリーとロンが聞いてくる。

 どうやら、ちゃんと冷静に言いていたようだ。

 

『ええ、まぁ。で、ロン。あげたチョコは食べきれました?』

「まだだよ。あんな量のチョコ」

 

 ロンが顔をしかめて言う。

 

『そうですか。あ、ハリー。ウッド先輩から伝言です』

「なに?」(ハリー)

『今日は練習しないそうですが、明日の放課後から練習がまたスタートするそうですよ』

「そう。禪も行くでしょ?補欠だし」(ハリー)

『もちろん。ですからこうして連絡してるんですよ』

 

 当然だろう?と言う私。

 

「じゃぁ、今日はハグリッドのとこに行こうよ。ハーマイオニー怒ってるし……」(ハリー)

「だよね。今日くらいのんびりしたいよ。この休暇、ほんとに絵付けとか片付けとかしてたから」(ロン)

『そうですね、ではそうしましょう。ハリー先に行っててください。ちょっと食堂に行って何かもらってから向かいますから』

 

 ケーキとかゼリーとかないかなぁ。

 

 内心そう思いながら、足早に食堂へと向かう。

 

「やっぱり禪って、足速いよね」(ハリー)

「だよな。君と同じで、選手だし。……補欠だけど」(ロン)

 

 そんな会話がされているとは露知らず、私は一部分だけ走り、食堂の入り口へともうついていた。

 絵画の中の梨をくすぐり、現れた食堂の入り口の取っ手を押して中へと入ってゆく。

 

「これはこれは、お嬢様!」

 

 既に食堂に来る常連となっているのと校長の孫ということから、私は僕妖精の中でも知らぬ者はいなかった。

 

『今からティータイムするの。それに最適なお菓子ある?』

「もちろんでございます。すぐご用意いたしますね!」

 

 その僕妖精は回れ右して、まずバスケットを持ってきた。

 我先にと、聞き耳を立てていたほかの僕妖精がいろいろなものを持ってくる。

 クッキーやスコーンを持ってきたものもいれば、パウンドケーキを持ってきたもの、ジャムやクロテッドクリームを持ってきたもの、菓子パンを持ってきたもの、果物を持ってきたものと様々だ。

 

『んー、じゃあもう一個バスケット持ってきて、全て持って行きましょう。四、五人でのティータイムですからね』

 

 食べ盛りの二人がいるのだから、ま、大丈夫だろう。

 

 そうして二つバスケットを持って、ちょうど二人と別れたあたりに差し掛かる。

 するとそこには、ネビルがいた。

 ドラコ達と一緒に。

 

 あらら、ドラコ。

 帰ってきて早々セブルス呼ばなきゃいけないかい?

 

「イースター休暇中に泣き寝入りしなかったのかい?」

 

 ドラコはニヤつきながら、ネビルに言った。

 

「そ、そんなこと、すするわけないじゃないか……」

 

 自信がないネビルが、まるでクィレルの様にどもりながら、声を小さくしてゆく。

 

「そういうなら、その証拠見せてみろよ」

 

 ドラコがそう言うと、背後にそなえていたグラップとゴイルが動いた。

 二人は太めの体をねじって何かを、ネビルに投げる。

 

『ちっ、そうはいきませんよ!と』

 

 素早く杖を振り、透明な板でネビルに当るのを阻止した。

 バスケットは下に置いている。

 

「な……」

 

 驚くドラコ達。

 ネビルは目を瞑っていて状況が分かっていないようだ。

 

『あら、お久しぶりですね。ドラコ君』

 

 私はバスケットを柱の陰に移動させてから、四人に歩み寄る。

 

「禪か。って、僕の名前に君は要らないよ」(ドラコ)

『でも、このような些細な事を繰り返す子には、“君”付けで充分です』

 

 適度な近さで歩みを止めて、目を細めて薄笑いしながら、杖を降ろしている状態でドラコを見やる。

 

「へぇ、そうかい」

 

 彼はそう言って、くるりと踵を返した。

 

 あれ?

 仕掛けてくると思ったのに。

 

「禪、君も友達を選んだ方がいい。そこのウスノロのような奴より、マシなやつはいるはずだ」

『ご忠告どうも。では、私からも言っておくわ。選り好みしてたらチャンスも何もかも失うわよ』

「ふん……」

 

 ドラコはそのまま、グラップとゴイルを引き連れてスリザリン寮の方へと去っていった。

 

『大丈夫?ネビル』

「ゆ、禪。ありがとう」

 

 やり取りに気づいて目を開け、状況を見守っていたネビルに声をかける。

 

『何処も怪我はしてないわね?』

「うん。でも、なんかすごい臭いがする」

 

 ネビルはそう言って下を向いた。

 

『確かにね』

 

 私も下を向く。

 そこには臭いの発生源があった。

 先程、グラップとゴイルが投げたタマゴだ。

 

『ここまで腐っているタマゴなんて、早々お目にかかれるもんじゃないわね』

「見たくないよ」

 

 ネビルが顔を背ける。

 それほどに哀れすぎる状態だ。

 おそらく、イースターでくすねておいたタマゴだろう。

 

『ま、こんな卵を持っていたんなら。彼らかなり嫌な臭いがしてるでしょうね。これで、もうちょっとマシな方法でも考えるんじゃないんですか?』

「こんなののマシって、相当嫌だよ……」

 

 ネビルが顔をしかめて、ふらふらしだす。

 

『って、ちょっと!』

 

 慌てて駆け寄り、身体を支える。

 

『全然大丈夫じゃないですか!』

「あはは、情けないね、僕」

 

 ふらつきながらも、何とか立てているネビル。

 

『そんなことないですよ。情けないのはあちらです』

 

 ほんと、情けないわ、ドラコ。

 スリザリンに入る選択肢を躱しておいてよかったよ。

 君がそんなんじゃ、内部から変えるのは結構骨が折れるだろうからね。

 

『ともかく、場所を変えましょう。ちょうどこれからハグリッドのところに行くんです。ネビルも一緒に行きませんか?』

「いいのかな、僕邪魔なんじゃ……」

『いえ、むしろ大歓迎でしょう。ハリーとロンは先に行っているはずですし――』

 

禪~!

 

 ネビルを誘っていると、ハリーが駆けてきた。

 

『ハリー!あれ、先に行ってたんじゃ……』

「禪の事だから、お菓子たくさん持ってくると思って戻ってきたんだ。一人で持ってくのは大変だろうって……。でも、いったいどうしたんだい!」

 

 ネビルを支えている私に吃驚するハリー。

 

『お話はあとで。とにかく運ぶの手伝ってください。と言うより交代して。バスケットは私が運ぶから、ネビルの支えやって』

 

 人ひとり支えるのは意外とつらい……。

 

 ハリーは私が限界かと思ってすぐさま代わってくれた。

 そうして、私はバスケットを持ち、ハリーはネビルを支えて、三人でハグリッドの小屋に向かったのだった。

 

 


 

 

「そんなことがあったんだ」

 

 一人ハグリッドと待ちぼうけを食らっていたロンが、事情を聞かされて驚く。

 

 そりゃ、私が荷物が減っているはずなのに、荷物の量が変わらなくて、ハリーがネビルを支えて歩いてきたら、吃驚するわな。

 

「そんで、禪。ドラコは大人しく引き下がったんか?」

 

 ハグリットが聞いてくる。

 

『ええ、一応は』

 

 バスケットからいろいろ出しながら、こくこくと頷く。

 

「厄介なことにならなければいいんだけど……」(ロン)

「厄介って?」(ハリー)

「ほら、あいつの親って魔法省勤務だろ?圧力とかかけてこないかと思って」(ロン)

「そ、そんなことになったら、大変だよ!ごめん禪」(ネビル)

『って、ネビルは悪くないですよ。

 それにハリー、ロン。

 そんなことであの父親が動くとは思えませんよ。

 もっとも、このホグワーツが揺らぐような大事があれば動くかもしれませんがね』

 

(((…………)))

(……………)

 

 なぜか、ハグリッドまで驚いた。

 

『?』

「禪どうしてドラコの父親を知ってるんだ?」(ハグリッド)

 

 や、やっちまったー!

 

『ああ、ドラコって父親の容姿にそっくしだってスネイプ教授に聞いたんですよ』

 

 セブルスごめんよ。

 ネーム使わせて!

 

「「「ああ、そうなんだ」」」(ハリー、ロン、ネビル)

「スネイプ教授は、ドラコの父親の後輩だからな。それくらいは教えてくれる」(ハグリッド)

 

 なんとか納得してくれたようだ。

 

『それよりもハリー。やはり、次の審判はスネイプ教授がするそうですよ。もちろん、フーチ先生もアルバスじいちゃんも同席するので、今度こそ変な騒動は起こさせませんよ』

 

 そう言うと、ハリーは一気に顔を青くさせた。

 

「そ、そんなぁあ!!!」(ハリー)

「やばいよ禪!」(ロン)

 

 二人とも頭を抱えてムンクのような顔をする。

 

『二人ともそう悲観しないでくださいよ。これで監視の下、騒動が起こる率を下げる事ができて、試合に勝てば、スネイプ教授の悔しがる顔が見れるかもしれません』

 

 

 ばっ!

 

 

「やってやろうじゃないか、なぁハリー!」

「ああ、もちろん!」

 

 急に立ち上がって意気込む二人。

 

 あははは、よほどセブルスの悔しがる顔を見たいんだね。

 

「禪、いいの?そんな風に彼らを乗せてしまって」

 

 小言でネビルに心配してくる。

 

『大丈夫ですよ。それにプレッシャーでガチゴチになって、負けるよりかはいいですからね』

 

 私も小声で話す。

 

「禪も、意外とやりおる」

 

 ぼそりとハグリッドがつぶやいた。

 

なにか?

「なんでもねぇ」(ハグリッド)

 

 

「禪、早く練習しようよ!」(ハリー)

「スネイプをぎゃふんと言わせてやるんだ!」(ロン)

 

 どうやらこちらの会話は聞こえていなかったらしく、いまだに興奮している二人。

 

『二人とも、練習は明日からですよ。だいたい今日は競技場は整備中。入場禁止です。今日練習するなら、イメージトレーニングか、筋トレでしょうねぇ。私は筋トレは遠慮するので、イメージトレーニングしておきますよ』

 

 競技場が整備中だと思いだして、私は別の方法を提案した。

 

「そうなの?!禪!」(ハリー)

「どうするハリー!?」(ロン)

「……筋トレは無理そうだよ……」(ハリー)

「いやいや、ここはイメージトレーニングよりそっちだって!」(ロン)

 

 渋るハリーに、熱弁するロン。

 

『ロン、ハリーはまず基本的な運動から始めた方が良いと思いますよ』

「なんでさ?」

 

 渋るハリーを見かねて、ロンを諭しだす。

 

『全体の動きを見ているのですが、ハリーは基本的なところが少し怖いのですよ。変なところで躓(つまず)きかけてますし、バランスを取っているようで実は何とか踏(ふ)みとどまっているだけのようですからね』

「良く見てるね。そうだよ、僕のいたところじゃ、適度な運動なんてできなかったから……」(ハリー)

 

 ホッとしながら、ダーズリー家を思い出して、ハリーは顔をしかめる。

 やはり、あの狭い部屋とも思えない場所では、運動などできなかったようだ。

 

 ……階段下の物置なんて、普通一時的に隠れる場所だからね。

 ダイエットポーズをとるくらいは出来るけど、運動するスペースなんてない。

 

「そうなのか、ハリー」

 

 聞くロンにハリーは頷いた。

 

『ま、そう言うことですから……。他の練習方法としたら、せめて空中に小さなボールを投げて、それを取るくらいか、基本に立ち戻って走るとか……』

 

 色々考え始めてゆく。

 

『いや、その前に準備体操を叩きこんで、安全を確保。ハリーの位置は動体視力が要だから、ハグリッドに蜂とかを用意してもらって、それを追ってもらうとか……』

「えっと、禪……?なんか僕、やれる気がしなくなってきたんだけど……」

『大丈夫ハリー。私も元々運動していなかったのですから。初心者にでも簡単なものしか、羅列してませんよ』

「でも、蜂とか叩きこむって……」

『ああ。蜂は透明な入れ物の中に入れての観察。叩きこむっていうのは、その準備運動を覚えてもらうっていう意味です。別にスパルタ指導なんてしません』

「そ、それならいいんだけど……」

『あ、そだ。ロンやネビルも準備体操くらい覚えていきませんか?君たち、何かしらトラブルとかに遭(あ)いそうな気がしますし……』

 

 突然話を振られたロンとネビルが目をぱちくりとしていた。

 

「ぼ、僕も?!」(ネビル)

「ネビルやハリーはまだしも、僕は必要ないんじゃ……」(ロン)

 

『ネビルは何かしらドラコ達に絡まれますし、ロンもお兄さん達に絡まれるでしょう?そのうち怪我をしそうで怖いのですよ。それを防ぐ、または、逃げ足を速くするためにもハリーの練習に付き合っていきませんか?』

 

 そう、ハリーのみならず、この二人もトラブルに巻き込まれる可能性が高い。

 

「う、確かにフレッドとジョージなら……」(ロン)

「マルフォイの奴から逃げ切れるだけの……」(ネビル)

 

 深刻に悩む二人。

 

『怪我を防ぐためと考えてください。怪我ばっかしていたら、それこそ毎回ポンフリーとセブルスの手を煩わせることに――』

 

 ガタタッ!

 

「やりますやります!」(ロン)

「やる!」(ネビル)

 

 セブルスの名前を出せば、二人ともそう決断した。

 

 って、立ち上がるほど怖いか。

 セブルス、嫌われてるというより、これって……

 

 


 

 

 ハグリッドの小屋の近くで、とりあえず三人に軽い運動(第一だよ)を教えていく。

 意外と簡単に覚えれたので、次にハグリッドの小屋付近にコースを設定して走らせることにした。

 

「って、走るの平たんな所じゃないの?!」(ロン)

『まぁ、校庭である湖付近は今人だらけでしょうし、こういった所を先に走ってしまえば、後で走る時に結構楽でしょう』

「でこぼこ、しかも岩と急な坂…………」(ハリー)

「どこまで走れるかな(汗)」(ネビル)

 

 驚くロン。

 弱気な声を出すハリーとネビル。

 

『では、始めましょうか』

 

 そう言って私は屈んだり、アキレス腱(けん)を伸ばしたりする。

 

『んじゃ、先に行ってますよ~』

 

 走りださない三人を尻目に私は先に走り出す。

 

『さっさとついてきなさいよー』

 

 皆が通らないコースのちょいはずれ。

 つまり、もろに岩場を走ってゆく。

 

「「「ええっ?!」」」

 

 驚く男子三人。

 

「まぁ、禪だからな。彼女は去年の夏から走ってた。そんの成果があれだ。けっこうジャンプとかもできてるな。岩を蹴(け)っては次々に進んどる」

 

 「成果が出たなぁ」とハグリッドが頷いていた。

 

「どうする?」(ネビル)

「そりゃ――」(ロン)

「もちろん――」(ハリー)

 

 

「「待て―!禪!」」

 

 駆けだすハリーとロン。

 

「って、置いてかないでよ~!」

 

 遅れてネビルも彼らの後を追う様に、走り出したのだった。

 

 

 


 

 

 

「いい!絶対にスニッチを取るのよ!」

「そうだぜ、ハリー!スネイプのぎゃふんとした顔を見たいんだ!必ず取れ!!」

 

 ハーマイオニーとロンは興奮してそう口々にハリーに言った。

 彼女もセブルスが審判員だといわれてショックしていたのに、ロンとハリーに言った言葉を、そのまま言ってみたらこの状態だ。

 

 ……意気込みが半端ないよ、二人とも。

 そんなにセブルスの悔しがる姿が見たいか……。

 シナリオ的には骨折るぞ的な話をうまく躱しておいたけど。

 てか双子が混乱しすぎてマジでハリーの足折ろうとしてたし……

 んまぁ、双子にもハーマイオニーと同じように言えば素直に引いた。

 というより興奮してた。

 ああ……うん。

 やっぱり、似通ってんだよねグリフィンドールとスリザリン。

 お願いだから、約一名のグリフィンドール生のように闇に堕ちないでくれよ。

 もれなく、ぶっ飛ばすの確定人物だから!

 

 さてさてついでに言えば、その後ドラコ君にへんてこな呪文をかけられ、うさぎ跳びで寮に戻ってくるはずのネビルは何とか走ってそれを免れて逃げ切った。

 実は一週間半くらいの間があいてんのよね、男子三人組を鍛えはじめてから。

 その間に結構みんな速くなったのよ、これが。

 ……男の子ってやっぱりこういう運動系向いてるんだなぁとしみじみ思ったり…………

 どじっこのネビルでもちょいと速いくらいになったよ。

 うん、男の子って……素質的にすごいよね…………素材的にすごいよね…………

 羨ましいわけじゃなく、遠目で眺めてる的な状態です。

 

「禪もよ!いいっ?!出ることになったらスネイプに目にものを言わせてやるの!」

 

 ハリーに沢山言い終えたハーマイオニーが私にふった。

 

『努力しては見ますよ。まぁ、私の出番がないのがベストでしょうね。みんな無事に怪我なく終えたということですからねぇ』

「そんな悠長な!とにかくお願いね!」

 

 意気込んで大声でそう言った彼女は、そのまま観客席へと行ってしまった。

 ロンも飛び跳ねそうなテンションで彼女の後を追って言った。

 

 ああ、うん。

 ついていけない、あのテンションの高さにはついていけない。

 

「禪!がんばろうね!」

 

 ハリーもテンション高く満面の笑顔。

 

『……努力しましょう。とにかく、控室へ行きましょうか』

 

 苦笑しながらそう言って、ハリーと控室へ向かった。

 

 


 

 

 運動できるようになったから、男子勢はそれぞれ走ってドラコの嫌がらせを躱し、何事もなくそれぞれの配置に着いた。

 ……ま、ロンは観客席だけど…………。

 

 ハーマイオニーは言葉巧みにかわしていた。

 さすが、賢い子。

 

 そして現在試合中!

 

 

 三種類の球をそれぞれに追いかけながら、試合は進行してゆく。

 

「ハリー行け!!」

 

 スニッチを見つけて急降下するハリーをロンが応援する。

 ハリーは今回は螺旋を描くのではなく、直角に急降下した。

 

 審判であるセブルスの邪魔をする者がいるようで、何やらその周りを赤い光が飛び交っていた。

 

 って!

 先生方殆ど居るのにない!

 それはない!

 セブルス!

 なんとか戦闘センスで躱し続けてくれ!!

 

 セブルスであれば、回避は簡単だと信じて私は空を見上げる。

 

 ハリーがその後スニッチを掴んで試合が終了した。

 

 よし!楽勝!

 私の出番なしで良かった!!

 

 

 

 試合終了とともに大きな歓声が上がり、アルバスじいちゃんもハリーに一声かけに行った。

 一方、攻撃されてたセブルスは唾を吐いていた。

 

 ……悔しいのね。

 わかるけれど、少し自嘲しようねセブルス。

 いくらでも後で愚痴聞いてあげるから。

 

 


 

 

 

 試合が終了して、ハリーは箒小屋へと行った。

 

 ん?

 これもしかして……映画では別のシーンであらわされてたところですね!!

 ということで私は、セブルスの背後をステルスモードでついて行っています。

 ふふふっ!

 ステルスモード最強です!

 常に警戒して神経すり減らしてるセブルスでも気づきません!

 ……アルバスじいちゃんは無理かもしんないけど、ヴォル様あたりなら大丈夫でしょ。

 兎にも角にも、腐女子的においしいとこ見に行きまーす!!

 

 

 

 そうして私は森へと入っていった。

 

 

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最終更新:2015年07月07日 20:05
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