冬休みが終わり、生徒たちが家からホグワーツヘと戻ってきた。
それはハーマイオニーも一緒。
「それで、ニコラス・フラ……は見つかったの?」
彼女は私たち三人を見つけて、開口一番にそう言う。
あははははは………………
やっぱり彼女は怖い。
「は、ハーマイオニー」
「ご、ごめん。まだちょっと」
後ずさるハリーとロン。
『あ、ハーマイオニー実は……』
怖がる二人を少し背にして、これまでのいきさつを彼女に話した。
クリスマスからのハリーのことに、ハーマイオニーはひどく驚いていた。
「ホントに大丈夫なの?!ハリー、本当の本当に大丈夫なの!!?」
必死の表情でハリーを揺さぶった。
「ハ、ハーマ、マイ、イイオニー?!お、落ちつい、てっ!」
ハリーは必死にハーマイオにに揺さぶられながらも、言葉を発しようとする。
「ハーマイオニー!落ち着いて!大丈夫だから!!」
『そうですよ!現にここに無事にいるんですよ?』
ロンと私も、必死になって彼女を止めた。
……事細かに話したのがいけなかったか……………。
しばらく息が荒かったが、ハーマイオニーは冷静さを取り戻していった。
「他には大丈夫だったんでしょうね?フィルチとか、スネイプとかに捕まってない?」
『してませんよ。まぁ、私の場合は全くと言っていいほど、夜中に動き回っても文句は言われませんから』
「「「へ?」」」
心底驚く三人組。
「どういうこと、禪?」
「どういうことなの?」
「え、なんで?」
ハリー、ハーマイオニー、ロンの順に聞いてくる。
『んー、じゃ、ちょっと聞かれない様に場所を変えましょう。着いてきてください』
三人組を先導し、図書館へと誘導した。
「それで、どういうことなの?禪」
まで無・ピンスに挨拶して快く入れてもらい、私のいつもの定位置まで来てみな腰かけると、ハリーが口を開いた。
『まぁ、ちょっと待ってくださいね』
私は杖を一振りし、人払いと防音を施す。
見慣れていない人はこのレベルを一年生がするのかと驚くが、流石に何度も見ているハリーやロン、一度見たハーマイオニーは驚きはしなかった。
『はい、いいですよ。これで聞かれませんし、来もしません』
「それで、どういうことなのか説明してくれるよね?」
間髪入れずに聞くハリー。
他の二人は彼の言葉にこくこく頷く。
『もちろん、いいですよ』
私は苦笑いした。
『まず前提ですが、私が誰の孫か分かっていますか?』
「ダンブルドア校長だよね」
『ええ、そう。んじゃ、そこら辺を考えても可笑しいなと思ってるのでしょうか?』
「だって、偉い人の孫だからって、そんな権限はないと思うよ?」
『……ハリーよく権限なんて単語知ってましたね』
「本をシラミ潰しに探すとき、覚えたんだ」
……変な単語帳か、論文かな?
探す方向が全く違うよ、ハリー。
『ハリーがそう思うのも無理ないでしょうね。確かにそれだけでは、本来認められません。では、いくつかそれに至った理由を言っていきましょう』
三人が真剣な目でこちらを見る。
『一、私はスネイプ教授やフィルチさんと仲がいい。二、私は大半の教授方に顔が効き、信頼性もある。三、ピーブスにも一目を置かれている』
「「「………………」」」
『って、私の事まだ疑ってますね』
「「「……………………………………」」」
未だに疑いの眼差しを向けて沈黙している三人組。
『ああ、うん。そうですよね。夜の見回りは先生と主席の人が普通なのですが、私はそういうわけではないんですよね。うん』
自分で納得した。
『じゃ、とっておきをお見せしますよ』
私はそう言って三人の目の前に手を出す。
ハリーもハーマイオニーも、ロンも?マークを「つけてなんだろう」と見ているのを確信し、手のひらを上にし、目を閉じた。
私はイメージし、ゆっくりと神経と魔力の形を研ぎ澄ます。
目をゆっくりと開けば、そこには
――青い水晶のようなものからスミレが咲いていた。
「「「!!!」」」
さすがにこれには三人とも吃驚したようである。
最初あたりに出来ていた結界や、熱を出して元の身体に戻った時のことを踏まえて色々やっていたが、今のところ、この身体ではこれが一番いい出来だった。
他にもあったんだよ?
菊とか椿とか、クリスタルの白鳥とか、金銀細工とか……
でもイマイチぱっとしなかったんだよねぇ。
そりゃ、金銀細工なんかかなりクオリティー高かったけど、成金ぽくって嫌な気がした。
…………マルフォイ邸とか神秘部だったら、そういったのも似合うのかもしれないけど。
「禪、なにこれ?」
いち早く現実に戻ってきたハリーが聞いてくる。
他の二人も現実に戻ってきたようだ。
『私が得意とする魔法ですよ。これはアレンジしてありますが、もともと結界魔法が得意なのですよ。この特殊な魔法の使い手であることと、皆からの信頼という観点から、見回りに参加している状態なのです』
三人組は、私は例の物を守る側だと思っているはずだ。
ま、盗む側だと思われているセブルスも、守る側だけど………………
ハリーたちは顔をそれぞれ見合わせる。
「納得したよ」
どうやら納得してくれたらしい。
ハリーが代表してそう言った。
……これで納得するって…………まだまだ十一歳って事か。
彼らの年齢に救われたな……。
この後。
ついでとばかり、ハーマイオニーの指示で図書館の本を再び探すこととなった。
ハーマイオニーいわく、
「お菓子より、本を探しなさい!」
だそうだ。
……正論なので、私はロンと顔を見合わせて肩をすくめた。
ハリーたちが賢者の石という名前にたどり着くのは、時間の問題であろう。
だが、結局色々調べている彼らの行動は、ほとんど原作と変わっていなかった。
ヒントを出しておいても、彼らはそれから遠ざかってしまう事があるという事だ。
……どこかの連想ゲームだろうか……。
私は心のどこかで、少し安心していた。
ネビルが役に立つ瞬間を取り上げないで済むからである。
彼の居場所の一角を奪ったりすることは、私のプライドが許さないからね。
私は深呼吸して、紙とペンを取った。
もちろん、クィリナス・クィレルに送る手紙である。
同封するエリクサーは既に作り終えてあり、スタンバイ済みである。
そりゃぁ、たんまりと作っておきましたからねぇ。
色々と準備していた時間が長かったから、常備薬とかいろいろと作ってみたのだが、エリクサーもいつの間にやら出来てしまったのだよな。
ついつい追求心が………………
皓で送ると一発で私が送り主だと例の人に判断されるため、今のところ、この学校のモリフクロウを使っている。
書き終わって、薬を同封し、既に部屋の中にキープしておいたモリフクロウに運ばせる。
……このふくろうにも、翻訳魔法で事情を話しておいたから、素直に小屋じゃなくてここに戻ってきてくれるのよね。
まさに慧に感謝であった。
しかし、そろそろアルバスじいちゃんが咎めに来るのではと神経を尖らせているのだが、どうもその気配がない。
なんでだろ?
一度高熱出したせいかな?
なんだかこちらに来る波風が弱くなって自由時間が確保できたが、それを嬉しがればいいのか不審に思えばいいのか、微妙だ。
ま、邪魔されないのは楽だけど。
『薬のレベルもいつの間にやらセブルス並みだねぇ。いや、クオリティーは高くないから私の方がかなり下ですか………………』
セブルスの足元に及ばないにしても、一年生で、なおかつこんなマートルのトイレの一角(ちゃんと結界張って、気づかれないようにして、衛生面に関しても魔法でカバーしてある。広さも魔法でちょっと弄って確保した。)で大量に作ってしまったのだから、とても十一歳には見えないはずである。
新学期の授業が再開してからも、三人組はやっぱり図書館に通って、移動時間やお昼の時間を割いて本を漁って読んでいた。
寮でも宿題に費やす時間以外は本を読んでいた。
………………すっかり、本の虫ですねぇ。
人一番、勉強家の三人組の出来上がりである。
ハプニングばかり起こすような状態に、まだなっていないなら、まだマシだ。
コツコツ点を稼ぐように、真面目にやっているようだから助かる。
かという私も着実に点を稼いでいた。
もしかしたら、点を一気に失ってしまうかもしれないからだ。
だって、ノーバートの件がありますからね。
最初の一週間はそれを見守り、授業をこなしながら、クィレルへの手紙やら、薬のチェック、夜の見回り……と変わらない日常が戻ってきた。
しかし、その余裕もそう無くなった。
ハリーと同じように、クディッチの練習が始まったからである。
しかもウッドがどんな天候であっても練習を決行しようというのだ。
「雪だろうが、雨だろうが、僕らは止まらない!」
意気込むウッド
いや、止まれ。
『ウッド先輩、流石に風邪を引いてしまったら、試合どころではないのではないですか?』
「禪か、そうだがそうも言っていられないんだ。これくらいの無茶をしなければ、我がグリフィンドールは勝てん!」
『しかたありませんね。私とてそういう事情があれば、ちょっと校長室まで行ってきます』
「?マクゴナガル教授じゃなくて?」
『まぁ、今からやろうとしている事は、それくらいのレベルのことでねぇ。マクゴナガル教授にも認めてもらってきますから、ちょいと待ってくださいね』
ウッドにそう言って、競技場から走り出す。
そのスピードは、毎朝は知っているせいか、かなり速かった。
「なに、あれ?」(ウッド)
「「禪ってそんなに速かったけ?」」(双子)
「初めて見たから、分からないよ」(ハリー)
走り去った後でそんな会話がなされているとは露知らず、私はホグワーツ内を駆け、校長室へと飛び込んだ。
『アルバスじいちゃん!』
「どうしたんじゃ?」
いきなり飛び込んできた孫に驚くアルバスじいちゃん。
『結界魔法の使用許可ちょうだい!』
「なぜじゃ?」
『ずぶぬれになって、風邪を引きたくないから!悪化したら肺炎になるし!』
「……もしかして、この天気でも練習をするといっているのかね?」
『選手たちは嫌がってますが、キャプテンはその意向ですよ。んで、濡れたくないので結界魔法使わせてください』
「セブルスから報告は受けておるよ。それで、制御は出来ておるのかね?」
『バッチリです。ま、この身体だと競技場を覆うくらいしかできないけど』
「……充分じゃな。では許可を出しておこう」
アルバスじいちゃんがそのまま一筆書いてくれた。
『ありがとう!』
「ミネルバにも伝えに行くんじゃよ」
『はーい!』
校長室を出て、今度はミネルバのところへと行く。
『マクゴナガル教授!』
「あら、どうしました?」
『今日の練習で、アルバスじいちゃんから許可もらったので、お知らせに来ました!』
ミネルバにそう言いながら、アルバスじいちゃんに書いてもらった紙を渡す。
「!」
『問題ありますか?』
「はぁ。敵に悟られてもいいのかしら、アルバス」
『大丈夫。ちゃんと切り札はいくらでも持ってるから!』
「そう、それならいいでしょう。でも、他の寮には悟られないようにしなさい」
『はーい。しませんから大丈夫ですよ。そこは自分の寮優先です』
ミネルバの部屋から退出して、競技場へと戻った。
『ただいまー!はい、ウッドアルバスじいちゃんから一筆もらってきたよ』
ウッドに紙を渡す。
その紙を、我先にと選手たちが覗きこんだ。
「「!本当にもらってきたのか……。マグゴナガル教授の判子も押してあるな」」(双子)
『寄ってきましたからね。マクゴナガル教授の確認も得ています。じゃ、今から魔法使用しますから、競技場の建物の中から動かないでくださいねー』
「て、いきなり!」(ハリー)
『ハリー。このまま雪に濡れて、後でずぶぬれになって、体温が低下して、体調不良になって、風邪ひいて、最悪肺炎になって、マダム・ポンフリーのお世話になり、スネイプ教授特製のお薬を飲みたいのですか?』
「それはやだ」(ハリー)
即答するハリー。
彼だけでなく、周りの人たちも私が説明するにつれて、顔が真っ青になってゆき、ハリーの答えと一緒に頷いていた。
嫌われてますねぇ、セブルス。
体温が低下してという件(くだり)で顔色が変化していったが、ポンフリーとセブルスの世話になるといったところで、完全に真っ青になった。
ポンフリーの場合はあの説教だが、セブルスの場合はその存在感だろうからね。
皆が建物に入り、私は競技場の中心へと立つ。
深呼吸をして、目を瞑り、神経を研ぎ澄ます。
結界が私を中心にして、競技場の屋根の役割をするように広がる。
目を開ければ、うっすらと青い結界が、雪を防いでいた。
雪が降り積もるほどではないので、そんなに力を入れてはいない。
『オッケーですよー!出てきてくださいーい!』
声を張り上げて、ハリーたちを呼ぶ。
おそるおそる顔を出したウッドと興味津々の双子が出てきた。
ハリーや他の選手はそれに続く。
「すごいな」(ウッド)
「「さすが姫!」」(双子)
「雪が入ってきてない」(ハリー)
「それじゃ、練習開始だ!」
ハッとしたウッドが宣言する。
『気温はそのままですから、ちゃんと防寒はしておいてくださいね!』
そうして、練習は始まったのだ。
ウッド特製の猛練習が。
『疲れたー、さすがにあれだけの練習量をするとは思わなかったです』
冷たい芝生に座りこんで、まだ飛んでいるハリーやふざけ始めている双子を見る。
雪を防いでいる結界も、視界には映っていた。
これだけ動いて疲れていても、結界は壊れていない。
やはり私が解くか、私の意識が途切れなければ、結界は消えないらしい。
「なんで、ここだけ雪が解けてるんだ?」
ちょっとだけ競技場から出ていたウッドが戻ってくる。
『あら、ウッド先輩。まぁ、これは私独自の魔法ですよ。で、息抜きできました?』
「へぇ。ああ、できたよ。だが、悩みがまた一つ増えてしまってね」
ウッドの顔が曇る。
「はぁ」
ああ、あれか。
なんかわかった。
あれだな、腐女子にはたまらないシーンが来るのだな。
ウッドが合図をし、練習してたり、他の所にいた選手たちが集まってくる。
ハリーは素直に降りてきたが、双子はいつの間にか持っていた水爆弾を落としながら下りてきた。
って、やめい!
『ジョージ、フレッド。そろそろやめて。私達が濡れて風邪ひいたら、色々と仕返しするから』
声のトーンを落とし、凄んで睨んだ。
「「はい、すみません。姫」」
双子がすべり込んできて、退け座した。
「禪はすごいな」
ウッドがつぶやき、他の選手が頷く。
『で、ウッド先輩。新たな悩み事とは?』
「ああ、それは……まだ確定じゃないんだが、どうも次の試合。審判がスネイプ教授らしいんだ」
「「「「「「えええええええええええええええ!」」」」」」
『へぇ。不正をしないとかトラブルが出るとかには強い審判だね』
いやがる皆とは違った意見を言う私。
「禪。スネイプだよ?!そっちの方が怖いって」(ハリー)
『また変なトラブルが起こるよか、いいでしょう』
「「フーチ先生カムバック!」」(双子)
『大丈夫、多分観客席に入るだろうから』
「「「「どんなけポジティブ!?」」」」(ウッド&その他選手)
『ま、本決まりじゃないんならまだ気にしなくていいって。とりあえず、イースター休暇までは気楽に行きましょう。んで、決まったら精神をとにかく安定させることに努めていきましょうって』
「……やっぱり、禪。キャプテン向きなんじゃないか?」(ウッド)
『意外とプレッシャーに弱いので、向いてませんよ』
そだ、言っとかないと。
『あと、この雪を防いでいる魔法は内緒にしておいてください。校長先生とマクゴナガル教授からです』
「確かに、そうした方がいいだろうな」(ウッド)
「「だよな。羨ましがらがられる!特にスリザリンなんか強制的に、禪をひっ捕まえてくるぞ!」」(双子)
「そんな!」(ハリー)
『あの寮の性質上、ありえますねぇ。ま、アルバスじいちゃんが黙っていないでしょうね。スネイプ教授もプライドの問題で黙ってないでしょうね』
『ということで、秘密にしておいてくださいね』
「「「「「「「もちろんです(だ)!」」」」」」」
ウッドの「雪だろうが雨だろうが練習する!」という宣言は、撤回されることなく、約一か月間、練習は続いた。
もちろん、天候が悪い時は私の結界を使用しての練習だ。
そうやって練習する時には、他の寮が偵察に来る場合も考慮に入れ、競技場の入り口付近に感知魔法をしかけ、同時に幻術魔法を発動させるようにした。
念には念を入れ、偵察隊として皓と庸に競技場の入り口にいてもらい、見張ってもらっている。
ま、スリザリンの寮ってマジで手段選びませんし。
他の二つの寮も……って、このホグワーツの生徒は結構やんちゃが多いんですよね。
二重三重の警戒をしながらの練習をし、そのままイースター休暇に突入した。
『セブルス~。なんかこのイースター休暇って微妙だね』
私は暇だと言わんばかりに、セブルスの自室に入り浸っていた。
「なぜ、我輩の部屋にいるのだ……」
セブルスは顔をしかめ、紅茶に手を伸ばした。
『だって、暇ですからね。それにセブルスの近くはとても居心地がいいんですよ。まぁ、こういう休暇の時とか、プライベート時に限りますがね』
「まるで授業が始まる時は、あまり好きではないと言わんばかりだな」
『そのとおりですよ。セブルスがというより、今のスリザリンの状態が嫌いなんですよねぇ。とっくに殻を破れるはずなのに、それをせずにいつの間にか破るどころか逆にまとわりつかれてしまって身動きが取れなくなり、凝り固まってしまうその性質が』
その代表例がルシウスだというのも、分かりやすいものでしょうね。
あの人元々、ただのプレイボーイでしょう。
内心でそう思いながら、私も紅茶に手を伸ばす。
「ふん。分かった口を」
『私自身、言い過ぎだと思ってますが、あの物語を読んで知りえたスリザリン寮はそういうところになってしまっているという事でした。まぁ、他にもありますが、私以外の大多数の意見は偏見が多かったですねぇ。差別主義だとか、お高く留まって相手も見下すとか……』
「我輩もそうだと――」
『あ、セブルスはそう思ってませんよ。遅くはなってしまいましたが、ちゃんと殻は破れています。そして、遅くなってしまったと後悔も、懺悔もしている。別に気にすることはありませんよ。それに、セブルス以外にもまだスリザリン寮の裏切者はいますからねぇ』
「!?なに!!?」
『あ、これセブルスにしか言ってないんですから、秘密で』
驚きのあまり、紅茶のカップを落としそうになるセブルスに、秘密だと釘を刺す。
「誰だ!?そやつはまだ無事なのか!!」
『名前はまだ教えませんが……まぁ、今は死んでしまっている状態でしょうね。私が介入していませんから。ただ、もし介入が上手くいくなら、ちゃんと助けてあげられるし、こちら側にも素直についてくれると思いますよ』
ケロリと言う私。
「言え!誰だ!!」
『言うなら、せめて来年の今頃ですねぇ。それくらいの期間じゃないと、助ける算段がつきません』
「くっ!」
『そんなに、憤らないでくださいよ。”言う”というのは結構道筋を悪い方へと変えやすいんです』
憤るセブルス。
彼は紅茶を手にしたにもかかわらず、一口も飲んでいない。
それだけ聞きたいのだろう。
私は、なんとかセブルスを諌める。
「くそ!」
『セブルス、ごめんね。言えなくて、でもこれも必要な事だから、あと一年だけ待ってもらえる?』
彼には効かないとは思うが、一応下から覗き込むようにして上目使いで聞いてみる。
「!!!わ、わかった」
少し顔色を良くさせて顔を背けるセブルス。
え、うそ。
マジで効いた?!
え、え、ええ??!
私は暫(しば)しの間、動揺しまくりだった。
動揺していたのはセブルスもだったが、私はそれに気づかず、自分のことで手いっぱいになっていた。
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