*ここから禪視点となります。
アルバスじいちゃん。
後で恨みます。
組み分け困難者になった最終新入学生の私は、マジでそう思った。
ハリーとハーマイオニーより組み分けに時間がかかるとは、マジで疲れるな。
いやいや、ずっと帽子と問答を繰り返していたことがではない。
それよりもその間に感じている、多数の視線に見られているのに疲れたのだ。
こういう時だけ、グリフィンドールとスリザリンがシンクロするのは如何なものか。
うん、なんか釈然としないわ。
そう思いながら、私はグリフィンドールのテーブルへと歩いてゆく。
テーブルに着けば、席が空いていなかった。
おい、そりゃないぜ?
どうしようかと悩んでいるように見えたのだろう。
実際に悩んではいたが、その姿を見て、少しオドオドした様子ではあるが、男子生徒の一人が席を詰めるよう言ってくれた。
あれ、君もしかして……
「す、座りなよ」
そう言ってその子は、席を作ってくれた。
うん、優しくて少しオドオドした男の子って、あの子ですよね。
実は影のハリーこと、ネビル・ロングボトムくんですよね。
『ありがとう』
にっこり微笑んで、彼の隣に座る。
「き、君、東洋人だよね」
『うん、そうだよ。日本人』
たどたどしいが、それでもちゃんと聞いてくる彼。
(初々しいねェ)
これから人生やり直しだというのに、脳内がおっさんだなぁと我ながら思うが、まぁなんとかなるだろ。
「「おお、素晴らしき黒髪の姫よ」」
『?』
なんか重複した声が聞こえた。
「「おーと、こちらです。姫」」
まさかと背後を見れば、案の定そこには先ほど警戒していたウィーズリー兄弟がいた。
……こいつらのノリに着いて行けないかもしれない。
「「やぁ、姫」」
『ええと、なんで姫?』
しかも二つ名が髪しか褒めていないぞ、悪戯仕掛人がた。
「「なにしろ、東洋人で珍しい」」
双子はぴったりの呼吸で、言い始める。
「「だから姫さ!」」
そう言って、元の席へと去っていった。
…………ああ、いきなり厄介だ。
この双子は捻じ曲げれん。
まぁ、ちゃんと死の定めは曲げてやりますがね。
「ねぇ」
ネビルとは反対の隣の方から、声がした。
ん?
「ねぇ、わたしとお友達になってくれない?」
ふわふわとした髪の持ち主は、まぎれなくハーマイオニーだ。
うほぅ、マジでかわいい。
マジで、ロン節穴だったんだね。
三年もかけないと女の子とわからなかったなんて……
『いいよ♪』
軽く了承した。
だって、彼女には友達が多くいた方がいいですからね。
「ありがとう!」
ハーマイオニーは目茶苦茶いい笑顔で、飛び跳ねそうな雰囲気だった。
はぅ!かわいい!!
組み分けも終わり、私が席に座って少ししてから。
「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!
歓迎会を始める前に、二言三言、言わせていただきたい。
では、いきますぞ。
そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」
拡声器を使わずとも大広間に響く声で、アルバスじいちゃんがそう言って両手を広げた。
うむ、校長ってホント宗教の人みたくノリがいいよね。
あ、ノリがいいと人集まらんから仕方ないか。
性質上なのだろうな。
宗教でも企業でも、群衆は何かにノセられて出来上がるんだ。
騎士団は正義感から、ヴォル様達は恐怖による愉悦。
って、我ながら極端な考え方だな。
考えている間に、料理がテーブルに並んだ。
召喚魔法って、ほんと便利だよね。
そういえば、アルバスじいちゃんのこの召喚魔法も詳しく記載無かったなぁ。
後で聞こうかな?
「禪。君、肉食べないの?」
考えながら料理に手を伸ばしていると、向かいの席から声がした。
ん?
誰だい?
いきなり下の名前を呼ぶのは。
声のした方へ視線を飛ばす。
そこにいるのは赤毛の少年。
えっと、確か……
「僕、ロン・ウィーズリー。君ホントにそれでいいの?」
おおう、主人公組が一人、ロン君じゃないですか。
『さ、サラダが、た、食べたかったから、サラダを取ってるだけじゃん』
そう、私が皿に持っているのはサラダ。
あれだ、前の世界だと体脂肪やら消化に気を使っていたからだ。
決して肉が嫌いとかベジタリアンとかじゃない。
「え、でも」
「ロン、君そうせめてやらないで」
ロンの横に座っていたハリーが咎める。
おお、主人公がメシアのようだ。
「君、最後に組み分けされて僕以上に帽子と話していた子だよね?」
ハリーがこちらに向いてそう聞いてくる。
『そ、そうだよ』
「何を話してたの?」
『い、色々さ』
「ふぅん」
目を細めて引きさがる。
ハリーも、パネぇっす。
あれか、洞察力というより、推理力か。
って、私が少しビビリっぽくしてるから……
いえ、何でもないです。
私は気が弱いんです、こういう時だけ。
こういう時、男子限定ですが、同世代でだと上手く話しにくいんです。
もう少し慣れたら、ちゃんとすらすら話すんで勘弁してくださいな。
ネビルはなんか年下っぽいから、話しやすいんです。
あ、喋り方がクィレルっぽいな。
……なんかやだ。
マジで早く慣れよ。
「「よう、ロニー坊や。なに姫をいじめてんだい?」」
双子がめざっとく、皿を持ったまんまロンの背後で脅かすように言った。
うん、双子恐るべし。
どんな耳してんじゃ。
てか、いつ移動してきたんだよ。
「え、ただ、肉食べないのかって聞いたんだよ。て、姫って」
ロンがたじたじに言う。
……そういえば、ロンってへタレだったな。
「「いい響きだろ、俺らが考えたんだ」」
ドヤ顔で、双子が言う。
そのまま元の席へ去っていった。
……双子よ、ロンの言ったこと聞いてませんね。
「……」
「……」
あ、ロンとハリーが固まったぞ。
よし、今のうちに食べよ。
これ食べ終わったら、次にミートパイとかでいいかな。
その後、ハリーが職員席を見て、セブルスを睨んでた。
で、セブルスも負けじと見返す。
どっちも男なのに情けねぇな。
セブルスよ、君三十一歳だろ。
んで、ハリー。
君も初日から偏見してどうするんだ。
授業もまだだぞ?
ミートパイの五つ目を頬張りながら、そんなことを考える私。
……うん、あんなことにならないようにしよ。
他人のふり見て我が身を省みよ、っていうし。
『……』
しかし、私にも視線が来た。
あー、セブルスの横の二つの顔男か。
そんなに欲しいんですかねェ。
私の持ってるデッカイ魔力っつーのは。
この日まで、クィレルに結構話しかけられそうになる事しばしば。
しかしその都度、横にセブルスか、ミネルバが居たので、そんなことにはならなかった。
もちろん、トイレに行く時とかは一人だったけど……その時は大体見つからなかったり、トイレを出る時に遠くから見つかったので、一目散にセブルスの私室に逃げおおせていた。
生徒を追いかける先生って、本来双子とかに適用すんだけど、この追いかけはないわな。
で、もちろん睨め返しておいた。
あー、これでセブルスとハリーの悪口言えんわ。
私も情けない子だわ。
その後、デザートが出る。
お、エクレアもタルトもある。
王道デザートが並んでいるようだ。
ふふふふ、これは喰い尽くすしかないでしょ。
ということで、手当りしだい皿に盛った。
山の様に皿に盛りつけ、目を輝かせてみる。
「「そ、そんなに食べて大丈夫なの?」」
お、双子じゃないな。
声をした方を見れば、向かい側にいるロンとハリーがこっちを見ていた。
まぁ、フツーの人が見たらこうなるわな。
『大丈夫大丈夫。これくらい楽勝』
そういって、皿の四分の一を占めるアップルパイを一口で頬張った。
うむ美味。
一口でそれだけ食べたのを、ハリー達は目を見開いてみていた。
どうやらかなりビックリしたようだ。
ま、一口で桃を丸ごと食べれる人間なんだから、アップルパイ(ワンホールの四分の一)くらいいけるって。
あ、ネビルとハーマイオニーもビックリしてる。
それからすぐに食べ終わった私は、紅茶を飲みながら少し手持無沙汰になった。
主人公組達はさすがにそのスピードに驚いてたけど。
私がティーポットいっぱいの紅茶を飲み終えた後、料理がすべて消えた。
うん、ナイスタイミンッグ。
「さて、皆、よく食べよく飲んだことだろう。ここで新学期を迎えるにあたり、いくつか注意することがある。まず、一年生に注意しておく。構内の森は立ち入り禁止じゃ。上級生もまた然り…特に、何人かの生徒にはのう」
アルバスじいちゃんだ。
流石、よく通る声だ。
あれだな、分かりやすい引っかけだぞ?
普通は行くなと言われれば、行くわ。
てか、双子めちゃ行く気満々ですぜ?
アルバスじいちゃんも双子もキラキラしてんぞ?
あれかどっちも悪戯グッズの用で主に森へ行きたいんか。
いくつになっても男は子供、ってこういう事か。
「管理人のフィルチから注意じゃ。廊下で魔法を使わないように。さらに今学期はクィディッチの予選がある。寮のチームに参加したいものはマダム・フーチに連絡すること。最後にじゃが、とても痛い死に方をしたくない者は、今年いっぱい四階の右側の廊下には入らぬことじゃの」
はい、乙。
アルバスじいちゃんそれ(四階)、絶対肝試しでダメになるやり方だから。
こう行けって言われて、いつの間にか迷って踏み外すパターンだから。
しかし、フィルチさんそんなに悩まされてんですか、双子に。
てか予選か。
一年生は無理なんだよな、ハリー以外。
今度は校歌。
【ホグワーツ ホグワーツ ホグホグ
ワツワツ ホグワーツ
教えて どうぞ 僕たちに 老いても ハゲても 青二才でも
頭にゃなんとか詰め込める おもしろいものを詰め込める
今はからっぽ 空気詰め 死んだハエやら がらくた詰め
教えて 価値のあるものを 教えて 忘れてしまったものを
ベストをつくせば あとはお任せ 学べよ 脳みそ 腐るまで 】
うん、意味わからん歌。
ちなみに私は“ヴィバルディの春”(二倍速)で歌ってやりました。
理由は簡単、速く終わらせたかったから。
え、念仏の方が速い?
いやいや、それだと何の面白味もないでしょーが。
その後、アルバスじいちゃんがそれぞれの寮に監督性引率で行くよう指示を出した。
私は素直にそれに続いていく。
ん?なんか忘れてる気がすんなぁ。
◇~~~~~~~~~~~~~~~~~◇
寮に向かう途中でそれは起きた。
私は列の最後尾にいたのだが、いきなり行進が止まった。
……あ、先頭がなんかと揉めてる。
先頭の監督性が揉めているのは、透明な――
――ピーブスか!
こいつを忘れていたとは……
原作には書かれ、映画はカットされたという。
……これには巻き込まれないでおこう。
巻き込まれんなら、もっと別の機会にお願いします。
ピーブスさん結構好きですが、今は寮に行きたいです。
その一心で、私は気配を消した。
気配を消したのはまずかっただろうか?
太った夫人の肖像画に締め出された。
いや、気づかれずに閉められた。
なぜ!?
夫人は閉めてすぐどっかに言ったらしく、姿が見えない。
……なんてこと。
私、野宿?
廊下で?
寮に入れず、頭を抱えていると――
「だぁれだ?」
へ?
……この状況下で、まだ部屋にいないのってあれだよね。
フィルチさんとかセブルスとかミネルバたち教職員ですよね?
おそるおそる私は振り返った。
そこには……
先程去ったと思われたピーブスがおりました。
嘘と言ってえぇぇぇぇ!!
え、なにこれ。
やらなきゃと思ってやったことが仇になんですかっ!?
「お、お、お、綺麗なお嬢さんだぁ」
う、ポルタ-ガイストにまで褒められた……。
この状況じゃなきゃ、めちゃ喜ぶのに。
『ええと、ピーブスさんですか?』
「そぉだよ、どぉしたんだぁい?」
マジで大きい口だったんだね、ピーブス。
マジでオレンジの蝶ネクタイしてたんだね。
『いやはっは。さっきみんなで寮に向かってたとこは見てますよね?その時に気配消してたら、存在を無視されまして、締め出されちゃいました。あ、私。禪と言います』
夫人もいないから、マジでどうしたらいいのか分かんないよ。
「あーはっはっはっはっ!」
途方に暮れる私の答えに、大笑いするピーブスさん。
うん、なんだろ。
目茶苦茶イライラする。
この人の名前もそういう意味含められてましたよね。
「なぁんとなんと!きぃみは気配消せるのかぁ?!そりゃすごい!」
え、滅多に褒めない人に褒められたぞ?
「そぉいえば、さっき俺様がいたのにきぃみは見てなぁいぞぅ!?」
え、え、え!?
ちょい待てと私は落ち着いて頭の整理をする。
……確か、ピーブスって透明マント装備状態でも気配でハリー見つけてたよね?
それが、私には効かないだ、と?
目茶苦茶すごいじゃないか、私。
「きぃみ!すごぉおいじゃないか!」
そういって、ピーブスは称賛し始めた。
『どうしよ?』
ピーブスに賞賛されても、寮に入れないことには変わりない。
「あはっはっはっはっはっ!」
あ、まだいたのねピーブス。
『なにか術がおありで?ピーブスさん?』
うん。ロクでもない方法じゃなきゃいいや。
「もぉちろん!」
「なにが、もちろんなのですかな?」
笑顔で言ったピーブスの言葉を、もう一体の透明なものが遮った。
え?
「今晩は、お嬢さん」
ピーブスと私の間にいたそれがゆっくりとこちらを振り向く。
その顔と、紳士的なところから察するに、かの有名なほとんど首無しニックこと、ニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿ではないか。
確か、先程の宴でもテーブルの周りを移動してたなぁ。
組み分け前でも新入生の列に侵入してたけど(ちなみに私には当たらなかった)。
『今晩は、ニコラス卿。私は、禪と言います』
「確か貴方は、校長の孫になったお人ですね。いったい、どうしたというのです?このような夜更けに、寮の入り口などでピーブスと話しているとは?」
『ええ実は、私は最後尾にいて寮に入るところだったのです。が、どういうわけか締め出されていまして。そちらのピーブスに気づかれないよう、気配を消していたせいなんですけどね』
「なんと!貴女はピーブスさえ出し抜く事が出来たとおっしゃるのですか!それはすごい!」
丁寧な言葉で、ニコラス卿は吃驚していた。
うん、初日でゴースト二体に褒められるとは此方もビックリさ。
『ですが、入れなかったのはしかたのない事です。で、すぐに夫人に言って入らせてもらおうと思ったのですが、生憎すぐにどこかに出かけてしまわれたようで、いらっしゃらないのです』
「それはそれは、なんという不幸です」
『ええ、それでどうしようかとちょうど居合わせたピーブスと相談していたのですよ』
まぁ、ロクな案が来るか分かりませんがと苦笑していう。
「ふむ、初日でありますが、ここはひとつ監寮殿に頼ってはいかかですかな?」
微笑んだままいうニコラス卿。
「おぉれも、そう言おうとぉしてたのにぃ」
会話に入らずに様子見してたピーブスが言った。
あ、まだいたのね。
三人(いや二人ゴーストですけど)とも、監寮の部屋、つまりミネルバがいる私室へと移動し始める。
「驚きですね。ピーブスがまともな事を言うとは」
「そぉちらのお嬢さぁんは、俺をだぁしぬいた校長のまぁごさんだよぉ。いちぉうの礼さ。こぉれで気にかぁけることぉが減る」
「気にかけるとは?」
「ニコラス卿もぉ、知っておぉるだろぅ?男爵ぅから聞いてぇ」
「……なるほど、そういう事ですか。確かに聞いておりますよ」
え?え?なんの話ですか?
戸惑いながら見上げる私に気づいてニコラス卿が言った。
「実は血みどろ男爵が校長に言われ、校内のゴーストに広めたのですよ。“孫が出来たのだが狙われているので気にかけてやって欲しい”と」
あら、アルバスじいちゃんやるじゃない。
『そうだったんですか』
「そぉさ。俺ぇにも男爵が言ってきぃたんだ」
それはそれは。
ご愁傷様です、ピーブス。
少し青ざめた顔で言うピーブスに少しだけ同情する。
まだ間近で見てはいないが、男爵に言われればそうなるに違いない。
「さて、ここでしょう」
「お、お、着いたよぉ」
いつの間にやらミネルバの部屋に着いたらしい。
二人に前後で挟まれて移動したので、私の両脇にはゴーストが固めている。
『ミネルバ?いらっしゃいますか?』
部屋をノックした。
ほどなくしてミネルバが出てくる。
「禪!どうしたのです?!寮に行ったのではなくて?」
驚くミネルバに、まだ両脇にいる二人にしたものと同じの説明を彼女にもした。
「なんと、それは本当なのですか?」
『嘘を言っても仕方ありません。本当の事です、ミネルバ』
「ところで、なぜこの二人が一緒なのです?」
ミネルバは怪訝にピーブスを見た。
日ごろの行いが悪いからねェ、彼。
「やぁ、夜更けに今晩は。我が寮の監寮殿。実は校長から全ゴーストに向けてこのお孫さんの事を頼むように言われていましてね。そうですよね、ピーブス」
「そぉさぁ。それに俺を出し抜けぇる才能を持ったぁお嬢さぁんだ。一人ぃでどこかに行かせぇる非礼はしねぇさ」
ここまでピーブスに言わせるとは。
ミネルバも、ニコラス卿も驚いている。
沈黙が落ちた。
そこまで驚くことか?
『あのぉ』
三人がバッとこちらを振り向く。
『それで、どうしたらいいです?』
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