授業と友達

 


その後、結局私はその日だけセブルスの横にある自室で寝ました。

 

いやぁ、気まずいよ。
主に、セブルスがそれに吃驚して詰め寄って事の真相を根掘り葉掘り聞かれて。

ま、そのかわり早起きしまして……。
今現在、セブルスの助手してます。
つまり、罰則もどきの手伝いです。


「まったく、なぜ貴様は……」


大鍋をかき混ぜながら、ブツブツ言うセブルス。

『何度も言いましたが、昨日のは不可抗力です。私とて、入学日にこんなことはしたくなかったです』

寮に入れないとか冗談じゃない。
何人部屋かは知らんが、同室だった人がひどく驚くじゃないか。

材料を彼に渡すか、他の教材をそろえながら言い訳をする。

「そうでなくては、困る」

はぁと彼はため息をつきながらビンをくれと指示してきた。

どうやらもう完成したようだ。

複雑ではなくマイナーな魔法薬なのだろう。
セブルスにかかれば、フツーの物は一般人が作るよりもかなり早く出来上がる。

「そろそろ、朝食の時間だな。これを持ってまずは医務室へと行くぞ」

え、これポンフリーからの注文なの?

 


二人して部屋を出て、医務室へと向かう。

 


「禪。お前絡みだ」


私の視線に気づいたらしく、彼はそう言った。

はいぃ?

「貴様が大人しく、寮にいればこんなことにもならなかったのだがな」

医務室につくやいなや、彼はそう言ってため息をつく。

『え、え?』

「見ろ」

セブルスが顎で指したベッドの上には、おそらく気絶したであろうネビルがいました。

 

なんでいんの、君まだ授業もしてないでしょ?

 

「貴様がいないことに気がついて、寮を出て、二、三時間探し回り、挙句の果てにスリザリン寮の方まで行って血みどろ男爵に呼び止められて気絶したそうだ」


面目ございません。
ネビルよ、そんなに探してくれたのか……

 


不幸はなぜにネビル君に降りかかんだろか。


血みどろ男爵に会って気絶かぁ。
……私も会いたかった。
なぁに、ネビル君とは違って気絶しませんって。
て、不謹慎ですね、すみません。

 

『マイナーな薬じゃなかったけ?元気爆発薬って』

セブルスが持っている薬はそれだろう。
気絶で使う薬と言えばそれしかない。

「確かにそうではあるが、まさか初日に使うことになるとは夢にも思わん。在庫が底をついていてもおかしくはない」

相変わらず、不機嫌そうな顔で言うセブルス。

「ああ、セブルス。薬は?」

マダム・ポンフリーがこちらへと歩いてきた。

「これでよいかね?」

ビンに詰めた薬を掲げてみせた。

「ええ、では貰いましょう」

そう言って、彼女は薬を受け取る。

「禪もいたのですか」

『お久しぶりです、ポンフリー』

「そんなこともないでしょう、禪。まだ会ってから一週間も経っていませんよ」

確かに。
彼女とは顔合わせの時に会ったが、それ以降セブルスが医務室へ薬を納める時も一緒についてきた為、そう久しぶりではなかった。

「今度はお茶にでも来てください。怪我などはしてはいけませんよ?」

『はい、是非そうします』

マダム・ポンフリーとお茶は楽しみだが、怪我はしそうな気がするなぁ。

 

主に、今気絶してるネビル君助ける過程で。

 


セブルスから受け取った薬を、ポンフリーはネビル君に飲ませた。

薬を飲んだ途端、ネビル君はその場に飛び起き、耳から煙を出す。

 

マジでそうなるんですね、この薬。

「あ、あれ、僕」

「気が付きましたか、Mr.ロングボトム。貴方廊下で気絶したんですよ」

「そ、そうだ。確か……」

現状を把握したのだろう。
気が付いたネビル君が私に気が付いて叫んだ。

 

「禪!」

 

うん、うるさい。
あ、ポンフリーが怒りそうだ。
私の横にいるセブルスも顔をしかめている。
彼はネビル君が起きたことを視認し、身をひるがえした。
え、放置?
まぁここからでも一人で行けますけど……。
朝食に行くなら、ネビル君も一緒だから大丈夫か。

 

 

 

◇~~~~~~~~~~~~~~~~~◇

 

 

 


飛び起きたネビル君とともに、朝食をとりに大広間へと向かう。
一人で行動したいが、一人になるなとセブルスに言われてますし、ネビル君を迷子にさせるわけにはいきませんからね。


「き、君どこに行ってたのさ!」

どうやら本当に探しに行って気絶したらしい。
ネビル君は昨日の事を聞いてくる。

『ああ、ごめんね。一番最後に寮に入るはずだったんだけど、なぜか夫人に締め出されてね』

教師とゴーストにした話をネビル君にもした。

「そう、だったんだ。禪も災難だね」

君から災難と言われるとは、思ってもみなかったよネビル君。


二人で朝食に生徒の中で一番乗りした(職員はもうちらほら来てた。ほら、セブルスとか先行ったし)。
職員席ではセブルスが、クィレルを牽制してた。
まだ私狙ってるんですね。
昨日の今日じゃ、諦めませんか。
諦めてください、いやマジでお前がいろいろ諦めろ。


朝の五時だから他に生徒がいなかったが、朝食を食べ終えた。
私は十分で食べ終えたが、ネビルはもう少しかかった。
え、速すぎる?ですよねー、朝食だけは食べるスピード速くしてるからね。
本来もっと遅く起きるからね、そんで前日は夜更けまで起きてるからね、その習性の名残ですよ。致し方ありません。
ちなみに本日は六時間しっかり寝てないから少し睡魔が襲ってきてます。

 

 


その後、二人とも寮へと戻った。

流石にこの時刻にはお出かけから戻っている夫人に合言葉を言い、談話室へと通してもらう。

『やっと入れた……』

「そっか、禪はこれが初めてだったね」

私の呟きに、ネビルが答える。

『そーだよ。って、どっちが男子寮で女子寮だい?』

「えーっと、こっちが男子で、そっちが女子さ」

昨夜の事だから、うろ覚えなのだろう。
ネビルは少し考えてから、指差した。

『じゃ、まずは自分の部屋を見つけんとね』

「そうしなよ」

どちらからともなく苦笑する。

『そういえば、ネビル。授業のスケジュールとか持ってる?』

「そっか。それも禪持ってないの?」

『ここに入れなかった時点で持ってないよ。後で見せてくれるかい?』

「ああ、いいよ」

『じゃ、ここで待ち合わせしよう。訳あってホグワーツ内は知り尽くしてはないものの、ある程度知っているんだ。この学校複雑な構造だし。最初の授業くらい余裕で間に合いたいでしょ?いろいろ予習もできるよ?』

セブルスとミネルバにいろいろ案内された経験が活かせる。

「ほんと!?じゃ、頼むよ」

『了解。んじゃ、後でね』

そう言って、それぞれの寮の階段を上った。

 

部屋が多い。
そりゃ、上級生も一緒ですもんね。

『ちっ』

舌打ちして一つづつ部屋を見て回った。
できるだけ静かに扉を空け中を確認し、自分の部屋でなければまた扉を閉める。
その作業をしていった。


それを幾度繰り返しただろうか。

扉を開けたら、ロシアンブルーの庸が飛びついてきた。


え、ここ?

 


なぁーう、と庸が腕の中で鳴く。

ああああああああ!
ごめんね、庸!


「あら誰かしら?」

ん?

ベッドから、ふわふわ髪の女の子が目をこすりながら起きた。
その子が私を視認する。

「あ、禪じゃない」

おぅふ、ハーマイオニーではないか。

『あ、ごめんね。起こしちゃった?』

「いえ、いいわ。どうせ起きる時刻でしょう?」

そう言ってベッドから降りる。
そのアクションで、どうやらハーマイオニーはちゃんと脳を覚醒したらしい。

「そういえば、貴女昨日どこ行ってたの?その子ずっと待ってたのよ?私もこの部屋で独りぼっちだし……」

そう言ってくる。

う、やっぱり。
庸、ハーマイオニーごめんね。

『ごめんね。実は……』

 

ネビルや先生方にした説明を、彼女にもした。

 

「まぁ!それじゃ禪、貴女ってあのピーブスに一目置かれてるのね!」

すごいわ!と彼女は朝からテンションを上げた。
うん、そんなにピーブスに認められるとか称賛されるってすごいんだ。

「ああ、朝食に行かないと!あなたもまだでしょ?」

『えっと、実は終わらせててさ』

「なんですって!」

『これも少し長い話になるんだけど……』

 

ハーマイオニーに嘘は通じない、と思い先程までのいきさつを話す。

 

「え。あ、貴女、ダンブルドアの孫なの?」

喰いつくとこそこですか。
ですよねー。
異世界から来たよってことは伏せましたけど、親を亡くし、引き取ってもらったってことにしたけど。

『成り行きでね。でも、しばらくは秘密にしておいて?』

「なぜよ?とっても光栄な事じゃない!」

『うーん、多分ハリーの事を見ればわかると思うけど……有名って変な視線がついて回るんだよ。この学校って噂話とか情報速いし、入学早々で厄介事になったら、それこそ申し訳ないじゃない?』

私の言葉を聞いて、ハーマイオニーはうーんと考える。
聡い君ならば、察してくれ。

「……確かにそうね。いいわ。でも授業は一緒に行きましょう?」

『ありがとう。あ、授業を一緒に行くのはいいけど……ネビルとも約束してるから、その子も一緒になら』

「さっき言ってた貴女を探しに行った、蛙の子ね」

『蛙?』

「ネビルってば、実はね……」

今度はハーマイオニーが話し出した。
汽車でのことと湖でのことだ。
やはり、原作や映画通りの展開だったらしい。


『まぁ!見つかってよかったじゃない』

「ええ、でもすぐ逃げ出すらしいのよ」

くすくすと二人で笑いあった。

 

あ、これネビル放置してんじゃね?

 

はっ!と二人ともその事実に気づいて、身支度をし始めたのだった。

 


それから二人とも着替えて談話室へと降りて行った。
もちろん、教科書もちゃんと携えて。


談話室には既にネビルがいた。
待った?と彼に心配になっていえば、少し手間取ったため先程来たところだという。


そういえばネビルは、魔法使いの中では異色の欲が無い魔法使いであったのを私は思い出した。


彼は私が、ハーマイオニーと一緒に降りてきたことに吃驚した。
初授業に彼女も一緒に行くことになった事を話せば、更にビックリされる。

「な、なんで彼女も一緒なの?」

『実は、同室のルームメイトが彼女だったんですよ。それで昨晩は私が帰らず、一人で過ごす羽目になりまして……』

「そのお詫びとして、授業に一緒に行くことを約束させたのよ」

途中できった私の言葉を、ハーマイオニーが紡ぐ。
彼女はホント察しがいい。
まだ彼には私がダンブルドアの孫だという事を言うつもりが無いのを、すぐにわかったようにそう言ってくれる。

ネビルもその説明で納得したらしい。

『そういう事なんだよ、ネビル。私達は済ませちゃったけど、ハーマイオニーは朝食まだだから、また大広間に行かないかい?』

「朝ごはん食べずに授業なんてしないもんね。いいよ」

彼はそう言って素直に寮を出て、また大広間へと歩いてゆく。
私たち二人もその後に続いた。

 

 

 


ハーマイオニーが朝食を食べている間、私とネビルは教科書をパラ読みしていた。
それをハーマイオニーは羨ましそうに見ている。

……そんなに勉強好きなのね……

ハーマイオニーも早く教科書をパラ読みしたいのか、急いで食べはじめていた。

……私は慣れてるからいいけど、そんなに急いでいると喉に詰まると――ほら言わんこっちゃない。

彼女が喉に詰まってしまったので、背中を軽くたたきながら飲み物を渡してやる。
それでなんとか事なきを得たハーマイオニーに、ゆっくりしっかり食べるように言う。

それを聞いて、彼女は恨みがましい視線を送ってきた。


って、ちょお!


『焦っても、教科書は逃げませんし、今はまだ六時です。予習をしても授業には充分に間に合いますよ』


確かホグワーツは、午前が四回授業があって、午後が二回授業があったはずだ。
一回四十五分で、午前に二科目、午後に一科目とか言っていた(一科目に二回消費するらしい)。

となれば、午前授業の終わりを十二時(正午)だとした場合。
その四回目の始まりは十一時十五分。
移動時間に十五分あてて、その前の三回目の終わりは十一時。

という具合に考えてゆけば、最初、つまり始業時間は八時十五分。

 

あと一時間以上の余裕なんて充分すぎる。てか約二時間もあんだぞ?

 

この大広間も、私とネビルが生徒では一番乗りで五時に朝食を食べに来たほどで、今もさほど生徒がいない。
もともと生徒は七時あたりに朝食を食べているらしく、この時間帯で食べているのは教職員か、朝からいろいろ頑張っている上級生くらいだ。


頑張るか仕事でなければ、早起きしないとは。
どの世界の学校も、こういう人の習性は変わらないらしい。
早起きは三文の徳ってあったなぁ。
どうでもいいけど。


『ネビル授業は八時十五分くらいじゃないですか?』

「えっーと、そうだよ」

スケジュールを探し当てたネビルが肯定する。
て、マジで移動時間十五分なのね。

『ね、ハーマイオニー。ゆっくりでいいですからね』

そうとう早とちりしていたのか、ハーマイオニーは「え?そうなの!」と言いたそうな表情で納得し、頷いてくれた。
そうして、ゆっくりと食べ始めた。


うん、こういう展開で分かってるけど、ホント急ぎ過ぎるとロクな事ないよね。


ハーマイオニーが朝食を食べ終わるまで待つ。
その合間に、すっかり失念していた授業のスケジュールをネビルに写させてもらった。

彼女が食べ終わり、『じゃぁ中庭にベンチがあるはずだからそこで教科書見てよう』と私が提案し、三人連れ立って大広間を出た。
途中、「なぜ教室の方へ行かないんだ?」とネビルが聞いてきたが、『まだ先生方が準備していらっしゃるはずだから邪魔になる』と言えば納得してくれる。
ハーマイオニーはそれを察していたようで、少し苦笑してネビルの質問を聞いていた。

 

 

 

『どの教室に行けばいいのかは、ネビルに移させてもらったスケジュールで分かったよ。授業十五分前になったら声をかけて案内するからね』

中庭のベンチにはまだ誰もおず、そう二人に言ってから端っこに腰かけた。

どの教室に行けばいいのか不安だった二人は、それを聞いて安心したように並んで座り、教科書を見だす。


ハーマイオニーも私によく似ている。
知識を欲し、それを無邪気に披露しようとしてしまうのも。
本が好きで本来読まないようなものも読んでしまうのも。
他人に親切にしているつもりが、うっとうしがられるところも。


まぁ、ここまで賢くはなかったけどね。


あ、ロンの奴どうしたろうか。
あいつもKYなのよな。
スルーしてたハリーも同罪ですが。
どうしようかな?

 

 

そんな――今後の展開では必要だが、今は――余計な事を考えながら、三人ともそこから三十分は動かなかった。
教科書をめくる音と鳥の声、木々のざわめきが響いていた。
途中トイレ休憩をしたが、その時はネビルが残り荷物の見張りをして、入れ替わるようにして彼がトイレに立つといった具合に、私は一人にならなかった。

 

 

 

 


懐中時計を見ながら、私は八時になった事を二人に告げた。
ネビルもハーマイオニーも、教科書をしまいだす。

この懐中時計、トリップしてきた時にポケットに入っていたものである。
何かしら機能があるかもしれないが、とりあえず正確に時刻は打っているようなので、こうして時間を知るために持ち歩いていた。


いやぁー、セブルスと居る時にはめちゃ活躍してたよ、この懐中時計。
だって地下じゃ日の光が届かないんだもん。
なのに、セブルスったら体内時計で時間を把握してんだぜ?
集中したら時間を心身ともに忘れる私には無理ってもんさ!!
そこでこの懐中時計を使ってたんですよ。
ほんと、夕食時は助かった。


行かなかったら、ミネルバが怒鳴り込んでくるんだから……


え、セブルスの部屋にいる時が大半だったよねって?
もちろん、行けない時はちゃんと昼食時に断りを入れてましたよ?
まぁ、顔をしかめられましたけど。
ついでにおやつの時間に「お茶会に来なさい!」と一回拉致されましたけど。
あ、ミネルバのお手製クッキー食べたい。

 

 

ま、回想は置いといて。

 


『まず最初の授業は薬草学ね。んじゃ、温室で授業だからいきましょうか』

私はそう言って、教科書をしまった二人を引率するような形で案内していった。

 

 

授業初日の一科目めは、薬草学。

 

温室は一号から十号まであり、大きさも様々だ。
教室として使っている小ぶりの一号温室に三人ともついた時には、既にチラホラ生徒が来ており、スプラウト先生は教壇で待っていた。

彼女に面識があるので、微笑んでから温室の隅に行った。

八時十五分になり、授業が開始される。
授業の内容は、最初にどういう目的でこの授業を行うかという事を述べてから、いくつもある温室内をざっと案内するとともに、身近にある薬草を羅列してくるようにと課題を出された。
……結構簡易な説明ではあるが、これで二回分(約二時間)消費している。
とはいっても、十分ほど早めに終わったので、その分だけ早く温室を出る事が出来た。

「けっこうおもしろいわね」

課題が初日に出て嬉しいのだろうか、ハーマイオニーはそんなことを言う。

「え、僕ちゃんとできるか不安だよ」

逆に不安いっぱいのネビルは、やはりオドオドしていた。

『たぶん大丈夫だよ、ネビル。結構スプラウト先生優しいから』

私はそう言って、ネビルを落ち着かせて次の授業に二人を率いて向かう。

 

 

本日、二科目めは魔法史。

着いた教室で待っていれば、やはりビンズ先生は黒板から登場した。

前の世界から思っていたが、彼は何のウケを狙っているのだろう?

彼は、スプラウト先生と同じように最初にどういう目的でこの授業を行うかという事を言う。
しかし、その後は移動などはせず、そのまま大まかに歴史の説明に突入。
歴史の説明がまるで念仏のように聞こえてしまい、もともと睡眠時間が足りていない私とネビルにはキツかった。

私は意地で起きてやっていたがな。
横目でちらりと見れば、ネビルも意地で起きることに専念していた。
ああ、腕をつねるってマイナーなことやってますぜ。


しかし、後ろの席の方には、既に夢の中に旅立っている生徒もいた。
初日でそれをしてしまうとは、結構肝が据わっているなお前ら。
いや、ここはさすがグリフィンドール生と言うべきか?

 

授業はきっちり十二時に終わり、皆昼食をとりに大広間へと向かう。

ちっ、せめて初日くらいは早めに終わっていくれればよいものを。

 

 

大広間には既に、教職員がいて上級生も沢山いた。
チラホラ聞こえてくる会話に耳を傾ければ、どうやら昼に起きた上級生もいるらしい。


おいおい、いいのかそれで上級生。


適当に昼食をとっていると、ふくろう達が手紙やらなんやら届けに来た。
びっくりすることに、私のアメリカワシミミズクも飛んで餌をねだってくる。

おい、お前は何も届けていないだろ?

しかし、よく見れば、足に何かつけられている。

なんじゃそりゃ。

とにかくそれを取り外してやり、ベーコンをいくつか食べさせてやる。
それで満足したのか、飛び去って行った。

取り付けられていたのは筒。
うむ、昔から使われている通信手段だな。
で、中身は大体簡易的な文章だったはず。

筒から紙を取り出してみれば、マジで文章が書かれていた。
しかも最後にはS.Sと記入してある。

え、セブルスから?

教員席をチラリと見れば、セブルスは朝と同様、クィレルを牽制していた。
早く諦めろよクィレル。


ふむ、内容を読んでみるか。
えっと……“今日、午後五時に我輩の部屋に来るように。”だと?
え、何の用?


左右に座っているネビルとハーマイオニーもそれを覗きこみ、顔をしかめた。

「S.Sって、教員の中じゃ、あのスネイプ先生でしょ?あなた、何かしたの?」

『ううん、ハーマイオニー何もしてないよ。あれかな、昨日の事じゃないかな?』

「じゃぁ、僕も行くべきなのかな?」

『もしそうなら、教授はきみにもこれを送ってくるさ。送られてきてないんなら、私のみの召喚だよ』

ハーマイオニーは何となく察したらしいが、ネビルは疑問だらけといった感じだ。

セブルスに何を言われるか、何を聞かれるかわからない。
また真実薬を飲ませてから聞いてくるかもしれない。
ヴォル様似のダンブルドアの孫って少し辛いのかも……(容姿は全くと言っていいほど似てません)

 

まぁセブルス可愛いし、素直に真実を述べてやりますがね。


ん?裏にも何か書いてあるぞ?
なになに……“ふくろうにも名前を付けたまえ。嫉妬して他のふくろうを威嚇しおる。”……
マジか。
あいつ、他のふくろう威嚇しとったのか。
こりゃ早く名前付けてやらんと…………考え事が増えたなぁ。




 昼食を終えた三人は、本日最後の午後の教科“変身術”へと向かった。



 厳格な性格のミネルバの授業に遅れるわけにはいかない。



 とにかく早くと足を速く動かし、一番乗りに教室について、三人で固まって座った。
 座ると同時に他のグリフィンドール生が、雪崩れ込んでくるように教室へと入ってくる。

 どうやら生徒間での噂というものは、本当に早く広がってしまうものらしい。

 私が、先程の昼食の席でネビルとハーマイオニーに、『次の授業は早くいかなければ』と言った時、「「なぜ?」」と聞いてきて『次は変身術。一分でも遅れたら、マグゴナガル先生に雷が落ちるどころか変身させられちゃうぞ?』と答えたのだが……
 それを真に受けたのか、入ってきた生徒が皆、顔を青くしていた。


 ……冗談のつもりなのだが。
 脅しとしては、良いかもしれない。
 

 十三時きっかりに授業が始まる。


 が、ミネルバは猫のまま教壇にいた。


 え、なに。
 映画と同じ展開なんですか?

 全員が「え、先生こないじゃん」と壇上の猫になっているミネルバに気づかず、私を睨む。
 もち戸惑っている生徒――ネビルとかハーマイオニーね――もいたが……
 中には、「中抜けしちゃおうか?」とか「中庭で遊んできてもいいかな?」とか言ってる生徒も、立ち上がろうか迷っている生徒もいる。


 えーっと、君ら恐し。
 そこにミネルバいますから、マジで睨むな。
 動こうとしてる君らの方が、怒られちゃうぞ?
 



 ばたばたばたばたばたばた



 それらの視線にため息をつきながら、遠くからかけてくる足音に耳を澄ます。
 ミネルバはどうやら、こういうことを予期していたようで、猫のままでため息をついた。

 ……器用だなぁ。
 あ、こっち見た。

 どうやら、私が変身を見破っているのを見抜いているようだ。
 うむ、鋭いよミネルバ。




 ばたばたばたばたばたばたばたばたばた


 バアン!


「ロン、速く!」
「ふぅ、間に合った。遅刻したらマクゴナガルがどんな顔するか」

 ハリーとロンが部屋に入ってきて教壇近くまで来ると、ミネルバは素早く猫から元の姿に戻り、二人を出迎えた。
 その様子に他の生徒も目を見開く。
 
「……変身…お見事でした」
 
 言葉を失っていたであろうロンが、生唾を呑みながらなんとか言葉を紡ぐ。

「お褒めの言葉、ありがとう、ウィーズリー。貴方とポッターを懐中時計に変身させましょうか?そうすれば、遅刻しないでしょう」
 
 ミネルバはそう言った。

「道に迷って……」

 ハリーも我にかえり、言い訳を口にした。

「では、地図にしますか?地図無しでも席はわかりますね?」

 ミネルバはそう言うと、教壇に身をひるがえした。

 ハリーとロンは、顔を見合わせて素早く空いている席に座る。



 このやり取りの間、遅刻した二人以外の生徒が私をガン見してた。
 ネビルとハーマイオニーもである。
 どうやら、私が言ったことが本当だと思われたようだ。

 

 


 はは、セブルスに怒られんな。

 こりゃ目立っちゃたぜ

 


 ミネルバの授業は他の授業と同様になぜするのかという事を言う。
 それから、彼女はめちゃめちゃ難しい理論を黒板に書いてゆき、それを生徒にノートに書くよう指示した。

 
 やべ、ミネルバも大人げなかった。
 子供が全くわからなそうな理論を語り、それを押し付けるとは。
 もうちっと簡易的な説明をすればいいのに……。
 あ、無理か彼女の性格上では。




 その理論を書き取らせた後、彼女は実技を始めた。
 ミネルバは机をブタに変えてみせる実演をしてみせる。
 もちろん、元に戻した。
 

 ……いつ見ても、すごいよな。


 私だけじゃなく、他の生徒も目を輝かせて食い入るように見ている。


「しかし、貴女たち初心者にはまだ無理です」


 で、その期待に満ちた心を折るのね。

 
 他の生徒は結構大きくショックしている。
 私は“知っている”から分かってはいたが、それでも期待を裏切られて少しショックしているのは間違いではない。


 ミネルバは、まず初心者である私達はマッチ棒を針にするよう指示してきた。
 彼女はその理由を難しく言っていたが、要は“物から動物”よりも“物から物”へと変える方が難易度が低いからだそうだ。



 正論だな。
 古今東西、“無”から“有”をうみ出すよりも“有”から“無”をうむ方がはるかに簡単だ。
 まぁ、この場合は“有”を“別の有”に変換させるだけだが。
 って、“有”から“無”は消失魔法で、“無”から“有”は出現魔法、もしくは召喚魔法じゃんか。

 

 一通り脳内で突っ込みを入れた後。


 私は杖を取り出し、机に置かれたマッチ棒を見た。

 両脇では、ハーマイオニーとネビルがそれぞれ格闘している。
 ネビルは不安で杖を何度も落としては握っていたし、ハーマイオニーは先ほどとったノートを読み返していた。

 先に動いたのはハーマイオニーで、杖を振ってはノートを見て、また杖を振ってはノートを見るという繰り返しだった。
 一方ネビルは、振っては首をかしげ、また振っては顔をしかめていた。

 何度やっても変わらないのを、ネビルは降参したかのようにうーんと呻って杖を振るのをやめた。
 そのすぐ後、ハーマイオニーが成功する。

 成功した彼女も、びっくりしたようで目を見開いてマッチ棒から変わった針を見ていた。



 さて、私もやってみますか。
 二人の格闘を見届けて、深呼吸し精神統一をする。
 自分の中で魔力の形を整え、マッチ棒に杖を向けた。
 そして、次の瞬間さっと杖を振る。


 すると、いとも簡単にマッチ棒が針に変わった。


 それを見ていたのだろう。
 ミネルバがツカツカとこっちにやってきて、私が一発で成功したことと、ハーマイオニーの成功を褒めちぎった。
 どんだけ鋭いとか、サビが無いとか……
 点数も加算された。




 その後の成功者は他にいなく、授業後。
 私とハーマイオニーは寮の中で期待の眼差しを向けられていた。








 ああ、またやっちまった。

 マジで目立っちゃってるから……

 セブルスの雷が落ちるぞ、これ。


 いえまぁ、セブルスのスパルタ指導の影響でもあるんですけどね……

 
 何処か遠い目をしながら、私はこの後彼に会うのを覚悟せねばならなかった。

 

                                                                      次ページ:セブルスと私へ

 


|新しいページ|検索|ページ一覧|RSS|@ウィキご利用ガイド | 管理者にお問合せ
|ログイン|