場所を風影の執務室から移動し、会議室みたいな場所に通される。
砂の威信にかかわるのか、私たち三人は、周りから手出しは受けず椅子に座ることができた。
風影、暗部五名、私達三名。
緊張した空気の中、私は口を開いた。
『今度、中忍試験があることは皆様ご存知だと思います。私達の情報網に、とある企みが引っかかってきました。木の葉の忍びを狙う企みではあったのですが、その過程においてこちらの砂隠れにも被害が及ぶと知り、こうしてこちらに伺った次第です』(威守)
「なるほど。木の葉も優秀な能力の持ち主が多いと聞く。狙われるのは当然であるが……なぜ、木の葉だけでそれを処理できぬのだ」(風影)
『当然、木の葉内部だけで処理することも考えたのですが、それでは間に合わないと確信いたしました。敵はあの大蛇丸。その標的となる者が、木の葉のうちは一族、風影という隠れ蓑、火影の命とくれば……。あとは考えるまでもございません。たとえ、ここに居る天才忍者二人にご助力いただいても、必ず被害が出る。その一番の被害者が貴方、四代目風影』(威守)
「……何という事だ。かの大蛇丸から実は書簡が届いておる。その内容と今の話を聞くに、お前の言葉は本当のようだな」(風影)
どうやら納得してくれた風影。
だが、まだ納得していないものが味方にいた。
「ルイ、まだ話していない情報があるだろう。その狙われる対象に、お前自身も入っているのではなかったか?」(サソリ)
『サソリ……』(威守)
「そうだぞ、ルイ。うん、大体いろいろ背負いすぎだろ。自分が木の葉ナンバーⅡの地位にいるという事を忘れちゃいないだろうな?うん?」(ディダラ)
二人の発言に、その場は驚きを隠せなかった。
「な!」(暗部その1)
「木の葉のナンバーⅡだと?!」(暗部その3)
「今まで誰も姿を確認していなかっただろう?!!」(暗部その4)
砂の暗部も動揺が伝わっていく。
「どういうことですかな?」(風影)
『ああ、もう。心配性だな、サソリ、ディダラ。だが、そこまで言われてしまっては仕方ない。確かに私は木の葉のナンバーⅡ、名前を威守瑠威。暗部名を翠という』(威守)
「!そうか。お前さんが、木の葉の暗部総隊長か」(風影)
『その通り。まぁ、狙われる理由はもっと別のところにある。サソリ、遺書見せてもいいだろう?三代目からは見せるなという事だったが、お前自身には酷だ。今後の私からの依頼任務にも支障がでる』(威守)
「……ああ。もう喪も開けた。充分だ。天国か、地獄かわからないが、あの世にいる三代目には申し訳も立つだろう」(サソリ)
「旦那、少し丸くなったなぁ。前はもっとこう、ノコギリみたいな」(ディダラ)
「それ以上は言うなよ。あとでみっちり」(サソリ)
「……言いません」(ディダラ)
『すっかり尻に敷かれたな、ディダラ。だが、少し黙っていて。風影、これが三代目風影の遺書だ。読んでみて欲しい』(威守)
遺書を風影に渡す。
最初はいぶかしげな顔で遺書を開いたが、読み進めていくうちにどんどん血の気が引いていく。
どうやら、四代目風影はその意味が分かったようだ。
「俺が、先代から預かった遺書だ。預かる時にその内容を知らされた。その遺言通り、俺は木の葉へ。抜け忍となってでもと、な」(サソリ)
『だが、先に私に会った。まぁ、遺言通りサソリ君は木の葉預かりなのだがな』(威守)
かなり読み進めたであろうと思い、サソリと私は口々にそう話す。
「そんな、まさか……」(風影)
風影が真っ青な顔で遺書を床に落とす。
「風影様?!」(暗部その2)
「事実は受け止めといた方がいいぞ、うん」(ディダラ)
砂の暗部たちにさらなる動揺が走る。
『風影、その遺書には三代目が何で亡くなると書かれていた?不治の病であったろう』(威守)
「……」(サソリ)
「ああ。だが、三代目はそこのサソリに傀儡に……」(風影)
『まだ人に罪を着せ、現実に目を向けぬか!影と付いている以上、貴方はこの里の長。ちゃんと現実を見て、発言しろ!客観的に判断しろ!感情的にはなるな!足元を見よ!ほかの里を見る前に、貴方はこの里の状況がわかっているのか?!私はこの里に着いた時、愕然としたぞ』(威守)
私は大きな声で、風影に向けそう言えば、その後しばし沈黙が落ちる。
誰も話したがらないというよりも、普段がどういうようなものか知らぬ(サソリ曰く頑固)が風影が動揺していることに驚いているようだ。
「これが事実ならば……」(風影)
風影が椅子から立ち上がったかと思うと、視界から消えた。
「すまない、私はとんでもない勘違いをしていたようだ。大変申し訳ないっ!」(風影)
声が聞こえた先は、床。
彼がどけ座をしているという事に気づいたのは、その数秒後だった。
『サソリ』(威守)
「……四代目。もうその辺でいい。俺ははみ出されることに慣れている。たぶん、これからも変わらぬであろうよ。だから、とっとと椅子に腰かけろ。お前のような奴でも長だ。気安く頭を下げるんじゃねぇ」(サソリ)
「だが!」(風影)
「頭を下げる相手が違うぞ、うん。それにな、暗部たちも個々の上忍たちもびっくりしている。うん?なんか一人毛色が違うのがいるな。あれは……老人?」(ディダラ)
「げっ?!」(サソリ)
運悪く、上忍たちも集まってきて動揺はさらに増す。
”あのサソリが帰ってきている”とか。
”木の葉のナンバーⅡがきている”とか。
”抜け忍だが、天才が二人もいる”とか。
”風影様がどけ座だと?!”とか。
そういうものだったが、それよりも小さな老人が現れた事がサソリには問題だったようだ。
「こら!来るならちゃんとわしに言え!!」(???)
『……サソリ。こちらのご老人は?』(威守)
知ってはいるが、サソリに聞いてみる。
「……俺のババァだ。うるさいのが出てきやがって……」(サソリ)
「うるさいとはなんじゃ!勝手に出ていって、勝手に戻ってきおって!」(???)
「つまり、サソリの家族か?うん」(ディダラ)
『そのようね。お名前を伺ってもよろしいでしょうか』(威守)
「わしは、この砂の相談役を仰せつかっているチヨというものじゃ。して、小娘。お前が木の葉のナンバーⅡか」(チヨ)
『チヨ様ですね。はい、確かに私が木の葉のナンバーⅡ。威守瑠威と申します。翠という暗部名ならば聞いたことがあるでしょうか』(威守)
「ほう、それならば聞いたことがある。だが、このように若いものがやっているとは思わなんだわい」(チヨ)
『……とりあえず、チヨ様。こちらをお読みくださいませんか。たった今、風影様には目を通していただきましたので』(威守)
遺書をチヨに渡した後、私は風影の方を見た。
未だ、衝撃に膝をついている。
『四代目風影、いつまでそうしているというのか。立て、そして事態の収拾を図れ。私達三人は逃げも隠れもせぬ。攻撃しても、傷一つできないと思え。サソリ、私がケガをしたとこ見たか?』(威守)
「見ても、すぐ治っちまうだろうが。まったく、お前の近くにいる奴はみんなバケモン並みだよ」(サソリ)
『と、言うわけだ。さっさとしたまえ』(威守)
「……なんで、ルイも旦那も挑発するような発言なんだか……うん」(ディダラ)
信用のおける人だけ残した。
それがありありと分かる人数。
「なんともまぁ、少ねぇな。うん」(ディダラ)
「ディダラ。ルイも似たようなもんだろう。むしろ、この里じゃ上出来だ」(サソリ)
『……』(威守)
風影とチヨ様の他に、先ほどの暗部5名、上忍3名。
それが今私達を除いた部屋にいる人数だ。
「まさか、このような状況になるとはのぉ」(チヨ)
「チヨ様も拝見したとは思いますが……」(風影)
「ああ。このような事実。今この里にとっては意味がありませぬ。しかるべき時に公開せねば、人々は……」(チヨ)
『だろうな。砂も人のさがには抗えないだろう。だから、サソリは私の私兵となっているんだからな』(威守)
「では、それまで孫を頼めれるであろうか」(チヨ)
「おい、ババァ。今更じゃねぇ?」(サソリ)
『扱いは変わらぬ。サソリは私の私兵だ』(威守)
「すまぬ」(チヨ)
『サソリの一件はそれでひと段落だ。サソリ、ディダラ彼はどうした?』(威守)
「「彼とは……?」」(風影、チヨ)
そっちがハモルのかいな……。
「ああ、安全な場所へ移動させた。あれは狙われ放題だろ」(サソリ)
「ルイがよく知っている場所にいるよ、うん」(ディダラ)
『私がよく知る場所。なるほど、確かにあそこならば早々壊れもしない』(威守)
内心胸をなでおろし、風影を見る。
『父親のはずなのに、お前はずっと何かが欠けていたな』(威守)
「!息子たちに何をした!」(風影)
「羅砂(ラサ)、声を荒げるでない」(チヨ)
『軍備を増強しているようだが、自分が人であるという事を忘れない方がいい。人間というのは効率ばかり考えていると、自分を見失うものでね。さっきの大蛇丸と同じになるわよ?』(威守)
「しかも、自分がその犠牲になるっていう、自業自得方式で、だろ?」(サソリ)
「そうそう。うん。で、いつの間にやら最悪の結果なんだろ。身に覚えがあるわぁ、うん」(ディダラ)
『やられた側としてだろう、ディダラ。一人で残してきたのか?』(威守)
「なわけねぇ。ちゃんとあいつらに任せてきた。ちょうど来ていたからな」(サソリ)
誰なのか、不安そうに見ている風影。
『そうか。来ていたのか』(威守)
彼らが来ていたのならば、大丈夫であろう。
なら、今やることは……
『サソリ、ディダラ。先に帰っておいて。私はこの人たち案内するから』(威守)
「ああ」(サソリ)
「うん、先行くぞ」(ディダラ)
二人ともその場から立ち去る。
「一人きりになってしまって、それでええんじゃな?」(チヨ)
『私はそうそうくたばりませんよ。サソリより……いえ、火影より強いのでね』(威守)
私は椅子から立ち上がり、砂隠れの精鋭の彼らを見渡す。
『人質とかではないからな。彼の健康状態を優先した結果だ。直ぐに返すさ。さて、どなたがお迎えに来てくれるかね?』(威守)
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