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初売り」(2006/10/15 (日) 11:45:06) の最新版変更点

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女子A「由奈ー!!早くー!!」 電車のドアを押さえながら、そう叫ぶ1人の少女。 その声に、由奈と呼ばれた少女は慌てて階段を駆け下りた。 しかし、彼女には何故ここまで急がなければならないのか分からなかった。 今日は元旦…一年で一番、ゆっくりする日のはずなのに…。 由奈「ど…どうしたの…?急に…『学校に行こう』だなんて…」 ゆっくりと動き出す電車…その中で肩で息をしながら、彼女はそう尋ねた。 女子A「忘れたの!?先生が、『クリスマスに回収したもの、全部格安で売ってあげる』って言ってたじゃーん♪」 携帯電話片手に、ウキウキとその質問に答える少女。その瞳は、どんな宝石よりも輝いていた。 水銀燈「あらぁ?あなたも来たの?珍しいわね…。ま、いいわぁ。好きなだけ買っていってねぇ♪」 マンションのエントランス内に響く、猫撫で声…。 まず来ないだろうと思っていた由奈の姿に多少の疑問を感じながらも、水銀燈は上機嫌でオートロックを解除した。 ゆっくりと開く自動ドアをむりやりこじ開けると、少女は由奈の手を引っ張りマンション内へ突入する。 彼女の部屋にはもう数名の生徒が先に到着していたようで、玄関には多種多様な靴が散らばっていた。 慌てて『争奪戦』に加わる彼女とは対照的に、由奈のほうは椅子に腰掛け、静かにそれを見守っていた。 そんな彼女に、水銀燈はジュースを差し出しながら声をかけた。 水銀燈「…どうしたの?何か、興味なさそうだけどぉ…。」 由奈「あ…はい…。私、こういうの疎くって…。なんて言うか…こういうブランド物より、誰も知らない『いいもの』を探すほうが好きっていうか…。ホントは、こういうのにも興味を持ったほうがいいんでしょうけど…」 水銀燈「ふーん…ま、それも個性だから別にいいんじゃない?それにしても、水泳部の皆にこの話を持ちかけてよかったわぁ♪質屋に行く手間、省けちゃったぁ♪」 由奈「…すごいですね…。私なんか、いくつになっても先生には敵わないんだろうな…。」 その言葉を鼻で笑うと、水銀燈は彼女にこう言った。 水銀燈「何いってるのよ…。私だって、あなたに替われるものなら替わりたいわよ。そうすれば、こんな日陰の人生を歩まずに済んだかも知れないしね…。」 由奈「…え?」 水銀燈「あなたは良い子だわぁ…。部活の時も、みんなのために一生懸命やってたし、それを見てみんなもそれに応えようとした…。そして、いつも周りには誰か友達がいる…。こんな人、めったにいないんじゃなぁい?」 「でも…」と、彼女の問いかけに答えようとする少女。それをそっと制止させると、水銀燈はこうも続けた。 「…確かに、私の周りにはいろんな人がいる…。あなたたちを含めてね。でも、それは裏で色々な打算が働いてのことよ…。あなたのように、純粋な気持ちで人を引き付けるのは、もう私には出来ないわ…。ま、自分を大切にしなさい。」 と。 …確かに、先生の言葉には一理ある。そして、「なんて自分は馬鹿なんだろう」と恥じると同時に、由奈の心にある1つの疑問が湧いた。 それは「先生にだって、自分を大切にしていないのではないか」ということ…。 先生の周りには、薔薇水晶先生や雛苺先生など『打算』とは程遠い方も沢山いるし、少なくとも私はそんな先生を慕っている…なのに…。 先生がさっき言っていた、『日陰の人生』という言葉…その言葉の裏に、どんな過去があったのかは分からない。 でも、いつかそれが晴れる日が来れば…。 そんなことを考えつつ、彼女はその後みんなで行った初詣でこんな事をお祈りした。 「今年も、みんなで仲良くしていけますように…」 と。 家族連れやカップルでにぎわう神社の境内…。 その上には、雲ひとつ無い空が一面に広がっていた。 完
女子A「由奈ー!!早くー!!」 電車のドアを押さえながら、そう叫ぶ1人の少女。 その声に、由奈と呼ばれた少女は慌てて階段を駆け下りた。 しかし、彼女には何故ここまで急がなければならないのか分からなかった。 今日は元旦…一年で一番、ゆっくりする日のはずなのに…。 由奈「ど…どうしたの…?急に…『学校に行こう』だなんて…」 ゆっくりと動き出す電車…その中で肩で息をしながら、彼女はそう尋ねた。 女子A「忘れたの!?先生が、『クリスマスに回収したもの、全部格安で売ってあげる』って言ってたじゃーん♪」 携帯電話片手に、ウキウキとその質問に答える少女。その瞳は、どんな宝石よりも輝いていた。 水銀燈「あらぁ?あなたも来たの?珍しいわね…。ま、いいわぁ。好きなだけ買っていってねぇ♪」 マンションのエントランス内に響く、猫撫で声…。 まず来ないだろうと思っていた由奈の姿に多少の疑問を感じながらも、水銀燈は上機嫌でオートロックを解除した。 ゆっくりと開く自動ドアをむりやりこじ開けると、少女は由奈の手を引っ張りマンション内へ突入する。 彼女の部屋にはもう数名の生徒が先に到着していたようで、玄関には多種多様な靴が散らばっていた。 慌てて『争奪戦』に加わる彼女とは対照的に、由奈のほうは椅子に腰掛け、静かにそれを見守っていた。 そんな彼女に、水銀燈はジュースを差し出しながら声をかけた。 水銀燈「…どうしたの?何か、興味なさそうだけどぉ…。」 由奈「あ…はい…。私、こういうの疎くって…。なんて言うか…こういうブランド物より、誰も知らない『いいもの』を探すほうが好きっていうか…。ホントは、こういうのにも興味を持ったほうがいいんでしょうけど…」 水銀燈「ふーん…ま、それも個性だから別にいいんじゃない?それにしても、水泳部の皆にこの話を持ちかけてよかったわぁ♪質屋に行く手間、省けちゃったぁ♪」 由奈「…すごいですね…。私なんか、いくつになっても先生には敵わないんだろうな…。」 その言葉を鼻で笑うと、水銀燈は彼女にこう言った。 水銀燈「何いってるの。私だって、あなたに替われるものなら替わりたいわぁ…。そうすれば、こんな日陰の人生を歩まずに済んだかも知れないしね…。」 由奈「…え?」 水銀燈「あなたは良い子だわぁ…。部活の時も、みんなのために一生懸命やってたし、それを見てみんなもそれに応えようとした…。そして、いつも周りには誰か友達がいる…。こんな人、めったにいないんじゃなぁい?」 「でも…」と、彼女の問いかけに答えようとする少女。それをそっと制止させると、水銀燈はこうも続けた。 水銀燈「…確かに、私の周りにはいろんな人がいる…。あなたたちを含めてね。でも、それは裏で色々な打算が働いてのことよ…。あなたのように、純粋な気持ちで人を引き付けるのは、もう私には出来ないわ…。ま、自分を大切にしなさぁい。」 と。 …確かに、先生の言葉には一理ある。そして、「なんて自分は馬鹿なんだろう」と恥じると同時に、由奈の心にある1つの疑問が湧いた。 それは「先生にだって、自分を大切にしていないのではないか」ということ…。 先生の周りには、薔薇水晶先生や雛苺先生など『打算』とは程遠い方も沢山いるし、少なくとも私はそんな先生を慕っている…なのに…。 先生がさっき言っていた、『日陰の人生』という言葉…その言葉の裏に、どんな過去があったのかは分からない。 でも、いつかそれが晴れる日が来れば…。 そんなことを考えつつ、彼女はその後みんなで行った初詣でこんな事をお祈りした。 「今年も、みんなで仲良くしていけますように…」 と。 家族連れやカップルでにぎわう神社の境内…。 その上には、雲ひとつ無い空が一面に広がっていた。 完

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