晩御飯をすませ、自分の部屋にもどってから僕はひたすらバイトの業務内容について検索していた。20キロ以上のものをカートなどで運ぶ重労働を伴うこともある、という記載に眉をひそめたり、女性のアルバイトは少ないことをしって大きく落胆したり、ある質問サイトで高校1年生の女子学生がアルバイト内容について質問しているのを見て少し希望を覚えたり。
夜が更け、その作業に飽きた僕はベッドに入り、いつの間にか眠りについていた。
夢を見た。
辺りはみすぼらしい木材と藁でできた家々と散らかされたゴミで埋め尽くされていて、そこで手に木の棒をもって元気に走り回る子供のころの、ぼく。対称的に、大人たちの目には輝きがなく、くすんでいる。
そこへ、別の男がやってきた。光沢のあるジャケットに、折り目が気持ちのいいほどしっかりしているズボン。両手の指は燦々と太陽のように輝く宝石類で、こちらがそのまぶしさで目をそむけなければならないほどだ。
男はポケットから金貨のようなものを1枚取り出すと、僕たちのほうにそれを放り投げる。放物線を描いたそれが肥溜めの中に入ると、今まで何をするということもなく座り込んで上の空だった大人たちが我先にと汚物の中に突っ込んでいく。まず1人が飛び込み、そこにまた1人、さらにまた1人。
男は、それを見て高らかに笑っている。見るに見かねて目をそらすと、地平線の向こうからぽつぽつと魂のようなものが、ゆらりゆらりと、こちらに向かってくるのが見えた。
目が覚めても、さっきの夢が鮮明に頭の中に残っている。
これは、きっと潜在意識のせいに違いない。昔ネットでフロンドだかスポイトだか忘れたのだが、何やら有名な学者がそう言ってたのだ。
意気消沈していた大人たちは、おそらく僕と同年代の希望を失った若者たち。男は僕たちを心の中で小馬鹿にしている、いやみな大学受験成功組。手にしていた木の棒は、地頭の良さという僕の武器。
そんなエリート共に、僕は今、復讐してやろうとしてるのだ。苦学して東大に入学し、立派な会社に入って、僕を下にみていた奴どもを部下にしてやる。
やつらはきっと、超エリートとなった僕のいうことは何でも聞くだろう。しゃぶれと命令すれば男は喜んでちんぽを咥えるだろうし、名刺を見せるだけで女は股を開く。それが僕の、目標だ。最後の、蒼い魂はそれを手助けしてくれる僕の行動を意味しているのだ。この郵便局のバイトも、そのうちの、1つ。
きっと、掲示板の同胞たちならこの夢が雄弁に物語っていることを分かってくれる。僕はすぐ、パソコンを開いて夢の内容を書き始めた。
7時間たっても、夢に関する書き込みは1つもない。僕は、こいつらの馬鹿っぷりに驚きを通りこして、むしろ呆れすら感じはじめた。
ああ、何も分かっていない。だからお前らは、この僕よりも劣ってるんだよ。
いらいらした僕は、表参道にいる名無し野郎に、こう返答した。
将来書き上げる予定の名著、『世界にもうひとさじ悪意を振りまいたら』の主人公の決め台詞はこれ、「おれんちこいよ」にしようと思っている。弱冠20歳にしてコンサルとして活躍しはじめた主人公、「ぽよちか」は経営に悩む中小企業の社長から恋に悩む女子高校生まで、様々な人たちに家でアドバイスするのだ。
ああ、もちろん、おちんこ入れる官能シーンもたっぷり書こうと思ってる。
セックスはまだしたことないけど、毎日予習はしてるから、きっと、描写はカンペキだ。ちんこがたってきたから、あのサイトでえいごのおべんきょうをしよう。しこしこ。
第5章 終
>>第6章 ナイト・ポストオフィス
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