懐かしき思い出
雛苺のことからまた数日たったある日。僕はとんでもないものを見た…これはその時のお話。
「黒猫は好敵手?」
この頃あきらかに黒猫からの襲撃が多くなってきたと僕は思うんだ。
そこで今日は猫用の罠を作ってもらおうと思って笹塚を呼ぶことにした。
「もしもし笹塚だけど…どうしたんだジュン?お前から電話だなんて…」
「お前もベジータも俺のことどう認識してんだよ。まあいいや。今日開いてるか?」
「彼女もいない僕が忙しいわけ無いでしょ。何か用なのか?」
まあ笹塚が休みの日にやることといえば怪しい製品の開発とベジータの相手くらいだからな…………可哀相に…。
「ちょっと頼みたいことがあってな。猫用の罠とか作ってないか?」
「あ~それっぽいのはあるよ。けど全部あげたんだよな。もう一回作るのは時間が掛かるよ。とりあえず今日中には持っていく。」
「任せたぞ。あとそれ猫を殺しちゃうようなことはないよな?」
「ああ。あくまで捕獲用だ。安心してくれ。じゃあできたらお前の家に行く。じゃあな。」
「おうじゃあな。」
ふぅ。さて問題はあの黒猫がおとなしく捕獲されてくれるかだな。あの黒猫頭いいし…。
それよりどこにいるかだよな。今は目の前にいるけど………。目の前に……またか………。
「…逃がさない。」
しかも女の子が振ってきた……どこから侵入したんだよ。
まあ小さな女の子だから許すようなものを…。
「だからってこれはな…。」
僕は完全に無視で黒猫と戦闘してますねあの子。しかし左目に眼帯かめずらしい。
「ちょっと勝手に人の家に…」
「…ふふふ。…さすがは私が認めた唯一の相手…一筋縄ではいかないね。」
…マジで完全無視。悲しいよ。というか動物と戦ってるのはなぜだ?妖怪退治ですか?
「…しかし今日こそ決着をつける…。」
「何回戦ってるんだよお前らは……。」
黒猫もなんかいつもより本気の目だし。戦ってるというのは本当らしいな。…何もこの家で戦わなくてもいいのに…。
あっ。両者跳んだ。まああの子もおしいところまではいってるけどあの黒猫にはかなわないよな。
「…逃げるだけとは卑怯な…。」
いや逃げるだけしかできないだろ普通。これって逃げる猫を捕まえるっていう戦いじゃないの?
そういえばあの黒猫が本気で逃げてるな。いや猫の本気なんて僕にはわからないけど…。
「でもそろそろ止めてほしいよな…。」
女の子が追い掛けて黒猫が逃げる。これの繰り返しだからな。いつまで続くんだろう。
「…仕方ない。秘密兵器を…」
んっ?女の子がなんか取り出したな。丸い何かを取り出して……投げた。
まあ猫は避けるよな…。壁に当たって……ベチャッていった。とり餅みたいなのか…。ってあとで掃除するの大変じゃないか!?
「…えい。そりゃ…。」
投げまくってる。止めてくれよ。家中にベチャッってとり餅みたいなのがベチャッって………。
「…さすがに早い…。」
なんですか?この状況。黒猫が来たと思えば見知らぬ女の子と戦闘中……僕の家はとり餅だらけ…。もうやだ…。
「…っ上…」
あっ。それは…一番やってはいけない行動…。
「…あっ。」
「…はぁ。まあおとなしくなったからいいか…。」
そりゃあとり餅爆弾を頭上に三個も投げれば先は見える。黒猫は満足そうに一鳴きした後窓から出ていった。
「…くっまた負けた…」
……さてとり餅に捕まってるこの子をどうしよう…。
とりあえず名前を聞いておくかな…。
「お前は誰だ?僕は桜田ジュンだが…」
「…薔薇水晶…。」
「そうか薔薇水晶。でなんで黒猫と戦ってたんだ?僕の家をとり餅だらけにして…」
「…あれは私の好敵手…。…今の戦績は三十四戦中三十四敗…」
好敵手?というか三十四戦もしてるのかよ!しかも全部黒猫が勝ってるし…。あいつ強いな…。
「…これ取って…それともまさか…」
「何考えてるんだ。ちょっと待ってろ今取ってやる。」
なにこの小学生…。本当に小学生かよ。はぁまためんどくさいのに捕まったな。
とりあえずとり餅は取ったけど…
「…ありがと…。」
「どういたしまして。しかしその取り餅爆弾どこから持ってきたんだ?」
「…ある人から持らったの。もう無いけど…」
ある人ねぇ。僕の知り合いでは笹塚くらいしか浮かばないなそんな物作ってるやつ。
どうゆう原理なんだか…。
「とりあえずこの家のとり餅だらけの状況をなんとかしてくれないか?」
「…ちっ。…仕方ない。」
今僕舌打ちされた!?なんで?僕は間違ったこと言ったのか!?
まあ取ってるからいいか…。
しかしいっぱい投げたな。よく全部かわしたよあの黒猫も…。
さて…全部掃除し終わってちょうど昼時か…。
「薔薇水晶お前お昼食べたのか?」
「…食べてない。お腹ペコペコ…」
「そうか…。なんか食べたいものあるか?」
「…アッガイ風デラックスシュウマイ」
なんだよそれ。デラックスシュウマイすらないのにアッガイ風って…
「ただのシュウマイでいいよな…。」
「…仕方ない…それで妥協しよう…。」
「それはどうも。」
これでも図々しさなら真紅よりましだよな。さてシュウマイ作りましょうか…。
「…シュウマイ…シュウマイ…。」
「そういえば薔薇水晶。家で食べなくていいのか?」
「…大丈夫。…それよりシュウマイまだ~?」
「もう少しでできる。後少しだけ待ってな。」
大丈夫なのか。まあ家庭の事情なんて知らないけど…。それにしてもシュウマイ好きなんだな。お椀をカンカンカンカン…。古いよそれ。
「できたぞ。」
「…シュウマイ…美味しそう…。」
「まっゆっくり食べてくれ。」
言葉は足らないけど顔は嬉しそうだな。こちらとしても作ったかいがある。
「薔薇水晶。あの黒猫とはいつ会ったんだ?」
「…夏休みの始めの方…」
そうそう今夏休みなんだよね。…改めて言う必要もないか…。
「そうかやっぱりこの夏休み中にあらわれたのか…。」
「…ジュンは何か知ってるの?」
「えっ?ああ、あいつには相当厄介事を運ばれたからな。」
これで七回目だよ七回目だよ。一夏で普通七回目もこんなこと起こらないよ。
「…厄介事…私も?」
「えっ?まあそうかな。」
「………………」
えぇ~。無言で下向かないでくれよ。この子の行動パターンがまったく読めない…。
「いや冗談だよ。そんな落ち込まなくても…」
「…そう…」
ってめっちゃ笑顔じゃないか!?謀ったな。まじで行動パターンが読めない…。
「…シュウマイありがと。…美味しかったよ…。」
「そうか…。」
普通にお礼言われたら何も言えない。計算してるのかこれ?んっ?呼び鈴が鳴ったな。笹塚かな?
「ここでおとなしくしてろよ薔薇水晶。」
「…了解。」
しかし早いな笹塚のやつ。猫用の罠もうできたのかな?とりあえず聞けばわかるか…。
「ようジュン。できたぞ。まああれだよ。罠じゃないんだけどな。」
予想どおり玄関を開けると笹塚のやつが待っていた。んっ?罠じゃない?
「それがこれだ。」
「んっ?待てこれは…」
笹塚が出してきたのはさっき何度も見たとり餅爆弾である。
「笹塚ちょっと来てくれ。」
「えっ?いいけど…」
とりあえず薔薇水晶に合わせればわかることだ。まあ99.89%僕の予想どおりだろうが…
「あれ薔薇水晶?」
「…笹塚…例の物はできた…?」
「いやまだできてないけどなんで薔薇水晶がジュンの家にいるんだ?」
「まあ話せば長くなるんたけど…。その前に笹塚はなんで薔薇水晶と知り合いなんだ?」
「…二人とも…まず落ち着こう…」
誰のせいだよ!?…仕方ない。まずは落ち着いて話を整理しよう。
つまり笹塚は薔薇水晶VS黒猫の八戦目に出くわして知り合いになったらしい…。だから協力してるわけか。
「本当に三十四戦したのかよ。」
「あの時はびっくりしたよ。でも薔薇水晶は僕の製品の欠点を指摘したり、新しいアイデアを出したりしてくれてるんだぞ。」
「…私ってすごい…」
そんなこと親指たてて言われてもなぁ。まあ天才と馬鹿は紙一重っていうし。
薔薇水晶は馬鹿というより奇人かな?
「なんにせよ。そのとり餅爆弾じゃあ黒猫は倒せないし捕まえられない。それは実証済みだぞ笹塚。」
「そうなのか…。新しいものを開発しないとな。」
「…笹塚…もうアイデアはできてる…。」
「よし。今作ってるのも合わせて作ってみるか。」
案外いいコンビだなこいつら。あ~でも何してもあの黒猫は捕まえられそうにないんだよな…。
「それじゃあ僕は帰るぞジュン。」
「…私も帰る…シュウマイの恩は忘れない…」
「ああわかった。じゃあな。」
手を振り帰っていく二人。本当にいいコンビだ。
さて…笹塚が置いていったとり餅爆弾…どうしよう…。
…………………さて現在あれから六年経ったわけだが…
「…笹塚…こんな感じのは作れる…?」
「あ~これは思いつかなかったな。」
「お前ら何で僕の家でアイデア出しあってるんだ?」
「…気にしない気にしない…」
いや誰でも自分の家で化学兵器作られてたら気にするよ。
そういえばこの六年。
この二人の化学兵器の犠牲者はこの家に来る者ばかりだったな。……とくにベジータと金糸雀…。
まあシュウマイの恩なのかは知らないけど僕は一回もやられてない。
ただ…真紅と翠星石の報復が全部僕に来るんだよね。
「お前ら今回は誰を標的にするんだ?。」
「そういえば誰が標的なんだ薔薇水晶?」
「…翠星石あたり…?」
止めろそれは一番やっちゃいけない相手だ。…はぁ。まあこの家の名物として置いておくか…。
どうせ止めても無理だろうし…な。