超機動戦記ローゼンガンダム 第五話 バトルインヨコハマ

「まもなく作戦開始時刻です。各機、準備をしてください。」
巴の声が響く。続いてJUMの声がする。
「いいな、みんな・・・作戦は伝えてあるとおりだ。この戦いは金糸雀が鍵を握っている・・・」
「うふふ、カナに任せるかしらー!」
ヨコハマ攻略に対するメイデンの作戦。それはカナリアを中心とした作戦であった。
内容はこうだ。ヨコハマ基地にはあまり重要視されてないと言えどもかなりの兵力が用意されているのが
予想される。しかし・・・だ。その兵力の大半が人工知能機なのだ。
そして、こういう基地の場合得てして基地のどこかに命令電波を送る場所がある。
その電波をカナリアの電波キャッチ機能を使い発見。そこにサクラダの主砲を撃ち込み一気に人口知能機を
無力化しようと、こういうことだ。
「ま、無難な作戦よねぇ。正面突破じゃあこっちも簡単にはいかないでしょうしねぇ。」
「そうだね。ただ・・・その・・・一つ心配事が・・・ね。」
「ズバリ、金糸雀のドジっぷりですぅ!」
蒼星石の不安をズバッと言い切る翠星石。そう・・・唯一の不安はここ一番でヘマをしかねない金糸雀だった。
「し、失礼かしらー!?カナは任務のときはドジしたことないかしらー!?」
と、金糸雀は弁解するものの、普段の彼女のドジっぷりを知っているとどうにも不安だ。
「まぁ・・・どのみち私たちはするべき事をする・・・そうでしょう?」
「うん、みんな頑張ろう。」
雪華綺晶と薔薇水晶が気合を入れる。
「よし・・・作戦開始時刻だ。いくぞ、みんな!!」

サクラダから8機のガンダムが出撃する。カナリアを中心に陣形が組まれている。
「いいこと、金糸雀。あなたは電波を探る事に専念して頂戴。見つければこっちの勝ちよ。」
「分かってるかしらー。真紅こそ、しっかりカナを守って欲しいかしら。」
「おしゃべりはそこまで・・・来るよ・・・」
バラスイショウがサーベルを抜き腕に装備されているビームマシンガンを向ける。
バーズが目視できるだけで20機ほどいるだろうか。恐らくまだ後ろにも控えているはずだ。
「ホーリエのエネルギーチャージ。いつでも発射できるようにしておくんだ。それまではスィドリームと
レンピカで前線を援護する。」
JUMがクルーに伝令を言い渡す。それと同時にバーズが一斉にライフルを構え砲撃してきた。
数発がサクラダに当たるが、対ビームコーティングを施されているサクラダには大した被害はない。
「問題ない。実弾だけに注意しろ!スィドリーム!レンピカ!てええーーーーー!!」
サクラダの右舷と左舷に搭載してある2連装の副砲が放たれる。
「さ、こっちもいくわよぉ~。今回は攻めだから遠慮なくいけるわぁ。」
スイギントウが漆黒の翼を展開し、実体剣をかざし手近なバーズに切りかかる。
「ういー!雛も頑張るなのよー!」
雛苺が特殊兵装、有線制御式ビーム砲を4つのうち2つを起動させる。雛苺の癖が染み付いた
ビーム砲は不可解な動きをしながらバーズに襲い掛かり撃墜させる。
「翠星石に跪くですぅ!ガンガンいくですよ~。」
緑の機体はその巨大な砲身のエネルギーを絞り、固定砲台のようにビームを連射している。
ガーデナースプリンクラー(以下GS)は通常のビームライフル程度の威力ならば瞬時にチャージが完了する。
「翠星石、あまり無駄使いはいけないよ?戦場は何が起こるかわからないんだから。」
そんな姉を諌めながら巨大な二つの刃を持ちながら舞う蒼い影。
数こそアリス軍が優勢だが、いかんせん性能差が違いすぎる。MSの性能の違いが戦力の
決定的違いになっていたりする。

第一陣がほとんど撃墜しかけると再び20機ほどのバーズが基地から出撃してくる。
(!ここかしら!出撃したての機体に必ず命令電波が飛ぶはずかしら!)
金糸雀がコクピットに搭載されている機器を目を皿にして凝視する。
「金糸雀!危ない!」
棒立ち状態のカナリアに砲撃するバーズ。そんな金糸雀の危機を瞬時に察したバラスイショウが
カナリアの手を引っつかみ無理矢理回避させる。
「あいた!オデコ打ったかしらー!」
「撃墜よりオデコの方がいいでしょう?」
金糸雀をロックしていた機体に向けてライフルを放つのは雪華綺晶。
多勢を相手もメイデンは有利に進めているものの、未だに命令ポイントの発見には至っていない。
「面倒ねぇ・・・JUM?全部砲撃しちゃえばぁ~?」
「お馬鹿ね水銀燈。基地は占領後レジスタンスが使用するから最小限の被害にしたいってアレほど
説明していたのだわ。」
不満げな水銀燈に説教を始める真紅。
「うゆ・・・かなりあー!まだなのー!?」
ヒナイチゴが敵機に向けてライフルを放つ。が、微妙に外れてしまう。
「カナだって頑張って探ってるかしらー!・・・・見つけたかしら!JUM。ポイント送信するかしら!」

そしてカナリアから命令発信場と思われるポイントがサクラダに送られてくる。
「くっ・・・微妙に射程距離に届いていないか・・・すまないみんな!射程距離まで艦の防衛をしてくれ!」
JUMが叫ぶ。それと同時に金糸雀を守っていた機体が今度はサクラダの防衛に入る。
「作戦成功は目前ね。敵の攻撃に注意しないと。」
「分かってるわよぉ、真紅ぅ~。ホーリエの射線軸に巻き込まれたらダメよぉ~?」
スイギントウが迫り来るバーズをライフルで狙い撃ちにする。
「ここらで一発ブチかましてやるですぅ~!」
スイセイセキがGSの出力を最大に上げ、ビームの雨を降らせる。
サクラダの進行方向の敵機は壊滅状態だ。
「ホーリエ、射程距離に入りました。射線軸に味方機ありません。」
巴の声がする。そして間髪いれずにJUMが叫んだ。
「よぉし!ホーリエ!ってええええええええ!!!!」
サクラダの中央に装備されている主砲、ホーリエ。すでに最大までエネルギーをチャージされた砲身は
待ちかねたように超高エネルギーを放出した。
砲撃に巻き込まれたバーズの数機はあっという間に閃光となり、司令部と思われる箇所はすでに廃墟となって
いた。同時に、まだ戦闘可能だったバーズの動きが停止する。
「敵機の動きが止まった・・・司令部が潰せたということね。」
雪華綺晶が呟く。しかし、彼女は気づいていなかった。砲撃の少し前・・・一つの奇妙なフォルムの機体が
脱出し、メイデン撃破に目を光らせている事を・・・

「やったかしらー!カナの調べは完璧かしらー!」
一番の功労者の金糸雀が歓喜の声をあげる。他の面々も安心感を見せている。
「よし、これでヨコハマは制圧だ・・・お?SAIYAもオオサカを制圧したらしい。
蒼星石、ベジータからメッセージが来てるが?」
「・・・間違えて消去した事にしておいてほしいな・・・ダメ?」
「あ、いっけねー。操作間違えちゃったよ、あはは・・・ってなわけで各機帰還してくれ。」
そんなのどかな雰囲気でいたときだった。カナリアのコクピットが電波をキャッチする。
「!?み、みんなまだかしら!敵がー」
金糸雀が叫んだときだった。胴体部は黒、頭部や手の部分が白とだけ分かる機体はヒナイチゴに襲い掛かる。
雛苺が反応して回避しようとするものの、簡単に左腕と頭部を持っていかれる。
「うや!・・・カメラがやられたの!」
「おや・・・思ったより反応しましたね・・・殺れたと思ったんですが・・・」
その機体に乗っている男・・・メガネをかけ、鋭い目付きをした男が言う。
「雛苺!?金糸雀!ヒナイチゴを回収するんだ!このままじゃまずい!」
「わ、分かったかしら!」
カナリアが中破したヒナイチゴを掴みサクラダに向かう。
「な、何なのよぉ。あれは・・・」
水銀燈が息を呑む。胴体部の黒はまるでタキシードを着ているよう。そして頭部はまるでウサギと
全くふざけた機体である。そんなファンシーな外見に関わらず恐怖を与えるのはその赤い目のせいか。
「!?ラ・・・プラス・・・?お姉ちゃん・・・!」
「・・・白崎・・・・」

一方、このウサギに反応したのは雪華綺晶と薔薇水晶だけじゃなかった。
「蒼星石・・・あの・・・あのふざけた機体は・・・・」
「・・・間違いないよ・・・あいつだ・・・あいつが・・・・」
翠星石と蒼星石の顔つきが変わる。そして、次の瞬間にウサギ・・・雪華綺晶曰くラプラスに向かっていく。
「おめぇです!おめぇが・・・翠星石たちの日常を奪ったです!!!」
スイセイセキがたった一機に向かってフルパワーのGSを放射する。
「す、翠星石?落ち着きなさい!蒼星石、止めて頂戴!」
暴走する翠星石を諌めるように真紅がストッパーの蒼星石に言う。しかし・・・
「お前が・・・お前が・・・お前がーーーーー!!!!!」
広範囲に広がるGSの砲撃をかわしたラプラスに向かっていくのは対艦刀を振りかざしたソウセイセキ。
みんなのストッパーとなっている蒼星石だが、その実、彼女がキレれば止めれるものはいない。
「はは、威勢のいいお嬢さん方だ・・・ほら、君らも起きるんだ。」
ガーデナーシザーと切り結んで回避すると、ラプラスは命令電波を放出。眠っていたバーズが目覚める。
「!?あいつが起こしたの?ちょっと・・・マズイわよねぇ・・・」
ヒナイチゴとカナリアはすでに艦の中。蒼と翠はラプラスに気を取られバーズを相手にできるのは4機だった・・・

次回予告 思いも寄らぬ形でピンチを迎えるメイデン。翠星石と蒼星石、そしてあの機体の関係とは。
そして彼を知っている様な雪華綺晶と薔薇水晶は。そして、戦いの行方は・・・
次回超機動戦記ローゼンガンダム 双子の過去 美しき旋律 奏でろ金糸雀!
 


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最終更新:2006年07月05日 08:58