「討伐司令って……。」

自室のホテルで士郎は、あのDJからの放送を聞いた後、暫く考え込んでいた。
いや、別段躊躇があるわけではない。只、その誘いに乗るかどうかの話だ。

(令呪は多ければ多い程良い……)

魔力消費が膨大なオーディンなら、尚更だ。
もし令呪の魔力をデッキに喰わせれば、オーディンの戦力は上昇する。
そうすれば、士郎の力は格段に上がる。

(だが、その分乗り越えるリスクも倍になるはずだ)

現状では、士郎の戦力はとてもではないが高いとは言えない。
頼みのオーディンのデッキは魔力を喰い、まともに扱えるデッキも三枚。
後はキャスターが手駒を増やし、そして、あの切札が完成すればの話だが……

(……そう言えば、キャスターからの報告がまだだったな。)

士郎は念話を掛け、キャスターに何かあったか、と念話で問う。

『どうした、マスター。』

キャスター……神崎の声が、衛宮の脳内に響く。
何時もなら、少なからず金属音の様なノイズが走るはずなのだが、そんな物も無くサーヴァントの声はマスターに伝わる。

『何か、分かったことはあるか?』
『現状では有るが、幾つかの事は教える。』

キャスターは、繁華街で見掛けた幾つかの事例を話す。
まずは、此処らを仕切っていたマフィアのリーダーが負傷した事。

「じゃあ、あの空気は……。」
『恐らく、リーダーを失い、彼等も騒然としているのだろう。


そして―

『赤い目をした住人?』
『そうだ、俺が繁華街の周囲を探索した所、幾つかの人間の目が、時折紅い光を見せていた。』

赤い目と聞けば些細なことかもしれないが、念のため聞いておくべきだ。
もしかしたら一種の呪いの様な魔術も掛かっているかもしれない。

『それで、その特徴は。』
『2つある、一つは眼球がルビーの様に光るタイプ、もう一つは、目の周りから光を発するタイプだ。』
『もしかしたら、何か暗示を掛けられている可能性は。』
『恐らくだがな。少なくとも、そのようなNPCにはデッキは渡していない。』
『……済まないな、其処も引き続き調査を頼む……それと。』
『何だ。』
『……お前にも聴こえたか、先程の討伐令。』
『乗るのか、だが我々の現状の戦力は些か心許ないぞ。それだけではない。多くのマスター達が討伐令に食らいつくはずだ。
その中には対聖杯派が含まれる可能性すらある。』

嘗て戦いに消極的だったものに力を与えた神崎なら、分かる話だ。
自身も幾つかのループで、戦いたくないと思っていた者二人に、ある特別なカードを渡した物だった。
その名は「SURVIVE―サバイブ」、ライダーデッキの力を極限にまで高める、正に生存するための切札。
マスターに渡しているオーディンのデッキも、サバイブのカードを組み込んで構成されている物だ。

『……作れるか、サバイブのカードを。』

確かに、神崎はミラーモンスターを捨てた。
彼が鏡に描き続けたのを怪物から、人々の笑顔へと変えたのを切っ掛けに。
だが、アドベントカードの製作なら決して難しくはない。
事実、オリジナルなカードを作成した教授も存在するのだ。
十三枚のカードデッキと全く同じ環境下でなら、作成することなど屁でもない。
それに他の十二枚―現在残っているのは九枚だが―は、オーディンと比べると然程魔力は喰わない。
NPCでも問題なく動かせるだろうし、何より、自分達の存在を秘匿できるのは、大変都合がいい。

『作るのは不可能ではない。だが問題はいくつか存在するぞ。』
『……そうだな。』

顎に手を置き、士郎も肯定する。
確かに、いくつかの欠点も出てくる。
一つは、やはりオーディン程サバイブの力は発揮できないこと。
オーディンには、契約モンスター・ゴルドフェニックスの力がある程度残っている。
が、他のブランクデッキとなればそうは行かない。
況してや十二枚のデッキは程度の違いこそあれどオーディンよりも弱めに設計されている。
力はあるが、頼りすぎるのも良くないことだ。

『それに、サバイブはオーディン程ではないが、魔力は相当に喰らう。
事実、サバイブ形態は体力の関係から時間制限が掛けられている。』
『そうか……そうなれば実戦投入は。』
『今揃っているライダーだと難しいだろうな。寧ろ、仮面ライダーの数を増やしていった方が、よっぽど効率が良い。
……使う用意は整っているがな。』

―討伐はお預けか。
その結論に至った後、士郎はキャスターと共に、その次の話に移行する。

『で、サバイブを入れるデッキは……。』
『俺が勧めるのは龍騎、王蛇、そしてリュウガの三体だな。』

何れもパワーバランス的には、非常に高いスペックを有した仮面ライダーだった。
数値的に最も高いのはリュウガ。
だが極めて高い精神性と肉体を有した犯罪者に与えた王蛇は、多くのライダーにとって脅威になったものだった。
また龍騎も、ポテンシャルは非常に高く、とあるループにおいてはリュウガをいなした程の高いポテンシャルを有し、神崎も散々手を焼かされた経験を持っている。
この3人のデッキの基本スペックの高さはライダーバトルの均衡にも大きく関わった。

『金棒を持たせるなら鬼が一番、てことか?』
『作成できるのは烈火・疾風のカードだが、高性能なデッキに与えれば戦闘力は向上するだろう。だが……。』

その理屈は、ライダーバトルでなら尚更通じただろう。
だが、この戦いにおいて仮面ライダーは、蹴り落とす者ではない、生き残らせる者なのだ。
殺すために戦わせるのではなく、生き残るために戦わせるのだ。
なるべく生き残らせるためにも、比較的弱めのデッキにカードを渡すと言う手もあるはずだ。

『じゃあ、デッキは他の……』
『性能が低めのライダーに優先して渡すと言う手段が、戦力バランスとしては最適だろう。』

事実、最後のループでオーディンを討ったナイトサバイブの基本スペックは比較的低い方にある。
それに、上に挙げた三枚を切札として隠匿する手段もある。
金集め役のベルデに渡すと言う選択肢すらあるのだ。

『とにかく、今動く訳にはいかないが―。』
『念入りは必要だな、分かった。サバイブのカードは出来る範囲内で作成しておく。
同時に、それを扱うライダーもな。』
『ああ、引き続き頼む。』

キャスターとの念話を切った後、士郎は胴体の角度を90度曲げる様にしてベッドに倒れ込む。
ポケットからオーディンのデッキを取り出す。
電灯の薄明るい光に、デッキの金メッキが反射する。
試しに士郎は、デッキからカードを一枚、取り出してみる。
捲れば其処には、先の羽が描かれていない、不死鳥の胴体を象ったカードが、一枚。

(SURVIVE、か)

カードをデッキに仕舞い、士郎はそのまま横になりながら何かを考える。



【B-8/歓楽街・安ホテルの一室/一日目 午前】

【衛宮士郎@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]干将・莫耶
[道具]オーディンのライダーデッキ
[所持金]数日寝泊りできるほど
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1.情報収集に出た神崎が帰還するのを待つ
2.宿を拠点として、他のマスターを探す
3.赤毛のマスター(=羽佐間カノン)を警戒。多分ミラーワールドからの奇襲は、二度と通用しない
[備考]
※護衛として、仮面ライダータイガ、仮面ライダーインペラーに変身するNPCが近くにいます。
 戦闘時には即座に現れ、士郎を援護するように洗脳されています。
※シールダー(=我愛羅)およびそのマスター(=羽佐間カノン)の外見特徴を把握しました

【キャスター(神崎士郎)@仮面ライダー龍騎】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]ライダーデッキ×7
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針: マスターの戦いを見届ける
1.歓楽街が騒がしい。緊張の原因を調査する
2.ユグドラシル全域からNPCを選別し、仮面ライダーを増やす
3.赤毛のマスター(=羽佐間カノン)を始末する
4.サバイブカードの作成を考慮する、デッキの選定は状況に併せて
[備考]
※町のNPC3人を洗脳し、ベルデ、インペラー、タイガのデッキを渡しています。
 また、現時点でガイ、ライアのデッキが破壊されています。

【『ライダーデッキの仮面ライダー』】
【仮面ライダータイガ(歓楽街のゴロツキNPC)】体力100%・現在地 B-8 歓楽街・安ホテルの一室
【仮面ライダーインペラー(歓楽街のゴロツキNPC)】体力100%・現在地 B-8 歓楽街・安ホテルの一室
[備考]
士郎の護衛として、常に近くで行動しています。
戦闘時には即座に乱入し、士郎を守りながら戦闘を行います


【備考】

  • サバイブカード
 ライダーバトルを加速させるための切札として作り出された三枚のアドベントカード。
 それぞれ「疾風」「無限」「烈火」の三枚の名を持つ。
 これをカードから引き抜くだけで余波エネルギーが巻き起こる(烈火は炎、疾風は風)程のパワーを有する。
 強化された召喚機に装填することで「サバイブ」へと変化し、パラメータが向上する。
 アドベントカードが強化・追加され、契約モンスターも新たな形態へとパワーアップする。
 ただし、その分エネルギーの消費も激しく、ある程度の時間しか変身できない。
 その上デッキには一枚しか入っていないので、一度使えば再変身時まで変身不能。
 因みにオーディンのデッキには「無限」のサバイブが常時発動していると言う状態になっており、他のライダーを圧倒するほどの戦力を発揮できたのはそれも関与している。
 最も、例えサバイブを使おうとも、オーディンには敵わぬ様に設計されているのだが。
 ただし、この聖杯戦争において再現されたサバイブカードは、ミラーモンスターがいない関係から戦闘力が大幅に減少している。




◆  ◆  ◆



「学校に討伐司令……それに、ロボットのサーヴァントか。」

朝方の閉された病院。
その一室にて、雅緋、それにライダー……ルルーシュもまた、現状において入ってきた情報の整理を行っていた。
ベッドの側にあるデスクに腰掛けたルルーシュはファイルに挟まった紙をパラパラと捲り、ペンをくるりと一回しして情報を整理する。
ファイルには、部下からの話をメモした情報が、筆記体の英語で記されている。
生涯の半分以上を日本……エリア11で過ごしていたとは言え、ルルーシュもブリタニアの人間だ、癖とは付く物である。

「しかし、お前以外にロボットを使う者がいたとは、つくづく奇妙な話だ。」
「KMF(ナイトメア)等、私がイレブンに送られた頃には既に開発が始まろうとしていた。
寧ろ、私からすればお前の忍転身とやらが驚きものさ。」
「まあ良い話を戻すぞ、それで、あのロボットの外見だが……」

メモを見直しながら雅緋は、ルルーシュと共にそのロボットの情報を整理する。

「特級住宅街にロボット……大きさは、ざっと50m。」

苦虫を噛み潰したような笑みで雅緋はライダーに顔を向ける。

「驚いたなぁライダー、確かお前のロボット軍団は5m前後だったはずだぞ……行けるか?」
「戦術面では確かに困難だろう、だが、情報さえ揃えば、後は戦略で徹底的に叩きのめすだけだ。
戦略が、戦術に負けるはずは……無い、はずだ。」

その言葉に雅緋はハァと溜息を付き、話題を切り替える。

「ロボットに関しては……情報の整理が必要だな、ライダー。」
「後で偵察を頼む。それはNPCからでも、お前の部下からでも構わん。」

ファイルのページを捲り、部下の名簿、及びギアスを掛けた人間の身元が書かれたファイルに一旦互いに目を通す。
それを閉じた後、先程の討伐司令について話し合う。

「戦力は出来る限り蓄えておいた方が良い。何なら、学校にトラップを仕掛けると言う手もある。」
「だが、私の魔力はあまり多い方ではない。令呪が再び手に入る、というのは嬉しい話ではあるのだが……。」
「となれば、まずは下準備……魔力の問題だな。直に書物が届く、後はそれを調べ上げるだけだ。」

現在、図書館に人間を三人、向かわせている。
魔力関係における書物を持ってこさせるためだ。
やってきた後は取りに行くだけだ。その為にも、地雷の類たるトラップは周囲に設置していない。

「済まないな、やはり知識が我々には足らんか。」

雅緋もライダーも、互いに神秘の類に近づいた人間では有る。
が、このユグドラシルシティに浸透しているそれは、ギアスともコードとも、忍ともカグラとも、全くの別物だ。
聖杯に送られた一握りの知識では足りない、情報の整理が必要だ。

「それに、図書館は討伐主従が隠れ住む学府にも近いはずだ。
道の周りの情報も聞ければ良かったな。」

しかし、雅緋とライダーは知るだろうか。
先程まで図書館に、彼女の仲間がいたという事実を。


【B-8/歓楽街・病院/一日目 午前】

【雅緋@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]胴体にダメージ(中・回復中)、魔力残量7割
[令呪]残りニ画
[装備]病院着
[道具]妖刀、秘伝忍法書、財布
[所持金]そこそこ裕福(マフィアの運営資金を握っている)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝を狙う
1.傷の回復に専念する。動けるようになったら、再び戦場へ赴く
2.万一襲撃されてもいいように、部下からの報告には、慎重に耳を傾ける
3.聖杯にかける願いに対する迷い
4.討伐令は見送りたいが、令呪は必要だと思う
[備考]
※ランサー(=駆紋戒斗)の顔を見ていません
※黒咲隼がランサー(=駆紋戒斗)のマスターであることに気付いていません
※投薬により、肉体の回復速度が上がっています。
 そのかわり、無理に治癒能力を高めているため、反動で傷の痛みが強くなっています。

【ライダー(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]各種トラップの起動スイッチ、無線機
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:雅緋を助け、優勝へと導く
1.なるべく雅緋の傍に控え、身の安全を確保する
2.魔力確保の方法を探る
3.雅緋の迷いに対して懸念
[備考]
※ランサー(=駆紋戒斗)の顔を見ていません
※黒咲隼がランサー(=駆紋戒斗)のマスターであることに気付いていません


[全体の備考]
※歓楽街全域で、雅緋の息がかかった組織のマフィア達が、敵マスターの襲撃に備え見回りをしています。
 D-9にある雅緋のアジトには、雅緋本人はいませんが、外敵をごまかすために、周辺に多めの人員が配置されています。
 不審な人物がいた場合、それぞれが所有している無線機を通じて、すぐさまルルーシュへと情報が伝えられます。
※B-8の病院周辺に、ルルーシュが破壊工作スキルによって設置した、無数のトラップが仕掛けられています。
 罠にかかった場合、サーヴァントであっても、ダメージを負うことになります。
※行政地区にて敵マスターを捜索していた、マフィア達が撤収しました
※NPC三名に、魔力関連の書物を持ってこさせています。
それぞれ別のルートを通らせて病院に向かわせています。
途中で殺されそうになりそうな可能性は頗る高いですが、なるべく動くべき。
ギアスに操られた一般人か雅緋の部下かは、後述の書き手にお任せします。


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