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膠着期間 ◆nig7QPL25k


 無法者という連中は、元来日陰を好んで生きる。
 腕っ節に秀でていても、国家権力と喧嘩をすれば、不利になるのは目に見えているからだ。
 世界を裏から操った気でいる、支配者気取りのフィクサーも、正面きって戦えば、勝ち目は見えてこないという、臆病な打算の産物でしかない。
 特に魔術を持つ者と持たざる者の、力差が大きく際立つユグドラシルでは、その傾向はより顕著であった。

「何だ。ジロジロ見やがって」

 その、はずだった。

「すっ、すみません!」

 低い声で凄まれた女性が、悲鳴混じりの声を上げる。
 そそくさと立ち去る背中を見ながら、スキンヘッドの厳つい男は、不機嫌そうに唾を吐き捨てた。

《やはり、あの後ではこうもなるか》

 偵察から戻ってきたランサー・戒斗が、やれやれといった様子の念話を寄越す。
 マスターからの返事は、ない。歓楽街の町並みで、人波に紛れる黒咲隼は、その様子をじっくりと見つめていた。
 先の無法者の習性からすると、午前10時のこの町の様子は、明らかに異常だと言ってよかった。
 日の当たっているはずの往来に、見知った顔がちらほらと見える。
 それも両目をぎらつかせながら、周囲の様子を伺っている。
 こんな時間から、マフィアの連中が、警戒を強めているというのは、異常だ。

《奴の居場所は分かったか》
《あの傷だ。今は病院に身を潜めているらしい》

 恐らくは追及を逃れるためだろう。アジトには姿はなかったと、戒斗は黒咲へと返す。
 暗黒街の女王・雅緋が、深手を負って引きこもった。
 それが末端中の末端である黒咲の耳にも、明け方の時点で届いてきた噂だ。
 今まさにこの歓楽街で、神経を張り巡らせている連中は、その雅緋を守ろうとしているのだ。
 混乱に乗じた何者かが、追い打ちをかけようとした時に、即座に取り押さえることができるように。

《こうなると俺達の正体は、未だ割れていないと見てよさそうだな》

 それも雅緋を襲った襲撃者が、よりにもよって身内の中で、息を潜めているも知らずに、だ。
 この一件について、黒咲は、特に追及を受けることはなかった。
 これだけの警戒態勢を敷きながら、それをしなかったということは、黒咲を容疑者と見なしてはいないということだ。戒斗はそう評していた。
 そうでなくても、さすがに下部組織の客人である彼に、雅緋の正確な潜伏先までは、伝わってはこなかったのだが。
 戒斗を偵察として放ち、雅緋の行方を探らせたのも、元はといえばそれが理由だ。

《それで、肝心の病院周りの様子は?》
《囮にしたアジトの方もそれなりだったが、そっちはそれ以上に厳重だ。人の数は少ないが、いくつもの罠が仕掛けられている》

 あるいはあの、ロボット乗りのサーヴァントが、破壊工作スキルでも持っていたのかもしれない、と戒斗が言った。

《それはお前でも突破できないのか?》
《サーヴァントの仕掛けた罠だったらな。元よりスキルというものは、サーヴァントに通用しなければ意味がない》

 通常、物理的な攻撃手段では、サーヴァントにダメージを与えられない。
 爆薬などのトラップでは、霊体である駆紋戒斗を、傷つけることは不可能だろう。
 しかし、それが物理現象を超えた、サーヴァントの神秘を宿していたなら、話は全く変わってくる。
 あの漆黒の巨神を操った、未だ顔も知らぬサーヴァントが、病院の罠を用意したというのなら、それは戒斗にすらも通じうるはずだ。

《鎧の宝具を纏えば、どうとでもなるはずだ》
《爆薬も馬鹿にしたものじゃない。俺はちっぽけな爆弾一つで、殺されかかったこともある》

 爆殺されかかった英霊というのは、それはそれでどうなんだ。
 伝説の英雄という表現に、旧時代的なイメージを持つ黒咲は、彼の発言に眉をひそめる。
 もっとも、機械的な戦極ドライバーで、異形の鎧を纏う戒斗に、それを言うのも野暮かもしれないが。

《……要するに、俺はまだ動くべきではないと》
《お前の正体が知られていない。このアドバンテージはそう簡単に、手放すべきではないとは思う》

 確かにこの厳戒態勢の下で、黒咲が行動を起こせば、即座に不穏分子であることはバレるだろう。
 それは避けるべき事態だ。いかに体術に優れていようと、この町のチンピラ全員を相手に、殴り勝てるとまでは思っていない。
 敵サーヴァントの反撃も予測される以上、戒斗が彼の身を守るにも、限度というものはあるはずだ。

《昨日の連中が動くのなら、その尻馬に乗るくらいでいいはずだ。もっとも、待ち続けるのにも限度はあるがな》
《俺を嗤っておきながら、お前も大概小狡い奴だな》
《俺がやられてみたとして、腹を立てるであろう行動を、逆算して取っているだけだ。
 お前の方こそ、手段を選ばないと言うのなら、俺を怒らせるくらいのことはしてみせろ》

 手ぬるいと言われて良い気はしない。
 ふん、と鼻を鳴らしながら、黒咲は戒斗の言を流し、不機嫌そうに会話を打ち切る。
 しかし戒斗の言はもっともだ。
 夕べ協力を申し出てきた、エクストラクラスのサーヴァント――あの男をダシに使った方が、楽に立ち回れるのは間違いない。
 マスターの頼りない顔つきを考えると、本当に出てくるかどうかは、微妙ではあったが。

(あれほどの力を持っておきながら……)

 何を怖じけることがある――と、黒咲は眉根をしかめて思う。
 遠目に見た程度ではあったが、キーパーのマスターと雅緋の戦いは、まさに壮絶の一言に尽きた。
 一介の決闘者に過ぎない黒咲では、到底持ち得ない超能力を操り、彼女らは激戦を繰り広げていた。
 あれはマスター同士ではなく、サーヴァントの戦いではないかと思ったほどだ。
 それだけの力を行使していながら、白銀のサーヴァントを操る女には、鉄の意志も鋼の強さも、まるで感じられなかった。
 記憶に残るキーパーのマスターは、見ていて腹が立つほどに、弱気な顔つきをしていたのだ。
 あんな力があったならば、自分ならもっと堂々と、胸を張って戦っていたというのに。
 見る者を湧かせ笑顔を生み出す、デュエルモンスターズという娯楽を、戦いで穢すこともなかったというのに。
 そんな奴の手を借りなければ、ろくに立ち回れないという事実が、黒咲には酷く不愉快だった。



【C-9/歓楽街/一日目 午前】

【黒咲隼@遊戯王ARC-Ⅴ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]カードデッキ、デュエルディスク
[所持金]やや貧乏
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.雅緋を倒すための方法を探る
2.キーパー(=エデン)達が歓楽街に来るようなら、それを利用し雅緋を倒す。ただしあまりアテにはしていない
3.キーパー(=エデン)達とは相互不可侵。積極的に助けに行くつもりはない
4.キーパーのマスター(=マリア)に対する軽蔑の念
[備考]
※D-9にあるアパートに暮らしています
※キーパー(=エデン)組と相互不可侵の関係を結びました
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません
※雅緋が籠城していると思しき、B-8の病院周辺に、無数のトラップが仕掛けられていることを把握しました

【ランサー(駆紋戒斗)@仮面ライダー鎧武】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]戦極ドライバー、ゲネシスドライバー、ロックシード(バナナ、マンゴー、レモンエナジー)、トランプ
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する
1.雅緋を倒すための方法を探る
2.キーパー(=エデン)達が歓楽街に来るようなら、それを利用し雅緋を倒す
3.キーパー(=エデン)達とは相互不可侵。積極的に助けに行くつもりはない
[備考]
※キーパー(=エデン)組と相互不可侵の関係を結びました
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません
※雅緋が籠城していると思しき、B-8の病院周辺に、無数のトラップが仕掛けられていることを把握しました




「……っ」

 悩ましげな吐息が部屋に響く。
 艶っぽさすら孕んだそれは、しかし痛みから漏れた苦悶の声だ。
 歓楽街の片隅に位置する、こぢんまりとまとまった病院。
 そこが闇の女王・雅緋が、深く傷ついた体を横たえ、身を隠している潜伏先だった。
 ユグドラシルのほんの一角とはいえ、歓楽街の悪党全てを、手中に収めた女にしては、随分と情けない有様だ。

「肉体の自然治癒力を高め、傷を治す魔術師の薬だ」

 汗を浮かべた病院着姿を、ベッドに横たえる雅緋の横で、サーヴァント・ルルーシュが口を開く。

「だが、所詮は無理な回復に過ぎない。反動の痛みはしばらく続くぞ」
「痛みには耐えられる……我慢ならないことがあるなら、それは何も為せない無力だ」

 いつまでも寝てはいられない。
 故に痛みを伴うものでも、この身を立ち上がらせる術があるなら、迷うことなく受け入れよう。
 額に軽く手を当てながら、枕元のライダーへ雅緋は言う。

「しかし、よく手に入ったな」
「蛇の道は蛇とは言ったものでな。私が一言お願いしたら、快く譲り渡してくれたよ」

 恐らくは『我は世界を創る者(ぜったいじゅんしゅのギアス)』をかけた相手に、薬をよこすよう命じたのだろう。
 言葉の穏やかさとは裏腹に、ルルーシュの浮かべる笑みは、黒い。
 この病院の院長にも、彼は躊躇うことなく宝具を使った。今頃病院の入り口は、固く締め切られているはずだ。
 人の心を捻じ曲げて、己の手駒と変えることに、彼は何の抵抗も持たない。
 その振る舞いは、まさしく悪だ。蛇女子学園の長となる、雅緋が行き着くべき境地だ。
 自ら称した悪逆皇帝――その大仰な二つ名が、今は誇張でも何でもない、事実なのだと実感できる。

「思ったよりも、優しいな、お前は」

 だがそれでも、その悪心は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの全てではない。
 漆黒のフィルターを外した先には、隠されたもう一つの心がある。
 額の汗を拭いながら、笑みを浮かべて、雅緋が言う。

「妙なことを言うものだな。お前は我が悪徳の全てを、目鼻の先で見てきただろうに」
「確かにな……だが、その仮面が外れた姿も、お前は一度見せている」

 思い返すのは、彼がKMFを駆り、この病院を目指した時だ。
 常に余裕を漂わせた、芝居がかった気障な口調――その時のルルーシュからは、その振る舞いが抜け落ちていたのだ。
 馬鹿と毒づかれたりもしたが、身の安全を優先する言葉に、演技や飾りの気配はなかった。
 限りなく素に近い状態で、そうした言葉が出てきたからには、つまりそういうことなのだろう。

「……珍しいことではないだろう。マスターがあそこで命を落とせば、私もその場で敗退していた。それを避けようとするのは当然の理屈だ」

 珍しく、ルルーシュが視線を逸らす。
 やや憮然とした口ぶりからは、軽い不快感が透けて見えた。図星、と言わんばかりの声音だ。

「聖杯にかける願いもないのにか? 私を見捨てていたならば、むしろこんな面倒から、さっさと解放されていただろうに」
「………」

 願いを一度も口にせず、むしろ雅緋の願い事を、炊きつける真似までした男だ。
 そんな人間が、自由意志を奪われるサーヴァント化を、わざわざ受け入れてやる理由など、マスターの延命以外には存在しないだろう。
 雅緋の更なる追及を前に、遂にルルーシュは沈黙した。
 雄弁な悪逆皇帝が、舌戦で言葉を濁すなど、これまでのやり取りの中では前代未聞だ。

「まぁ……認めないのなら、そういうことにしておく」

 言いながら、雅緋は軽く身を捩らせ、視線を天井へと向けた。
 少しばかり傷に響く。いてて、と軽く呻きながら、視線をサーヴァントから逸らし仰向けになる。
 いけ好かない気障野郎だと思っていたが、案外根っこの部分では、面倒見のいい奴なのかもしれない。
 それが何故あんな風にして、偽悪的に振る舞っているのかは、雅緋の知るところではないが。

(人のことも言えない、か)

 己を振り返りながら、思う。
 悪とはすなわち必要悪だ。正義を定義する法に背いてでも、為さねばならない行いもある。
 それを背負うべき者がいるとするなら、それこそが自分達悪忍だ。
 なればこそ、悪を掲げる自分達は、情や正義にほだされることなく、冷酷に、それこそ悪辣に、忍務を遂行しなければならない。
 妖魔を討つためにある忍が、善と悪に分かれた理由は、そこにあるのだと雅緋は思っていた。
 己を枠に嵌めているのかもしれないと、そのように邪推するのであれば、それはルルーシュに限った話ではないのだ。

(だからといって)

 決められた役割を演じている。それは雅緋にも言えることだ。
 だがそれは、自分で歩むと決めた道だ。今更降りるつもりはない。あの抜忍の焔達とは違う。
 妖魔と戦う最高位の忍――カグラの高みへ至れれるのなら、何でもいいなどと言うつもりはないのだ。
 悪の誇りを舞い掲げる。その言葉に嘘偽りはない。
 一度は蛇女子学園の、頂点に登り詰めた女だ。筆頭の称号をその身に背負った、その責任は取るつもりでいる。
 仲間を妖魔から守れず、学園崩壊の危機にも、何もすることができなかった。その無責任の贖いは、戦いによって果たす気でいる。
 そのために雅緋は戦ってきた。蛇女を復興させるべく、大勢の忍学生達を、その手で打ち倒してきた。
 気高き女帝が背負うべきは、歩んできた王道に数多転る、屍で塗り固められたブラッド・クルスだ。

(だが、咎を背負った私一人が、幸せになる権利など……本当にあるのだろうか?)

 しかし、だとすれば。
 多くの命を犠牲にした手に、聖杯戦争の果てに待つ、幸福を掴み取る資格はあるのか。
 死者の血肉を啜った己が、その死者を蘇らせるというズルを、犯す資格はあるのだろうか。
 そんなことで悩んでいるから、人のことを言えないなどと、自嘲したりする羽目になる――それは分かっている、つもりではあった。



【B-8/歓楽街・病院/一日目 午前】

【雅緋@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]胴体にダメージ(中・回復中)、魔力残量7割
[令呪]残りニ画
[装備]病院着
[道具]妖刀、秘伝忍法書、財布
[所持金]そこそこ裕福(マフィアの運営資金を握っている)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝を狙う
1.傷の回復に専念する。動けるようになったら、再び戦場へ赴く
2.万一襲撃されてもいいように、部下からの報告には、慎重に耳を傾ける
2.聖杯にかける願いに対する迷い
[備考]
※ランサー(=駆紋戒斗)の顔を見ていません
※黒咲隼がランサー(=駆紋戒斗)のマスターであることに気付いていません
※投薬により、肉体の回復速度が上がっています。
 そのかわり、無理に治癒能力を高めているため、反動で傷の痛みが強くなっています。

【ライダー(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)@コードギアス 反逆のルルーシュR2 】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]各種トラップの起動スイッチ、無線機
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:雅緋を助け、優勝へと導く
1.なるべく雅緋の傍に控え、身の安全を確保する
2.魔力確保の方法を探る
3.雅緋の迷いに対して懸念
[備考]
※ランサー(=駆紋戒斗)の顔を見ていません
※黒咲隼がランサー(=駆紋戒斗)のマスターであることに気付いていません


[全体の備考]
※歓楽街全域で、雅緋の息がかかった組織のマフィア達が、敵マスターの襲撃に備え見回りをしています。
 D-9にある雅緋のアジトには、雅緋本人はいませんが、外敵をごまかすために、周辺に多めの人員が配置されています。
 不審な人物がいた場合、それぞれが所有している無線機を通じて、すぐさまルルーシュへと情報が伝えられます。
※B-8の病院周辺に、ルルーシュが破壊工作スキルによって設置した、無数のトラップが仕掛けられています。
 罠にかかった場合、サーヴァントであっても、ダメージを負うことになります。
※行政地区にて敵マスターを捜索していた、マフィア達が撤収しました



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