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百機夜行 ◆nig7QPL25k


 彼女がそこで目撃したのは、二人分の強者だった。
 片や、60代の男。片や、20代の女。
 罪歌の洗礼を受けた『子』は、魔術都市の役所の一つで、それらの気配を察知していた。

 興味を惹かれたのはうち片方だ。
 なにしろ男の方の立場は、軍隊の司令官である。
 もちろん程度の差こそあれど、強者であるのは当然のことだ。
 それだけでは優先するだけの理由にはならない。故にその『子』は男ではなく、女の方を優先した。

 女の方は、同じ役所に勤務している、ただの公務員であるはずだった。
 しかし彼女の放つ気配は、その程度の人間が持っているにしては、あまりにも不自然なものだった。
 魔力にも似た、捉えどころのないオーラ。訓練された者の身のこなし。
 一度に接触できるのは片方だけだ。なればこそ彼女は、そちらの方を優先し、ターゲットとして報告した。

 そして聖杯戦争の開幕と同時に、女の家に向かってみれば、その近所で起きたのが大規模な火災だ。
 このあたりで戦闘が起きている。であれば、もはや確定だ。
 彼女は周辺の人間に、怪しい人影を見なかったかと聞き込みを行い、その行き先へと目星をつけた。
 向かったのは西方。この辺りは警備の目も光っている。遠くまで移動することはできないだろう。
 彼女は近くにいるであろうターゲットを目指し、即座に行動を開始した。
 同じ職場で働く年下の女――マリア・カデンツァヴナ・イヴを求めて。


 雅緋の目的地は行政地区だ。
 そう戒斗から告げられた黒咲は、バイクのエンジンを始動させ、すぐさま移動を開始した。
 両サイドに荷物を括りつけ、後ろには戒斗を乗せるという、半ば無理のある態勢で、ではあったが。

「乗り物くらい持っていないのか! 英霊のくせに!」

 窮屈さに苛立ちながら、黒咲が言う。

「ライダーのクラスとして呼ばれていればな。もっともその場合は、お前の言う本当の姿を、見せてやることはできなかったろうが」

 当て付けのように言う戒斗に対して、黒咲はヘルメットの下で眉をひそめた。
 サーヴァントのクラス適性とは、何も一つきりではない。
 戒斗にはランサーのクラスの他に、ライダークラスの適性もある。
 その場合、彼の変身した姿である、アーマードライダーなる存在の特徴が強調され、使用できるアイテムが増えるのだそうだ。
 もっとも、純粋な戦闘歩兵としてのスペックは、三騎士クラスの方が上回っている。
 彼がその真の姿である、真紅の魔神へと変身するには、ランサーか、あるいはセイバーとして、召喚されていなければならないのだった。
 戒斗が剣を使うなど、黒咲にとっては初耳であったが。

「……それで、行政地区のどこに行くかまでは、お前は聞いていないんだな?」
「向こうも正確な位置は把握していないらしい。現場に着いてから、捜索すると言っていた」

 戒斗が立ち聞きした情報を確認する。
 雅緋が行動を起こしたのは、やはり他のサーヴァントの存在を感知し、討伐に動いたからだったのだそうだ。
 とはいえ、向こうも存在を知っただけで、正確な位置までは把握していなかったらしい。
 故に何人か人手を集め、人海戦術にて捜索し、これを撃破するという作戦を取った。戒斗が確認したのはそこまでだ。

「マフィアが警察の縄張りで家探しか」

 妙なことになったものだと、黒咲が言う。
 行政地区は、政庁や特級住宅街に次いで、警備の目が厳しいエリアだ。
 そんな所で事を起こすような、馬鹿が現れでもしない限り、黒咲にも、そして雅緋にとっても、縁遠いはずの場所だった。
 もっとも、無法者が裏で官僚と繋がっているというのは、フィクションではよくある話ではあったが。

「そのこともある。目立つ行動は避けるのが無難だろうな」
「どうせ俺達が動かずとも、事が起これば、向こうから花火を上げてくれる」

 それを目印にすると黒咲が言い、バイクを更に加速させた。


 報告にあったのは、この辺りで戦火を広げた、戦闘者がいたということだけだ。
 それが男であるのか女であるのか、そのことすらも雅緋は知らない。
 その上追われる身であろう標的は、身を隠しているに違いないのだ。
 大変な捜索になるであろうことは、彼女自身、理解はしていた。

《たとえば、逃げ延びた方の人間が、寝込みを襲われたのだと仮定する》

 その助けとなったのが、ライダーのサーヴァント・ルルーシュだ。
 生意気な態度は気になったが、彼は戦略家としては、一流の才を持つ知恵者だった。

《家に戻れば警察によって、質問責めに遭うだろう。かといってろくに荷物も持てない状態で、ここを離れるわけにもいかない》
《サバイバルゲームではないからな。町中で食べ物を確保するには、金を払うことが必須条件だ》
《あるいは、衣類の問題もある。マスターも、着の身着のままで、外をうろつきたくはないだろう?》

 そういう聞き方をするか、普通。
 デリカシーのない言葉に、一瞬むっとしたものの、その気持ちはぐっと飲み込んで堪える。

《まぁ……そうだな》
《ならば、しばらくはどこかに身を隠して、サーヴァントに荷物を取りに行かせ、それから行動を起こす。そう考えるべきだろう》

 今まさにそうしているルルーシュのように、サーヴァントには霊体化能力がある。
 ガサ入れでもされていない限り、周囲から身を隠して家に忍び込み、財布や服を持ち出すくらいは、造作もないだろう。
 故にしばらくは動かないはずだと、そう推理するルルーシュの論は、説得力があるように思えた。

《ではそいつが襲われた方ではなく、襲った方の人間だったら?》
《お手上げだな。躊躇なくこの場を離れようとするだろう。そうなれば現状の手がかりだけでは、ターゲットを見つける術はない》

 恐らくは肩を竦めているのだろう。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとはそういう男だ。
 それは霊体化した状態であっても、容易く想像することができた。

《どちらにせよ、通行人や警察には構うな。私の読み通りであるのなら、敵は必ず身を隠している》

 もしまだこの行政地区に、ターゲットが潜んでいるのなら、いちいち令呪を確かめることはない。
 そこまで豪胆に動ける余裕は、今の奴にはないはずだ。
 雅緋はその言葉に従い、敵マスターの捜索に向かった。


 知らず渦中の人物となった、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。
 下着以外の着替えを済ませ、一応の防寒準備を整えた彼女は、未だ橋の下にいた。
 近くに、エデンの気配はない。衣服を着替えることができたのも、彼が通帳を取りに行くため、この場を離れたからだった。

(これからどうしようかしら)

 夜が明ければ、状況も落ち着いて、また出歩けるようになるだろう。
 しかし、それからどうするか。寝泊まりはどこでするべきか。
 そもそもそれ以前に、この体たらくで、生き残ることができるのか。

(キーパーのことは信じたい)

 あくまで戦いの主役はサーヴァントだ。マスターとは司令塔であり、必ずしも戦闘者でなければいけないというわけではない。
 だからもしもエデンが、一人で戦い続けることができたなら、それで問題はないのだろう。

(けれど……)

 それでも、自分は見てしまった。
 大勢の使い魔に翻弄される、エデンの姿を目の当たりにしてしまった。
 サーヴァント並の使い魔を、複数召喚できる敵がいる。さすがに例外的な存在ではあろうが、そういう敵もいることはいるのだ。
 もしもう一度まみえることがあれば、その時には傍観してなどいられない。
 あれを打倒するためには、サーヴァントとマスターの連携が、必要不可欠になってくる。
 それができるのか。
 身に余る力に振り回され、撃槍を御しきれずにいる自分に、彼と並び立つ資格があるのか。

「――ああ、いたいたッ!」

 その時だ。
 不意に橋の上の方から、大きな声をかけられたのは。
 思わず、びくりと身構える。追手が来たのかもしれない。どうしてもそう思ってしまう。
 しかしそこに立っていたのは、予想に反して、見知った顔だった。

「あ……友里、さん」
「心配してたのよ、マリア? 家の近くで家事があったって聞いたし、電話にも出なかったんだから」

 橋の近くに立っていたのは、友里という名前の歳上の女性だ。
 マリアと同じ役所に勤めていて、年齢的には、先輩に当たる。
 どうやらマリアの身を案じて、探しに来てくれたらしい。

「……それでどうして、こんな所で隠れていたの?」
「ええと、これは……色々と事情があって」

 まさか、敵から身を隠しているなどとは言えまい。
 上手い言い訳が見つからず、マリアはしばし、言葉に迷う。

「とにかく、ここじゃ何だし、ちょっと場所を変えましょうか」
「そう……ですね」

 友里の提案に従い、マリアはその場から立ち上がる。
 橋の陰から顔を出しながら、エデンに対して、合流地点を変えようと、念話を飛ばそうとした、その瞬間だ。

「――止まれ、マスター!」

 声が聞こえた。頭上から注いだ。
 マリアが足を止めると同時に、びゅんと風を切る音が鳴る。
 何かが飛来したかと思えば、友里の体が崩れ落ち、足場に隠れて見えなくなる。

「きゃッ! ちょっ、何を……ッ!?」

 戻ってきたエデンが、彼女を組み伏せたのだと理解したのは、その声を耳にした時だった。

「なっ……何をしているの、キーパーッ!? その人は私を心配して――」
「助けに来た人間が、何故こんなものを持ち歩いている?」

 近くにあった階段を使い、駆け上がるマリアが見たものは、何かを握ったエデンの右手だ。

「それは……ッ!」
「袖口に隠すようにして握っていた。もっとも、こんなもので、何ができるのかは知らないがな」

 カッターナイフ。
 人に向ければ、十分に凶器となる代物だ。
 それを友里が隠し持っていた。明らかにマリアを刺すつもりで、その凶刃を潜ませていたのだ。
 思わぬ裏切りに対して、マリアは驚愕に目を見開く。

「く……ッ! このっ、放しなさ……ッ!」
「ッ!」
「ぎゃあああああッ!?」

 瞬間、稲妻が弾けた。
 取り押さえられた友里の体を、眩い電撃が駆け巡り、焼いた。
 断末魔の悲鳴を上げた後、黒く煤けた女の顔は、力なくぺたりと石畳に貼りつく。

「殺したの……人を……?」
「……これはマスターではない。聖杯によって用意された、ただのNPCに過ぎない」

 サーヴァントを連れているのなら、こんな呆気無い幕切れはあり得ないはずだ。
 実際、見えている部分の素肌には、令呪など影も形もなかった。

「この街では、人を操る礼装の使い手が、手下を増やし続けているという」

 そういう噂を聞いたからこそ、その可能性を考慮できた。
 なればこそ、躊躇なく殺害したのだと、エデンはマリアに対して言った。

「……そう」

 それでも、マリアの顔は暗い。
 元来争いを好まず、人の死を悼む感性の持ち主だ。
 たとえ人間ですらない擬似人格だろうと、人の姿をしたものが、惨たらしく殺される姿を見て、いい気分ではいられない。
 だからこそ彼女は、フィーネを演じることに対して、迷いを抱き続けてきたのだ。
 それがこの場に訪れて、フィーネを演じることがなくなっても、同じようなことを繰り返している。
 そのことはマリアの繊細な心に、いくらか暗い影を落としていた。

「とにかく、場所を変えよう。今の声を聞きつけて、誰かに――」
『――それは今一歩遅かったな』
「ッ!?」

 エデンが移動を促した、その時。
 割って入る声があり、直後に爆音と光が轟く。
 振り返る方向に光を伴い、突如現れたその姿は、マリアの想像を超えたものだった。

「飛行機ッ!?」

 小さめの機体だが、飛行機だ。
 四枚の翼を左右に広げ、低空飛行する黒い飛行機が、そこに姿を現していたのだ。
 現代的どころか近未来的だ。その光沢を放つフォルムは、明らかに魔術都市には似つかわしくない。

「ライダークラスか……!」
『ご名算だ。もう少しかかると思っていたが、そちらから姿を見せてくれたのは、僥倖だったぞ』

 自信満々な声色は、機体のスピーカーから響いているのか。
 騎兵のサーヴァントであると認識し、敵意を滲ませるエデンに対し、若い男の声が笑う。

「マスター、シンフォギアを! 盾としてなら使えるはずだ!」
「わ、分かったわッ!」

 宝具を纏うエデンに呼応し、自らも聖詠を唱える。
 神世の調べが紡ぐのは、奇跡の糸が織り成す鎧だ。
 白く輝く『巨人星座の青銅聖衣(オリオンクロス)』と、黒くはためくシンフォギア。
 遠き神話に由来する、黒白の鎧が並び立ち、黒鉄の飛行兵器を睨み据えた。

『これはまた。神話のというより、テレビ番組のヒーローのようだな』
「言い過ぎだ、ライダー。それは私にとっても侮辱になるぞ」

 くつくつと笑うライダーを、諌める声が聞こえてくる。
 機体の影から現れたのは、マリアと同い年くらいの、白い装束の女性だった。
 それもシンフォギアや聖衣と同じく、特殊な戦闘装束なのだろうか。
 漆黒の剣を光らせて、マントと腰布をはためかせる姿は、明らかに普通の洋服ではない。
 古の武人が纏っていたような、剛健な印象を与える衣服だ。
 大きく開き露出した、大きな両胸の谷間には、真紅のエンブレムが刻まれている。
 間違いない。マスターだ。今度は正真正銘の。

「主人同伴でやって来るとは、随分な自信だ……なっ!」

 言いながら、エデンが雷球を投げる。
 ごうっと音を立て加速するのは、トニトルイ・サルターレと呼ばれる飛び道具だ。
 直撃コース一直線。微動だにしないマスターには、それを止める手段などない。

「何っ!?」

 その、はずだった。
 突如奔った赤い光が、雷を四散させるまでは。
 ばちっ、と弾ける音と共に、光は粉々に弾け飛ぶ。
 その向こうに出現したものは、半透明に光る壁だ。
 エネルギー障壁。分かりやすく言えば、バリアか。
 それがマスターを連れ現れた、ライダーの自信の正体だった。
 たとえ弱点を晒そうとも、それを容易には攻めさせない用意が、彼の乗り物には存在したのだ。
 恐らくは騎兵のサーヴァントの、宝具であろう飛行兵器には。

『そう、自信だ。だがこれは決して慢心ではない。正しく分相応の自信だよ』
「貴様……」
『ああ、前置きが長かったな。ならばそろそろ始めるとしようか』

 睨むエデンの殺気を流し、どこ吹く風でライダーは言う。
 そしてその開戦の一言が、浮遊する漆黒の飛行機に、新たな変化をもたらした。
 機体が捻れる。各部が蠢く。不可思議な挙動を繰り返しながら、飛行物体のシルエットが変貌していく。
 伸びたのは足か。開いたのは手か。
 ぬうっと姿を現したのは、まさか頭部のつもりなのか。

「これは……ッ!?」

 様変わりしたその姿は、翼持つ暗黒の巨人だった。
 ライダーのサーヴァントの宝具は、飛行機などではなかったのだ。
 身の丈5メートルはあろうかという、巨大な人型ロボット兵器――それこそが襲撃者の正体だった。


「人の趣味を笑えないな」

 威容を見上げ、エデンが言う。
 飛行機だろうとロボットだろうと、所詮は同じ機動兵器。サイズにもそれほど変化はない。
 しかし縦に大きく見上げる、その人型の気配の何としたこと。
 古来より、人は巨人というものに対して、格別の畏怖を抱いたという。
 各地の遺跡や神殿に、巨大な神像が祀られているのは、この視覚効果によるものか。

『見てくれだけではないぞ』

 ふふんと軽く笑いながら、黒き巨神の操り手は、エデンの声にそう応える。
 見下ろす顔面に光るのは四つ目。そして異様に大きなレンズだ。
 その窓を覗き込むうちに、自身が吸い込まれていくような。異形の五つ目で形成された、不気味な面構えだった。
 この風貌で神だというなら、ライダーが操るその姿は、悪魔か邪神の映し身か。

『せっかく披露したのだからな……力の方も味わってもらおう!』

 瞬間、ロボットの両腕が動いた。
 突き出された手のひらの、袖下あたりに備わったのは、弾丸を放つ銃口だろうか。
 であれば来る。射撃武器だ。

「フッ……!」

 反射的に飛び退った。視界の中で光が爆ぜた。
 バリアを張れるならビームもありか。禍々しい気配と共に放たれたのは、渦を巻くエネルギーの弾丸だ。
 着地し見上げたその先では、既にライダーの巨神像は、より空高くへと上昇している。
 戦闘スタイルは聖闘士の真逆――バリアを張りつつ飛び道具を放って、遠距離から一方的に制圧する魂胆だろう。

「はぁっ!」

 だが、そうはいかない。
 思い通りになどさせるものか。
 手近な建物に飛びつくと、その壁を蹴って跳躍し、夜の暗黒へと躍り出る。
 虚空の彼方のターゲットへと、見舞うのは銀の左腕だ。
 命中。されど、弾けるは閃光。
 先ほども見たバリアによって、鉄拳は容易く防がれてしまう。

『仮にも絶対守護領域! 侮ってもらっては困るな!』

 大仰な盾の名を謳い上げ、誇らしげにライダーが言った。
 赤熱の向こうで銃口が光る。先ほどのエネルギー兵器か。この距離で狙い撃つつもりか。

「チッ!」

 舌打ちと共にバリアを蹴って、エデンはその場を離脱する。
 どんっとエネルギー弾が放たれた。迫り来る灼熱の凶弾は、両手でサルターレを投げ撃ち落とした。
 着地すると同時に、頭上を仰いだ。その時エデンが目にしたものは、何とも奇妙な光景だった。

(何だ……?)

 巨神の胸が、開いている。
 胸部のハッチが開放されて、内部メカが露出している。
 内臓は生身であっても機械であっても、急所と呼べる部位であるはずだ。
 ましてや人の乗る乗り物であるなら、そんなところを攻撃されれば、コックピットにダメージが及びかねない。
 そんな弱点を晒す行動に、一体何の意味があるというのだ。

『そしてこれこそ、対をなす矛』

 瞬間、放たれるものがある。
 月光を複雑に反射し、光を放つ結晶体だ。
 ここに来て実弾兵器か? そもそもあれは弾丸なのか? 宝石を巨大化させたような、あんな珍妙な物体が?
 不可解としか言いようのない光景に、エデンの思考は回転する。

『その光の切っ先――受けるがいい!』

 刹那、ロボットの胸部が光った。
 その瞬間、思考を直感が凌駕し、脳内にアラートが響き渡った。
 何かが来る。これまでの攻撃とは一線を画する、恐らくは危険極まりない一手が。
 理屈は未だ分からないが、何か恐るべき攻撃が、あそこから放たれようとしている。

「マスター! 盾をッ!」
「えッ――」

 言いながら、エデンは駆け出した。
 マスターであるマリアを守るため、方向転換し疾駆した。
 雷の小宇宙を解き放つ。周囲にエネルギーを巡らせ、バリアの要領で壁を作る。
 間に合え。あれが放たれる前に。恐ろしいことが起こる前に。

「がぁああっ!?」
「きゃぁあああッ!」

 瞬間、痛烈な衝撃が襲った。
 貫通と灼熱は、一箇所ではない。
 視界が光に覆われて、眩く包まれたと思った瞬間、無数の攻撃をほぼ同時に受けた。
 まばたきすら追いつかない間に、数十数百の閃光の矛が、エデンの体を貫いたのだ。

「ぐ……」

 さしもの聖闘士も、ただでは済まない。焼け焦げた体を震わせて、がくりと力なく膝をつく。

『ハハハハ! 悪くない色になったじゃないか』

 煤けた青銅聖衣を見下ろしながら、黒き邪神像は愉悦に笑う。
 超然と天に浮かぶその姿は、エデンが生前対峙してきた、神々の姿そのものだ。
 違いはあくまで姿を真似ただけで、そこに彼らの神性は、欠片も宿っていないということか。
 実物を知るエデンにとっては、大きすぎる違いだが、それでもなお、脅威であることに変わりはなかった。

(マスターは……)
「う……ッ」

 痛む体を起こしながら、エデンはマリアの方を見やる。
 なんとか、彼女は生き延びていた。漆黒のマントで全身を覆い、いくらかダメージを負いながらも、一命だけはとりとめていた。

『壊すには忍びなくなったが、これも勝負。チェックは打たせてもらうぞ』

 更なるライダーの追撃が迫る。
 地を砕く巨大なアンカーが、膝から放たれ襲いかかる。

(恐るべき技だ)

 これでも防衛態勢スキルの補正によって、防御力は上がっているのだ。どうにか動ける余力はある。
 それを身を捩りかわしながら、エデンは敵の技を見定めた。
 先ほど放たれた武器は、恐らくはレーザー兵器の類だろう。
 原理は不明だが、例の結晶体に放つことで、その光を乱反射して、無数に拡散させたものだ。
 その反射角度を巧みに操り、軌道を誘導することによって、オールレンジに近い攻撃を実現している。
 亜光速の攻撃が、全方向から迫って敵を包囲し、逃げ場を塞いで焼き尽くすのだ。

(近い技を知っている)

 雷撃を纏った鉄拳で、射撃を叩き落としながら、思考する。
 獅子座の黄金聖闘士の技には、光速拳を奥義の域まで高めた、ライトニングプラズマというのものがあるのだそうだ。
 師であるミケーネは、柄に合わなかったのか、ついぞ使うことはなかった。それもありエデンはその技を、直接身に受けたことはない。
 だが知識のみで推測するなら、奴の武器は、それと同じものを、再現し実践するものなのだろう。

(それでも、所詮はカラクリ細工)

 だとしても、そこには決定的な違いがある。
 歴代の黄金聖闘士達は、この現象を引き起こすために、手品のタネなど要さなかった。
 小細工で支えられた技など、タネが割れれば崩すのは容易い。

『さらばだ!』

 再び例の攻撃が来る。
 放たれたレンズ代わりの結晶体が、エデンの頭上へと向かう。

「キーパー……?」

 未だ膝をついたままの、マリアの元へと敢えて戻った。
 攻撃を誘い込む、というのとは違う。策を実行するためには、マリアには近くにいてもらわねばならない。
 あの技の生命線は結晶体だ。壊してしまうのが理想だが、強度は未だ計り知れない。
 それでも。
 だとしても。
 たとえ壊すことができずとも、この技を打ち破ることができる、最も確実な方法は他にある――!

「トワノ……トルナードッ!!」

 雄叫びと共に、荒れるのは嵐だ。
 稲妻を響かせて乱れ狂う、雷撃色の竜巻だ。
 ばたばたと聖衣の装束が揺れる。ガングニールのマントがはためく。
 エデンが持つ奥義の一つ、トワノ・トルナード。
 雷撃を纏う竜巻を生じ、敵に向かってぶつける技だ。

「これは……ッ!」

 台風の目の只中で、マリアは両目を見開いた。
 自らの周囲で轟然と、渦を巻く突風を見定めた。
 そして頭上で風に煽られ、傾く結晶体の姿を。

『ほう……?』

 ライダーがそう呟いた時には、既に全てが遅すぎた。
 放たれたレーザーはまっすぐに、偏光レンズへと命中する。
 風に煽られ揺れたことで、入射角も反射角も変化し、照準が破綻した結晶体にだ。
 そうなれば全てがご破産だ。光線は見当違いな角度で曲がり、文字通り無茶苦茶な軌跡を描いて、あちらこちらへと撒き散らされる。
 建物が射抜かれた。石畳が焼けた。泉の水が少し沸いた。
 だがそれだけだ。狙いを狂わされたレーザーは、肝心なエデンとマリアには、一発も命中しなかったのだ。

「お前の放った結晶体が、僕に壊せるものなのかは、分からなかった」

 遂に結晶に亀裂が走り、やがて粉々に砕け散る。
 兵器ではなく月明を受けて、きらきらと光る欠片達が、烈風に溶けて消えていく。

「それでも、僕にはこの技があった。トワノ・トルナードが巻き起こす嵐は、その風圧で結晶を揺さぶり、お前の狙いを狂わせる」

 嵐はやがて凪へと変わる。
 風の止んだ只中で、エデンが静かに言葉を紡ぐ。
 凄惨な破壊の傷跡は、全て周囲に残されていた。
 対してエデンの立つ足場は、至って綺麗なものだった。

「そして今、破壊可能であることも証明された。お前の切り札は、決して僕に届くことはない!」

 一度正体を見切った技は、聖闘士には決して通用しない。
 邪神の放つ光の雨が、オリオン星座のエデンを射抜く未来は、決して訪れることはない。
 漆黒の機体が放つ光が、アルテミスの矢となることは、ない。

「どうする、ライダー? 相性の悪そうな相手だぞ」

 機体の肩に立つ、敵マスターが言った。
 未だ余裕だとでも言いたいのか。この光景を見せられてもなお、その表情に変化はない。

『……そうだな。方針を変えるべきか』

 言うと、ライダーの乗機が、再びその姿を変えた。
 元の飛行機の形態へ戻り、そのまま後方へと下がりだす。
 撤退する気か。だがそうはいかない。この状況で退かれれば、今後に大きな障害を残す。
 追われる立場のマスターを、これ以上ややこしい状況に置くことはできない。

「キーパーッ!?」
「マスターはそのまま! どこかに身を隠していてくれ!」

 番人らしからぬ選択だが、ここは攻めに出るべきだ。
 マリアをその場へと残すと、エデンは石畳を蹴って、逃げる機影を追いかけ始めた。
 大きいとはいえ、5メートルクラスだ。小柄なライダーの機体は、建物の間を巧みに縫って、エデンの追跡を振り切らんとする。
 だが、それでも小回りならば、生身の方が利くのは間違いない。この程度の追いかけっこでは、まだまだ見失うには至らない。

『粘るな!』
「抜かせ!」

 手のひらより雷撃を放つ。しかしそれは阻まれる。
 レーザーは攻略したとはいえ、敵の絶対守護領域とやらは、未だ健在というわけだ。
 赤い障壁のその向こうで、飛行機は再び邪神へと化ける。
 神像の姿を取った敵機は、身を捻りエデンの方へ向き直ると、再び胸部のハッチを開いた。

「っ……!」

 瞬間、迸ったのは光だ。反射的に小宇宙をもって、迫る熱量を迎え撃つ。
 結晶体を介したものではない。本来拡散すべきレーザーを、そのままの状態で直射したのだ。
 一点に集中した威力は、先ほど以上の突破力と、眩い光をもって襲いかかる。

「……ぇえええいっ!」

 負けてなるものか。あと一歩の距離まで追い詰めているのだ。
 雷の小宇宙を練り上げた。
 極限のせめぎ合いに追い込まれ、セブンセンシズに達した小宇宙が、文字通りのビッグバンとなって弾けた。
 爆裂する轟音と閃光は、一瞬エデンの五感全てを、眩い白で埋め尽くす。
 純白の闇はやがて晴れた。宙に浮いていたエデンは、勢いを失って着地した。

「何っ!?」

 しかし、この光景はなんとしたことだ。
 いるはずのものが、そこにいない。
 あの禍々しい巨神の姿が、その身に乗っていたマスターの姿が、どこにも見当たらなかったのだ。

「まさか……!」

 方針の転換とはこのことか。
 要するに自分は嵌められたのだ。派手な囮に気を引かれ、まんまと誘い出されてしまったのだ。
 宝具を解除したサーヴァントの姿は、周囲のどこにも見当たらない。
 それはマスターも同様だ。先ほどの閃光が弾けた隙に、この場から離れてしまっている。
 マスターとサーヴァントを引き離し、目眩ましによって身を隠し、自身は別の場所へ移動。
 そうなればこの次の行動は、もはや一つしか考えられない。

(マスターが危険だ!)

 エデンがいなくなったあの場所には、襲撃に晒されるマリアを守る者は、もはや一人もいないのだから。
 思考し、元来た道を振り返る。守護の任務に戻らなければと、己が足を走らせんとす。

「っ!?」

 瞬間、それを遮ったのは、鼓膜を破らんほどの爆音だった。
 モーター音か。自動車? 違う。あまりに迫力が違いすぎる。

「何だ、これは……!?」

 果たしてビルの陰から現れたのは、またしても巨大なロボットだった。
 しかしそれは先程のような、漆黒の邪神像ではない。
 紫色をベースに塗られた、より無骨な印象を与える機体だ。足元の車輪で走るそれは、どうやら飛ぶことすらできないらしい。
 神々の映し身というよりは、オズのブリキ人形と呼ぶ方が近い。見るからに大量生産品と分かる、無様とすら呼べる姿だった。
 そうだ。大量生産品だ。
 何せ紫色のロボット兵器は――一度に三体も現れたのだから。


 戦況は一体どうなった。
 マリア・カデンツァヴナ・イヴは、耳をすませながら思考する。
 万一の事態を想定して、シンフォギアは解除せずにいた。恐らくはエデンも、そうすることを望んでいただろう。

(今はまだ、動かない方がいい)

 ここで出しゃばるのは得策ではない。
 気持ちの整理のつかない今では、エデンにとって、邪魔にしかならない。
 迷いが刃を鈍らせることを、武装組織フィーネの首魁は、誰よりも強く理解している。
 そしてそんなことに対してばかり、理解の深くなった自分に、またしても嫌気がさしたのだった。

《――マスター、聞こえるか!?》

 その時、不意に声が響く。
 遠く離れたサーヴァントから、念話が脳内へと届く。

《キーパー? どうしたの?》
《すまない、嵌められた! 恐らくは今、マスターを狙って、そちらに敵が向かっている!》
《ええッ!?》

 それは最悪の通達だった。
 敵におびき出されたエデンは、敵の増援に囲まれ、完全に分断されたのだという。
 そして彼のいる場所には、ライダーのサーヴァントもマスターも、どちらも見当たらないというのだ。
 行き先は決まっている。この場所だ。戦場で孤立したマスターという、美味しすぎるこの状況を、敵が放置しておくわけがない。

《いいか、マスター! 今すぐ令――》

 令呪を使ってエデンを呼び、この場に強制転移させる。
 後から思い返せば、恐らく彼は、そのことを言いたかったのだろう。
 しかし、その言葉は届かなかった。状況を打開する一手を、マリアが耳にすることはなかった。

「――はぁあああっ!」

 それよりも早く、敵の声が、その場に割って入ったからだ。

「ッ!?」

 ほとんど条件反射だった。
 訓練された肉体は、素早く殺気に反応し、烈槍をそちらへ構えさせる。
 がきんと鋭い音を上げ、火花の明かりがマリアを照らした。
 槍と剣が激突し、鋭く散ったその火花は――黒く、禍々しく光っていた。

「よく受けたな」
「さっきの、サムライ……ッ!」

 黒々とした熱を放ち、炎上するサムライソードを握るのは、白髪と白装束のマスターだ。
 豊かな胸元に刻まれた、赤い三画の令呪が、これ見よがしに主張している。
 猛獣か猛禽を思わせる、鋭い金色の瞳が、黒炎を纏う刀の向こうで、真っ向からマリアを睨んでいた。

「それは適切な呼び名ではないな」

 言いながら、繰り出されたのは足だ。
 鍔迫り合いのその下から、がら空きのマリアの腹部めがけて、痛烈なローキックが叩きこまれた。

「う……ッ!」

 どんっと襲う衝撃と共に、神話の装束が吹っ飛ばされる。
 襲撃者が使う得物は和刀だ。しかし、彼女は侍ではなかった。
 仮に侍であったなら、あれほど巧みに身を隠し、ここまで忍び寄ることもなかった。
 そうだ。忍び寄ったのだ。
 彼女はそれを生業とする者。闇夜に忍びて敵を追い、命を奪う悪しき花。

「私は――忍だ!」

 禍を纏いし妖刀を構え、左手にもまた炎を宿し。
 右手に刀、左は拳。黒き炎を殺意より生じ、獲物を狙う暗殺者。
 ライダーのサーヴァントのマスターは、自らが背負ったその称号を、月下に高らかに宣言した。


 RPI-13・サザーランド。
 対ナイトメアフレーム戦を想定して製造された、初のナイトメアフレームだ。
 優れた汎用性と安定性を誇る本機は、相当数が生産されて、長らく戦線を支えていたという。
 ライダー――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアもまた、飽きるほどに相手をし、時には手駒として操った機体だ。
 それが今、再び彼の手駒となって、この世界樹の魔術都市に、姿を現し立ち回っている。
 方針を転換した彼の策は、それを用いた物量戦だった。

「ははは……どうした色男? 個々のスペックだけならば、俺の蜃気楼よりも格下だぞ?」

 観測兵の報告を受けながら、皇帝ルルーシュは邪悪に笑う。
 元ブリタニア皇帝ルルーシュは、自身は戦闘能力を持たないものの、その身に三つの宝具を携えていた。
 一つは、『我は世界を創る者(ぜったいじゅんしゅのギアス)』。強烈な催眠効果により、雅緋の軍団を築いた宝具だ。
 もう一つは、『我は世界を壊す者(しんきろう)』。自らが駆る漆黒の機体であり、生前のルルーシュの愛機である。
 そして残された最後の宝具が、『我は世界を変える者(オール・ハイル・ルルーシュ)』だ。
 自らを讃える号令を、そのまま名前とした傲慢な宝具。
 自らを讃える兵士達を、地獄の底から呼び起こし、手下として操ることができる宝具。
 それこそ、天才軍師と謳われた、ルルーシュの力を最大限発揮する、真の切り札と呼べる宝具だった。

「S-6、攻撃を仕掛けろ。2秒後にS-7も突撃。両脇から時間差で攻めて態勢を崩す。
 その後G-2が背後から砲撃し、標的をマスターから遠ざける。頼んだぞ、G-2」

 S-5およびS-6のSは、サザーランドの頭文字のSだ。
 無線機で指示を出しながら、Gの頭文字を持つ機体――ガレスを新たに生成する。
 蜃気楼の両腕にもあった、粒子ビーム兵器・ハドロン砲を主兵装とする、空戦タイプのナイトメアフレーム名だ。
 サザーランドでキーパーをかき乱し、そこにガレスの高火力砲撃を撃って、望む方向へと誘導する。それがルルーシュの戦略だった。

《ライダー、残り五機でその場を抑えろ。私の魔力も残しておけ》
《問題はない。三機出せれば十分だ》

 マスターの雅緋からの念話に、応じた。
 ルルーシュの指揮する作戦は、あくまで雅緋が目的を果たすまでの、時間稼ぎに過ぎない。
 彼女が敵マスターを直接攻め、撃破するまでの間、キーパーを繋ぎ止めておく。それがルルーシュの役割だ。
 本来守られるべきマスターが前線に立ち、逆にサーヴァントが闇に身を隠す。ともすれば、暴論とすら言える作戦である。
 それでも、今はこの策がいい。隠密性に優れた雅緋は、奇襲作戦という観点で言えば、ルルーシュ以上に適任だ。

(それにしても、奴もこんな手にかかるとは)

 守護者(キーパー)のクラスも名ばかりだなと、ルルーシュは内心で嘲笑った。
 雅緋の同道を許可したのは、何も自信だけが理由ではない。
 次善策として用意していた、この作戦を実行する上で、その方が挑発効果が見込めたからだ。
 マスターとサーヴァントが一箇所に固まっていれば、敵の狙いもそこに絞られる。
 その状態で逃げ去れば、敵はそれを追いかけるしかなく、結果容易に誘き出すことができる。
 そんなことすらも予測できず、結果無数のナイトメアフレーム相手に、苦戦しているキーパーの姿は、滑稽としか言いようがなかった。


 緒川慎次という男がいる。
 二度交戦したシンフォギア装者・風鳴翼の付き人であり、自身も忍術を修めた強者だ。
 特異災害対策機動部二課と、事を交えると決めた時から、いつか忍者と戦う機会は、訪れるだろうと考えてはいた。

(強い……ッ!)

 それがこの場で、こんな形でだとは、マリアも想定していなかったのだが。
 敵マスターの豪剣に、防ぐ槍と手を震わせながら、マリア・カデンツァヴナ・イヴは冷や汗を流した。

「誰が為にこの声、鳴り渡るのか……ッ!」
「この程度か! そのご大層なカラオケも、所詮はただのお飾りか!」

 アームドギアを押しのけながら、白髪のマスターが轟然と吼える。
 妖刀の黒炎をより強くしながら、マリアの守りを意にも介さず、じりじりとにじり寄ってくる。

「あぁッ!」

 遂に距離はゼロへと詰まった。
 唸りを上げる左の拳が、マリアを容赦なく殴り飛ばした。
 悲鳴を上げ吹き飛ぶ彼女に、容赦なく忍の追撃が迫る。
 なんとか態勢を立て直し、懸命にガングニールを握って、その攻撃に対処する。

(忍者の力は、シンフォギアよりも強いというのッ!?)

 戦闘能力ではあちらが上だ。
 神話の武具の力を宿した、FG式回天特機装束・シンフォギア。
 その奇跡を具現化した甲冑よりも、今は忍の技の方が、明らかに強い。
 東洋の神秘とはこれほどのものか。自分達F.I.Sは、こんな怪物相手に、喧嘩を売っていたというのか。

(違う……これは私の弱さだ……ッ!)

 しかしマリアは、その思考を、即座に自ら否定する。
 扱いきれていないにせよ、ガングニールのスペックは、平時より上がっているはずなのだ。
 にもかかわらず只人ごときに、こうして遅れを取っているのは、自身が原因に他ならない。
 迷いと躊躇いに鈍った刃が、女一人倒せないほどに、神話の槍を貶めているのだ。
 常勝不敗と謳われた槍を、脆弱なものに変えているのは、他ならぬマリア自身の歌なのだ。

「喰らえ!」

 敵マスターが突っ込んできた。開いた距離を詰めてきたのだ。
 直線的な攻めだ。今なら間に合う。遠距離からの必殺技で、迎撃することができる。

「カデンツァの――ッ!」

 そこまで考えて、手が止まった。
 脳裏に蘇った炎の海に、槍を繰り出す手が止められた。
 ここで引き金を引いてしまえば、また同じ結果を招くのではないか。
 一瞬前と同じ炎が、目の前の敵を焼き殺し、悲劇を引き寄せるのではないか。
 巡る懸念が思考を鈍らせ、紡ぐ歌を止めさせる。

「悦ばしきInfernoッ!!」

 その隙を見逃してくれるほど、東洋の忍は甘くはなかった。
 黒き魔刃がその火力を増す。より一層の火を纏った刀が、唸りを上げて襲いかかる。
 一撃。二撃。更に三撃。次々と繰り出される必殺剣を、止められるだけの根性はマリアにはない。

「くぁあああッ!」

 情けない悲鳴を上げながら、マリアは遂に直撃を受けた。
 マントの防御すら間に合わず、全身をずたずたに引き裂かれ、傷口を炎で炙られた。
 漆黒に染まった装束は、黒き炎の刃の前に、遂に崩れ落ち膝をついた。

「もう少し楽しめるかと思ったが……期待外れだったな」

 金の眼光がマリアを見下ろす。
 白装束に黒炎を纏う、モノクロのコントラストの武人が、冷たい視線と言葉を放つ。
 強い。
 何度となく抱いた感想だ。
 その拳にも刃にも、迷いが一切感じられない。
 私は強い。私は勝てる。むしろ絶対に勝たなければならない。
 その凄まじい覚悟と気迫が、刃を燃やす炎となって、弱いマリアの身を焼き焦がしてくる。

(私とは、まるで違う)

 ほぼタメ歳だというのに随分な違いだ。
 これが今の自分に欠けているものか。
 むしろこれこそが、今の自分が、持っていなければならないものだったのか。
 無様に地べたに跪きながら、陽炎の向こうに立つ忍の姿を、マリアはじっと見上げていた。


(マスターは無事なのか……!?)

 マリアとの念話が途切れてから、それなりの時間が経過している。
 恐らくはエデンの予測通り、敵の襲撃を受けてしまい、それどころではなくなったのだろう。
 あちらが受信できないのであれば、令呪による強制転移もできない。であれば、自分が力を尽くして、彼女の元へ戻らねばならない。

「邪魔だっ!」

 そのためにも、倒さねばならない敵がいる。
 青紫のロボットの胴体に、勢いよく鉄拳を叩き込んだ。
 拳から小宇宙を爆裂させる。機体の内側で迸る雷が、内部メカを焼き尽くす。
 機能を失ったブリキ人形は、エデンが離脱すると同時に、力なくうつ伏せに倒れた。
 これでもまだ倒したのは二機目だ。青紫の陸戦機に限っても、まだ六機ほど残っている。
 更に頭上を見上げれば、先ほどのライダーのそれとも違う、新たな黒いロボットが二機。

(大した敵ではないはずだ!)

 単純火力も耐久力も、ライダーが直接駆っていた、あの黒き邪神の方が勝っている。
 にもかかわらず苦戦しているのは、連戦がパフォーマンスの低下を招き、エデンが弱っているからか。
 いいや違う。これは戦い方の差だ。
 先程から敵は見透かしたかのように、こちらが攻められたくない位置とタイミングで、次々と攻撃を仕掛けてくる。
 あのサーヴァントもとんだ策士だ。自らパイロットをやるよりも、後方で手下を操る方が、よほど手強いではないか。

「チィッ!」

 だだだだだっ、と機銃が唸る。
 ロボットサイズのマシンガンが、雄叫びを上げて凶弾を放つ。
 鉛弾ところか砲弾サイズだ。大きく舌打ちを打ちながら、エデンはこれを飛び退って回避。

「がはっ!」

 しかしその背後から襲ったのは、痛烈な衝撃の一打だった。
 跳ね返る体をなんとか捻り、着地するより早く敵を見やる。
 別の青紫のロボットだ。腕に仕込まれたトンファーを、背中に叩きつけてきたのだ。
 あの程度の攻撃を食らってしまうとは、いよいよヤキが回ってきたらしい。

(このままでは……!)

 今のままでは敗北する。
 戦場の主導権は完全に、ライダーの陣営が握っている。
 このまま突破口を見出せないようでは、マリアを殺され脱落だ。
 何とかしなければ。
 そう思いながらも、それでも何ともできない自分に、エデンは下唇を噛んだ。
 未だ顔も見ていないライダーが、高らかに嘲笑う姿が、脳裏に浮かんでくる気がした。


 そしてそれらの戦況を、一人見下ろす者がいる。
 ゴーグルとスカーフで顔を隠し、紺色のコートを夜風に揺らし、ビルの上に立つ男がいる。
 劣勢を強いられるキーパー側と、優勢に事を進めるライダー側。
 彼はそのどちらでもなかった。全くの第三者だった。

「そうやって見下すことしかしないから、貴様らは足元を掬われる」

 故に彼は純粋に、打算だけを考えて、その後の行動を決定した。
 このまま野放しにしておいて、危険な存在になるのはどちらか。
 たとえこの場で見逃したとしても、野垂れ死ぬのがオチなのはどちらか。
 それは誰の目にも明白だ。故に男は弱者ではなく、強者の方に狙いを定めた。

「ならばその驕りを抱えたまま――潔く地の底へと沈め!」

 かちり、と乾いた音がする。
 それは彼がその手に握った、リモコンのボタンの音だった。
 直後戦場に響いたのは、キーパーでもライダーによるものでもなく、設置式の爆弾によって生じた、鋭い爆発音だった。


「何が起きた……!?」

 地を埋める瓦礫の只中で、苦々しげに顔を歪めながら、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは呟く。
 現象だけなら簡単だ。何らかの爆発によって、背後のビルの一部が崩落し、瓦礫がルルーシュへと降り注いできた。
 それだけならば問題はない。幽霊であるサーヴァントには、石くれの雪崩など蚊ほども効かない。
 今確認を取るべきなのは、それが誰によって起こされたかだ。
 キーパーも、そのマスターさえも、戦場からは動いていない。彼らにはルルーシュを攻撃することはできない。

「キィイイイ――ッ!」

 その時だ。
 鳥の鳴き声を思わせる、甲高い声が聞こえてきたのは。

「使い魔か!?」

 果たして姿を現したのは、奇妙な姿を持った怪鳥だ。
 金属のパイプやエンジンを有した、機械仕掛けの猛禽である。それが二羽、三羽と現れ、ルルーシュの周囲を飛び交っている。
 実体はない。されど質量は感じる。魔力の気配は感じられないが、本物のロボット鳥でないのは確かだ。
 であれば、未知のサーヴァントによる、何らかの召喚術である可能性がある。
 自分が神秘の欠片もない、ナイトメアフレームを呼び寄せ、意のままに操っているように。

「S-1! 私の直掩に回れ! 新手が現れた可能性がある!」

 ルルーシュは無線を観測兵に繋ぐと、自らの護衛に回るよう指示した。
 戦況の確認を担っていた、最初に召喚したサザーランドが、すぐさまルルーシュの元へと戻る。
 万一キーパーらに視認されていたら、自分の位置を気取られかねない手だ。
 だが、既に相当量のナイトメアフレームを召喚し、雅緋の魔力を使ってしまっている。
 自分の身を守るために、『我は世界を壊す者(しんきろう)』で戦い続ける余力はない。であれば、今ある手駒を使うしかない。
 そうした判断に対しては、ルルーシュは迷いのない男だった。
 しかし、それとは違った意味で、この選択が誤りだったことを、彼は遠からず知ることになる。


 雅緋は正しく勝ち誇っていた。
 よほどつまらない勝負だったのか、その顔に浮かぶ感情は薄い。
 ただしその冷酷な眼差しは、既に黒服の女をライバルではなく、屠るべくゴミとして見下していた。
 後は黒刀を振り下ろすだけだ。
 逆転あどあり得るはずもない。無様に膝をついた槍の女は、その一刀で絶命する。
 故に雅緋のその態度は、自分の勝利を疑うことなく、戦いの終わりを確信しきっていた。

《――注意は引きつけた! やれ、ランサー!》

 そういう状況下の人間こそ、最も警戒が薄れるものだ。
 ランサーのサーヴァント――駆紋戒斗は、その隙を見逃す男ではなかった。

「おおおおっ!」
「何っ!?」

 気付いた時にはもう遅い。
 真紅のボディを固く覆った、金と銀色の鎧が光る。
 地を蹴り物陰から飛び出してきた、甲冑の戦士の得物が唸る。
 駆紋戒斗の戦闘形態――その名も、アーマードライダー・バロン。
 『掲げよ、騎士の黄槍を(バナナアームズ)』をその身に纏い、豪槍を振りかぶる赤熱の男が、一直線に駆け抜けてくる。
 その勢いを殺すことなど、雅緋にはできようはずもなかった。
 あの殺気の塊のような女が、今まさにこの瞬間だけは、それほどに警戒を緩めていたのだ。

「フンッ!」
「がぁああああーっ!」

 振り下ろす切っ先が、身を切り裂く。
 甲高い悲鳴が闇夜に木霊し、真っ赤な鮮血が暗黒を彩る。
 胴体を狙ったその一撃は、しかし両断には至らなかった。
 さすがにユグドラシルの闇のボスだ。咄嗟にその身をよじることで、直撃だけは免れたのだ。

「ぐぅ……っ!」

 それでも、ただでは済まされない。破れ飛んだ衣服の下では、胸元から腹のあたりまでにかけて、痛ましい傷跡が刻まれている。
 露出した胸元の傷口からは、令呪すらも塗り潰す勢いで、どくどくと血が流れ落ちている。

「え……?」
「仕損じたな」

 だとしても、即死で終わらせるつもりだった戒斗にとっては、それすらも不本意な結果だった。
 戸惑うもう一人の女を無視し、アーマードライダーは舌打ちをする。

「令呪をもって、命ずる……来い……ライダーッ!」

 そして雅緋の行動は、戒斗のそれよりも早かった。
 胸の谷間の令呪を光らせ、強制転移の命令を下す。
 声を張り上げたその勢いで、気力を使い果たしたのか、今度は雅緋が膝をついた。

「なかなかに無茶を言ってくれる!」

 瞬間、闇夜に広がったのは光だ。
 人間大の白い光が、徐々にその大きさを増して、新たな存在を現出させる。
 現れたのは黒いロボット。恐らくはライダー自身の駆る宝具か。
 強制転移と同時に発動し、攻撃を受けるリスクを避けたのは、さすがと言うべきかなんと言うべきか。

『この勝負、預けるぞ!』

 次に聞こえてきた声は、先ほどとは異なり、スピーカー越しに発せられたものだ。
 屈辱の色の濃い声を上げ、主人を拾い上げた漆黒の巨神は、すぐさまそのまま飛び去っていった。
 追いかける術は、戒斗にはない。オーバーロードならまだしも、アーマードライダーにその力はない。

(収穫なし、か)

 己のポリシーを曲げてまで、息巻いて飛び込んできた割には、この程度の結果しか得られなかった。
 プライドの高い戒斗にとって、そのあまりにもお粗末な結果は、彼のヘソを曲げさせるには、あまりにも十分すぎるものだった。


「すまない、マスター。僕としたことが、迂闊だった」

 聖衣を解いて帰還してきた、エデンが放った第一声は、そんな謝罪の言葉だった。

「それを言うなら、私もそう……結局貴方に、負担をかけることしかできなかった」

 そんな申し訳なさそうな顔をされると、こちらまでいたたまれなくなってくる。
 元はといえば、マリアがちゃんと戦えていたならよかった話だ。
 二人でライダーを追っていたなら、戦力を分断されることもなく、共に戦えたはずだったのだ。
 だからこそガングニールを解いたマリアは、謝る必要はないと、エデンにそう返したのだった。

「………」

 ちらと、エデンは脇を見やる。
 鉄仮面のランサーは、未だ逃げることなくそこにいた。
 臨戦態勢を解いたマリア達と異なり、恐らくは宝具か何かであろうその鎧を、未だその身に纏ったままでだ。

「やるつもりか。今のお前ら程度なら、俺一人でも事足りるぞ」

 離れずにいたのは、手負いごとき敵ではないという、ランサーの自信の表れか。
 悔しいが、こちらは満身創痍だ。確かに二人がかりで挑んでも、万全の敵を相手取るには、厳しいものがあるだろう。

《……マスター、僕に提案がある》

 それ故かもしれない。
 エデンがマリアに対して、念話でそう語りかけたのは。


「えっ?」

 キーパーなるサーヴァントのマスターが、驚いたような表情を作った。
 どうやら念話で、何かしらの作戦会議を行っているらしい。
 戦闘態勢に戻っていないことを考えると、どうやら正面から戦う気はなさそうだ。
 どちらでもいい。何をしてこようと、正面から叩き伏せるだけのことだ。
 そうして戒斗は、その光景を傍観し、相手の次の言葉を待った。

「……あの、ランサー。これはよかったらでいいのだけれど……私達と、同盟を組まないかしら?」

 しかし実際に、相手のマスターの口から出た言葉は、少々予想外のものだった。
 アーマードライダーのマスクの下で、戒斗は軽く、目を見開く。

「僕達はお互い、聖杯を得るために戦っている。
 しかしそのライバルはあまりに多い……ならば、せめて一時的にでも手を組むことで、共にその数を減らしていくのが、得策だとは思わないか?」

 マスターに続くように、キーパーが言った。
 なるほど、つまりはそういうことか。
 勝ち目が薄いというのなら、味方につけてしまえばいいということか。
 生き残りを賭けたデスゲームである以上、そういう選択肢は、考えていなかった。
 確かに、最後の二組になるまでという条件なら、同盟を組むという行為も自然にはなる。

「なるほど。悪くはない提案だ」

 言いながら、戒斗は変身を解いた。
 赤いスーツと鎧が消えて、黒と赤を基調とした、ロングコートの姿へと戻る。
 平時ならばそのような提案、戒斗は一笑に付していただろう。
 しかし状況が状況だ。雅緋一人を警戒する自分達に、手段を選んでいる余裕はない。
 何よりも、敢えて徒党を組むと決めたなら、その状況をしかと受け止め、活用できるだけ活用する――駆紋戒斗はそういう人間だった。

「だが、俺はあくまでもサーヴァントだ。マスターの意志を聞かずして、結論を出すわけにはいかない」
「承知している」

 応えたのはマスターではなく、サーヴァントだった。
 主導権を握っている。これはマスター自身の考えではなく、キーパー側の提案ということか。
 さすがに、傀儡になっている、とまではいかないだろうが。

「さてどうする、マスター殿?」

 言いながら、戒斗は背後を振り返る。正確には後方に建っている、背の低い建物の上の方にだ。
 そこには一つの人影があった。
 紺色のコートを身に纏い、天上の月を背負う男。相も変わらず警戒を解かず、がちがちに顔を隠した男。
 戒斗のマスター――黒咲隼が、高みからキーパーらを見下ろしていた。

「……好きにしろ。ただ、俺は貴様らと馴れ合うつもりも、ましてや助けてやる気もない。それだけはよく覚えておけ」

 吐き捨てるようにそう言うと、黒咲はすぐさま身を翻した。
 それで終わりだと言わんばかりに、彼は会話を拒絶して、その場から立ち去っていった。

「だ、そうだ。お互いに相互不可侵ということで、この場は納得してもらおうか」

 敵対関係を貫くとは言わない。ただし協力することもない。
 それはすなわち、お互いをターゲットとしては認識せず、手を出さないということだ。
 戒斗の要約に、キーパー達も納得し、首を縦に振って了解した。

「詫びの代わりに、一つ教えてやる。あの女の名は雅緋。この街のゴロツキを束ねる親玉だ」

 リベンジを挑むつもりがあるなら、歓楽街を探してみれば、奴を見つけられるんじゃないかと。
 戒斗はそれだけを言い残して、同じく身を翻し立ち去った。

《喋りすぎだ》

 黒咲の苛立たしげな念話が聞こえる。しかし戒斗は、それを無視した。
 奴らに戦う意志があるのなら、雅緋と潰し合うことで、こちらの手間を省いてくれるだろう。
 仮にそうでなかったとしたら、どの道遠からず野垂れ死ぬ。その程度の器だったというだけの話だ。

(無償の取引など存在しない)

 手を組みたいというのなら、働ける分だけは働いてもらう。
 それが駆紋戒斗なりの、同盟関係の条件だった。



【H-6/行政地区/一日目 深夜】

【マリア・カデンツァヴナ・イヴ@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]ダメージ(大)、疲労(大)、魔力残量5割
[令呪]残り三画
[装備]ガングニール
[道具]アガートラーム、外出鞄(財布、肌着、タオル、通帳)、特殊武器チップ(メタルマン)
[所持金] 普通
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れ、月の落下を止めたい
1.他のマスターにも居場所を悟られているかもしれない。しばらくの間、身を隠す
2.ランサー(=駆紋戒斗)達とは相互不可侵。助けられるなら助けたい
3.夜が明けたら、足りない生活用品を買い揃える。特に下着が欲しい
4.ガングニールに振り回されている、弱い自分に自己嫌悪
[備考]
※H-6にあるアパートに暮らしています
※ガングニールのロックが外れ、平時より出力が増大していることに気付きました
※ランサー(=駆紋戒斗)組と相互不可侵の関係を結びました
※ランサーのマスター(=黒咲隼)の顔と名前を知りません
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません
※雅緋が歓楽街を縄張りにしていると聞きました
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。罪歌を受けなかったため、その特性には気付いていません

【キーパー(エデン)@聖闘士星矢Ω】
[状態] ダメージ(中)
[装備] 『巨人星座の青銅聖衣(オリオンクロス)』
[道具] なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従う
1.他のマスターにも居場所を悟られているかもしれない。しばらくの間、身を隠す
2.ランサー(=駆紋戒斗)達とは相互不可侵
3.ユグドラシルの空気に違和感。何かからくりがあるのかもしれない
[備考]
※世界樹の大元になっている樹が、「アスガルドのユグドラシル」なのではないかと考えています
※ランサー(=駆紋戒斗)組と相互不可侵の関係を結びました
※ランサーのマスター(=黒咲隼)の顔と名前を知りません
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません
※雅緋が歓楽街を縄張りにしていると聞きました
※殺人鬼ハリウッドの一人を倒しました。罪歌を受けなかったため、その特性には気付いていません



【黒咲隼@遊戯王ARC-Ⅴ】
[状態]魔力残量9割5分
[令呪]残り三画
[装備]ゴーグル
[道具]カードデッキ、デュエルディスク、オートバイ
[所持金]やや貧乏
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.帰宅する。その後、今後の方針を練る
2.キーパー(=エデン)達とは相互不可侵。積極的に助けに行くつもりはない
[備考]
※D-9にあるアパートに暮らしています
※キーパー(=エデン)組と相互不可侵の関係を結びました
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません

【ランサー(駆紋戒斗)@仮面ライダー鎧武】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]戦極ドライバー、ゲネシスドライバー、ロックシード(バナナ、マンゴー、レモンエナジー)、トランプ
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する
1.帰宅する。その後、今後の方針を練る
2.キーパー(=エデン)達とは相互不可侵。積極的に助けに行くつもりはない
[備考]
※キーパー(=エデン)組と相互不可侵の関係を結びました
※ライダー(=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)の顔を見ていません




 戦闘者の肉体とは、重いものだ。
 基本的に筋肉というものは、脂肪よりも重たいものである。
 そのため戦いのために己を鍛え、筋肉の鎧を纏った者は、必然体重も重くなってくる。
 何もしない一般人よりは、確実に体格はよくなっているはずだ。

「重いぞ、マスター」

 とはいえ、その発言をしたのは、頭でっかちのルルーシュである。
 あるいは普通の人間であっても、膝の上に寝転ばれていては、同じ感想を漏らしたかもしれない。

「お互い、様だ。キーパーから逃れる時……お前を抱えてやったのを、忘れたか」

 ひゅうひゅうと細く息を吐きながら、顔にびっしりと汗をかいて、雅緋は従者の悪口に返した。
 『我は世界を壊す者(しんきろう)』にて戦場を離脱し、街の上空を飛ぶ両者は、今はまっすぐに歓楽街を目指していた。
 ナイトメアフレームの機動力だ。到着に時間はかからないだろう。
 あとはこのデカブツが、上手く着陸できる場所を、どこか探さなければならない。それだけが当面の問題だった。

「とにかく……部下を、退かせなければならないな。あのまま放置しては、足がつく……」
「馬鹿か。その前に医者だ。マスターが死んでは元も子もないだろう」

 口調が素のものに近づいているのは、余裕のなさの表れだろうか。
 ルルーシュに魔術の心得はない。人間の医者を頼らない限り、雅緋を治療することはできない。
 表面上は平静を装いながらも、内心でライダーのサーヴァントは、それなりに切羽詰まっていた。

(らしくないミスをした)

 先の戦闘を省みる。
 あの時奇襲を仕掛けた者は、敵サーヴァントなどではなかった。
 恐らくはサーヴァントのマスターだ。それが自らを囮にし、なおかつ正体を悟らせることなく、巧みに陽動を実行したのだ。
 信じがたい、とは今でも思う。雅緋じゃあるまいし、とは思ってしまう。
 その思考自体が、マスターは基本後方支援に徹するものと、無意識に決めつけてしまった結果だ。
 自分達という例外が、唯一無二の存在であると、勝手に思い込んでしまったが故のミスだ。

(固定観念の隙を突くことこそ、小兵の取れる唯一の策)

 かつてテロリストを率いていた自分なら、それは分かっていただろうに。
 その固定観念に縛られたことこそが、勝利の目前まで迫ったゲームを、敗北したも同然の形で、こうして投げ出す結果を招いた。
 同じ轍は二度と踏むまい。膝もとに力なく横たわる、己がマスターの痛ましい姿に、ルルーシュはそう固く誓った。

(それに、他にもクリアすべき条件がある)

 更に今回の戦いにおいては、もう一つの問題点が浮上した。
 それは自らの宝具の燃費の悪さだ。
 十機近いナイトメアフレームを使役し、『我は世界を壊す者(しんきろう)』を二度召喚し、マスターにも前線で戦わせた。
 神秘性に乏しいとはいえ、ナイトメアフレームは大質量兵器だ。その消費は無視できないものがあった。
 結果として今回の戦いだけで、雅緋の魔力残量は、半分以下にまで減少してしまった。
 『我は世界を壊す者(しんきろう)』と『我は世界を変える者(オール・ハイル・ルルーシュ)』の同時使用。それがルルーシュの理想だ。
 しかしこの燃費の悪さでは、たとえ雅緋がマスターであっても、とても賄いきれるものではない。

(対策を打たねばならないな)

 魔力が要る。
 それも魂喰いなどという、効率の悪い手段を、ちまちまと取ってもいられない。
 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにとっては、その方法を探るのが、当面の課題となるだろう。それは重々承知していた。



【F-8/行政地区上空・『我は世界を壊す者(しんきろう)』コックピット内部/一日目 深夜】

【雅緋@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]胴体にダメージ(大)、魔力残量4割
[令呪]残りニ画
[装備]コート
[道具]妖刀、秘伝忍法書、財布
[所持金]そこそこ裕福(マフィアの運営資金を握っている)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝を狙う
1.歓楽街に戻る。その後何らかの手段で部下に連絡し、行政地区から撤退させる
2.聖杯にかける願いに対する迷い
[備考]
※ランサー(=駆紋戒斗)の顔を見ていません

【ライダー(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)@コードギアス 反逆のルルーシュR2 】
[状態]健康
[装備]『我は世界を壊す者(しんきろう)』
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:雅緋を助け、優勝へと導く
1.歓楽街に戻る。その後雅緋を病院へ運ぶ
2.魔力確保の方法を探る
3.雅緋の迷いに対して懸念
[備考]
※ランサー(=駆紋戒斗)の顔を見ていません



[全体の備考]
※H-6の橋の周辺で、大規模な戦闘が発生し、街に被害が出ました。周辺住民の間で、噂になる可能性があります。



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陰にて爪を研ぐ 雅緋 膠着期間
ライダー(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア
黒咲隼
ランサー(駆紋戒斗
この手の刃は光れども マリア・カデンツァヴナ・イヴ 第一回定時放送
キーパー(エデン