「マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キーパー組」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キーパー組」(2015/09/05 (土) 03:19:57) の最新版変更点

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**マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キーパー組 ◆nig7QPL25k  夢を見た。  私ではない誰かの夢を。  私と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。 「彼女が願った世界への希望……その想いが、僕の力だ!」  少年は最愛の少女を喪った。  父親の理想に殉じる彼は、それを引き留めようとする少女の声に、耳を傾けることができなかった。  その結果刃を交え合い、果てにたどり着いたのが、彼女の死という結末だった。  少女の死に際に立ち会いながらも、何もできなかった少年は、後悔と自責の闇へと沈んだ。 「貴方はマルスを目覚めさせると言った。目覚めさせて何をするつもりなのだ」 「戦いのない、美しく穏やかな世界を作る」  それでも、少年は立ち上がった。  在りし日の少女の語る言葉が、耳に心に聞こえたからだ。  彼女の言葉は正しかった。  皮肉にも彼女の死によって――死を悼む自身の心によって、その正しさは証明された。  少年は信じていた理想を捨て去り、自らの意志によって決断し、理想に反旗を翻した。 「美しい世界は、今ある生命を犠牲にした上に成り立つものではない!」  父の考えは間違っている。  犠牲を強いるその理想は、自分と同じ悲しみで、世界を埋め尽くすことになる。  そんなことは繰り返させない。  身勝手な理想のために、誰かが涙を流すことは、二度とあってはならないのだ。 「美しいな。若き心は」  故に少年は前へと進む。  後悔すらも糧として。  その先が悲しみとは違った未来が、確かに待っていると信じて。 「オリオンズ――デヴァステェェェーションッ!!!」 ◆  雷神トールの伝承がある。  かつては北欧の最高神・オーディンとも並び称された戦の神だ。  天を貫くその雷は、邪悪な巨人族を焼き払い、人々を守ったと言い伝えられていた。  であれば、魔術都市ユグドラシルの宵闇を、眩く照らすこの雷光は、トールの導く稲妻だろうか。 「ひとつ、聞かせてくれ」  雷雲渦巻く戦場の中で、一人の男が声を発する。  中世風の衣装に身を纏い、鋭い槍を構える男が、眼前の相手に向かって尋ねる。  神話の英雄、サーヴァント。  ランサーのクラスを与えられた、名高き戦士の魂が、雷電の中心に立つ者へと問いかけた。 「お前は何のために戦う。我が宝具の一撃を受け、それほどの手傷を負ってなお、立ち上がって戦うことができる?」  雷を纏うその男は、鎧に身を包んだ少年だった。  白く輝くその装束は、ところどころに傷を負い、輝きを失いつつあった。  それでも、少年の瞳には光がある。  麗しい顔立ちに決意を宿し、傷ついた体に鞭を打ち、凛と立ち上がる強さがある。  であれば、その源泉とは何だ。  それほどの手傷を負ってなお、立っていられる理由とは何だ。 「愚問だな」  少年はその問いを一蹴した。  若い顔立ちには似合わない、力のこもった声だった。 「僕には聖杯にかける願いなどない……だとしても、一度引き受けた戦いならば、最後まで全うし戦い抜く。それが英霊というものだろう」 「なるほど、確かに愚問だったな」  少年の言うことはもっともだ。なればこそ、非礼は詫びねばなるまい。  せめてもの武士の情けとして、とどめには全力の一撃を見舞う。  たとえ傷だらけの相手であろうと、最後まで慢心することなく、全身全霊で叩き潰す。  それこそが戦いの作法だ。少年に対する何よりの礼儀だ。 「ならばせめて、その命……今一度奥義にて送ろうッ!」  己が宝具に力を注ぎ、ランサーは大地を蹴って駆ける。  音よりも疾き光となりて。影すらも置き去りにする速度で。  文字通りの神速を体現し、ランサーは標的へと殺到する。  使い手の速度を神域まで高める。これが少年に手傷を負わせた、英霊の宝具の正体だ。  防御も回避もかなわぬ一突きを、今一度その身に受けたなら、今度こそただでは済まされない――! 「――お前にひとつ、教えておいてやる」  その、はずだった。  されど突き出されたその槍は、肉も鋼も貫かず。  世界樹の上に敷き詰められた、石畳を虚しく砕いただけだ。 「何っ……!?」 「一度見せられた技は、聖闘士(セイント)には二度と通用しない――!」  声は背後から聞こえる。  そこにいるべき少年の声は、ランサーの後ろから聞こえてくる。  かわしたのか。今の一撃を。  であれば振り返らなければ。敵の反撃に備えなければ。  ああ、されど最早遅い。英霊が一手を繰り出すまでには、瞬きの間さえあれば十分すぎる。 「『轟き吼えよ殲滅の雷光(オリオンズエクスターミネーション)』ッ!!!」  聞け、巨人の雷鳴を。  この身に纏う白き鎧は、戦神トールのものにあらず。  ギリシャ神話に語られし、戦神アテナを守る盾なり。  その名はオリオン星座のエデン。  背負った二つ名は門番(キーパー)。  この雷の輝きこそが、地を割り海を切り開く、聖闘士伝承の体現だ。  至近距離から放たれた雷は、ランサーの体を過たず貫き、灰一つ残らず焼滅させた。 ◆  全米ヒットチャートに突如として現れ、頂点に輝いた彗星の歌姫。  しかしてその正体は、世界の転覆を目論む、武装組織の若き首魁。  それが世間一般に知られた、マリア・カデンツァヴナ・イヴのプロフィールだ。  そしてそのマリアこそが、物陰から死闘を見届けていた、キーパー・エデンのマスターだった。 「ごめんなさい……力になることができなくて」  マリアを背にして戦っていたエデンには、防衛態勢スキルの補正があった。  それでも宝具の一撃によって、浅いとは言えない手傷を負ってしまった。  これは戦うことをしなかった、自身の判断ミスが招いた結果だ。  この身に戦の装束を纏い、槍を携えて戦っていたなら、結果は変わっていたかもしれないのに。 「気にしないでくれ。どちらにせよマスターの力も、いつまでも使えるものでもないからな」  だからこそ、あまり頼りすぎてもよくないのだと、エデンはマリアに対して言った。  FG式回天特機装束――シンフォギア。  神話の武具を鎧と変えて、呪文の言葉を歌い上げ、己が力と化す装備。  マリアはその使い手ではあったが、正規の適合者として見なすには、適正値が低すぎるのもまた事実だ。  投与されている制御薬が、効力を失ってしまえば、その力は発揮できなくなる。  だからこその、エデンの言葉だ。有限の力を頭数に数え、油断するわけにはいかないのだ。 「強いのね、キーパーは」  そんな反応を返されては、なおさら情けなく思えてしまう。  自分と違ってという意を込めて、マリアは苦笑しながら言った。 「……そんな上等なものじゃない」 「えっ?」 「僕に力があるとするなら、それを裏付けているものは、後悔という感情だ」  エデンは語る。  自分の強さを裏付けるものは、無力な過去への後悔なのだと。  彼は一番大切な命を、目の前で喪ってしまった。  少しでも行動を起こしていれば、救えたかもしれなかった命を、見殺しにしてしまったのだ。  あんな思いはもうしたくない。  ああしていればという言い訳を、これ以上繰り返したくはない。  それがオリオン星座のエデンの、今持つ力の原点だった。 「月の落下を阻止し、世界に平穏を取り戻す。それがマスターの願いだったな」 「ええ……結局は私の負うべき責任から、逃れているだけなのかもしれないけれど」  目を逸らしながら、マリアが言う。  実を言うと、彼女の組織は、世界征服を目的とした組織ではない。  各国の思惑を当てにできない中、敢えて悪の汚名を被り、世界を襲う脅威に対処する。  それこそがマリアの所属する、F.I.Sの本懐だった。 「気負わなくていい。そもそも戦わずに済むのなら、それに越したことはないからな」 「キーパー……」 「何にせよ、後悔のない道を選んでくれ。僕が言いたいのはそれだけだ」  そう言うとエデンは、霊体と化し、夜の闇へと姿を消した。  派手な戦いを繰り広げた後で、姿を晒し続けるのは下策だ。  マスターだけならばまだしも、サーヴァントの姿を目撃されては、要らぬ襲撃を受ける可能性がある。 (……果たして、私にできるのだろうか……?)  後悔のない道を選ぶことが、無力な私にかなうのだろうか。  一人残されたマリアは、家路へと向かいながら思案する。  マリア・カデンツァヴナ・イヴは弱い。  理想と平和のためとはいえ、その手を血で汚してしまうことを、どうしようもなく恐れている。  聖杯に願いをかけんとするのも、自分で犠牲を出したくないという、責任逃れなのかもしれない。  果たしてそんな弱い自分に、納得のいく選択肢を、掴み取る力などあるのだろうか。  戦場から離れ仮住まいへと向かう、彼女の足取りは、重かった。 【クラス】キーパー 【真名】エデン 【出典】聖闘士星矢Ω 【性別】男性 【属性】秩序・中庸 【パラメーター】 筋力:B 耐久:D(C) 敏捷:B 魔力:B(A+) 幸運:E 宝具:C 【クラススキル】 防衛態勢:B  マスターを護衛しようとした際に、耐久値が1ランクアップされる。  また、1つ下のランクまでの「気配遮断」スキルを無効化できる。 【保有スキル】 セブンセンシズ:A+  人間の六感を超えた第七感。  聖闘士(セイント)の持つ力・小宇宙(コスモ)の頂点とも言われており、爆発的な力を発揮することができる。  その感覚に目覚めることは困難を極めており、聖闘士の中でも、限られた者しか目覚めていない。  エデンの持つ莫大な魔力の裏付けとなっているスキル。  あくまで青銅聖闘士に過ぎないエデンは、土壇場で闘志を燃やした時のみ、この力を発揮できる。 Ω:-(EX)  宇宙を形作る究極の小宇宙・大宇宙(マクロコスモ)。  Ωとはその大宇宙の加護を受け、限界を超えた小宇宙を行使できる境地である。  その絶大なエネルギーは神の力にも匹敵するが、  小宇宙を持った者同士の強い絆によって導かれる力であるため、この聖杯戦争においては発動できない。 見切り:B  敵の攻撃に対する学習能力。  相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、 同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。  但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。  超常的な訓練を受けた聖闘士には、一度受けた技は二度と通用しないと言われている。 神性:C   神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。  エデンは戦神マルスの依代・ルードヴィグの息子である。 【宝具】 『巨人星座の青銅聖衣(オリオンクロス)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人  オリオン星座を守護星座に持つ、オリオン星座の聖闘士に与えられる青銅聖衣(ブロンズクロス)。  この聖衣を然るべき者が装着することにより、装着者の耐久が1ランクアップし、その他の能力値にも若干の補正値がつく。  本来彼の聖衣は、聖衣石(クロストーン)化から解き放たれた新生青銅聖衣(ニューブロンズクロス)となっているはずなのだが、  異教の地であるユグドラシルでは、その力を発揮できずにいる。 『轟き叫べ暴虐の雷(オリオンズデヴァステーション)』 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~20 最大補足:50人  エデンの最大の奥義が宝具化したもの。  拳に莫大な電撃を込めて地面を殴り、周囲に拡散させる範囲攻撃である。直接敵に殴りかかって、打撃攻撃として放つことも可能。 『轟き吼えよ殲滅の雷光(オリオンズエクスターミネーション)』 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~40 最大補足:20人  エデンの持つ最大の奥義が宝具化したもの。両手から雷撃を光線状にして放ち、敵を狙い撃つ。 【weapon】 なし 【人物背景】 聖闘士(セイント)養成学校・パライストラで、主席の成績を有していた青銅聖闘士。 しかしその正体は、かつてアテナと敵対していた、火星の軍神・マルスの息子だった。 今回の聖杯戦争では、15歳当時の年齢で現界している。 父の理想を叶えるため鍛錬を積んでいたエデンだったが、闇の遺跡にて最愛の少女・アリアを、彼の手によって殺されてしまう。 失意のどん底にあった彼は、その中でアリアの主張を振り返り、彼女の方が正しかったのではないかと考えを改める。 以降エデンは、犠牲を強いる革命を進める父に反旗を翻し、彼と戦う聖闘士・光牙らと共に戦った。 その後は改めて聖闘士として聖域(サンクチュアリ)に残留。地上を脅かす神々と戦っている。 良家の育ちの上に実力が高いため、それに比例してプライドも高い。 しかし精神的には打たれ弱い部分もあり、アリアが死亡した際には、体育座りの姿勢のまま、数時間に渡って微動だにしなかったとも言われている。 それでも立ち直って以降は、脆い部分もなりをひそめ、アリアを喪った「後悔」を繰り返さぬよう、強い意志の下に戦い続けた。 小宇宙の属性は雷。 オーソドックスな格闘戦を得意とし、攻防ともに隙がない。 宝具の他の必殺技には、放電攻撃の「ヒーラ・マスティーア」、電撃の球体を投げつける「トニトルイ・サルターレ」、 サルターレを複数展開し一斉発射する「トニトルイ・フェラカーラス」、左手に雷撃を纏って殴りかかる「フォルゴーレ・ルネッサンス」、 雷雲の竜巻を生じる「トワノ・トルナード」がある。 【サーヴァントとしての願い】 特になし 【基本戦術、方針、運用法】 オールレンジに対応可能な必殺技を持つ上、極端に燃費が悪いわけでもない。バランスの取れたサーヴァント。 ただし言い方を変えれば、それは器用貧乏であることとイコールでもある。 防衛態勢スキルと見切りスキルによって、数値以上の生存能力を持つため、これを活かして戦いたい。 【マスター】マリア・カデンツァヴナ・イヴ 【出典】戦姫絶唱シンフォギアG 【性別】女性 【令呪の位置】左手の甲 【マスターとしての願い】 月の落下を止めたい 【weapon】 ガングニール  北欧の軍神オーディンの槍から生み出されたシンフォギア。  その由来の通り、槍型の武器(アームドギア)を用いる。  また、羽織ったマントは自在に操ることができ、中距離攻撃やシールドとして使うことが可能。  必殺技は、槍の先端からエネルギーを解放し、ビームのようにして発射する「HRIZON†SPEAR」。 アガートラーム  実妹セレナ・カデンツァヴナ・イヴの遺品。  彼女の死亡および、本シンフォギアの破損により、登録データは全て抹消されてしまっている。  そのためいかな聖遺物に由来するものなのか、どのような性能を持っているのかなど、ほとんどの情報が不明。  相応の覚悟と意志により、「奇跡」を手繰り寄せることがない限り、決して起動することはない。 【能力・技能】 シンフォギア適合者(偽)  神話の遺産・聖遺物から生み出された、FG式回天特機装束・シンフォギアを扱う技術である。  しかし彼女自身の適合係数はあまりに低く、制御薬・LiNKERの服用なしには、シンフォギアを纏うことはできなかった。  このため、現在体内に残留しているLiNKERがなくなった場合、適合係数が著しく低下し、マリア自身を傷つける結果を招いてしまう。  戦闘訓練自体は積んでいるため、相手との技量差次第では、正規の適合者とも渡り合うことができる。 【人物背景】 かつてアメリカの実験機関「F.I.S」に囚われていた、レセプター・チルドレンの1人。 月落下の事実を世界に公表し、完全聖遺物・フロンティアによる状況打開を行うため、武装組織「フィーネ」の首魁として蜂起する。 しかし彼女自身は争いを恐れており、現在の立場も組織の維持のため、ナスターシャ教授に依頼されて受け入れたものだった。 2歳歳下の妹・セレナを喪っており、妹の悲劇を繰り返したくないという想いが、彼女の心を繋ぎ止めている。 表向きには強気に振舞っているものの、本来は消極的な性格。 そのため、テロ組織として戦うことによる良心の呵責や、組織の代表を求められる重圧により、心を擦り減らしていった。 それでも、優しく面倒見のいいお姉さん基質でもあるため、周囲の人間からの信頼は厚い。 表向きには歌手活動をしており、そちらの方面では、僅か2ヶ月で全米ヒットチャートの頂点に立つほどの才能とカリスマを有している。 【方針】 迷いはあるが、一応聖杯狙い。
**マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キーパー組 ◆nig7QPL25k  夢を見た。  私ではない誰かの夢を。  私と違う時間を生きた、違う場所での誰かの夢を。 「彼女が願った世界への希望……その想いが、僕の力だ!」  少年は最愛の少女を喪った。  父親の理想に殉じる彼は、それを引き留めようとする少女の声に、耳を傾けることができなかった。  その結果刃を交え合い、果てにたどり着いたのが、彼女の死という結末だった。  少女の死に際に立ち会いながらも、何もできなかった少年は、後悔と自責の闇へと沈んだ。 「貴方はマルスを目覚めさせると言った。目覚めさせて何をするつもりなのだ」 「戦いのない、美しく穏やかな世界を作る」  それでも、少年は立ち上がった。  在りし日の少女の語る言葉が、耳に心に聞こえたからだ。  彼女の言葉は正しかった。  皮肉にも彼女の死によって――死を悼む自身の心によって、その正しさは証明された。  少年は信じていた理想を捨て去り、自らの意志によって決断し、理想に反旗を翻した。 「美しい世界は、今ある生命を犠牲にした上に成り立つものではない!」  父の考えは間違っている。  犠牲を強いるその理想は、自分と同じ悲しみで、世界を埋め尽くすことになる。  そんなことは繰り返させない。  身勝手な理想のために、誰かが涙を流すことは、二度とあってはならないのだ。 「美しいな。若き心は」  故に少年は前へと進む。  後悔すらも糧として。  その先が悲しみとは違った未来が、確かに待っていると信じて。 「オリオンズ――デヴァステェェェーションッ!!!」 ◆  雷神トールの伝承がある。  かつては北欧の最高神・オーディンとも並び称された戦の神だ。  天を貫くその雷は、邪悪な巨人族を焼き払い、人々を守ったと言い伝えられていた。  であれば、魔術都市ユグドラシルの宵闇を、眩く照らすこの雷光は、トールの導く稲妻だろうか。 「ひとつ、聞かせてくれ」  雷雲渦巻く戦場の中で、一人の男が声を発する。  中世風の衣装に身を纏い、鋭い槍を構える男が、眼前の相手に向かって尋ねる。  神話の英雄、サーヴァント。  ランサーのクラスを与えられた、名高き戦士の魂が、雷電の中心に立つ者へと問いかけた。 「お前は何のために戦う。我が宝具の一撃を受け、それほどの手傷を負ってなお、何故立ち上がって戦うことができる?」  雷を纏うその男は、鎧に身を包んだ少年だった。  白く輝くその装束は、ところどころに傷を負い、輝きを失いつつあった。  それでも、少年の瞳には光がある。  麗しい顔立ちに決意を宿し、傷ついた体に鞭を打ち、凛と立ち上がる強さがある。  であれば、その源泉とは何だ。  それほどの手傷を負ってなお、立っていられる理由とは何だ。 「愚問だな」  少年はその問いを一蹴した。  若い顔立ちには似合わない、力のこもった声だった。 「僕には聖杯にかける願いなどない……だとしても、一度引き受けた戦いならば、最後まで全うし戦い抜く。それが英霊というものだろう」 「なるほど、確かに愚問だったな」  少年の言うことはもっともだ。なればこそ、非礼は詫びねばなるまい。  せめてもの武士の情けとして、とどめには全力の一撃を見舞う。  たとえ傷だらけの相手であろうと、最後まで慢心することなく、全身全霊で叩き潰す。  それこそが戦いの作法だ。少年に対する何よりの礼儀だ。 「ならばせめて、その命……今一度奥義にて送ろうッ!」  己が宝具に力を注ぎ、ランサーは大地を蹴って駆ける。  音よりも疾き光となりて。影すらも置き去りにする速度で。  文字通りの神速を体現し、ランサーは標的へと殺到する。  使い手の速度を神域まで高める。これが少年に手傷を負わせた、英霊の宝具の正体だ。  防御も回避もかなわぬ一突きを、今一度その身に受けたなら、今度こそただでは済まされない――! 「――お前にひとつ、教えておいてやる」  その、はずだった。  されど突き出されたその槍は、肉も鋼も貫かず。  世界樹の上に敷き詰められた、石畳を虚しく砕いただけだ。 「何っ……!?」 「一度見せられた技は、聖闘士(セイント)には二度と通用しない――!」  声は背後から聞こえる。  そこにいるべき少年の声は、ランサーの後ろから聞こえてくる。  かわしたのか。今の一撃を。  であれば振り返らなければ。敵の反撃に備えなければ。  ああ、されど最早遅い。英霊が一手を繰り出すまでには、瞬きの間さえあれば十分すぎる。 「『轟き吼えよ殲滅の雷光(オリオンズエクスターミネーション)』ッ!!!」  聞け、巨人の雷鳴を。  この身に纏う白き鎧は、戦神トールのものにあらず。  ギリシャ神話に語られし、戦神アテナを守る盾なり。  その名はオリオン星座のエデン。  背負った二つ名は門番(キーパー)。  この雷の輝きこそが、地を割り海を切り開く、聖闘士伝承の体現だ。  至近距離から放たれた雷は、ランサーの体を過たず貫き、灰一つ残らず焼滅させた。 ◆  全米ヒットチャートに突如として現れ、頂点に輝いた彗星の歌姫。  しかしてその正体は、世界の転覆を目論む、武装組織の若き首魁。  それが世間一般に知られた、マリア・カデンツァヴナ・イヴのプロフィールだ。  そしてそのマリアこそが、物陰から死闘を見届けていた、キーパー・エデンのマスターだった。 「ごめんなさい……力になることができなくて」  マリアを背にして戦っていたエデンには、防衛態勢スキルの補正があった。  それでも宝具の一撃によって、浅いとは言えない手傷を負ってしまった。  これは戦うことをしなかった、自身の判断ミスが招いた結果だ。  この身に戦の装束を纏い、槍を携えて戦っていたなら、結果は変わっていたかもしれないのに。 「気にしないでくれ。どちらにせよマスターの力も、いつまでも使えるものでもないからな」  だからこそ、あまり頼りすぎてもよくないのだと、エデンはマリアに対して言った。  FG式回天特機装束――シンフォギア。  神話の武具を鎧と変えて、呪文の言葉を歌い上げ、己が力と化す装備。  マリアはその使い手ではあったが、正規の適合者として見なすには、適正値が低すぎるのもまた事実だ。  投与されている制御薬が、効力を失ってしまえば、その力は発揮できなくなる。  だからこその、エデンの言葉だ。有限の力を頭数に数え、油断するわけにはいかないのだ。 「強いのね、キーパーは」  そんな反応を返されては、なおさら情けなく思えてしまう。  自分と違ってという意を込めて、マリアは苦笑しながら言った。 「……そんな上等なものじゃない」 「えっ?」 「僕に力があるとするなら、それを裏付けているものは、後悔という感情だ」  エデンは語る。  自分の強さを裏付けるものは、無力な過去への後悔なのだと。  彼は一番大切な命を、目の前で喪ってしまった。  少しでも行動を起こしていれば、救えたかもしれなかった命を、見殺しにしてしまったのだ。  あんな思いはもうしたくない。  ああしていればという言い訳を、これ以上繰り返したくはない。  それがオリオン星座のエデンの、今持つ力の原点だった。 「月の落下を阻止し、世界に平穏を取り戻す。それがマスターの願いだったな」 「ええ……結局は私の負うべき責任から、逃れているだけなのかもしれないけれど」  目を逸らしながら、マリアが言う。  実を言うと、彼女の組織は、世界征服を目的とした組織ではない。  各国の思惑を当てにできない中、敢えて悪の汚名を被り、世界を襲う脅威に対処する。  それこそがマリアの所属する、F.I.Sの本懐だった。 「気負わなくていい。そもそも戦わずに済むのなら、それに越したことはないからな」 「キーパー……」 「何にせよ、後悔のない道を選んでくれ。僕が言いたいのはそれだけだ」  そう言うとエデンは、霊体と化し、夜の闇へと姿を消した。  派手な戦いを繰り広げた後で、姿を晒し続けるのは下策だ。  マスターだけならばまだしも、サーヴァントの姿を目撃されては、要らぬ襲撃を受ける可能性がある。 (……果たして、私にできるのだろうか……?)  後悔のない道を選ぶことが、無力な私にかなうのだろうか。  一人残されたマリアは、家路へと向かいながら思案する。  マリア・カデンツァヴナ・イヴは弱い。  理想と平和のためとはいえ、その手を血で汚してしまうことを、どうしようもなく恐れている。  聖杯に願いをかけんとするのも、自分で犠牲を出したくないという、責任逃れなのかもしれない。  果たしてそんな弱い自分に、納得のいく選択肢を、掴み取る力などあるのだろうか。  戦場から離れ仮住まいへと向かう、彼女の足取りは、重かった。 【クラス】キーパー 【真名】エデン 【出典】聖闘士星矢Ω 【性別】男性 【属性】秩序・中庸 【パラメーター】 筋力:B 耐久:D(C) 敏捷:B 魔力:B(A+) 幸運:E 宝具:C 【クラススキル】 防衛態勢:B  マスターを護衛しようとした際に、耐久値が1ランクアップされる。  また、1つ下のランクまでの「気配遮断」スキルを無効化できる。 【保有スキル】 セブンセンシズ:A+  人間の六感を超えた第七感。  聖闘士(セイント)の持つ力・小宇宙(コスモ)の頂点とも言われており、爆発的な力を発揮することができる。  その感覚に目覚めることは困難を極めており、聖闘士の中でも、限られた者しか目覚めていない。  エデンの持つ莫大な魔力の裏付けとなっているスキル。  あくまで青銅聖闘士に過ぎないエデンは、土壇場で闘志を燃やした時のみ、この力を発揮できる。 Ω:-(EX)  宇宙を形作る究極の小宇宙・大宇宙(マクロコスモ)。  Ωとはその大宇宙の加護を受け、限界を超えた小宇宙を行使できる境地である。  その絶大なエネルギーは神の力にも匹敵するが、  小宇宙を持った者同士の強い絆によって導かれる力であるため、この聖杯戦争においては発動できない。 見切り:B  敵の攻撃に対する学習能力。  相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、 同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。  但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。  超常的な訓練を受けた聖闘士には、一度受けた技は二度と通用しないと言われている。 神性:C   神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。  エデンは戦神マルスの依代・ルードヴィグの息子である。 【宝具】 『巨人星座の青銅聖衣(オリオンクロス)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人  オリオン星座を守護星座に持つ、オリオン星座の聖闘士に与えられる青銅聖衣(ブロンズクロス)。  この聖衣を然るべき者が装着することにより、装着者の耐久が1ランクアップし、その他の能力値にも若干の補正値がつく。  本来彼の聖衣は、聖衣石(クロストーン)化から解き放たれた新生青銅聖衣(ニューブロンズクロス)となっているはずなのだが、  異教の地であるユグドラシルでは、その力を発揮できずにいる。 『轟き叫べ暴虐の雷(オリオンズデヴァステーション)』 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~20 最大補足:50人  エデンの最大の奥義が宝具化したもの。  拳に莫大な電撃を込めて地面を殴り、周囲に拡散させる範囲攻撃である。直接敵に殴りかかって、打撃攻撃として放つことも可能。 『轟き吼えよ殲滅の雷光(オリオンズエクスターミネーション)』 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~40 最大補足:20人  エデンの持つ最大の奥義が宝具化したもの。両手から雷撃を光線状にして放ち、敵を狙い撃つ。 【weapon】 なし 【人物背景】 聖闘士(セイント)養成学校・パライストラで、主席の成績を有していた青銅聖闘士。 しかしその正体は、かつてアテナと敵対していた、火星の軍神・マルスの息子だった。 今回の聖杯戦争では、15歳当時の年齢で現界している。 父の理想を叶えるため鍛錬を積んでいたエデンだったが、闇の遺跡にて最愛の少女・アリアを、彼の手によって殺されてしまう。 失意のどん底にあった彼は、その中でアリアの主張を振り返り、彼女の方が正しかったのではないかと考えを改める。 以降エデンは、犠牲を強いる革命を進める父に反旗を翻し、彼と戦う聖闘士・光牙らと共に戦った。 その後は改めて聖闘士として聖域(サンクチュアリ)に残留。地上を脅かす神々と戦っている。 良家の育ちの上に実力が高いため、それに比例してプライドも高い。 しかし精神的には打たれ弱い部分もあり、アリアが死亡した際には、体育座りの姿勢のまま、数時間に渡って微動だにしなかったとも言われている。 それでも立ち直って以降は、脆い部分もなりをひそめ、アリアを喪った「後悔」を繰り返さぬよう、強い意志の下に戦い続けた。 小宇宙の属性は雷。 オーソドックスな格闘戦を得意とし、攻防ともに隙がない。 宝具の他の必殺技には、放電攻撃の「ヒーラ・マスティーア」、電撃の球体を投げつける「トニトルイ・サルターレ」、 サルターレを複数展開し一斉発射する「トニトルイ・フェラカーラス」、左手に雷撃を纏って殴りかかる「フォルゴーレ・ルネッサンス」、 雷雲の竜巻を生じる「トワノ・トルナード」がある。 【サーヴァントとしての願い】 特になし 【基本戦術、方針、運用法】 オールレンジに対応可能な必殺技を持つ上、極端に燃費が悪いわけでもない。バランスの取れたサーヴァント。 ただし言い方を変えれば、それは器用貧乏であることとイコールでもある。 防衛態勢スキルと見切りスキルによって、数値以上の生存能力を持つため、これを活かして戦いたい。 【マスター】マリア・カデンツァヴナ・イヴ 【出典】戦姫絶唱シンフォギアG 【性別】女性 【令呪の位置】左手の甲 【マスターとしての願い】 月の落下を止めたい 【weapon】 ガングニール  北欧の軍神オーディンの槍から生み出されたシンフォギア。  その由来の通り、槍型の武器(アームドギア)を用いる。  また、羽織ったマントは自在に操ることができ、中距離攻撃やシールドとして使うことが可能。  必殺技は、槍の先端からエネルギーを解放し、ビームのようにして発射する「HRIZON†SPEAR」。 アガートラーム  実妹セレナ・カデンツァヴナ・イヴの遺品。  彼女の死亡および、本シンフォギアの破損により、登録データは全て抹消されてしまっている。  そのためいかな聖遺物に由来するものなのか、どのような性能を持っているのかなど、ほとんどの情報が不明。  相応の覚悟と意志により、「奇跡」を手繰り寄せることがない限り、決して起動することはない。 【能力・技能】 シンフォギア適合者(偽)  神話の遺産・聖遺物から生み出された、FG式回天特機装束・シンフォギアを扱う技術である。  しかし彼女自身の適合係数はあまりに低く、制御薬・LiNKERの服用なしには、シンフォギアを纏うことはできなかった。  このため、現在体内に残留しているLiNKERがなくなった場合、適合係数が著しく低下し、マリア自身を傷つける結果を招いてしまう。  戦闘訓練自体は積んでいるため、相手との技量差次第では、正規の適合者とも渡り合うことができる。 【人物背景】 かつてアメリカの実験機関「F.I.S」に囚われていた、レセプター・チルドレンの1人。 月落下の事実を世界に公表し、完全聖遺物・フロンティアによる状況打開を行うため、武装組織「フィーネ」の首魁として蜂起する。 しかし彼女自身は争いを恐れており、現在の立場も組織の維持のため、ナスターシャ教授に依頼されて受け入れたものだった。 2歳歳下の妹・セレナを喪っており、妹の悲劇を繰り返したくないという想いが、彼女の心を繋ぎ止めている。 表向きには強気に振舞っているものの、本来は消極的な性格。 そのため、テロ組織として戦うことによる良心の呵責や、組織の代表を求められる重圧により、心を擦り減らしていった。 それでも、優しく面倒見のいいお姉さん基質でもあるため、周囲の人間からの信頼は厚い。 表向きには歌手活動をしており、そちらの方面では、僅か2ヶ月で全米ヒットチャートの頂点に立つほどの才能とカリスマを有している。 【方針】 迷いはあるが、一応聖杯狙い。

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