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首くくりの物語・異譚」(2015/08/03 (月) 21:44:59) の最新版変更点

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**首くくりの物語・異譚◆yy7mpGr1KA ――ぎい。 風に小さな軋みを立てて、老人が首を吊っていた。 大きな枝に紐をかけ、老人はその重みの全てを、首に巻きつく紐へと預けていた。 不自然に首が伸びていた。 明らかに首が折れていた。 だが、首を吊ったことも死んでいることも明らかなのに、足元には踏み台となるようなものは何一つ存在しなかった。 ――まるで、樹になった果実のように。そこに在るのが当然のように揺れていた。 そこに歩み寄る少女がいた。 熱に浮かされたようにふらふらと。 夢でも見ているようにくらくらと。 不確かだけども、それでも一歩一歩、樹に吊られた老人の亡骸へと歩み寄っていった。 ――不意に老人の顔に、左目をしかめた醜悪な笑みが浮かんだ。 その亡骸に少女が手を伸ばす。 そして、赤い舌をちろり、とのぞかせる。 果肉を堪能するように舌を転がし、果汁を反芻するように口の中を呪文で満たす。 そして亡骸に手が触れると―― ――少女の顔にも、左目をしかめた醜悪な笑みが浮かんだ。 「黄泉帰ったな」 人ならざる気配を漂わせ、少女の口から言葉が漏れる。 気付くと、あったはずの亡骸も樹も消えていた。 「しかし、世界樹の魔術都市か。思ったものとは随分違う地に辿りついたものよ。  馬鹿息子の余計な気遣いか?それとも我が術式との近似性ゆえか……」 手に持っていたカバンから一冊の書籍を取り出しぱらぱらとめくる。 白っぽい皮張りの、小さな冊子だ。 「奈良梨取考、大迫栄一郎……うむ。内容は間違いないな」 かつて、‘魔道士’大迫栄一郎こと小崎魔津方が作り上げた魔術書。 読んだ者が三子、末子であるならば自らの『物語』に組み込み、小崎魔津方の意識で乗っ取る、転生の術。 その物語は、魔術神オージンに倣ったもの。 トネリコの樹で首を括り、冥界より知恵のルーンを持ち帰った。 そして片目を犠牲に知識の泉も得た。 小崎魔津方は左目の弱視という身体的特徴を持つ魔術師だった。 そして彼は自ら首を括り、樹にぶら下がることでとなることで収穫されるのを待つ『知恵の実』となったのだ。 三子たる孫を育て、その娘に魔導書を読ませ、『知恵の実』を収穫する後継とする。 『小崎魔津方』を蘇らせるためだけに子孫を育む、まさしく魔術師の所業。 「やはりこれが原因か……?  『物語』となった私と、聖杯戦争という『英雄譚』の結集が。  『知恵の実』にして『オージン』である私が、『世界樹』にいるべきであるというのが」 聖杯戦争。 魔術師が使い魔を率いて願望器を奪い合う。 神秘の探求者として、永遠を求める魔術師としては望むところではあるが、突然の参戦に面食らうところはあった。 「まあよい。術式による乗っ取りだけでは安定しないからな。  聖杯を手にし、真の永遠を手にするのも悪くなかろう。  かの名付けられし暗黒のように……ふむ、来たか我が従僕よ」 首筋に熱を帯びた痛みが走る。 蛇が巻きついたような紋章。 首を絞められたような痣。 首括りにあったかのような聖痕が浮かび上がり、サーヴァントが現れる。 それとともにマスターに問いを投げる……多くのサーヴァントが投げるものとは異なる問いを。 「赤が好き?青が好き?白が好き?」 赤いタキシードとマントを纏った仮面の男が問いかけた。 少女の姿をした老魔術師は笑みを浮かべて答えた。 「青だ。君が問うならば、私にそれ以上ふさわしい色はない」 瞬間、赤マントの男が縄を飛ばした。 魔津方の首に縄が食い込むと同時に、首筋の令呪が輝いた。 「私への危害を禁ずる」 絶対命令権の行使。 それによって首に飛んだ縄が緩む。 「運が良かったよ、ここが水場でなくてな。  いくら君でも、首括りでは私は殺せん……赤マントの怪人よ」 怪人譚、赤マント。 明治の半ばごろに起こったという『物語』。 韓国にも伝わったという一端の都市伝説だ。 魔道士、小崎魔津方も民俗学、象徴学の知識の一片として知っている。 なによりその問いはあまりにも有名だ。 「英霊より亡霊か悪霊に近い、怪人譚そのものだろうが……  まあ怪異そのものとなった私のサーヴァントには相応しいかもしれんな。  その都市伝説も、私の書とあわせて喧伝して以降ではないか」 『物語』が、始まる。 『物語』は、感染する。 【クラス】 アサシン 【真名】 赤マント(怪人A)@地獄先生ぬ~べ~ 【パラメーター】 筋力B 耐久E 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具C+ 【属性】 混沌・悪 【クラススキル】 気配遮断:B サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 完全に気配を断てば発見する事は難しい。 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。 怪人Aは死人のように気配が微弱で、一流の霊能者でも探知できなかったという。 【保有スキル】 殺人鬼(真):A 人の道を外れた行為、殺人を重ねたものは人ならざるもの、鬼と呼ばれる。 怪人Aは下校中の子供ばかりを100人以上も惨殺した殺人鬼であり、また鬼の手に幾度も魂が触れたことにより『鬼』の属性を得て、一種の『混血』と化している。 持ち前の殺意と執念に加え、『鬼』としての頑健さも獲得したことで同ランクの戦闘続行も内包する。 怪力:C 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。 使用する事で筋力を1ランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。 本来人間である怪人Aはこのスキルを持つことはできない。 しかし『赤マント』はこのスキルを保持するのに加え、先述のスキルで魔物である『鬼』の属性を獲得しているためCランク相当で保持する。 都市伝説:A 噂で成り立つ都市伝説であるということそのもの。噂で成り立つスキルというのは無辜の怪物に近いが、最大の違いはその噂が全て真実になり得るということ。 赤マントは多くの派生都市伝説を持ち、また赤い装身具の『元型』の童話や童謡も逸話として取り込んでいるため高ランクで保持する。 聖杯戦争が行われる地でその都市伝説、この場合『赤マント』を知る者が多い程にステータスが向上していく。 噂は一人歩きする者であるため同ランクの単独行動も内包する。 このスキルが高ランクであるほど現象に近づき、固有の人格以上に伝承に近い存在となる。 そのため、本来子供のみを殺害してきた怪人Aは老若男女問わず殺す都市伝説『赤マント』に大きく近づき、無差別の殺戮を行う。 【宝具】 『死に方くらいは選ばせてあげよう~青髭は如何にして妻を殺す~(ワットカラー?)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大捕捉:1人 「赤が好き?青が好き?白が好き?」の問いに対し答えたものを色になぞらえて殺す。 赤が好きなら血まみれにして、真っ赤に染めて殺す。 青が好きなら窒息させてチアノーゼ、真っ青に染めて殺す。 白が好きなら血を全て抜き取り、血の気の失せた真っ白に染めて殺す。 誰かに問わねば在り方が曖昧な赤マントという都市伝説において最も象徴的な逸話。 三つの問いは三途の川。答えた時点で死んでいる。 宝具が発動した時点で鎌に切り裂かれる、ロープで首を絞められるかロープで重りをつけられた状態で水中に放り込まれる、巨大な注射針を刺されての出血多量、そのいずれかの未来が確定する。 その正体は赤マントによる虐殺という結果の後に問いを放つという原因を導く、因果の逆転である。  この宝具を回避するにはAGI(敏捷)の高さではなく、発動前に運命を逆転させる能力・LCK(幸運)の高さが重要となる。 なお必中攻撃ではあるが必殺ではないので、致命傷を負っても何らかの手段で治療をすることや並外れた耐久力により死の運命を回避することが可能。 場合によっては唯の小学生すら殺し損ねるが、死をもたらす宝具であるため本来なら在り得ないサーヴァントの失血死や窒息死と言う事象も起こし得る。 ある意味で当然だが、この宝具の発動を目にしたものは高確率で『赤マント』という真名を看破する。 『あなたにはガラスの靴より焼けた靴~白雪姫の母の末期~(スカ―レッド・シューズ)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大捕捉:1人 赤い靴はいてた女の子、異人さんに連れられて行っちゃった。 好きな色の問いに対して黄色などと答えると異界へと連れていかれるという噂に加え、赤マントの派生した都市伝説には、赤い毛布にくるまって寝ている人物が子供を毛布にくるんで異界へさらっていくというものがある。 三つの問いは三途の川。答えた時点で死んでいる。 異界とはすなわち冥界。答えなくても死んでいる。 ワットカラー?の問いに見当違いの答えを返したもの、答えずに攻撃や逃走などの選択をするなど質問を無視した者を世界樹の上空333m、または地表333m(魔術都市ユグドラシルの下方)に転移する。 善人ならば天国へ。天に昇って、帰ってこない。 悪人ならば地獄へ。地に堕ちて、帰ってこない。 空で足掻いて、木に落ちるのも、木から落ちるのもまるで無様な死の舞踏。 その正体は赤マントによる誘拐・転移という結果の後に問いを放つという原因を導く、因果の逆転である。  この宝具を回避するにはAGI(敏捷)の高さではなく、発動前に運命を逆転させる能力・LCK(幸運)の高さが重要となる。 死をもたらす宝具であるため本来なら在り得ないサーヴァントの墜落死や圧死と言う事象も起こし得る。 幸運判定に失敗した場合宝具は不発となり、敵をどこに転移することも出来ない。 また対象となった者は『赤い靴』を脱ぐ=両足を失うことでこの宝具を無効化できる。 物理的に失わずとも機能していない(歩けない)者にこの宝具は無効である。 なおただ転移するだけであり飛行能力などを封じることはできないため生き残る術が皆無な訳ではない。 『人喰いの狼から生まれる者~赤ずきんは再誕する~(ネバーエンディング・テリブルストーリー)』 ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:0~99 最大捕捉:1人 赤ずきんは狼に食われた後、そのお腹を切り裂くと出てきた。 そしてそのお腹に大量の石を詰めて、狼を殺した。 狼は死の象徴であり、また日の出の象徴でもある。 石とはキリストがパンにしたものであり、パンはキリストの肉、ひいては人の象徴である。 大量の石は「三途の川」の積み石のように、死と罪の転嫁を意味する。 再誕を象徴する「赤ずきん」の物語と鬼の手のよる幽体剥離や霊体列断を受けてなお復活した逸話が合わさり、昇華した宝具。 『赤マント』を殺害した者が「石を取り込む=人を殺めた」後に命を落とした場合、『赤マント』はそこから再び生まれる。 ステータスや宝具など全て同一の『赤マント』そのものである。 【weapon】 『無銘・大鎌』 何の変哲もない巨大な鎌。サーヴァントにダメージを与える程度には神秘を秘める。 『縄』 同上。 『巨大な注射針』 同上。 いずれも魔力消費により生成・修復可能。 【人物背景】 怪人Aは仮面を被り、逆さの十字架を身につけ、赤いタキシードとマントを纏う連続殺人鬼。 下校中の子供ばかり100人以上を惨殺し、最初の犯行から30年以上たっても未だ捕まっていない。 元は床屋の店主だが、子供の悪戯で店が全焼し、自身も全身に大火傷を負ったことで子供を憎むようになったと噂される。 殺害の際に「赤が好き?青が好き?白が好き?」と問いかけ、答えに応じた殺し方をする、都市伝説『赤マント』を彷彿とさせる所業を行っていた。 ぬ~べ~の担当する生徒も殺害しようとしたが、悉く阻まれる。 鬼の手による幽体摘出、身に付けたマントが燃える、高所からの落下と致命的な事象を経験するも立ち上がり闇に消えていった。 そして12年後再び童守町に出現。 復活後は左胸を銃で撃たれても動き続ける、その傷もみるみる治っていく、関節がないかのように動き手錠を外す、6階から飛び降りて無傷、訳10年にわたり眠る、霊体を引き裂くなど怪物染みた振る舞いを見せる。 そして再びぬ~べ~の生徒を襲い、敵対。 ぬ~べ~は怪人Aの正体を娘を失くしたために狂気に走った男と推理し、その娘を降霊。 怪人は人の心を取り戻した……かと思われたが、Aはその霊すらも引き裂いた。 仕方なく鬼の手による攻撃で霊体を切り裂き、川に突き落とす。 しかしその後川からは何も上がらず、Aは再び姿を闇に晦ます。 今もどこかで怪人Aは子供に問いを投げかけ、殺しているのかもしれない。 ここにいるのはいつかの時間軸で死亡したであろう怪人A。 実在しない『佐々木小次郎』の殻をかぶってある農民が召喚されたように、都市伝説の妖怪『赤マント』の殻をかぶってサーヴァントとして現界した。 『赤マント』は1930年頃に日本で広まった都市伝説。 元はトイレで「赤い紙が欲しいか?青い紙が欲しいか?」との問いに赤と答えると血まみれにされ、青と答えると血を抜かれて死ぬという都市伝説。 同時期に流行った赤いマントをつけた怪人物が子供を誘拐し、殺すという都市伝説や青い紙ではなく白い紙だという噂などが合わさり生まれたと考えられる。 他にも実在した吸血鬼だ、連続殺人鬼だ。テストの回答を間違えるのを恐れた子供の深層心理の表れだなど様々な説が語られる。 悲劇と遭遇する赤い装身具からグリム童話の『赤ずきん』、アンデルセンの『赤い靴』などを元型とも捉えられる。 そして『マント』だけでなく『ちゃんちゃんこ』や『袢纏』、『マフラー』など多くの派生や起源をもつ。 赤い服装のモノが問いを投げかけ答えによらず殺害するというのはあの『口裂け女』の起源とも考えられる。 多くの都市伝説が束ねられた恐怖の結晶であり、多くの都市伝説を生み出した恐怖の根源。 赤いマントを来た怪人が「赤が好き?青が好き?白が好き?」と問い、答えによらず殺すという怪人譚。 「あかーい半纏着せましょか♪」と歌が聞こえてきたら、あなたもご用心。 【サーヴァントの願い】 殺戮。 【マスター】 小崎魔津方(大迫歩由美)@Missing 【令呪】 首元。 蛇か縄が巻きついた痣のようにも、蛇と縄が絡み合ったようにも見えるデザイン。 一画消耗して残り二画。 【マスターとしての願い】 世界と人間の行く末を見届ける事。 そのための永遠、不老不死。 【weapon】 ・奈良梨取考 魔津方の書いた魔導書にして、転生術の基礎。 読んだものに暗示をかけ、そのものが三子あるいは末子ならば魔津方の憑代となる。 魔津方が死んでもこの術が存在する限り再び蘇る可能性を秘めていることになる。 強力な暗示による記憶の乗っ取りであり、本を読んだ前後の記憶を別の暗示や催眠で失えば乗っ取られることはない。 また精神耐性を持つ者も耐えることができる。 ほか霊装なしの文言のみで暗示や精霊召喚などはやってのける。 ただし香や短剣、羊皮紙などの霊装の扱いも得手とするため、魔術都市ユグドラシルで手に入る限りのものは確保しようと動くだろう。 【能力・技能】 優れた魔術師。 暗示、精霊召喚、魔導書作成など様々な分野に通じ、最終的に魂の転生術まで完成させる。 現在の彼は孫、大迫歩由美の肉体を彼なりの転生術で乗っ取っている。 魔術師小崎魔津方の血を引き、『宮司』の役割を持った土地守の魔術師の末裔、加えてもとより彼の転生のために産み出された子の体であり、魔力量はかなりのもの。 【人物背景】 戦争による資料の散逸、市町村合併による書類の紛失事件などにより出生はほぼ不明。 大学時代にアメリカ、ヨーロッパ、インド、チベット、と渡り錬金術やシャーマニズム、神秘学やヨガなどのオカルトに傾倒。 学問としてそれを学ぶが、狂的なまでの探求心からさらにその行く末を知りたいと望むようになり、そのために永遠を求めるようになる。 『末子成功譚』と『果実』の伝承をベースに暗示によって魂を塗り変え、乗っ取る術式を構築し、世界樹の頂上で首をくくる。 いつか復活する時を待ち続け、そしてこの世界樹において再び生まれ落ちた。 以上、小崎魔津方。 大迫歩由美は小崎魔津方の実の孫。 魔津方の初孫は事故死したのだが、その事故というのが選択紐を結んだ庭の樹から落ち、首括りとなって死んだというもの。 その死に様がまるで樹になった果実のようであったということから魔津方は転生の術式を思いつく。 我が歩みに由来する実で、歩由美。 生まれついての小崎魔津方の憑代。 本来の彼女は少しだけ内向的な普通の少女だが、魂を小崎魔津方に乗っ取られもはやその人格が表に出ることはない。 【方針】 赤マントの噂を流布し、サーヴァントを強化する。 平行して奈良梨取考もひっそりと広め、敗退しても復活可能なようにしておく。

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