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**その目に映るものは◆yy7mpGr1KA 痛みが、走った。 腹部に、刺すような痛み。 泣きたくなるような痛み。 学術地区の真ん中、登校する生徒も彼女しかいない時間帯に浅上藤乃は佇んでいた。 幼いころから藤乃は痛みを感じない体質だった。 だから痛みを感じるのは、おかしい。 いや、普通の人間は痛みを感じるものだ。 それがおかしいなんて、おかしい。 でも痛みを覚えることはおかしいことで、でも痛みを感じないのはおかしいことで。 矛盾が螺旋して。 それが記憶を取り戻すきっかけだった。 「……やっぱり通じませんね」 携帯電話――記憶を失くしている間はコレがなんなのかすら分からなかった――を取り出し、コールしようとする。 しかし響くのは圏外であることを知らせる虚しい電子音。 この世界ではこうした電子機器を使う文明はほぼ存在していないのだから。 「困りました……」 これでは相手の居場所はおろか、その知り合いの居場所も分からない。 連絡が途絶えたことに男は喜んでいるだろうか。恐々としているだろうか。 だがそんなことより問題は 「聖杯戦争、ですか」 願望器を奪い合う殺し合い。 殺さなければ、殺されてしまう。 ようやく生きる実感を――痛みを――取り戻したのに、終わってしまうのか。 そんなの、イヤ。 長くこの地に留まっては、あの男が罪を暴くべく動くかもしれない。 そうなったら平穏に暮らすことなんてできない。 急いで帰って、殺さないと。 急いで帰るためにみんな殺さないと。 それはとても厭だけど。 「痛ッ…!」 残留する痛み。 それはとても厭だけど、生きていると感じる。 だけど喜悦のなかに耐え難いものがあるのも事実で 「凶れ」 やつ当たり気味に手の中の携帯電話を曲げる。 ここでは無用の長物だ……しかし帰れば有用なものであると壊してから思い至り消沈。 周りに人がいないのを幸いとしゃがみ込む。 その頭上を、短刀が通過した。 彼方から黒衣の男が放ったものだった。 「ほう。妙な力があるからとりあえず殺そうとしたが。  アサシンのサーヴァントの攻撃を避けるとは。褒めてや――ごォッ!?」 言い切る前に、現れた新たな男が一気に距離を詰め上段回し蹴りを見舞う。 それにより吹き飛ばされるアサシン。 「シャババ……ババ、バ…■■……■■■■!!!」 3mはあろうかという巨体。 巌の様な筋肉と肌。 雄々しく反り立つ二本の角。 荘厳さすら感じさせる狂戦士が、浅上藤乃の下へと参じた。 「■■■■■■■■■■■ーーー!」 叫びをあげ、追撃。 狂戦士に相応しいパワー、狂戦士らしからぬ技巧にアサシンは撤退すらできず地べたを這う。 地に伏せた敵を見下ろし、何かを取り出して手にするバーサーカー。 それはダンベルのように見えた。 槌のように扱うのか?と警戒と恐怖を滲ませるアサシンをよそにダンベルを地面に力いっぱい叩きつける。 まるで、私は武器など使わなーい!なぜなら私は己の肉体に絶対的な自信を持っているからだーーっ、とでも主張するかのよう。 それにより石畳が砕け、大地が震え、地下から何かが隆起してくる。 「これは…なんだ?リング……?」 大地の裂け目から現れたのはプロレスのリング。 石畳を叩いたのが合図であったかのようにあらわれ、アサシンはその中央に転がされていた。 慌てて立ち上がると、同時にバーサーカーもリングイン。 勝ち目はないとリングから下りよう、逃げ出そうとするが 「■■■■!」 リングロープをつかみ、投擲。 それが首にかかりまるで引き回しの刑のように、その反動でリング内に戻される。 そしてそれをビッグブーツで迎える。 顔面をつぶされ、あえなくアサシンは息絶えた。 それとほぼ同時にリングの外で駆ける影があった。 アサシンのマスターが声にならない叫びをあげ、藤乃のもとへと走る。 勝ち目のないバーサーカー相手に人質にしようとしたのか。 藤乃からバーサーカーを奪おうとしたのか。 何の意図もないただの突貫か。 その真意は本人のみぞ知るところだが 「凶れ」 藤乃の目に留まった次の瞬間には肉塊となっていた。 その意図したところなど気にも留めず藤乃は己がサーヴァントの下へと歩む。 見慣れつつあるねじ切れた死体を視界の端に収めつつ、見慣れない死にざまの、消えつつあるアサシンの死体に言い知れない感情を覚えながら。 それをバーサーカーのサーヴァント――ガンマン――は眺めていた。 しかしその眼に藤乃は映っても、その思考に影響はもたらさない。 真眼が開けば、見えたのは未来だった。 イレギュラーにより、秩序が乱される未来。 何より憧れた男が変わり果ててしまった未来。 見たくない現実。 まぶたを閉じれば、見えるのは過去だった。 ゴールドマンが、シルバーマンが、何よりザ・マンとともに鍛錬に励んだ過去。 いつまでも見ていたい、夢。 狂い、曇った眼に現実は映らない。 閉じた真眼は輝かしい過去を映している。 それを再び手にしたいと思う心がどこかにあった。 未来を見て、変えようと動いても変わらないなら、過去を見て、変えようと思ってしまった。 怒り、苦しみ、悲しみ、狂い、ガンマンはここにいた。 そして現れたならやることは一つ。 『世界樹』のリングで、完璧超人始祖がすることは一つ。 ド下等どもを迎え撃ち、粛清する。 狂化した男はただそれを決意した。 浅上藤乃の、壊れかけた魔眼にも。 ガンマンの、曇ってしまった真眼にも。 映る景色は、凶々しく、歪に、曲がっていた。 【クラス】 バーサーカー 【真名】 ガンマン@キン肉マン 【パラメーター】 筋力A 耐久A 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具A++ (狂化による上昇を含む) 【属性】 秩序・狂 【クラススキル】 狂化:C 魔力と幸運を除いたパラメーターをランクアップさせるが、言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。 【保有スキル】 超人レスリング:A++ 超人として生まれ持った才覚に加え、たゆまぬ鍛練と実践経験を重ねたリング上で闘う格闘技能。 Aランクでようやく一人前と言えるスキルでありA++ランクともなれば宇宙、有史でも上位の達人の域。 リングの上では魔力と幸運を除くステータスが1ランク向上し、スキル:戦闘続行を得る。 神性:C 神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。 超人の神に僅か十人の同朋の一人として選ばれ、その力の一部を分け与えられた。 粛清防御と呼ばれる特殊な防御値をランク分だけ削減する効果もある。 また菩提樹の悟り、信仰の加護、といった神に何らかの形で依存するスキルを打ち破る。 対魔力:A+ 現代の魔術はおろか神代の魔術を用いても彼を傷つけるのはほぼ不可能である。 数億年以上の長きを生き、積み上げた神秘は破格のランクを誇る。 無垢の鍛錬:A 幾億もの年月、ひたすらに己を鍛え上げた戦士の持つスキル。 戦場、精神状態を選ばず鍛え上げた技能を十全に発揮できる。 このスキルによって狂化してなお卓越した技能による戦闘を可能としている。 【宝具】 『真眼(サイクロプス)』 ランク:D 種別:対界宝具 レンジ:0~30 最大捕捉:視界に収まる全て ガンマンのただ一つの眼、そのもの。 高ランクの心眼、千里眼スキルは未来視すら可能とするが、そのさらなる上位技能。 視界に収めたものの本心を見通し、変身に準ずる能力を無効化し、未来すら看破する。 サーヴァントのスキルや宝具、真名すら見通す、真名看破すら生ぬるい代物だが、狂化により機能していない。 ……しかしガンマン自身は看破した真名や伝承から弱点を突くなどと言うド下等な戦術はもとより好まないため、仮に狂化していなかったとしてもそうした使い方はしないだろう。 さらにこの宝具が機能していないということは、生前彼が目を逸らし続けた真実が本当に見えなくなったということ。 少なくとも今のガンマンはただ一つの嘘も抱えていない。 『完璧漆式奥義・聖なる双角の嵐撃(エルクホルン・テンペスト)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~3 最大捕捉:2人 エルク・ホルンをプロペラのように回転させ突撃し、その硬度と威力で敵をバラバラに引き裂く。 神性、信仰の加護、菩提樹の悟り、およびそれに準ずる神への関わりを持たない者には追加ダメージを与える。 なおガンマンの保持する神性スキルはCランクであるため、菩提樹の悟りなどはBランク以上のものがなければ効果を発揮しない。 現世において下等超人を葬るのに他の奥義に比べて多用したため、ガンマンの究極の一たるフェイバリットフォースとして宝具にまでなった。 突き詰めればただの技でしかないが、ガンマン自身が幻想種に匹敵する年月を積み重ねているため神秘の度合いとしては相応のもの。 『絶対の神器が一、土のダンベル』 ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人 かつて神の地位を捨て、地上に下り立った超人の始祖から贈られた神器。 数億年の時を経て現存し続けた神造宝具であり、秘められた神秘は伝説の聖剣にも劣らない、とてつもないダンベルである。 他に天、地、星など全部で10種類あり、十人の始祖が持つそれを集め、とある祭壇に捧げることで全ての完璧超人始祖は消滅する。 ぶっちゃけ基本的には唯のダンベルであると思うが、神秘はすごいのでこれを使えばサーヴァントをぶん殴ることはできる。 でも多分ガンマンのダンベルだからめっちゃ重いと思う。女の子が振り回すのは無理じゃないかな。 『全ての道は完璧に通ず(コロッセウム・オリジン)』 ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:― 最大捕捉:― とある世界における歴史の原点はガンマンをはじめとする完璧超人始祖による影響が大きい。 始まりの始祖の像は後に自由の女神をはじめとする像の起こりとなり、かつての拠点は後にピサの斜塔となった。 兄弟弟子のゴールドマン、シルバーマンの道場は金閣寺、銀閣寺として残っている。 ゴールドマンが悪魔となって残した闘技場・処刑場も各地でランドマークの素となった、その逸話の再現。 ガンマンら完璧超人始祖が召喚された時点で聖杯戦争の地におけるランドマークのいくつかにリングが設置されていたことになる、因果逆転・歴史改変宝具。 例えばサグラダ・ファミリアがあったとして、多くの世界でサグラダ・ファミリアは唯の史跡であるが、ガンマンたちの歴史においては完璧超人始祖が人間に暗示をかけて建てさせた教会であり、秘密を探りに来たものを処刑するためのリングもある。 同様に此度召喚された世界樹のランドマークも、いくつかにはリングが元々存在したことになっている。 平常時は普通の施設だが、そこにリングがあると知る者が軽くいじれば容易くリングを出せる。 狂化したガンマンであっても問題はない。 【weapon】 なし。 この世に肉体を駆使してぶちこわせないものはないわーっ!! 【人物背景】 太古の昔に超人界滅亡の際、下界に降り立った神に選ばれ弟子となった10人の 完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン) のひとり。 未来を見通す目である 「真眼(サイクロプス)」 を持っており、その目で 「イレギュラー(普通の超人の枠を超えた力を持つ者)」 が始祖の理想とすべき世界に悪影響を及ぼす未来を見通し、彼らを粛清すべしと神であった男、超人閻魔に長年進言していた。 しかし下等超人の中から完璧超人に選ばれる例があるように、イレギュラーを容認していた超人閻魔からはその進言は尽く却下され、番人である"参式"ミラージュマンには外界に出ることを厳しく禁じられていた。 後に閻魔が粛清に動くと、それと敵対する正義超人、悪魔超人の闘争に乗じ自身も意気揚々と粛清に動き出す。 しかしかつての高潔さを失った師の姿には思うところがあったようで、闘争のさなかでその自分の気持ちに正直になれなかったことで実力を出し切れず敗北。 自慢の角も砕かれ死を迎えた。 最期までその目に映った真実を口にすることはなく、胸に秘めたまま…… 神に選ばれた良き超人というには傲慢で粗暴な性格だが、それは苛烈なまでの実直さと世界を憂う気持ちあってのもの。 正直であれ、理想的であれという原理主義に固まってはいるが、その振る舞いには確かな信念がある始祖たるに相応しい超人といえよう。 【サーヴァントの願い】 未来を見通しても変えられなかったのなら、聖杯の力で過去を変える。 そのためにもド下等サーヴァントを蹴散らす。 ……それが愚挙だとしても。過ちだとしても。やつ当たりにすぎないとわかっていても。 怒りと悲しみに目を曇らせ、狂気に堕ちた男は止まらない。 【基本戦術、方針、運用法】 正面切っての闘争。 フィジカルに関しては圧倒的なのでそれを生かして戦う……というよりそれしかできない。 あとは精々敵をリングに放り込むくらいだろうか。 【マスター】 浅上藤乃@空の境界 【令呪の位置】 下腹部。 歪んだ藤の花と蔓。 【マスターとしての願い】 際立って願いというものはない。 強いて言うなら生きる実感を感じたい、死にたくない。 そのためなら人を殺すのも仕方ない。殺したくないけど、仕方ない。 【weapon】 能力に依存。 【能力・技能】 ・歪曲の魔眼 先天的にもつ超能力。 視界内の任意の場所に回転軸を作り、捻じ切る。 右目は右回転、左目は左回転の回転軸を発生する。 この能力では物質を破壊することは出来るが、概念を破壊することは出来ない。 そして、魔術による防御障壁など彼女の理解を超えたモノも曲げられないとされる。 また藤乃が『これは曲げられない』と認識したものは曲げることが出来ない。 最終的には透視能力にまで覚醒しえるが、そうなった場合視力が大幅に低下する。 藤乃の能力は超能力であるものの、人為的に手が加えられているために魔術と超能力の間にある。 そのためそれなりの魔力供給も可能となっている。 ただし対魔力に阻まれる欠点ともなっている。 ・無痛症 先述の能力を封じるために後天的に施された処置によって得たもの。 しかし脊椎に損傷を受けたことにより不定期に痛覚を取り戻すことになる。 痛みを感じている間のみ歪曲の魔眼は行使できる。 【人物背景】 退魔一族の「浅神」の娘。元々は地元の名士の家柄であったが、没落し、分家の浅上に取り込まれた。 幼い頃から「歪曲」の能力が発現していたが、6歳の頃に父・羽舟にインドメタシン等の大量投与がなされたことによって人為的に感覚を閉ざされ、能力も消える。 以降は小、中、高と優等生で平穏に過ごす。 しかし不良グループに金属バットで殴打されたことで脊椎を損傷、不定期痛覚と能力を取り戻す。(のちにとある魔術師と出会い脊椎はすでに治癒している) ナイフで刺されそうになった瞬間に能力を行使、不良グループの一人を除いて『凶げて』殺害。 その際に飛び散った血と、患っていた虫垂炎が重なり刺されたと勘違い。 元々彼女は無痛症によって外部の刺激及び自らの身体を感じることができないために、生への実感が無く、感情の抑揚そのものが乏しい。 結果、他者の痛みに共感する形でしか生への実感を得られなかったことで、感覚を取り戻した後は残虐に相手を殺して喜び・快楽を得るという暴走を招く。 魔術師が評する彼女は「死に接触して快楽する存在不適合者」。 彼女自身に殺戮を楽しんでいるという自覚はないが、生き残った不良に対する振る舞いは嗜虐的この上ない。 本編で後に改心はするのだが、現時点の彼女は殺戮を自覚なく楽しんでいる時期よりの召喚。 それらしい理由さえあれば、殺す。 一人しか生き残れない聖杯戦争なら、死なないために殺す。 【方針】 生き残るために皆殺す。 基本はバーサーカー任せだが、マスターが視界に入ったら『凶れ』。
**その目に映るものは◆yy7mpGr1KA 痛みが、走った。 腹部に、刺すような痛み。 泣きたくなるような痛み。 学術地区の真ん中、登校する生徒も彼女しかいない時間帯に浅上藤乃は佇んでいた。 幼いころから藤乃は痛みを感じない体質だった。 だから痛みを感じるのは、おかしい。 いや、普通の人間は痛みを感じるものだ。 それがおかしいなんて、おかしい。 でも痛みを覚えることはおかしいことで、でも痛みを感じないのはおかしいことで。 矛盾が螺旋して。 それが記憶を取り戻すきっかけだった。 「……やっぱり通じませんね」 携帯電話――記憶を失くしている間はコレがなんなのかすら分からなかった――を取り出し、コールしようとする。 しかし響くのは圏外であることを知らせる虚しい電子音。 この世界ではこうした電子機器を使う文明はほぼ存在していないのだから。 「困りました……」 これでは相手の居場所はおろか、その知り合いの居場所も分からない。 連絡が途絶えたことに男は喜んでいるだろうか。恐々としているだろうか。 だがそんなことより問題は 「聖杯戦争、ですか」 願望器を奪い合う殺し合い。 殺さなければ、殺されてしまう。 ようやく生きる実感を――痛みを――取り戻したのに、終わってしまうのか。 そんなの、イヤ。 長くこの地に留まっては、あの男が罪を暴くべく動くかもしれない。 そうなったら平穏に暮らすことなんてできない。 急いで帰って、殺さないと。 急いで帰るためにみんな殺さないと。 それはとても厭だけど。 「痛ッ…!」 残留する痛み。 それはとても厭だけど、生きていると感じる。 だけど喜悦のなかに耐え難いものがあるのも事実で 「凶れ」 やつ当たり気味に手の中の携帯電話を曲げる。 ここでは無用の長物だ……しかし帰れば有用なものであると壊してから思い至り消沈。 周りに人がいないのを幸いとしゃがみ込む。 その頭上を、短刀が通過した。 彼方から黒衣の男が放ったものだった。 「ほう。妙な力があるからとりあえず殺そうとしたが。  アサシンのサーヴァントの攻撃を避けるとは。褒めてや――ごォッ!?」 言い切る前に、現れた新たな男が一気に距離を詰め上段回し蹴りを見舞う。 それにより吹き飛ばされるアサシン。 「シャババ……ババ、バ…■■……■■■■!!!」 3mはあろうかという巨体。 巌の様な筋肉と肌。 雄々しく反り立つ二本の角。 荘厳さすら感じさせる狂戦士が、浅上藤乃の下へと参じた。 「■■■■■■■■■■■ーーー!」 叫びをあげ、追撃。 狂戦士に相応しいパワー、狂戦士らしからぬ技巧にアサシンは撤退すらできず地べたを這う。 地に伏せた敵を見下ろし、何かを取り出して手にするバーサーカー。 それはダンベルのように見えた。 槌のように扱うのか?と警戒と恐怖を滲ませるアサシンをよそにダンベルを地面に力いっぱい叩きつける。 まるで、私は武器など使わなーい!なぜなら私は己の肉体に絶対的な自信を持っているからだーーっ、とでも主張するかのよう。 それにより石畳が砕け、大地が震え、地下から何かが隆起してくる。 「これは…なんだ?リング……?」 大地の裂け目から現れたのはプロレスのリング。 石畳を叩いたのが合図であったかのようにあらわれ、アサシンはその中央に転がされていた。 慌てて立ち上がると、同時にバーサーカーもリングイン。 勝ち目はないとリングから下りよう、逃げ出そうとするが 「■■■■!」 リングロープをつかみ、投擲。 それが首にかかりまるで引き回しの刑のように、その反動でリング内に戻される。 そしてそれをビッグブーツで迎える。 顔面をつぶされ、あえなくアサシンは息絶えた。 それとほぼ同時にリングの外で駆ける影があった。 アサシンのマスターが声にならない叫びをあげ、藤乃のもとへと走る。 勝ち目のないバーサーカー相手に人質にしようとしたのか。 藤乃からバーサーカーを奪おうとしたのか。 何の意図もないただの突貫か。 その真意は本人のみぞ知るところだが 「凶れ」 藤乃の目に留まった次の瞬間には肉塊となっていた。 その意図したところなど気にも留めず藤乃は己がサーヴァントの下へと歩む。 見慣れつつあるねじ切れた死体を視界の端に収めつつ、見慣れない死にざまの、消えつつあるアサシンの死体に言い知れない感情を覚えながら。 それをバーサーカーのサーヴァント――ガンマン――は眺めていた。 しかしその眼に藤乃は映っても、その思考に影響はもたらさない。 真眼が開けば、見えたのは未来だった。 イレギュラーにより、秩序が乱される未来。 何より憧れた男が変わり果ててしまった未来。 見たくない現実。 まぶたを閉じれば、見えるのは過去だった。 ゴールドマンが、シルバーマンが、何よりザ・マンとともに鍛錬に励んだ過去。 いつまでも見ていたい、夢。 狂い、曇った眼に現実は映らない。 閉じた真眼は輝かしい過去を映している。 それを再び手にしたいと思う心がどこかにあった。 未来を見て、変えようと動いても変わらないなら、過去を見て、変えようと思ってしまった。 怒り、苦しみ、悲しみ、狂い、ガンマンはここにいた。 そして現れたならやることは一つ。 『世界樹』のリングで、完璧超人始祖がすることは一つ。 ド下等どもを迎え撃ち、粛清する。 狂化した男はただそれを決意した。 浅上藤乃の、壊れかけた魔眼にも。 ガンマンの、曇ってしまった真眼にも。 映る景色は、凶々しく、歪に、曲がっていた。 【クラス】 バーサーカー 【真名】 ガンマン@キン肉マン 【パラメーター】 筋力A 耐久A 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具A++ (狂化による上昇を含む) 【属性】 混沌・狂 【クラススキル】 狂化:C 魔力と幸運を除いたパラメーターをランクアップさせるが、言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。 【保有スキル】 超人レスリング:A++ 超人として生まれ持った才覚に加え、たゆまぬ鍛練と実践経験を重ねたリング上で闘う格闘技能。 Aランクでようやく一人前と言えるスキルでありA++ランクともなれば宇宙、有史でも上位の達人の域。 リングの上では魔力と幸運を除くステータスが1ランク向上し、スキル:戦闘続行を得る。 神性:C 神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。 超人の神に僅か十人の同朋の一人として選ばれ、その力の一部を分け与えられた。 粛清防御と呼ばれる特殊な防御値をランク分だけ削減する効果もある。 また菩提樹の悟り、信仰の加護、といった神に何らかの形で依存するスキルを打ち破る。 対魔力:A+ 現代の魔術はおろか神代の魔術を用いても彼を傷つけるのはほぼ不可能である。 数億年以上の長きを生き、積み上げた神秘は破格のランクを誇る。 無垢の鍛錬:A 幾億もの年月、ひたすらに己を鍛え上げた戦士の持つスキル。 戦場、精神状態を選ばず鍛え上げた技能を十全に発揮できる。 このスキルによって狂化してなお卓越した技能による戦闘を可能としている。 【宝具】 『真眼(サイクロプス)』 ランク:D 種別:対界宝具 レンジ:0~30 最大捕捉:視界に収まる全て ガンマンのただ一つの眼、そのもの。 高ランクの心眼、千里眼スキルは未来視すら可能とするが、そのさらなる上位技能。 視界に収めたものの本心を見通し、変身に準ずる能力を無効化し、未来すら看破する。 サーヴァントのスキルや宝具、真名すら見通す、真名看破すら生ぬるい代物だが、狂化により機能していない。 ……しかしガンマン自身は看破した真名や伝承から弱点を突くなどと言うド下等な戦術はもとより好まないため、仮に狂化していなかったとしてもそうした使い方はしないだろう。 さらにこの宝具が機能していないということは、生前彼が目を逸らし続けた真実が本当に見えなくなったということ。 少なくとも今のガンマンはただ一つの嘘も抱えていない。 『完璧漆式奥義・聖なる双角の嵐撃(エルクホルン・テンペスト)』 ランク:C 種別:対神宝具 レンジ:1~3 最大捕捉:2人 エルク・ホルンをプロペラのように回転させ突撃し、その硬度と威力で敵をバラバラに引き裂く。 神性、信仰の加護、菩提樹の悟り、およびそれに準ずる神への関わりを持たない者には追加ダメージを与える。 なおガンマンの保持する神性スキルはCランクであるため、菩提樹の悟りなどはBランク以上のものがなければ効果を発揮しない。 現世において下等超人を葬るのに他の奥義に比べて多用したため、ガンマンの究極の一たるフェイバリットフォースとして宝具にまでなった。 突き詰めればただの技でしかないが、ガンマン自身が幻想種に匹敵する年月を積み重ねているため神秘の度合いとしては相応のもの。 『絶対の神器が一、土のダンベル』 ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人 かつて神の地位を捨て、地上に下り立った超人の始祖から贈られた神器。 数億年の時を経て現存し続けた神造宝具であり、秘められた神秘は伝説の聖剣にも劣らない、とてつもないダンベルである。 他に天、地、星など全部で10種類あり、十人の始祖が持つそれを集め、とある祭壇に捧げることで全ての完璧超人始祖は消滅する。 ぶっちゃけ基本的には唯のダンベルであると思うが、神秘はすごいのでこれを使えばサーヴァントをぶん殴ることはできる。 でも多分ガンマンのダンベルだからめっちゃ重いと思う。女の子が振り回すのは無理じゃないかな。 『全ての道は完璧に通ず(コロッセウム・オリジン)』 ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:― 最大捕捉:― とある世界における歴史の原点はガンマンをはじめとする完璧超人始祖による影響が大きい。 始まりの始祖の像は後に自由の女神をはじめとする像の起こりとなり、かつての拠点は後にピサの斜塔となった。 兄弟弟子のゴールドマン、シルバーマンの道場は金閣寺、銀閣寺として残っている。 ゴールドマンが悪魔となって残した闘技場・処刑場も各地でランドマークの素となった、その逸話の再現。 ガンマンら完璧超人始祖が召喚された時点で聖杯戦争の地におけるランドマークのいくつかにリングが設置されていたことになる、因果逆転・歴史改変宝具。 例えばサグラダ・ファミリアがあったとして、多くの世界でサグラダ・ファミリアは唯の史跡であるが、ガンマンたちの歴史においては完璧超人始祖が人間に暗示をかけて建てさせた教会であり、秘密を探りに来たものを処刑するためのリングもある。 同様に此度召喚された世界樹のランドマークも、いくつかにはリングが元々存在したことになっている。 平常時は普通の施設だが、そこにリングがあると知る者が軽くいじれば容易くリングを出せる。 狂化したガンマンであっても問題はない。 【weapon】 なし。 この世に肉体を駆使してぶちこわせないものはないわーっ!! 【人物背景】 太古の昔に超人界滅亡の際、下界に降り立った神に選ばれ弟子となった10人の 完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン) のひとり。 未来を見通す目である 「真眼(サイクロプス)」 を持っており、その目で 「イレギュラー(普通の超人の枠を超えた力を持つ者)」 が始祖の理想とすべき世界に悪影響を及ぼす未来を見通し、彼らを粛清すべしと神であった男、超人閻魔に長年進言していた。 しかし下等超人の中から完璧超人に選ばれる例があるように、イレギュラーを容認していた超人閻魔からはその進言は尽く却下され、番人である"参式"ミラージュマンには外界に出ることを厳しく禁じられていた。 後に閻魔が粛清に動くと、それと敵対する正義超人、悪魔超人の闘争に乗じ自身も意気揚々と粛清に動き出す。 しかしかつての高潔さを失った師の姿には思うところがあったようで、闘争のさなかでその自分の気持ちに正直になれなかったことで実力を出し切れず敗北。 自慢の角も砕かれ死を迎えた。 最期までその目に映った真実を口にすることはなく、胸に秘めたまま…… 神に選ばれた良き超人というには傲慢で粗暴な性格だが、それは苛烈なまでの実直さと世界を憂う気持ちあってのもの。 正直であれ、理想的であれという原理主義に固まってはいるが、その振る舞いには確かな信念がある始祖たるに相応しい超人といえよう。 【サーヴァントの願い】 未来を見通しても変えられなかったのなら、聖杯の力で過去を変える。 そのためにもド下等サーヴァントを蹴散らす。 ……それが愚挙だとしても。過ちだとしても。やつ当たりにすぎないとわかっていても。 怒りと悲しみに目を曇らせ、狂気に堕ちた男は止まらない。 【基本戦術、方針、運用法】 正面切っての闘争。 フィジカルに関しては圧倒的なのでそれを生かして戦う……というよりそれしかできない。 あとは精々敵をリングに放り込むくらいだろうか。 【マスター】 浅上藤乃@空の境界 【令呪の位置】 下腹部。 歪んだ藤の花と蔓。 【マスターとしての願い】 際立って願いというものはない。 強いて言うなら生きる実感を感じたい、死にたくない。 そのためなら人を殺すのも仕方ない。殺したくないけど、仕方ない。 【weapon】 能力に依存。 【能力・技能】 ・歪曲の魔眼 先天的にもつ超能力。 視界内の任意の場所に回転軸を作り、捻じ切る。 右目は右回転、左目は左回転の回転軸を発生する。 この能力では物質を破壊することは出来るが、概念を破壊することは出来ない。 そして、魔術による防御障壁など彼女の理解を超えたモノも曲げられないとされる。 また藤乃が『これは曲げられない』と認識したものは曲げることが出来ない。 最終的には透視能力にまで覚醒しえるが、そうなった場合視力が大幅に低下する。 藤乃の能力は超能力であるものの、人為的に手が加えられているために魔術と超能力の間にある。 そのためそれなりの魔力供給も可能となっている。 ただし対魔力に阻まれる欠点ともなっている。 ・無痛症 先述の能力を封じるために後天的に施された処置によって得たもの。 しかし脊椎に損傷を受けたことにより不定期に痛覚を取り戻すことになる。 痛みを感じている間のみ歪曲の魔眼は行使できる。 【人物背景】 退魔一族の「浅神」の娘。元々は地元の名士の家柄であったが、没落し、分家の浅上に取り込まれた。 幼い頃から「歪曲」の能力が発現していたが、6歳の頃に父・羽舟にインドメタシン等の大量投与がなされたことによって人為的に感覚を閉ざされ、能力も消える。 以降は小、中、高と優等生で平穏に過ごす。 しかし不良グループに金属バットで殴打されたことで脊椎を損傷、不定期痛覚と能力を取り戻す。(のちにとある魔術師と出会い脊椎はすでに治癒している) ナイフで刺されそうになった瞬間に能力を行使、不良グループの一人を除いて『凶げて』殺害。 その際に飛び散った血と、患っていた虫垂炎が重なり刺されたと勘違い。 元々彼女は無痛症によって外部の刺激及び自らの身体を感じることができないために、生への実感が無く、感情の抑揚そのものが乏しい。 結果、他者の痛みに共感する形でしか生への実感を得られなかったことで、感覚を取り戻した後は残虐に相手を殺して喜び・快楽を得るという暴走を招く。 魔術師が評する彼女は「死に接触して快楽する存在不適合者」。 彼女自身に殺戮を楽しんでいるという自覚はないが、生き残った不良に対する振る舞いは嗜虐的この上ない。 本編で後に改心はするのだが、現時点の彼女は殺戮を自覚なく楽しんでいる時期よりの召喚。 それらしい理由さえあれば、殺す。 一人しか生き残れない聖杯戦争なら、死なないために殺す。 【方針】 生き残るために皆殺す。 基本はバーサーカー任せだが、マスターが視界に入ったら『凶れ』。

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