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第十三話 荒廃した世界

施設での一件があった日から、数ヶ月が経っていた。

あれから企業の力は衰退し、各地への支配力が弱まり、秩序は失われていった。
世界の各地に独立武装勢力が現れ、力なき者達はただ、世界の混乱に巻き込まれていくだけだった。

「うんしょ、うんしょ。」
小さな女の子が、荷物を運んでいる。
「疲れたよぉー!お姉ちゃん!!」
女の子の弟が、女の子に向かってわがままを放つ。
女の子は困り果て、弟をなだめる。
「ごめんね、あと少しだから。この荷物を、隣の街の人に届けなくちゃ、、。」
弟を慰めると、ふとあたりが暗くなる。
なんだろう、と女の子が空を見上げると、そこには鋼鉄の怪物がいた。
「う、うわぁ、、、!」
腰を抜かす、女の子の弟。
女の子は唖然とした表情で、それを見ている。
「おい!その荷物をよこせ。」
鋼鉄の怪物が、彼女達へと語りかける。
「だ、だめです!これは、、渡せません!」
女の子が必死にそれに抵抗する。
「んだとぉ?、、そんなに抵抗するって事は、大事なものらしいなぁ、、余計に欲しくなったぜ!!」
怪物はそういうと、頭の鉄の棒から火を噴き、身近の建物を破壊する。
「もしもそれを渡さねぇと、お前らもああいう風にしてやるからな。」
怪物は彼女達を脅し、荷物を渡すよう語りかける。
「こ、怖いよぉぉぉ!お姉ちゃん!!」
女の子に、弟がしがみつき、叫ぶ。
「逃げるよ!」
女の子は弟の手を掴み、走り出す。
「逃がすかぁ。」
鋼鉄の怪物が首を逃げた女の子達の方へ向け、追いかけ始める。
女の子達は全力で逃げるが、一歩一歩の距離がまったく違い、だんだんと距離を詰められていく。

「あっ!!」
女の子の弟がつまづき、転んでしまう。
「、、大丈夫?」
女の子が弟の体を持ち上げ、起こす。
だがしかし、そうしている間に、鋼鉄の怪物に追いつかれてしまった。
「ここまでだ。次逃げれば殺す。」
鋼鉄の怪物は思い切り顔を近づけ、彼女達を威嚇する。
「(だめ、、死んだって、こんな奴にこれを渡すもんか、、、!)」
女の子は最後まで怪物に抵抗し、渡す意思を見せない。
「そうか、、死にたいか、、。」
怪物は首を持ち上げ、先ほどの火を噴く棒を、彼女達に向ける。
「ごめんね、、。」
女の子が弟に語りかける。
「ううん、大丈夫、、。お姉ちゃんがいるから怖くないよ。」
弟がけなげに言うが、その足腰は震えている。
女の子は、なぜこういう時に悪党を颯爽と退治してくれるヒーローが、この世にはいないのだろう、と思った。
そして全てを諦めると、弟を抱きしめ、静かに目を閉じた。

しかし、しばらくしても、何も起きる気配が無い。
女の子は不思議に思い、目を開け、あたりを見回す。
するとさきほどの怪物が、遠くへと走って行く。
「どうして、、、?」
それは、自分達を追いかけて来た時以上の速度だった。
そして女の子は直後に、それは鋼鉄の怪物が逃げていたという事を悟る。

ズギュゥゥゥゥゥウウン、、!、、!、!

凄まじい閃光が女の子の背後から起こり、一筋の光が怪物に向かっていく。
それが直撃した鋼鉄の怪物は、眩しい閃光を発したのち、爆散した。
「な、なに、、?」
女の子が後ろを振り向くと、そこには鋼鉄の巨人がそびえ立っていた。
『君達は、、、?』
巨人が彼女達に語りかける。女の子は不思議と、その巨人に対して恐怖は芽生えなかった。
「私達は、、隣町に行く途中。あなたは、、誰?」
女の子が巨人に対して名前を聞くと、しばらくの沈黙の後、巨人が答えた。

『俺の名前は、、無い。』

女の子達は、無事に隣町へたどり着いた。
荷物は疫病に対するワクチンで、彼女達は薬の運び屋だった。
彼女達はすぐに自分達の街へ戻ろうとしたが、
住民にもう日が落ちるから危ないと言われ、街に泊めてもらったのだった。
ホテルの一室で、女の子は日課である日記をつける。
もちろん内容は、その日出会った巨人との事だった。
彼女はその巨人の雄雄しい姿と優しい声に、とても興味を惹かれていた。
日記をつけ終わり布団についた彼女は、明日も巨人と会った場所へ行こうと思うと、就寝したのだった。

次の日、朝早く目覚め隣町から出発した女の子達は、
途中で前日巨人と出会った場所へと向かった。
「巨人さ~ん、いませんか~?」
女の子が叫び、そんな姉を見て弟も、真似をするように巨人を呼ぶ。
しばらく探し続けただろうか、一向に巨人が現れる気配が無い。
女の子はくたびれ、近くの手頃な石へと腰をかける。
「はぁ、、昨日のは幻だったのかなぁ。」
女の子が思わずつぶやいていると、遠くから弟が、女の子を大声で呼んできた。
「どうしたのかな、、?」
女の子は弟の呼ぶほうへ走って近づき、弟がおおはしゃぎで指を刺す方向を見る。
すると、そこには前日出会った巨人がいた。
「うわぁ、、。よく見つけたね。」
その巨人は隠れているのだろうか、洞窟の中で大きな布に包まっている。
動く気配は無い。
「動かないね。、、触ってみようか。」
女の子とその弟が、それに触れようとした時、彼は現れた。
『待て!それに触るな!!』
突如現れた屈強な、隻眼の男。女の子と弟は、彼を呆然と見ていた。
『離れるんだ。』
二人は男の言うとおりにし、巨人から離れる。そこで女の子は、ある事に気づく。
その男と巨人の声が、同じなのだ。
「あの、、あなたが、これに乗っていたんですか?」
女の子が男に尋ねると、
『そうだ。』
男は一言ぽつりと答え、巨人に近づくと、女の子達に忠告をする。
『君達みたいな小さな子供がほっつき歩いていると、危ないぞ。
 ここらへんは、昨日のように小規模武装勢力のMTが、よく通りかかる。』
男はそう言いながら、巨人の整備を黙々と開始し始めた。
女の子達はMTと呼ばれるモノに対する知識がまったくなく何かはわからなかったが、
男の言っている感じから、それは昨日の鋼鉄の怪物の事なのだと、直感で理解した。
「あ、あの、、。私達の話を聞いてくれませんか?」
女の子が恐る恐る男に言うと、男は手をとめ、静かに女の子の話を聞き始めた。
女の子は、男に語り始めた。
自分達の街がとある武装勢力に支配され、毎日高額の税金を徴収させられている事、
その武装勢力は自分達の街の住民を道具だとしか思っておらず、毎日苦渋の日々をさせられている事。
そして、、その武装勢力を、巨人を使って追い払って欲しいという事を、、。
男は女の子達の話を聞いて、笑顔で一言、わかったと答えたのだった。

数々の鋼鉄の怪物達が、とある街に近づいてくる。
その中の、一番大きく武装も充実した怪物に乗った怪物群のリーダーが、一言つぶやく。
「さて、、今日は何をしようかねぇ、、、。」
男はその日できる事を頭に思い描くと、どうしても意地が悪いニヤケ笑がこぼれてしまっている。
そして怪物達が街に近づくと、とある異常が起きていた。
「なんだ?どうして奴ら、俺達が指示している毎日の盛大な出迎えをちゃんとしてないんだ?!」
怪物群のリーダーが思わず叫ぶ。
「ボ、ボス、、あれを、、。」
男の子分が、彼に声を震わせながら語りかける。
「んぁ?」
男が街の通路のはるか彼方に目を向けると、それはいた。
「あ、あれはもしや、、?ば、ばかな!!」
腰の抜けるかのような声で、男は叫んだ。
はるか彼方の鋼鉄の巨人が、自らの体を急速に加速させるオーバードブーストと呼ばれるものを発動する体勢に入る。
「や、やべぇ、、に、逃げるんだ!おめぇら!!逃げるぞ!!!」
男は自分自身今までにあげた事がないと思えた大きな声で、子分達に命令をする。
だがしかしそれは時既に遅く、
怪物群が退避行動を整えようとした時には既に眼前に巨人は迫り、その瞳を怪しく光らせていた。
「は、はや、、」
速すぎる、と男が言い終える前に巨人は左手から生じた光り輝く剣で、先頭にいた男の乗る怪物を真っ二つにする。
リーダーを一瞬で始末された子分達の怪物は、統制を乱しバラバラに逃げて行く。
そんな逃げて行く怪物達に、巨人に乗っている男が叫びをあげる。
『お前達!MTを降り、ただちに投降しろ!!そのまま逃げれば、ただちにトドメを刺す、、!!』
その強烈な一言に、全ての怪物は即座にその場に動きを停止し、それに乗っていた者達が、次々と怪物から降りてくる。
『そうだ、それでいい。』
彼らは街の自警団によって連行された。武装勢力の支配から放たれた街は、
鋼鉄の巨人に乗った男を英雄と称え、その日一日を、彼への感謝に費やしたのだった。

街が支配から放たれ活気付いたその夜、
祭で疲れ寝ていた少女が目を覚まし、街の巨人が止めてある場所へと向かう。
すると、街を救った男が巨人に乗り、どこかへ行こうとしている。
「待って!!」
女の子は叫ぶ。
『どうした、まだ何かあるのか?』
「どこへ、、行くの?どうして、行っちゃうの?ずっとずっと、ここに居ればいいのに。」
女の子が男へ、切実に言う。そんな女の子に対して、男が語り始める。
『俺は、、会わなくちゃいけない子がいるんだ。』
「会わなくちゃいけない、、子?」
『あぁ。俺が失った記憶の中で、唯一覚えている少女。
 姿以外ほとんど何も思い出す事はできないが、俺が毎日感じていた忘れてしまった何か大切なものを、
 その子は思い出させてくれる気がするんだ。だから、行かなくちゃならない。
 その子も、君のようにこの荒廃した世界で、怯えて暮らしているのかも知れないから、、、。』
男の答えを聞いて、女の子はこの街に男を引き止める事ができなくなった。
ここで別れれば、これから一生再び出会える気がしないその男に、女の子は言った。
「あなたの事、一生忘れない。あと、その巨人の事も、、。ありがとう。」
女の子が巨人と言ったものを男は少しの間見つめると、女の子に言った。
『そういえば、他にも覚えていた事が一つだけあった。
 覚えているというよりも、これを、、ARMORED COREを見ていると思い出す。
 この俺が、どんな存在であったかを、、。』
「あなたの、、存在?」
女の子が問うと、男は静かに答える。
『俺はレイヴンだ。』
男はそれだけ言い残し巨人に乗り込むと、街を去っていった。
「レイヴン、、絶対、負けないでね。私の、ヒーロー、、、。」
女の子は、遠い朝焼けの彼方へ消えゆく鋼鉄の巨人、ACを、その姿が見えなくなるまでじっとじっと、見つめ続けたのだった。


続く。




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