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第八話 アリーナ

 カナミはアリーナに来ていた。
レンナから、ACをあのままの状態で出撃するには、
危険すぎる、ACが最適な状態になるまでアリーナでお金を稼ぐべきだと言われたからだ。
「対戦相手と試合の日はレイヴンズ・アークが決めるから、あなたは約束の日にちゃんと来てくれればいいわ。」
カナミはレンナからそう言われ、そしてこの日がその約束の日だった。

 『私のAC、運ばれているはずだけど、、どこにあるのかな?』
カナミは自分のACをガレージで探すが、どこにも見当たらない。あるのは他のレイヴン達のACばかりだ。
だがしかし、皆同じACなのに、同じ形のものが一つもないな、とカナミは並ぶAC達を見ながら思った。

カナミがキョロキョロ歩いていると、途中で人にぶつかった。
『痛っ、、ご、ごめんなさい。』
カナミは相手の屈強な体に跳ね返され、その場にしりもちをついてしまった。
「すまないな、君こそ大丈夫か?」
相手は若々しく爽やかな青年で、彼はカナミに手を差し伸べ、カナミを立ち上がらせた。
カナミが立ち上がると、彼はカナミの目をじーっと見つめながら、こう聞いた。
「君は、、レイヴンなのか?」
カナミはギョっとした。自分はレイヴンであるそぶりなんて、まったく出していないと思っていたからだ。
『なんで、私がレイヴンだってわかったんですか?』
カナミがそう聞くと、その青年は静かにこう言った。
「君の瞳に、俺と似たものを感じたからだ。」
その青年の瞳を見ると、悲しくも静かに、深い深い怒りの炎が常に満ちた瞳をしているように感じた。
一瞬カナミは、怖いなと思った。自分もそんな瞳をしてるのかもしれないと思うと、嫌だなとも思った。
『私が、、あなたと似ている、、?』
「ちょっとそう思っただけだから、気にしないでくれ。
 それと、レイヴンだって他人にすぐ言っちゃいけないよ。君はバカ正直なんだな。」
『言うとどうなるんですか?』
「生身を狙われて、殺される事もある。」
カナミは恐ろしくなった。なるべくこれからは、必要な時以外喋らないようにしようと思った。

『あなたもレイヴンなんですか?』
カナミがそう聞くと青年は、複雑な表情をしたあと一言、
「そうだ」
と静かに言った。
『ACはここから見える機体ですか?』
「そうとも、あれだ。」
青年が指差した先には、全身にマシンガン系の火器を備えた重四脚ACがあった。
『すごい、、強そうな機体。』
「そうか、強そうか。それは嬉しいな。アレは、父の形見なんだ。
 そして今日、父の仇とこのアリーナで決着をつける事ができる、、。ずっと、この時を待っていた。」
それを聞いて、カナミは彼が、自分を似ていると言った理由がわかった気がした。
「だがしかし、君のような少女もいるんだな、、。レイヴンには。」
その成年は、一瞬険しい表情をしたかと思うと、すぐ元の表情に戻った。
「さて、そろそろ俺は行く。変な事を話してしまったな。
 不思議だな、いつもはレイヴン相手とは話そうとも思わないのに、、。」
『いえ、、。がんばってください。応援してます。』
「ありがとう。」
青年はそう言うと、四脚ACの元へと走っていた。

カナミが自分のAC、INNOCENTの元へつくと、レンナが待っていた。
「遅いじゃないカナミちゃん!何してたの!」
『すみません。』
「ま、いいわ。ところでカナミちゃん、武装の方なんだけど、、
 お金が無いって言ってたのに、この武器はどうしたの?」
カナミのACには、WR0SL-SHADEと、YWL03LB-TAROSが装着されていた。
『ええと、牧場を襲ったACの武器が、ほとんど無傷だったので使わせてもらいました、、。』
牧場を襲ったACタラダムチェインは、寺杷に対して圧倒的な実力差を見せ付けていた事で、
爆発に巻き込まれた箇所以外の、武器等の部品はほとんど無傷だった。
「皮肉ね、、お父さんを殺したACの武器を、使わなきゃならないなんて。」
レンナがそう言うと、カナミは苦笑いしながらこう言った。
『仕方ないです。お金が無いから。』

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「カナミちゃん、あなたの出番は次よ。」
レンナがACの横でジュースを飲みながら待機するカナミに、そう告げた。
『わかりました。相手は誰ですか?』
「サブアリーナ所属のレイヴン、メラよ。AC名は、エスペランザ。
 あなたがレイヴンとして私に認められた時と、同時期にレイヴンになったみたいね。」
『同期の人かぁ~。どんな人なんだろう。』
「彼もアリーナは始めてのようだけど、油断しちゃダメよ。
 彼のおじいさんも元レイヴンだったらしくて、その人の指導を彼は受けてきて、成績優秀らしいから。」
それを聞くとカナミは、少し落ち込んでしまった。
『ぅぅ、、エリートだね、、それって。最初から強敵と当たっちゃうなんて、、。』
そんなカナミを見てレンナは、あなたなら大丈夫と、そっと優しく抱きしめ励ますのだった。

「アリーナへようこそ。」
館内放送が始まり、広いドーム状の室内に、二機のACが対峙する。
「こんにちは。よろしくお願いします。」
ものすごく生真面目そうな声でメラに突然挨拶され、カナミは慌てて言葉を返す。
『あっ、その、よろしくおねがいします!!』
そのカナミの声を聞いて、相手のメラも慌てた様子で、
「こ、この声は、、っ。
 お、女の子、、?!聞いてない!!」
二人が慌ててしどろもどろしている間に、戦いのGOサインの音が鳴り響く。

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メラのACエスペランザが、軽やかな動きでINNOCENTに近づいていく。
「女の子だとは知らなかったけど、、恨まないでね。」
メラはそう言うと、ライフルを構え、INNOCENTに攻撃を仕掛ける。
『きゃっ?!』
カナミは慌てている間に、不覚にも初撃を受けてしまった。
そのまま追撃が来るのか?と思いきや、なぜかエスペランザの動きが止まっている。
『いまだ!』
スキあり、とばかりに、カナミがレーザーブレードで攻撃を仕掛ける。
「しまった!!」
エスペランザが、INNOCENTからの手痛い一撃を受ける。
だがしかしエスペランザは、我を取り戻したかのように、再び滑らかな動きになりINNOCENTに攻撃を仕掛ける。
「お返しだ!」
エスペランザのブレードが、INNOCENTに直撃する。
「ぁっ!んん、、つつ、、。」
再びエスペランザが硬直する。
『さっきから、この人どうしたんだろう、、。』
カナミがまた攻撃を仕掛ければ、思い出したかのように再び滑らかな動きに戻るが、どうにも動きがぎこちない。
「これは、、もしかして。ふふふ。」
レンナが、通信の向こうでいやらしい微笑みをする。

「カナミちゃん、こうすれば勝てるわよ、、。ごにょごにょ。」
レンナがカナミに通信で入れ知恵をする。
『や、やだぁ!そんなの!!』
「だまらっしゃい!!レイヴンの世界は、勝つためならなんでもするの!!GOGO!!」
カナミはすごく嫌だったが、仕方なくレンナに言われた事を実行する。
『ね、ねぇ!メラさん!!』
「な、なんだ?!戦闘中に話しかけるな!」
メラがすごく慌てた口調で返答する。
『つ、つよいね、、す、すてき。』
「!!」
エスペランザが硬直する。
その間に距離を詰めるINNOCENT。
「はっ、今は戦闘中だ!!」
だがしかし、エスペランザはすぐに距離を離してしまう。
「押しが足りないのよ!!もっと、もっとこう、ぐぃぃいっと!!」
レンナがカナミに叫ぶ。
カナミは顔を真っ赤にしながら、悩ましげに色っぽく、こう言った。
『わ、わたしね、強い人だいすき、、。
 メラさんって、すごーく強いんだね。この戦い終わったら、いろいろ教えてほしいな。
 ん、んん、、。やだ、私ッたら何言ってるんだろ、、。
 メラさんの強さ見てたら、体が火照ってきちゃって、戦闘中なのに何もわからないよ、、、(はーと)』
通信の向こうでレンナが大爆笑しながらすごく喜んでいたが、
カナミはメラの反応が気になってそれどころではなかった。
「、、、。」
エスペランザが完全に硬直した。
カナミは、その瞬間を見逃さず、エスペランザに猛攻を仕掛ける。
「メラさん、、ごめん!!」
レーザーブレードの強力な一撃が完全に隙を突き、エスペランザは大破した。
カナミとINNOCENTが、壮絶な戦いの末に勝利したのだった。
『ふぅ、、。レイヴンの世界って、大変だ。』

勝利したカナミとINNOCENTは、アリーナのガレージに戻ってきていた。
「よくやったねー、カナミちゃん!よかったよー。ウププ。」
笑がこらえきれないレンナを見て、カナミが言う。
『こ、こんな勝ち方、何か間違ってるよ!』
「いーのいーの、さっきも言ったけど、勝つためならなんでもするのがレイヴンよ!」
カナミが深いため息を一つつくと、後ろから呼ばれる声が聞こえた。
「あ、あの!!寺杷さん!!」
カナミが後ろを振り向くと、同い年くらいの若い男の子がいた。
「か、かわいい!!!」
『あの、どなたですか?』
「ぼ、僕はメラです!!さきほどまで君と戦っていた!!」
なんと、相手はメラであった。
突然の対戦相手の訪問により、カナミとレンナは身構えたが、
「さっき、言ってた事、、。」
『え?』
「ほら、いろいろ教えてほしいって!さっそく行かないかい?!」
なんとメラは、さっき戦闘中に言った事を鵜呑みにしていた。
『こ、困るよぉ!!』
「な、なんで!!君のほうから言ってきたんじゃないか!楽しみにしてたのに!」
『た、助けてぇ~、レンナさぁーん!』
後ろを振り向くと、レンナはいなかった。
既に遠くのほうから、このおもしろい事態を見届けるため盗聴器をカナミに仕掛け、望遠鏡で見ていたのだった。
「君の声をはじめて聞いた時、僕はイナヅマを受けた。
 そして君自身にこうして会って、見た瞬間、、、もう僕は君の事以外考えられない、そう思った!!」
カナミの顔が思わず真っ赤になる。
『(な、なんでこんな恥ずかしい事言えるのーっ?)』
「ねぇ、結婚を前提に、僕と付き合おう!!」
『だ、だめ、、ダメだよ!ダメダメ!!』
「どうして?僕はレイヴンだしとっても強いからお金もいっぱい稼げるようになるし、妻として安泰だよ!」
『そ、そういうのまだわかんないよー!』
メラがカナミにだんだんと、にじり寄っていった、その時、、。

「ひよっこが。強いレイヴンだと?笑わせるんじゃないわい!!」
メラの背中に、一人のおじいさんがいた。
「お、おじいちゃん!!」
「なんださっきの戦いは!今まで教えた事を、全て無駄にしおって!
 戦場だったら死んでおったぞ!!」
どうやらお爺さんは、メラの祖父なようだ。
メラがこっぴどく叱られている間に、カナミはそこから退散しようと思った。
「あっ!寺杷さん!待って!!」
「こらっ!説教中に余所見するんじゃない!」
メラはカナミを呼び止めようとするが、お爺さんに阻まれてしまう。
ある程度離れた時、カナミは立ち止まって振り返り、メラに向かって叫んだ。
『ごめんね、メラさん!今日は、こんな風に騙して勝っちゃって!』
メラとお爺さんは呆然として、カナミを見る。
『またアリーナで戦う時は、正々堂々、戦いたいです!次はこんな手、使わないから!』
そう叫ぶカナミに対して、メラは聞いた。
「、、わかった!一つ教えてよ!君の名前は、なんていうの?寺杷さん!」
『私の名前は、かなみ!寺杷かなみ だよ!また会おうね!!』
カナミはそう言ってメラに手を振ると、遠くに見つけたレンナのもとへ、走っていった。
「良い子じゃな、、レイヴンにしては、純粋すぎるぐらいに、、。」
そう言ってしみじみにカナミを見つめる祖父に対して、メラはこう言い放った。
「おじいちゃん、僕はあの子に負けたくない。
 あの子を好きになっただけだからじゃなく、レイヴンとしても、負けたくないな、、。」
祖父はそう言う孫の姿を見て、
自分が始めて同期のライバルと一緒にレイヴン試験をした日の想いを、思い出したのだった。
「この子は、メラは、、、わしの思う以上に、強くなるかもしれんな、、。」

                                                      続く




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