第七話 レイヴン試験

カナミがレンナのもとで訓練を受け始めてから、数週間。
カナミはACを、それなりに扱えるようになってきていた。
「結構筋がイイじゃない。お姉さん驚いたな。」
『おとうさんの娘だもの。このくらいできなくちゃ、笑われちゃう。』

カナミがACから降り、レンナのもとへ来た。
『ここいいな~。お金がかからないなんて。ずっとここで訓練できればな、、。』
「そんな事言ってたら、牧場を立て直すのがいつまでたっても始まらないわよ。
 牛泥棒だって、またいつ来るかわからないんでしょう?」
『うん、、。』
そう、カナミには時間が無かった。
運が良い事に、あれから牛泥棒の報告は無いが、またいつ来るかわからなかったからだ。
だがしかしレンナが言うには、牛泥棒をしていたのはどこかの力のある企業の可能性が高いと言う。

『企業?なんで企業が牧場を狙うの?』
レンナがその話をしたのは、三日ほど前だった。
「牛泥棒はレイヴンを雇ったりできないし、力の無い企業でもレイヴンをほとんど雇えないわ。
 テロリストだってそう。レイヴンはこの世で一番、雇うのにお金がかかる、なんでも屋なのよ。」
レンナが言うには、父を殺したレイヴン、シュラスバは、ランキング23位のランカーレイヴンで、
雇うのに金がかかるランカーレイヴンの中でも特に、相当の金を詰まれないと依頼を受けなかった事で有名だったらしい。
「だけどあなたのお父さん、対AC戦は初めてだったのに、相打ちとはいえランカーレイヴンを倒すなんて、すごいわね。」
少しだけカナミは誇り高い気持ちになった。だがしかし、そのせいで父は帰ってこない。
逃げてでも帰ってきてほしかった。牧場は破壊されたとしても。
『バカだよ、、。おとうさん。』
レンナはそんなカナミの言葉を聞いて、カナミのの頬を、平手で強くひっぱたいた。
「あなたの考えてる事はわかるわ。でも全ては、あなたのためじゃない!なんでバカなんていうの!おとうさんに謝りなさい!!」
『ぅ、、ひっく、、ご、ごめんなさい、、おとうさん、、、。』
カナミがそう言いながら泣き始めると、レンナはカナミを抱きしめ、こう言った。
「あなたはお父さんを誇っていいの。だから、ぜったいひねくれちゃダメ。
 ずっとずっと、まっすぐなイイ女でいなくちゃダメ。そうしたらきっと、お父さんも命を懸けてよかったと、
 天国のお母さんや知り合いに、あなたの事を誇れるから、ね。」
カナミは、自分にお姉さんがいたらこうだったのかな、と思った。
レンナにお姉さんになってほしいな、と思いながら、静かに目を閉じ、優しい温もりの中で、疲れた心を癒したのだった。

 カナミがACの操縦技術を学んでから、既に一ヶ月が経とうとしていた。
空中のヘリくらいならば即座に落とせるようになり、敵機との距離も、正確につかめるようになっていた。
「そろそろいいかな、、。」
レンナはそう言うと、カナミにこう告げた。
「じゃあ、レイヴン試験しようかしら。」
『え、私、レイヴンなのに?』
「あなたは、たしかに身分上じゃレイヴンよ。でも、私はあなたをレイヴンとして認められるほど力があるとは思わない。
 レイヴンに必要な力っていうのは、訓練や勉強で身についた力の事じゃないの。
 もっと別のモノなのよ。その力があなたにもちゃんとあるのか、今から見せてもらうわ。」
レンナが言い終えると、トレーニング施設に一機のACが配置された。
「これは、テスト施設で行える、実戦テストの最終レベルよ。
 本物のACと戦う事で、自分のACが対AC戦でどんなものなのかを、直に詳細に知る事ができるの。
 相手のACは基礎機体だけど、あなたのACよりはグレードが上よ。」
『これは、、誰か人が乗っているんですか?』
「いえ、フォーミュラフロントリーグにいるアーキテクトがプログラムしたAIで動くわ。
 けど、注意してね。そんじゃそこらの本物のレイヴンよりも強いから。」
カナミは怖くなった。急にACと実戦だなんて、少しレンナは無茶なんじゃないかと。
だが、やるしかなかった。
「それじゃ、いくわよ。」

「メインシステム、戦闘モード、起動します。」
カナミのACがテストモードから戦闘モードに切り替わった。
「私はアシストしないから、そのツモリで。」
戦闘が始まるやいなや、カナミのACに、相手のライフルが連射される。
『わっ。』
ACのライフルの攻撃は、テストに使った無人機の模擬弾とは、衝撃の重さが違った。
そして一気に距離を詰めてくると、左手のブレードを振りかざしてきた。
「コア損傷」
『や、やだ!こ、怖い、、、!!』
カナミは初めての対AC戦闘とその迫力による恐怖でパニックになり、
今まで訓練や勉強で教わった事が、全て頭から離れてしまった。
そんなカナミを見て、レンナがこう告げる。
「AP10%になったら、テストを終了するわ。その時は、レイヴンとしての登録も消すので、そのツモリで。」
『そんな事、聞いてないよ!!』
「本来は、死ぬまで続行するのよ。レイヴン試験は。
 レイヴンとしては死ぬけど、あなたは生きて帰れるんだから、それだけでも良かったと思うべきね。」
カナミとレンナが話している間にも、相手ACはライフルを撃ち続け、カナミのACのAPが刻々と減り続けて行く。
「AP50%」
『そ、そんな、、相手の動きが見えない、、。』
本来のカナミならば、決して追えない相手ではなかった。だがしかし、状況がカナミから冷静さを奪ってしまっていた。
「(これは、、見込み違いだったようね。悪く思わないでね、カナミちゃん、、。)」
やみくもにカナミはレーザーブレードを当てに行ったりもしてみるが、相手のACに当たらない。
『どうして、どうして?あんなに練習したのに!!』
「AP10%」
そしてついに、カナミのACのAPが、10%を切ってしまった。
「終わった、、わね。」

だがしかし、敵ACの動きは止まらなかった。
『え、え?』
「どうして?!AIのバグなの?カナミちゃん、逃げて!!」
だがしかし、そこはドーム型の狭い室内であり、逃げる場所がどこにもない。
『逃げる場所がないよ、、。私も、、死ぬのかな。』
「バカ言わないの!!あなたのおとうさんはいつだって諦めなかったんでしょ!!」
カナミは、いつも優しく強かった父の姿を思い出していた。
『(そうだね、、おとうさんは、諦めた事がなかった。そんなお父さんが誇れるような女に、、私はなる!!)』

敵ACは、トドメを刺さんとばかりに、カナミのACに対してライフルを発射し続ける。
だがしかし、カナミのACに当たらない。
「?、、なんか、急に動きが、、、。」
敵ACのライフル発射に合わせて、完璧なタイミングで、カナミのACは回避行動をとる。
その動きは、まるで敵ACの動きを完全にわかっているかのようだった。
敵ACはライフルを弾切れし、ライフルをパージしミサイルに切り替え追撃しようとした。
『そこだぁ!!』
カナミはそのスキを見逃さず、ブレードを振る。敵ACは左碗部を破損し、ブレードで迎撃する事はできなくなった。
「まさか、、狙ったの?」
カナミはそのまま敵ACを斬り続け、ついには敵ACは地に膝をついたのだった。
「、、、上出来よ。認めるわ、あなたの力を。ようこそ新しいレイヴン。私達は、あなたを歓迎します。」
『AP10%以下ですが、、。』
「いいの。あれだけの戦いを、瞬時にしてくれたから。
 レイヴンに必要な力っていうのは、そういう底力にも似たものなのよ、、。
 特訓や勉強だけで身についた力だけじゃ、意味が無い。
 戦場じゃ、今回みたいに、いや、もっともっと、何が起きるかわからない。
 だから、レイヴン達の試験は、いつも実戦で行われるのよ。」
カナミは安心して、その場に脱力した。
「そういえばカナミちゃん、途中から動きが良くなったけど、、どうして?」
『なんとなく、相手から迫る危険が来る瞬間をわかったんです。
 パニックになっている時は全然だったけど、開き直って集中できるようになったら、なんだか、、。』
『そう、不思議ね、、、。』

カナミのACは牧場に移送される事になった。
「そういえば、ACの名前、聞いてなかったわね。新しくACをランキングに登録するから、教えてちょうだい。」
『名前、、そういえば、決めていませんでした。』
「そう、それじゃあ、私が決めていい?」
『うん、いいよ。』
「INNOCENTでいいかしら?」
『はい!』
「登録しとくわね。あなた、ミッションは受けるの?
 それとも、寺杷さんがしていたように何も依頼は受けずに、牧場を守るの?」
『私には、、お金が必要だから、ミッションにもアリーナにも出ます。
 ただ依頼は、全てを防衛任務にしてください。』
「わかったわ、、。カナミちゃん、一皮向けたわね。」
『どういう事ですか?』
「いや、なんでもないわ。私が思っただけだから、、。
 あなたの専属オペレーターは、私、レンナ=フォーチュンが引き続きする事になります。これからもよろしく。」
『よろしくおねがいします。』
レンナは今回の事をカナミが乗り越えた事で、
彼女の雰囲気が少し大人に近づいたと感じそれを嬉しく思ったが、少し残念とも思った。


                                                         続く





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