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          「――――――――」


彼の周りから音が消える。水を打ったように――実際には消えていないのだが――静寂が訪れる。


 アストは音を「消した」。戦闘において必要としない音を。
彼がいらないと判断した波長を持つ音は、彼の聴覚から消え去る。

聞こえるのは、互いの機体が奏でる音だけ。


「(…そろそろか)」

次の瞬間、敵ACの右手のマシンガンが弾切れを起こす。そして、左手も。
ハンガーユニットから小型マシンガンを換装するが、その間に彼は男の右側面に回り込むように旋回する。

「(右足の間接の駆動音が鈍い。この独特の摩擦音…金属疲労だな)」

並のレイヴン…いや、人間には聞こえないであろう機体の声を彼は聞き逃さない。
これが彼の最大の武器でもあり、最大の防具でもある。

相手の旋回速度を上回り、次第に死角へと移りつつ、左手のアサルトライフルを投げ捨てる。
ハンガーユニットがスライド・展開し、左腕にレーザーブレードを接続させる。
ENを放出し、刃状に形成したそれは、刀身の周りに季節はずれの陽炎を生じさせる――。



ガレージに響く、静かな旋律。仕事を終え、貴重な安らぎの一時に羽を休める。
月の光だけが、この空間を照らしている。

「やっぱり変わったわね…あなた。初めて聞いた時にはこんなにやわらかい音は出てなかったもの」

鍵盤を滑るように叩きながら、彼は答える。

「そうか…確かにあの頃は無理矢理音を出していたな。
 でも、もうわかった気がする。私が出したかった本当の音。かつて私が聞き惚れていた、あの音の出し方」

後日、ミラージュは今回の一件以外にも、
作戦領域を雇ったレイヴンごと巡航ミサイルで吹き飛ばす(レイヴンはかろうじて生存)などの行いが発覚、
まもなく「粛正」された。

しかし世界はそんな些細な出来事など飲み込み、さらに加速する。
破滅に向かって。
歯車はきしみ、悲鳴を上げてなお回り続ける。

「…さて、もう寝ましょうか。今度は私があなたを演奏してあげる」

「またか?そろそろ休んだほうが………」

「問題ないわ」


―END―




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