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――黒煙を吹き上げる息絶えたMT。炎上する燃料タンク。ひしゃげた鉄骨。
  壁面や地面に深く刻まれたカラスの爪痕。そして…
  飛べなくなったカラスが一羽。その傍らに佇む白いカラス。

「敵勢力全滅…領域の制圧を確認。帰投する」

声色からは疲れなどは感じられない。

「思ったより早かったわね。さぁ、早いとこ……。まって。新たな熱源を確認。これは…AC?
 6時の方向よ。80秒後に接触するわ。一機だけのようだけど…とりあえず警戒して」

砂塵を巻き上げながら、赤いACがこちらに向かってくる。
距離を保ったところでそれは止まった。
その機体から通信が入る。調子のはずれた、どのか余裕のある声。

「ハッ、予想通り…か。まぁこの程度で沈んでもらっちゃ笑い話にもならんが…さすが、とでも言っておこうか。
 「破滅の指揮者」…アスタシア=エルレバイン殿?」

舐めあげるような口調で、男は続ける。

「いろいろ調べさせてもらった。さて、手っ取り早く用件を言おう。…ミラージュからの依頼だ。
 ここで死んでくれ」

 「なんですって?」

予想外の要求に、セラシアも驚きを露わにする。
企業側からの裏切りなど、今までには無かったことなのだから。

「ミラージュは何を考えている」

その問いに男は曖昧な返答をする。

「…さぁ?小難しい話は苦手なんでな。
 エライさんの話は…… あぁ、そうだ。
 レイヴンが…不要…とかなんとか。
 …まぁいいさ。俺は。トリガーさえ引ければ、それで」

「何?……!!」

瞬間、彼はおぞましい気配を感じた。眼前のACから。近いものを例えれば「殺気」というやつだろう。
それが、男の狂気を反映したような、深紅のACから立ち昇った。

一時の静寂は、両者のブースターの起動音によって終わりを告げた。



 両者は踊るように戦場を疾しり、歌いながら殺し合う。
殺意という楽器を手にして。

事切れたMTの死骸が無数に転がっている所為で、倉庫の密集した領域が、より一層狭く思える。
しかしそんなことにも構ってはいられない。敵ACの豪雨のような弾丸が、視界を遮る。
アストは施設を盾に、両手のライフルで応戦するものの、まるで違う質量に苦戦を強いられる。
思い切った攻撃もできず、手数で押される。


男は弾丸をばらまきながら、狂ったように笑う。アストには、それがひどく不快な音に聞こえた。
セラシアから通信が入る。

「あったわ。ディスト=ネクシム。ミラージュの専属レイヴンよ。
 どうりでアークのリストからは見つからないわけね…目立った活動を開始したのはついこの間からね。
 …でもやっかいだわ。彼は…」

そのとき、男のACの背負った、二脚ACには不釣り合いなほど長い、折りたたまれたチェインガンが展開し、
火花を散らして結合する。

「強化人間よ」

けたたましい轟音を発しながら、おびただしい数の狂犬の牙は「獲物」に向かって襲いかかる。
視界が、弾丸で埋まる。

気を抜けば、機体はたちまちボロ雑巾のようにされてしまうだろう。
しかし相手の勢いは衰えない。
先ほどから後退して距離を保ちつつ応戦しているが、ダメージは蓄積されていく。

領域の倉庫はもはや原型を留めていなかった。チーズのように、無数の穴が反対側の空間を覗かせている。

「まずいな…損傷チェック」

アストはこの状況下で、片手でディスプレイのパネルを叩く。

『機体ダメージ増加・右腕部損傷Lv4・脚部損傷Lv2・ジェネレーター出力7%低下』
ディスプレイに損害箇所が淡々と告げられていく。

「(…右腕部EN供給切断、各部駆動系へ。EN出力を2段階解放・・・)
 …セラシア、ノイズが混じるとやりづらい。通信回線を切断してくれ」

「ええ」

彼のこの不可解な言葉も、彼女には理解できた。これから彼が何をするのかも。




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