ヴェルンハント「ここに来るのも何度目だろうか…」
ここはコイロス浄水施設、ここで俺の最高の相棒、トラッシャーは死んだ。
トラッシャーとはずっとコンビを組んで依頼を受けて来た。そしてあの日も二人でここに来た。
だがそこでACと戦闘になり、トラッシャーが死に、俺は無様に撤退した。
俺の機体は生き残る事に全てを賭けた機体なのに対して、トラッシャーの機体は豊富な積載を持つ攻撃型の機体。当然と言えば当然の結果だった。

居ても立っても居られず、次の日にトラッシャーを殺したあいつに対戦依頼をして返り討ちにあった。
そしてあいつも、ほんの数時間前に、ジノーヴィを殺しトップランカーになり、旧世代兵器を破壊するといった圧倒的な功績を上げた直後に、特攻兵器の盾にされて死んだ。

今思えばあいつを恨んだ事はお門違いだったのかもしれない、どんなに強くても、あいつも依頼を遂行するだけのレイヴン。結局あいつは完璧に依頼を遂行しただけだ、命まで投げだして。

キサラギ操縦士「ヴェルンハント、まだここは特攻兵器飛来まで少し時間がある。既に職員も全員退避させた。残っているのはお前だけだ…それでも…」
ヴェルンハント「俺の相棒はここで死んだ、死んでもあいつは俺の相棒だ。」
キサラギ操縦士「そうか…気が変わったらアークや各企業に安全な場所の確認を取って避難しろよ。もっとも、既にアークの情報も不確かだがな…」
ヴェルンハント「…」
キサラギ操縦士「俺はAMIDAの世話が在るんでな、せいぜい天国へ行ける事を祈ってやるぜ」

ヴェルンハント「…」
正直死ぬ覚悟が出来ていたとは断言できない。コックピットの中では冷や汗をダラダラ垂らしていた。
だけど、アークに帰ってもトラッシャーは居ないし、あいつも特攻兵器の盾になって死んだ。
俺もあいつらにあやかりたいって気持ちが大きかったんだろう。自殺行為への動機付けには余りにも小さな理由だが、なんだかそうしなければならない気がしていた。

ヴェルンハント「もしもし…こちらグレートデン…」
ヴェルンハント「…」
誰もいない、当たり前だ。ここに居ればもうすぐ死ぬんだから…
ヴェルンハント「…こちらグレートデン…」

キサラギ操縦士「…こちらルシャナ、まだ居たのか」
ヴェルンハント「…」

キサラギ操縦士「まだ間に合うぞ?良いのか?」
キサラギ操縦士「…」
キサラギ操縦士「本当に死ぬ気かどうか知らないが…ギリギリまで付き合ってやるぜ…」
ヴェルンハント「…お前はそんな事をしてていいのか?」
キサラギ操縦士「もう世界は特攻兵器で目茶苦茶だ、少しくらい失踪したってな…」
キサラギ操縦士「…本当にここを守るつもりか?お前は確実に死に、ここもきっとぐちゃぐちゃの歪な世界に早変わりさ…」
ヴェルンハント「…そうだろうな…」

想像してみる、ACが壊される感触、辺り一面ぐちゃぐちゃのでこぼこになった中で死ぬ感触。

キサラギ操縦士「あくまで俺は技術屋だからな、偏屈な発想しかできないし、傭兵とやらのドライな感性も持ってないから、お前を他人事と割り切れないんだな…」
ヴェルンハント「…そうか…」

それから少しの間、キサラギ操縦士と色々な事を話した。
場違いな兵器の話で盛り上がり、ちょっとした企業への陰口で意気投合した。
だが時間はすぐに過ぎてしまう
キサラギ操縦士「そろそろ…俺の方が間に合わなくなる。俺は死ぬつもりはないからな…」
ヴェルンハント「そうか…判ったよ」
ヴェルンハント「俺は…やはり残ろう…」
キサラギ操縦士「そうか…」

キサラギ操縦士「じゃあな、健闘を祈る!」
ヴェルンハント「ありがとう、じゃあ元気でな、今度はいっそ空飛ぶAMIDAでも作ってくれよ!…」

ヴェルンハント「…ぼちぼち…時間かな…」

機体を戦闘モードに移行し、コックピットを確認する。
死ぬと判って何故戦闘モードを起動するのか、少し疑問に思ったが、レイヴンとしての経験がその疑問を頭の中で打ち消した。
完璧なコンディションだ、万全な機体に対して奇妙な嬉しさが込み上げて来る。
これで良い、これで良い、勝つ為ではない、何の為でもない。

そしてふと見上げると、多数の何かが飛来してくるのが見えた。

迫り来る大量の特攻兵器、右手のパルスライフルを乱射して直撃を避けようとするが、圧倒的な数の前にヴェルンハントの回避に隙が出来ていく。
一度隙ができてしまうと、そこに大量の特攻兵器が衝突して、もう特攻兵器を避ける事はできない。

ヴェルンハント「トラッシャー、俺はお前の敵討ちもできなかったよな」
左手のシールドを展開し特攻兵器の攻撃を緩和しようと試みるが、圧倒的な力の前にシールドはあまりにも頼りない存在だった。

ヴェルンハント「レイヴンでも無い奴に殺されるというのは、かっこよくないよな…」
ヴェルンハント「羨ましいぜ、相棒…もう少しでそっちに行けそうだ…」
特攻兵器に向かってシールドを掲げるヴェルンハント。その数秒後には、ヴェルンハントの機体は爆散していた。

誰も居なくなったコイロス浄水施設に、特攻兵器の雨が降り注ぐ。まるで、ここで死んで行ったレイヴン達を退屈させたくないかの様に、特攻兵器は降り続けた。

---------

かつてビルであった物を、乱雑に散らかして片付け忘れた、そんな感じの町が在った。
そこらじゅうの建物は崩壊し尽くしており、人の隠れている気配すらもなくなっていた。
パーム・パーム「これは…」
一つのACが降り立つ。機体名はリコンシルシェイク、両手にバズーカを持ち、軽量高速機でありながら装甲を併せ持つ機体。左手のバズーカをパージすると右バズーカとブレードで襲いかかる戦法の機体である。
パーム・パーム「ここも全滅か…次を当たろう…」
今世界は謎の特攻兵器により壊滅状態だ、多数のレイヴンが死に、それとは比べ物にならない程沢山の人々が犠牲になった。
それでも彼は、ACに乗り、ただひたすら生き残りを探し続けていた。
パーム・パーム「ここもかッ…」
リコンシルシェイクは次のポイントに向かおうとブーストを吹かし始めたが、不意にブーストを止めると、斜め後方に振り返った。
パーム・パーム「瓦礫の山が…動いてる?」
パーム・パーム「待ってろ今助ける!」
そういうとACの手を器用に使い瓦礫を退かして行く。
見えてきた物は衝撃的な物体だった。
それはどうみても…ACのコアだったもの…だった

パーム・パーム「今助けるぞ!」
機体から降りると、そのコアのハッチを落ちていた鉄材でこじあけた。
パーム・パーム「まだ、息はある…待ってろよ…」
満身創痍で意識の無い、名前も知らないレイヴンを背負って、彼はリコンシルシェイクに乗り込むと猛スピードでアークのガレージに向かう。
アークの医療設備を使えばこのレイヴンはすぐに適切な治療を受けられる筈だ。
パーム・パーム「もう少しだぞ…頑張って…生きるんだ…」

何故彼が特攻飛来後に救助活動に手を焼いているのか、それはきっと本人にしか判らない。
だが、少なくとも今の世の中では戦闘など余りにも無意味な世界だった。
各勢力は全て軍事的に大打撃を受けた。もう企業間の紛争を起こすような火種すらない。
また、特攻兵器によってレイヴンの数が減り、さらに主のジャックが逃亡した事によって統率力を失い、アークはその設備のみを残し霧の様に消え去ってしまった。
アーク、今思えば自由なレイヴンの自由と独立を保証するという規約にすら、綻びの種は在ったのかもしれない

ここは…ベット…
俺は…当然寝ている…
…だが今起きた…
ヴェルンハント「…生きてる?」
ヴェルンハント「…俺は特攻兵器の盾になって死んだんじゃ…」
どうも腑に落ちないが、全身の包帯が特攻兵器の盾になったという事実だけを教えてくれた。
ヴェルンハント「そっか…あの雨の中…生き残ったのか…」
ヴェルンハント「…」
ヴェルンハント「…こうなるんだったら…死に際のあの気持ちは…少し勿体なかったぜ…」

パーム・パーム「目を覚ましたか?」
ヴェルンハント「俺を助けたのは…お前か?」
パーム・パーム「…そうです、コアの残骸に埋もれていて、かろうじて生きていたので…」
ヴェルンハント「…そうか」
パーム・パーム「感謝しろなんて言いません、しかし、私も謝るつもりはありませんよ…」
ヴェルンハント「判ってる…」

パーム・パーム「ようこそ…レイヴンズアークへ…」
ヴェルンハント「…?」
パーム・パーム「登録レイヴンはキサラギ操縦士と私パーム・パームの二人だけ。」
ヴェルンハント「どういう事だ?」
パーム・パーム「今のところ、旧アークは事実上消滅…各企業も主要拠点を襲われ通信不可能…」

パーム・パーム「なので、生き残ったレイヴンに集合を掛けた所、来たのはあなたとキサラギ操縦士さんだけでした…」
パーム・パーム「早くも残存勢力はそれぞれ独立したグループを形成し始めいる筈です。」
パーム・パーム「私たちも、身を守るだけの組織が必要なんです…」
パーム・パーム「あなたの機体は旧アークの施設で修理しておきました。是非我々と行動を共にしてください…」
ヴェルンハント「…判った」
パーム・パーム「では、あなたをアークのレイヴンと認めます。」
ヴェルンハント「…下らない話ならもう良い。キサラギ操縦士は何処だ?」
パーム・パーム「ガレージの方に行きましたよ?」
ヴェルンハント「そうか…」

パーム・パーム「確かに下らないかもしれないが…私は本気なんだ…」
混乱と混沌に満ちた、この荒んだ世界、何の価値があると言うのか、そこで生き残ろうとする事に、何の価値があるのか。
だが、何も判らなくてもパーム・パームには絶対に失えない物が在った。レイヴンとしての生き方しかできない人間だった。

機械音が木霊するガレージに、靴音が響いて来る
ヴェルンハント「あの時はありがとう…本当に助かった…」
キサラギ操縦士「ヴェルンハント…あの特攻兵器の中を生き残ったのか?」
ヴェルンハント「あぁ…パーム・パームに拾われてな…」
キサラギ操縦士「…」
キサラギ操縦士「どうだいこのルシャナは」
キサラギ操縦士「キサラギの本部もまるで統率できていないもんだから、しばらくこいつでアークに荷担させてもらう事にしたんだ。」
ヴェルンハント「…」
考えてみた、このアークがどうなるのか。地方の武装勢力として活動を続けて…報酬を貰い…レイヴンとして戦い…そして…
ヴェルンハント「なぁ…いつかここにも特攻兵器が飛来するんだろ?」
キサラギ操縦士「…そうだな」
ヴェルンハント「パーム・パームは…何を張り切ってるんだろうな…」
ヴェルンハント「かなりの実力はあるが…新米でスロースターターのあいつが…」
ヴェルンハント「特攻兵器に煽られて、一体何に情熱を注いでるのやら…」
キサラギ操縦士「まあ…判らないでもないさ…。今後どういう動きをするか…見ていこうじゃないか…」

パーム・パームは毎日、リコンシルシェイクにのりアーク周辺を散策している。たまに遠出でコイロスまで行く事もあるが、基本的には周辺の散策がメインのようである。
見渡す限りの瓦礫の山、その惨状にすら、彼は慣れてしまっている様だ。
パーム・パーム「今日も誰もいない…か…」
パーム・パーム「敵も味方も…居ないって訳か…」
パーム・パーム「居るのは…狩られる人間と…」
パーム・パーム「狩る特攻兵器だけって所だな…」


キサラギ操縦士「アークとやらも、暇な組織だなぁ」
ヴェルンハント「…」
キサラギ操縦士「死に際だと思って、みんなカッコつけようとしてるのさ…」
キサラギ操縦士「パーム・パームも…お前もな…」
ヴェルンハント「…二度目は無いさ…」
キサラギ操縦士「そうだな…」
二度目はない、そう声に出して言ったものの、心の中の疑いは消えなかった。
カッコつけて死のうとしたのに生きていた、その結果俺は、死に対してとても鈍感になっていたのかもしれない。
だが二三日もすれば、また何かとカッコつけて死にたくなる。

きっとパーム・パームも、そんな気持ちを抑え切れずに、こんな事をしているのだろう。
レイヴンズ・アーク。既に崩壊した組織を再建しようとするパーム・パーム。
だが判りきっている。パイロットが三人居るだけじゃ何の組織にもなり得ない。
だが、彼がこうしなければならなくなる程まで、世界は崩壊してしまったんだ。

パーム・パーム「哨戒を終了、帰投する。」
ヴェルンハント「あぁ、次は俺が行こう、腕が鈍ってそうな気がするんだ」
パーム・パーム「そうか、感謝する。」

きっと俺は、このまま死ぬまで茶番を続ける運命なんだ。トラッシャーを失う前から、決まって居た事なんだ。

キサラギ操縦士「ルシャナは繊細なACだから、お前のみたいな杜撰な機体と一緒のガレージも嫌だってよ」
ヴェルンハント「そうかい、じゃ哨戒行って来るぜ。」

見渡す限りの荒野と廃墟、アークに残った物資を糧に、ここで残った時間を茶番で過ごす。
悪くはないな。そう思えた。

---------

ヴェルンハント「こちらグレートデン、サークシティ跡方面の哨戒を終了、帰投する」
パーム・パーム「了解した、こちらも付近の哨戒が終わり次第帰投する、アークで落ち合おう」

今日も俺はあの茶番を続けている。パーム・パームもキサラギ操縦士も言葉には出さないが、このやるせない感じを胸に抱いてるのだろう。
来る日も来る日も瓦礫の山を散策するだけの毎日、物資だけは充分だが、余りにも人間の少ない世界だった。
日々着実に哨戒範囲を広げて行く俺達「アーク」、だが目にするのは常に瓦礫の山ばかり、目新しい物などこれっぽっちもありはしない。いつからか、新しい物を期待する事すら忘れてしまった。

キサラギ操縦士「こちらルシャナ、今日も一番乗りで帰投した」
パーム・パーム「こちらリコンシルシェイク、私も続きます…」

パーム・パーム「…」
一体何度同じ事を繰り返したのだろうか、毎度同じ事を明るく口にしながら、皆の目は曇っている。
いや、もう私達の目は不気味な程透き通っていたのかもしれない。

キサラギ操縦士「今日はここまでか…」
パーム・パーム「明日はあの辺りを哨戒しましょう。」
ヴェルンハント「…」

あれから各企業の本拠地はことごとく特攻兵器によってぐちゃぐちゃにされた。もうキサラギ操縦士に帰る場所は無く、俺達以外のレイヴンは全くと言って良い程見なくなった。

パーム・パーム「このアークに所属する、全てのレイヴンの独立の為に。」
ヴェルンハント「…」
キサラギ操縦士「それじゃ、俺はお先に失礼させてもらうよ」
ヴェルンハント「あぁ…」

パーム・パーム「…」
確かに私達は限り無く自由で独立した存在だった。何者にも干渉されない、烏のような存在だった。
だがこの「アーク」のレイヴンは、瓦礫の山から物資を掠め取って生きる、小賢しく誇りの無い烏のようだった。
もっともそれを恥じる気は少しも無い。この荒れ果てた世界で私は、このアークを率いる以外、何の価値も無い男なのだから。

私は私なりにこの状況を満足していた、あの瞬間までは。

キサラギ操縦士「未確認の熱源反応を確認…」
パーム・パーム「…!」
キサラギ操縦士「くそっこっちに向かって来る!迎撃する!」
ヴェルンハント「…この荒地の何処から…熱源反応が産まれようがあるんだ…」
パーム・パーム「至急そちらに向かう!最大限回避しろ!」
キサラギ操縦士「こんな技術…本社にも無かったぜ…」

キサラギ操縦士「…強すぎる…ここは危険だ…アークへ…」
パーム・パーム「こちらリコンシルシェイク、ルシャナ応答せよ、ルシャナ…」
ヴェルンハント「…」

俺達が駆け付けた時にはルシャナは跡形も無く焼き付くされていた。そして当然、キサラギ操縦士も死んでいた。
その時は何とも思わなかった、既に死は身近過ぎる存在だったから。だが…アークに戻った時…

ヴェルンハント「…」
パーム・パーム「…アークに所属する…全レイヴンの…」
パーム・パーム「自由と…」
ヴェルンハント「…もうやめろよ…」

パーム・パーム「ここは…レイヴンズアークです…」

パーム・パーム「アークに疑問のあるレイヴンは…」
ヴェルンハント「…何言ってるんだ…」
パーム・パーム「除隊…です…」
ヴェルンハント「俺達二人しか居ないじゃないか、組織も何も…」
パーム・パーム「物資は持って行って構いません…今すぐ…アークから…」

ヴェルンハント「…」
ついにパーム・パームも気が狂ったらしい、あいつは最初から妙にアークに固執していたから、組織の規則しか彼の心の拠り所は無いのだろう。
どちらにしろもう二人しか居ない…アークは解散だ…

ヴェルンハント「判った…出て行こう」
ヴェルンハント「お前もせいぜい殺されない事だな…」
パーム・パーム「…」
ヴェルンハント「…楽しかったぜ、アークごっこも」
パーム・パーム「…五月蠅い!」
ヴェルンハント「…じゃあな…」

これからどうするかなんてアテは無い、ぼんやりした頭で思い浮かんだ事は、俺の一度目の死に立ち会ってくれたキサラギ操縦士の敵討ちだった。

パーム・パーム「…」
静寂だけがこの場を満たしている。ヴェルンハントも去り、私達のアークは事実上消滅した。
私達のアークがどれだけ滑稽な物かは自分でも良く判って居た。だが他に何もなかった。そして今はもう何も無い…

気がつくと私はガレージで寝ていた。ガレージの中にはリコンシルシェイクが一機だけで、寂しそうな表情をしているかのようだ。
ルシャナのパーツをもう少し良く見ておけばよかった、グレートデンの使い込まれた機体をもっと見ておけばよかった。私は今そんな下らない事を考えている。

パーム・パーム「もう…何も…」
ゆっくりと上体を起き上がらせると、不意に涙が零れた。
あぁ、特攻兵器が飛来してから、涙を流した事など無かった。ただ不安を打ち消そうと分不相応に張り切っていた。
そろそろ私も諦めようか。そろそろ休んでも良いのではないのだろうか、ふとそんな疑問が頭を掠めた時、ヴェルンハントとキサラギ操縦士の顔が見えた気がした。

ヴェルンハント「同じ場所に居ればのこのこと現れやがって…」
ヴェルンハント「トラッシャーの敵討ちもできなかった俺だが…今度こそはキサラギ操縦士の敵討ちをさせてもらうぜ…」
ACで言うとタンク型というべきなのだろうか、全身に青く透明な刃を持った「兵器」が、グレートデンの前に姿を現した。
その「兵器」は機体と同じ色のレーザーを放ちながら近付いて来る。対してヴェルンハントは距離を取り回避に専念しつつENシールドを展開させ、ミサイルを少しづつ当てて行く。
経験の差というべきなのだろうか、ヴェルンハントの手慣れた手管の前に「兵器」はやや劣勢の様に見える。
一度死を覚悟したヴェルンハントに、まだ死を知らぬ「兵器」は弱かった。
通常のACからは考えられない程のレーザーを巧みに躱し、避け損ねた物もシールドで受け止め被害を最小限に抑える。
程無くして、「兵器」は爆散した。ヴェルンハントにとって、余りにも味気無い敵討ちだった。

ヴェルンハント「…」
広がる荒野と、青く美しい「兵器」の破片。何もヴェルンハントの心を満たしはしなかった。

パーム・パーム「…」
どうやら既にヴェルンハントは何処かへ行ってしまった様だ。
そしてグレートデンの代りに、そこには青い四脚型のACのような「兵器」が居た。
パーム・パーム「お前が…」
パーム・パーム「…」
その兵器はリコンシルシェイクを見るなり襲いかかってきた。
素早い挙動、強力なレーザー、動きの重いリコンシルシェイクは躱す事が出来ず正面から攻撃を受けてしまう。
パーム・パーム「…強いですね…」
第六感が「こいつは普通じゃない」と告げている。勝算も無い。
だがパーム・パームは引かない、調子さえ良くなれば自分は何でも出来ると信じていた。慣れてしまえば何でも出来ると信じていた。
パーム・パーム「このアークに所属する全レイヴンの独立の為に…負ける訳には行きません…」
左手のバズーカをパージしブレードを取り出すリコンシルシェイク。
OBを起動し「兵器」の横に一気に接近、ブレードで切り裂くと同時にバズーカを叩き込む。「兵器」は反応し両腕を振りかぶるがリコンシルシェイクは既に遠くで次の突撃の為にOBを起動している。

スピードで振り切るリコンシルシェイクだったがある誤算に気が付いた。ブレードが全くと言って良い程効いていなかった。
全身に青いエネルギーを満たしたこの「兵器」に、EN武器は掠り傷程度の損害しか与えられない。それに気付き距離を取った矢先に、「兵器」の放った強力なレーザーがリコンシルシェイクを射抜いた。
パーム・パーム「まさか…それでも…」
歪み軋むリコンシルシェイク。既にその機体は耐久性能の限界だった。
機体が爆散する直前に、リコンシルシェイクは最後のOBで「兵器」に突撃しバズーカとブレードを叩き込む。
そして爆散するリコンシルシェイク。同時に、その「兵器」も輪郭を崩し始めた。
パーム・パーム「これで…アークは…」
そこでパーム・パームの意識は途絶えた。

全てが瓦礫と化した世界で、一人荒野を漂い歩くグレートデン。
その機体に乗るヴェルンハントは、今まで一体、何度死んだのだろうか、そして何度敵討ちをしたのだろうか。

そして今グレートデンに襲いかかる「兵器」。
こちらも何度破壊されたのか、何度再生したのか、誰も知る事はできない。
全身を真っ蒼に変化させ、既にACとしての形を失った「兵器」。

ヴェルンハント「…」
まるで挨拶の様に自然に臨戦態勢を取る二つの機影。
その決着が付く日が来るのだろうか。
そんな疑問も束の間、ヴェルンハントは、もはや誰も居ない筈の世界に向けて、通信を開始した。
ヴェルンハント「ごきげんよう、最後のレイヴン。これは、君の実力を見込んでの依頼だ。」





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