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 A.U.リックというAC乗りがいた。
 彼はレイヴンではない。彼は、賊だった。
 人の財を盗み、私腹を肥やす悪人だった。

 他者の富を奪い、自身の糧とする。その所業は咎められこそすれ、称えられる事などないものだ。
 しかし、特攻兵器の襲撃により、秩序は失われて久しい。咎めるべき警邏の姿はなく、狐狸の類は気の向くままに刃を振るう。弱肉強食の道理において、真っ当な人間の居場所などなかった。

 そして、彼もまた時代に迎合し、賊となった。
 レイヴンも盗賊も変わらない。ACという強大な力を要している以上、企業の依頼を受けるのも他人の財を頂くのも同じ事。そう考えた者は彼だけではない。
 むしろ、実力に優れないレイヴンとしては賢い選択だったと言えるだろう。

 だが、リックは民に嫌悪される事を極力恐れた。

 盗賊である以上、隠れ住み、支配者の手先から逃れなければならないのは当然の事だ。
 だが、盗賊というのは基本的に鼻つまみ者であり、人々の協力を得れる立場にない。強盗に慈悲を掛ける馬鹿がいないように、荒廃した世界において、希望論は楽観に過ぎない。

 もしアライアンスやアーク残党が討伐隊を結成すれば、真っ向勝負ではまず勝てないだろう。隠れ、やり過ごすのが最良だ。
 その際、人々に嫌悪されていればどうなるか。答えは自明の理である。

 自身の富を奪おうとする者を追い払う為に、討伐隊に協力を惜しまないだろう。土地勘がある原住民と、討伐隊の最先端技術の手に掛かれば、盗賊の隠れ家など容易く見つかってしまう。

 故に、リックは義賊を気取った。
 裕福な者の富のみを奪い、半分を隠れ住む土地の民に分け与えた。土着の民に乱暴を働いた者には厳罰を以って対処した。

 そうして、彼は人々の信頼を得た。英雄さながらの待遇で、人々に受け入れられた。
 リックの人生は、時代の波に呑まれる事無く利用していた。順風満帆と言ってもよかった。

 だが、海の波が一定である事はあり得ない。時に時化が来るように、荒波に船がもまれるように、順風は時として荒風に変わる。
 それに対する対処をリックは怠っていた。

 アライアンスという法外の敵。彼らは討伐の際に潤沢な富を村民に注ぐと確約し、賊の情報を吐かせるべく寝返らせたのである。
 英雄とリックを持て囃したのは、確かな利があったからだ。故に、アライアンスの齎す富の前では、築き上げてきた関係など意味をなさない。

 情報を封鎖する為の盾が、逆に情報を敵に与える。これは、彼が最も危惧していた事態だった。平穏な日々に安堵する前に抱いていた恐怖だった。
 それが、今日現れた。
 気付いた時には、もう遅い。今まで彼を表舞台にのし上げていた波は、逆風となって彼自身に襲い掛かっている。

『……リックさまぁ!』

 リックの操るフロート型AC、マリーゴールドの内部スピーカーが、たった今死亡した手下の断末魔を捉えた。
 言葉と同時に視界の端を、MTの爆発が赤く彩る。爆発四散した鉄塊がACの装甲を横殴りに打ち据える。

 コックピットの振動が、リックの頭蓋を揺らす。モニター越しの視界には、荒れ狂う弾幕の群れ。
 烈火のごとく連射され、狙撃の如く精密な弾丸は、機動力に劣るMTの装甲を打ち抜き、物言わぬ骸へと変えていく。
 ACであるマリーゴールドでも回避に梃子摺る弾幕だ。MTが耐えられる道理はない。

「各機、散開! 狙いを逸らしつつ後退しろ!」

 恐怖によって上擦ったリックの命令が、手下達に伝達される。その言葉に従い、MT達は攻撃の手を緩め後退し始める。
 弾幕の厚みは緩くなり、多少なりとはいえ回避が容易になる。その事に安堵の息を吐きつつ、リックはレバーを操作、フロートブースターの角度を操作し、滑るように後退する。

 無論、反撃の手は緩めない。後退するからこそ、付け入らせないだけの攻撃が必要となる。
 マリーゴールドは、左手に装備したライフルを乱射しつつ、右手に持つエネルギースナイパーライフルを構えた。銀色に光る銃口に青雷が灯り、敵のMTを撃ちぬくには十分な力を収束する。
 ECMが発生しているとはいえ、数を撃てば命中する弾もある。MTに貼り付けられた安物の装甲は大出力のエネルギーに打ち抜かれ、倒れ伏した。

 それでも、弾幕はなくなる事はない。なにしろ数が多い。リックの配下のMTは、現状で三機。それに対し、敵のMTは三十を超える。
 仲間の死に躊躇せず近づいてくるMTの大軍。集団戦法という最も単純だが、それ故に破りがたい先方の前に、盗賊のゲリラ戦術は通用しない。

 そも、ゲリラ戦法とは先手こそを主とするものだ。防衛戦で真価を発揮するが、その基本は相手より先にイニシアチブを握る事にある。
 攻撃的防衛戦術。やられる前にかく乱、各個撃破を主とする以上、ゲリラ戦に一番必要なのは情報だ。戦力が足らずとも、敵の機動を読めれば対策は建てられる。

 ――逆に言えば、情報がなければ対策も建てられない。
 そのリスクを知るが故に、リックは大枚を払って、設置型の広域レーダーを隠れ家に取り付けていた。
 だが、討伐隊はECMを利用していた。範囲のみを重視したレーダーは敵影を捉える事なく、接近を許してしまった。

 これが正規の軍隊であれば、サーモグラフィー、ソナーを加えた多面的察知が可能となっていただろう。そうでないにしても、ECM対策は行っていた筈だ。
 だが、彼らは所詮盗賊であり、また軍事技術に対する知識も薄かった。レイヴンの経験を持つリックでさえ、AC以外の技術に関しての知識は浅い。

 故に、彼らは大軍に対し小勢で、それも正面から戦う羽目になってしまった。
 ACという法外の力を持ってしても、三十対四である。その上、敵陣営の背後にはそれを遥かに上回る増援部隊が近づいてきている。
 そして、増援が到着すれば、九十対四となる。

 敵軍勢の数が自軍の二割を上回れば真っ向勝負での勝利はないとされる近代戦術論において、この数字は異常である。
 絶望的数字である。
 壊滅的数字である。
 故に、撤退は必死のものとなる。

「よし、いけるぞ!」

 配下の者を激励すべく、リックは鼓舞の言葉を叫ぶ。応じる声に頷きつつ、トリガーを引き絞る。
 飛び交う銃弾は、マリーゴールドにも少なからず傷を残している。如何に最強の機動兵器と言っても、ACは無敵ではない。
 単独戦術、ゲリラ的な行動に酷使された鉄の五体は軋み、装甲ごと打ちぬかれた駆動モーターは悲鳴を挙げている。左手の間接は機能を鈍らせ、まともに照準も合わせられない。

 だからこそ、流れを掴んだ現状を維持したい。
 そうすれば逃げ切れる。MTではACの機動性には追いつけず、配下のMTも機動特化型だ。後退し、陣営を建て直し、ゲリラ戦法を使いこなせばどうとでもなる。

 そう、リックは楽観していた。
 その楽観こそ、この荒廃した世界において死にも等しい甘さだという事を忘れ、楽観してしまった。

『ちょこまかと逃げ回るか、懲りない連中だな』

 その言葉がリックの鼓膜を叩くと同時に、目前の敵と交わす銃火とは違う、赤い閃光が迸った。音速で飛び交う弾丸を光速で追い抜かした閃光は、MTの一機へと吸い込まれるように激突する。

 レーザーキャノンが放った雷だと、リックが察知した時には、もう遅い。着弾したレーザーは膨大な熱を以ってMTの装甲を貫き、内部機関を蒸発させた。
 溶解し、暴走したMTの動力炉が暴走し、白熱の光となって爆発する。一際強い爆発は、小さな雲となって天に昇った。

 MTの大軍が光の担い手の姿を認め、足を止める。その大軍の中から、四足を滑らせ接近してくる白銀と白金の装甲を持つ異様が現れる。
 異様、という言葉はその派手な色だけを示すものではない。その形状のおいても、それは異様だった。

 先に述べた四足に加え、棒か槍のように突き出された腕が鋏のように開かれていた。その奥に取り付けられた砲口は、じりじりと熱光を溜め込むかのように鳴いている。
 金銀の豪勢な色合いに映える、薔薇のように鮮烈な紅色。それは、敵に恐怖を覚えさせるに十分な、凶悪な輝きだった。

 そのACの名を、A.U.リックは知っている。アライアンスの虎の子、エヴァンジェの副官として活躍するその男の名は――――

『ダメージが大きい者は下がっていろ。撃ちあいに支障がないものは援護射撃を行え』

 戦術部隊副隊長、トロット・S・スパーは配下のMTに指示を飛ばしつつ、アクセルペダルを踏み込んだ。
 担い手の意思に応じたAC、バリオス・クサントスは四足の高い機動性を発揮し、猛禽のように跳躍する。

 盗賊達のMTの後退速度を上回る高速を持って接近したバリオス・クサントスは、逃れようのない至近距離からレーザーキャノンを発射。
 滑車路めいた砲身を滑る光は、MTへと直撃。ジェネレーターを融解させ、停止させる。

 ECMの働く上空を舞う相手に、リックは照準を合わせる事すらままならない。

 悠々とバリオス・クサントスは着地し、それと同時に旋回。肩に備え付けられたリニアキャノンを発射し、敵MTへと着弾させる。
 リニア機構による弾丸は、ダメージよりもその“重み”が厄介だ。熱の重み、固めの重み。一瞬とはいえ動きを固め、さらに熱暴走を誘発するそれは、威力と言うよりも機動力を削ぐに格好の得物だった。

 そして、機動力に特化した盗賊のMTにとって、それはまさに致命。

『今だ! 撃て!』

 動きを止めた盗賊のMTに対し、トロット・S・スパーの指示によるMTの一斉射撃が襲い掛かる。
 回避運動を行わない敵など、近代戦法においては的でしかない。MTは数多の弾丸に為す術もなく蹂躙され、オイルをさながら血のように垂れ流しながら倒れ伏した。

「くっ、こんな易々と……くそっ!」
『……次は貴様だ。盗賊風情がアライアンスの荷に手を出した事、後悔させてやる』

 一撃でMTを沈めた光の長腕。その穂先を突きつけられ、リックは狼狽する。
 部下の死を悼む余裕も時間もない。戦場という流動する状況において、感情の揺れは死を招く。それを感覚として理解しているリックは、怯えを喉奥に飲み込みつつ、コンソールを操作した。

 滑るようなマリーゴールドの後退に、駆けるようにバリオス・クサントスが追い縋る。
 肩に備え付けられたエクステンション、俗に電池と呼ばれる外部エネルギータンクが光り、バリオス・クサントスに活力を与える。その駿馬の走りの前に、マリーゴールドはじりじりと距離を詰められていく。

 リニアキャノンが咆哮し、弾丸の熱波がマリーゴールドに吹き付ける。皮一枚のところを抜けた熱弾は、背後に立ち並ぶ樹の一角を吹き飛ばす。

「うぉっ……熱が……!」

 避けた筈なのに、モニターの示すACの外部温度が跳ね上がった。直撃すれば、熱暴走は免れない。その事実に、リックの背筋が震える。

 だが、腕部のレーザーキャノンの砲口に光はない。ブースターによる接近でエネルギーを使いきっているのか、MTを一撃で沈める凶悪な光槍は、その穂先を緩めている。
 それだけではない。両者の疾走により戦場は移行し、MTの姿はもはや見えない。機動性に劣る以上、こちらに追いつく事はないだろう。

 つまり、目の前のACを倒せば、自分は生き残れる。

 その事実を強く胸に刻み付けつつ、リックはアクセルペダルを蹴り飛ばす。応じるようにブースターの炎が変転し、右腕は狙撃銃を構える。
 ECMの働きが鈍い。FCSは本来の照準精度を取り戻し、銃口の先にバリオス・クサントスの姿を捉える。

「食らえ!」

 トリガーを引き絞るや、バリオス・クサントスのそれにも劣らない光が放たれる。名銃KRSWもかくやという一撃に、バリオス・クサントスは僅かにたじろぐ。
 直撃。青い光に装甲を打ち抜かれ、バリオス・クサントスの右腕がだらりと下がる。だが、それでも疾走は緩まらない。直撃を浴びたとて駿馬の走りは未だ健在である。

 バリオス・クサントスの構えたリニアキャノンが発射される。だが、その速度はさして速いものではない。
 ましてや、マリーゴールドは後退しているのだ。その相対速度は、回避を許すに十分すぎるほど鈍い。

 レバーを操作し、マリーゴールドに意思を伝える。主の意に応えたマリーゴールドは、見事リニア弾を回避してみせる。
 同時に引かれるトリガーを受け、マリーゴールドは左手のライフルを構える。如何に間接を殺されていても、全く命中させられないほどリックは無能ではない。三連射を的確に浴びせ、敵が怯む隙にさらに間合いを引き離す。

 引き撃ちと呼ばれるAC機動の基本は、それ故に破りがたいものとして現代にまで引き継がれている。
 後退しながら回避する事で敵弾丸の相対速度を緩め、同時に間合いを詰めてくる敵に対して射撃する事で、相対速度を加速、命中率を向上させるというその戦術は、リックが行っているのと全くの同一。

 単純であるが故に破りがたい技を以って、リックはトロット・S・スパーに射撃を浴びせていく。

『くっ、いい加減に……』

 苛立ちと共に吐き出される敵の声。それに勝利の確信を抱きつつ、リックは笑った。

『なにをやっている、トロット・S・スパー』

 それと同時に背後より現れたACに、リックは気付かない。楽観はここに来て決定的となり、その隙は補いがたいものとなる。
 銃をパージする音と同時に、背後より響くプラズマライフルの収束音。それに対する回避を怠ったリックに、これ以上を生きる未来はない。

 収斂され、光槍を上回る針と化した光が、矢弾と化して発射される。回避の挙動を取らせる暇もない必中の光刺は、正確にマリーゴールドのコックピットを撃ち抜いた。
 勝利の確信を抱いたまま、リックの意識は熱波に溶けた。



 * * *


 爆発し、もはや形状すら形容できぬガラクタの塊と化したマリーゴールドを視認し、トロット・S・スパーは一息ついた。
 引き撃ち戦法を行使された時にはどうなるかと思ったが、相手を仕留める事は出来た。作戦は成功だ。
 その立役者が自分ではなく他の者である事は残念だが、成功は喜ばしいものである。

『その機体……クォモクォモか。礼を言う』
『礼を言われる程の事ではない。尻拭いをしただけだ』

 トロットは眉を顰めて沈黙する。彼は隊長の事を信頼しているし、隊員の実力も評価している。
 それ故に、戦術部隊の所属でもない外来のレイヴンに侮蔑を向けられる事は耐え難いものだった。

 とはいえ、それで悪辣な態度を取る程、トロットは愚かではない。
 クォモクォモの操るAC、ALIEは、機動力と防御力を併せ持ったものだ。加えて、それを操る腕も確かである。

 これは、アライアンス戦術部隊にとって重要だ。
 クォモクォモの活躍を聞けば、フリーのレイヴンもアライアンス戦術部隊に興味を示すだろう。ともすれば、アーク所属のレイヴンの寝返りも期待できる。
 五人ものレイヴンを保有しているとは言っても、部隊の規模は小規模だ。より多くのレイヴンを懐に引き込まねば、敗北は自明の理である。

 もっとも、それはスパイが入り込む可能性も増えるという事ではあるが――――アライアンスの出す報酬は破格のものだ。それを棒に振ってまで忠義に尽くす者は、今のアークには存在しない。

 ジャック・Oというカリスマ、最大の旗印となるべき存在を失ったアークでは、金に飢えるレイヴンを引き止める術はない。
 現状における指導者、セレスチャル卿は凡庸な指導者であり、利害関係を超えた忠節を生み出す事は出来ないだろう。結果、アークの屋台骨であるレイヴンは、アライアンス戦術部隊へと流れていく事になる。

 そして、それこそが、今後の戦術部隊の盛衰を占う重要な計画でもあるのだ。

 レイヴンは嫌われてはいても、一方でアリーナという娯楽の興行を担ってきた存在でもある。引き入れようとも、アライアンスの領民にさほどの嫌悪は抱かれない。

 だが、これが野盗崩れであれば、戦術部隊はあっという間に瓦解する。
 領民にあからさまに害を為す者を引き入れれば、反対活動が起きかねない。そうなれば上層部にいい顔をされていない戦術部隊は、即時解体されてもおかしくない。

 情報を封鎖しようにも、ACという目立つ兵器を大量に保有する戦術部隊の存在を隠し通す事は出来ない。
 故に、野盗の類を討伐し、同時に腕を持て余し、食うにも困り始めたレイヴンを引き入れる為の土壌として世界に喧伝しなければならないのだ。
 アライアンスが勝利しようとも、戦術部隊が生き残らなければ隊員に待っているのは破滅だけ。戦後も生き残る為の確かな地位の確立を、戦術部隊は必要としている。

 副官という立場に推挙される以上、トロットは愚鈍ではない。その程度の戦術的判断は行える。
 だからこそ、彼はクォモクォモの侮蔑に対し沈黙を保った。事実、彼の実力はクォモクォモに劣るものだという自覚もあった。

『……状況はどうだ』

 両者のスピーカーから、隊長を仰ぐ男の声が響き渡る。
 エヴァンジェ。AC操縦技術、指揮能力の高さを評価されるアライアンス戦術部隊一の傑物である。
 アライアンス戦術部隊の立案を行い、上層部の一部を抱き込んだ手腕からも、その才覚は窺える。

 故に、隊員達の信頼は揺らがない。人間性などというもの置き去りにした荒野において、実力以上に評価するものはないからだ。
 指揮官として突出した実力を持つエヴァンジェを隊長を仰ぐのは、ある意味当然の話だった。

『盗賊の全滅を確認、また、クォモクォモの活躍によりACの撃破も完了しました』

 トロットは、一歩引いた視線で戦場の推移を報告する。
 好悪の感情で報告を違えるような真似はしない。ましてや、他人の成果を自身のものにしようとも思わない。
 そのレイヴンとしては異質の性格故に、彼はナービス領で低迷し、今この部隊の副官として活躍している。

『そうか。戦術部隊の初陣としては上々だな』
『これで実力を示せた、という事か』

 クォモクォモは、あえて誰の実力とは口にしない。自分達の実力、などという言葉でお茶を濁さないその姿勢は、彼自身の実力に対する自負の表れでもある。
 無論、エヴァンジェもそれは理解している。だが、責める事はしない。

『だが、奴らを納得させるには、まだまだ成果が足りん。戦術部隊の本格的な独立の為にも、君たちには粉骨砕身して貰いたい』
『隊長。しかしこんな盗賊狩りばかりでは埒があきませんよ」

 トロットの諫言に、エヴァンジェはクッ、と喉を鳴らす。顔に浮かぶ感情は、笑みのそれに似ていた。

『分かっているとも……。トロット、クォモクォモ……コンコード市を知っているか?』

 ――――彼らはアライアンス戦術部隊。
 所属するレイヴンは四人。エヴァンジェ、トロット・S・スパー、フラージル、モリ・カドル。
 アライアンスの保有する五人のレイヴンの内、四人をも保有する部隊。
 そして、クォモクォモという外来を半ば引き込み、五機のACを保有する事になった最大戦力。

 企業の中にありながら、心根から従おうとはしない鴉の群れが、ゆっくりと頭角を現し始めた。




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