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今思えば、やはり過ちを犯した様だ…
だが、私は確かに彼を…
薄れゆく意識の中でズベンはそう思った。

――――

「リム・ファイヤー。あなたが協力してくれるという事は非常に嬉しい。だが、できれ

ば理由を聞かせてもらえないか?」

あるACガレージのすぐ脇の控え室で、ズベンはバレットライフを眺めながらそう聞い

た。

リム・ファイヤー、父親から受け継いだバレットライフという機体にのるレイヴン。
その機体は触れただけで傷つきそうな程の殺気を放っていた。
リムはレイヴンだった父親を殺され、敵討ちの為にレイヴンになったと聞く。

「金は受け取った。」
それだけ言うとリムは出て行こうとする。

「待ってください、リム。あなたは今まで騙し撃ちも厭わずレイヴンを殺し続けて来た


理由を教えてくれないのなら、この場であなたを殺すしかない。
聞かせてもらえますか?」

拳銃を構えるズベン、軽く舌打ちしつつリムは椅子に座った。
今正面からこうしてリムを見ると、まるで大理石の様な体をしている。

声はしわがれ体の内部は痛んでいるようだが、強化人間特有の透き通る様に白く

なめらかな皮膚は不気味なまでに美しい。

「お前と協力してレイヴンを殺す。それだけだ。」
「そのレイヴンが私で無いという保証は?」
「無い。お前もレイヴンならここがどれほど荒んだ世界か判っているだろう。」

リムという男、前から目をつけていたが、今こうして直接会うと判る事がある。
この男はまるで何かに突き動かされている様に生きている。
それが何か判れば、信用に足る物が引き出せる様な気がした。

「リム、あなたは何故レイヴンになったのですか?」

リムは面倒な相手だと思った、小物とばかり思っていたが思ったより頭の切れる奴

だ。
こいつに嘘をついても仕方が無い、いざとなれば拳銃の一発二発食らってもバレッ

トライフに乗り込んでやる。
強化人間の俺にはそれができる筈だ。

「俺は強い親父の背中を見て育った。
だがその親父も死んでしまった、そして親父を殺した奴も死んでしまった。」

少し間を置いてリムは続ける。

「超えるべき目標を無くした時、俺は初めてレイヴンが憎いと思った。
人生を弄ばれた、親父に、あいつに、企業に、レイヴンに。
誰一人として、俺の心を満たしてくれる奴など居なかった。
俺をこんな世界に放り出した奴が憎かった。
だから俺はレイヴンとして人を殺す、こんな世界ごとぶち壊してやる。
お前みたいな弱いレイヴンなど、生き残れはしない!」

リムはズベンに撃たれるのを覚悟でズベンに飛び掛かる。
しかしズベンは顔色一つ変えずに、銃を下ろすと、そのまま動かない。
ギョッとして立ち止まると、ズベンが話し始めた。

「リム、私が弱くても、特攻兵器で荒廃した世界をここまで生き残ってこれた理由を

教えましょう。
私は一人では無かった、それだけです。
今までも、そしてこれからもね。
リム、一人で生きていく事は難しいですよ。」

おそらく面食らってるだろう、ズベンは興奮を抑えながら思った。
彼は傷ついている。彼は孤独だ。
少しでも力になれるなら、その荒んだ心を一時でも安らかにできるなら。

それに、彼の実力が在れば、きっと二人で生き残れる。
私には彼が必要だ。そして彼も私が…

優しい微笑みを保ったままリムに覆いかぶさるズベン
リムは、抵抗しなかった。できなかった。



大理石と、暖かい唇が、音を立てて触れ合った。



とあるACガレージの控え室、既に夜が明けようとしていた。
「リム、バーテックスの襲撃まで後二十四時間です。二人で生き残りましょう…」
リムは返事をしない。
「まず私の調べで、あなたですら敵わないようなレイヴンがまだ居る事が判りました


まだ無名ですが、見過ごす訳にはいきません。
彼を呼び出して、二人で殺します。二人なら、勝てる筈です。
そして生き残りましょう。」

――――

「やはり来ませんでしたか…彼は完全無欠だ、一人である事を除いて。
戻って対策を練りましょう。」

撤退しようとするサウスネイルの後ろからチェインガンの発射音が響いた。
とっさにかわして距離を取るズベン

「どういう事ですか?…まさか…」
「やはりお前はレイヴンだ」
それだけ言うとリムは黙って武器を構える。

戦闘の実力ではズベンはリムに及ばない。
ズベンは死期を悟る。

「そうですか…
昨日今日の関係とはいえ、私はあなたの為に…。」

ミサイルをパージし、銃だけを持って対峙する。
「私は自惚れてしまったようですね…あなたの心を満たす事ができると…」

「なら、私は最後にレイヴンとして、あなたを満足させます!」

地上を凄まじいスピードでダッシュするバレットライフ。
それに反応してサウスネイルが上空に飛び上がる。

バレットライフも追うがパージにより高速化した逆関節の機体には追いつけない。
上下に睨み合う状態で、バレットライフがミサイルを放つ。
それをかわし上空からリニアとスナイパーの雨を降らせるサウスネイル。

「勝てる見込みなどありません…落ちたらマシンガンの餌食になり瞬く間に機体は

爆散するでしょう…」
さらに高く、何処までも高く、銃の雨を降らせながらENの続く限り飛び続ける。
そしてついに、レッドゾーンの警告音が鳴り鳴り始めた。
「最後まで、戦ってみせますよ、リム・ファイヤー!」

――――

追詰められた今、リムの心にズベンの言葉が再び響く。
「一人で生きる事は難しい…か。」

リムはフィンガーを構える。
二人なら勝てる相手に向かって。

「なぁズベン、もしレイヴンじゃなかったら…。」
向かって来る機体、リムはかつて父親がそうした様に、両手のフィンガーを狙いもせ

ずに撃ちまくる。

「いや、俺はレイヴンが憎い、親父もズベンも、人間が憎いッ…。」
相手は引きに徹しフィンガーの被弾を抑える、効果的で無い攻撃だと判っていても、

リムはトリガーから手を離さない。
ライフルの正確な射撃により、リムの機体が確実に削られていく。勝てる見込みな

ど無かった。
撃ち尽くしたフィンガーをパージし肩のチェインガンを構える。

当たらない弾丸、崩壊寸前の機体、的確すぎる迎撃の前に、バレットライフは壊れ

ていく。

「俺は認めない、認めないぞッー!」




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