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『REDYE・GO!!』


開幕と同時に、グラスコンチェルは試合開始前から構えていたハンドグレネードを発射した。
が、僕のグレンブレイズは、乗っていた登場ステージの上からブーストを吹かし飛び降り、その爆熱弾を回避する。
そのまま空中でブーストを調整し、着地硬直をせず右へと小ジャンプを繰り返して移動をする。灼熱のグレネード弾は、後ろの登場ゲートに着弾し、小爆発を起こした。

開始と同時にグレネードを撃ってくるのは、過去の対戦データからわかっていた。お互いの目の前に障害物が無い場合、ほぼ確実にグレネードなりロケットなりを撃ちこんできていた。
おそらく、AIパフォーマンスは地形分析、敵分析に特化しているのだろう。

開幕、撃つか撃たないか。
開幕から少し時間が経ってからの場合、その一発でスキができてしまうが、開幕ならば距離もある程度離れているし、ほぼノーリスクで撃てる。
過去のデータを見て、その一発を当たるのはほとんどいなかった。最初の一撃は、彼女のある意味「お決まり」なのだろう。
だからといって、高防御力でもない限り避けないわけにもいかない。


僕のACは、ジャンプとダッシュを繰り返し、広いアリーナ内に相手を中心に回りこみ、背面へと回ろうとする。
グラスコンチェルは左右へ揺さぶるように距離を詰めてきた。

この戦いの最初の問題は、開幕の相手の行動だった。相手によって行動が変わるので、予測がつかない。これは最初からわかっていた。
だけど、アーキテクトも人の子、その人物の思考の「クセ」のようなものがある。
そこを突こうとしたが、残念ながらそれはわからなかった。
過去の戦闘データには、武装もそれほど違いが無い軽量ACなのにもかかわらず、時には一定距離を保ちながら移動をしながらガトリングガンを撃ち込んだり、一気に距離を詰めて射突ブレードで一気に勝負を決めたり、敵頭上に飛び上がり、爆雷とショットガンを浴びせたり。
まるで予測がつかない。戦いの方向性が、その名前に恥じないほどの優雅な遠距離戦であったり、割れた鋭利なガラスの破片のごとく、凶暴な火力による実力行使、と2極化しているのだ。

戦い方がわからないのなら、相手に出来る限り攻撃させなければいい。
だから相手の死角――頭上か可能な限り背後を取る戦法で行った。

動きを見るところ、敵は戦術チップで行動を制御させている。
僕の予想では、MOZ-3「スネークアヘッド」を使っていると思われる。このチップは、小刻みに左右へ移動をし、相手に近づくという行動をACにさせる。
一方僕のブレイブレイズは、MOS-5「スキップアラウンド」という戦術チップを使用、これはジャンプ、ダッシュを繰り返して、相手の背面へと回り込もうとする。

僕のACには、接近戦で大きな戦力となる火炎放射器が装備されている。
接近戦を試みながら、試合の流れを一気に自分のほうへと引き込む作戦だ。

そして今のところ、その考えは良い方向に進んでいるようだ。

開幕数秒後、僕が思い描いていた「開幕戦」が繰り広げられた。
こちらに近づこうとし、マシンガンを乱射し、地上に足がついているときにはチェインガンも絡めてくる。
回り込もうとする前に、その弾幕の嵐を避けきれるはずも無く、いくつか被弾してしまう。
だが、連続で喰らい続けているわけでもなく、APを削られてしまったが、背後を取るにはそれほど大きくない代償だ。

開幕約10秒後、お互い接近しようとした結果、ほとんど0距離戦になった。だがこっちは背後を取っている。
グレイブレイズから火炎放射器が放たれ、さらに右腕のレーザーライフルも発射する。
赤い灼熱が白い機体に襲い掛かり、さらに至近距離で紫色のレーザーが熱くなった装甲をさらに熱くする。

「グラスコンチェルの熱急上昇、AP7000を切ります!ブレイブレイズも残りAP7000、余裕で逆転します!!」
情報モニターの整備員が、状況を伝える。
「出だしは上々みたいだね……」
このまま30秒を待たずに倒し切れればいいが、「不動のトップ」はそこまで甘くは無い。

『グリッド1、熱暴走が止まらない!!そして30秒を経過、グリッド1の残りAP、50%!!』

30秒を経過し、グラスコンチェルの動きが変わった。

『グリッド1、熱暴走が止まらず、エネルギーチャージも続いている!!』

機から見れば一方的な戦いだ。だが、僕はまだ勝利を確信していなかった。この程度で終わるなら、「不動のトップ」などと言われないはずだ。
敵の動きを見て、僕は嫌な予感がした……

『グリッド1、グリッド2の頭上で、インサイド爆雷を投下!!』

MAB-1「ボムシャワー」……僕の頭にそれが浮かんだ。
対するグレイブレイズにセットされたのは、MOB-2「クロスヘッド」。
「ボムシャワー」は、相手の頭上を取りつつ、インサイド爆雷を浴びせる。「クロスヘッド」は相手の頭上をブーストで飛び越えて、背面を取る。

チップには、“その戦術の最適な行動パターンを限定する”という効果がある。
例えば「ラッシュターン」というチップには、OBを多用する行動を取ろうとするし、「ダブルトリガー」というチップでは、両腕に装備されている武器を交互に発射する効果がある。が、中にはそれ以外の作戦中は「インサイドの仕様に影響が出る」などといったデメリットも存在する。

そして今の状況、エネルギーチャージングをしているが、通常ジャンプで空中に上がり、頭上で爆雷を発射、さらに着地後真正面から肩の連装グレネードを撃ち込んだ。
爆発の衝撃でグレイブレイズが大きく後ずさった。

『今度はグリッド2がエネルギーチャージ、その間にグリッド1はオーバーヒートを回避、エネルギーが回復し始めたぁ!』

まずいな、この状況……

エネルギーチャージをしたままで「ブーストジャンプ」ができるはずがない。
予想は嫌な方向に当たってしまった。
それでもなんとか背後を取ろうとしているのだが、羽を傷めた鳥のように空へ上がることが出来ない。

その間に、グラスコンチェルは何度も頭上から襲い掛かる。他の武装は、超接近戦の弊害でほとんど撃ってはこないが、爆雷はチャージングで機動力を奪われていたグレイブレイズに何度も命中する。

『グリッド2に、爆雷が命中!!残りAP50%。』

微量にだが、爆雷が命中し、機体温度が上がりエネルギーチャージが続いた。
APがじわじわと減っていく。

(頼む……もってくれ……!)

僕は祈る。あと数十秒を過ぎるまでにAPが0にならないことを祈る。祈ることしか出来なかった。
手に汗を握る。モニター室は静まり返っている。

(あと10秒……9……8……7……)

残りAPが4500を切る。

(4……3……2…)

爆雷の雨が降り注ぎ、運良くその雨を避ける。
早く、早く時間が過ぎてくれ……!!


(1……)



『まもなく、開始60秒を経過。グリッド2、同時にエネルギーチャージングを完了。』

――よしっ!!

運がよかった。60秒が来る少し前まで、敵の爆雷の雨があまり命中しなかった。その間にインサイド爆雷が切れ、なんとかチャージングし続けることを避けられた。
嫌な汗をかいた……他の整備員もみんな冷や汗をかいていた。

APは約3900。グラスコンチェルのAPはさっきとほとんど変わらず6000台。

この30秒でかなりの痛手を負ってしまった。が、まだ勝機は十分ある。

メインモニターに『DEF-3』のチップが表示される。
そして、エネルギーチャージを終えたグレイブレイズは、ブースト移動を開始、一気に距離を稼ごうとする。
一方でグラスコンチェルは、左手に持っているマシンガンを、まだ弾切れ前なのにも関わらず、それを捨てた。

『グリッド1、左手武装を格納武器へ換装!』

マシンガンを捨てて、ハンガーユニットから取り出したのは、ロングブレードである「WL14LB-ELF2」。
そのブレードの長い熱刀身を手に、グレイブレイズに接近戦を挑んできた!!

近い位置にいた両ACは、そのまま接近戦になった。
両ACとも、ENの残量はほぼ回復し、お互い完全にその機動性を回復させていた。

バックジャンプをしたグレイブレイズに、追いかけるように白いACが飛び掛り、左手から赤いレーザーを射出し、勢い良く左腕を突き出す!
それをグレイブレイズはブースターを止め空中を急降下、間一髪で頭部パーツに届きそうな一撃は回避され、さらにバックダッシュで離れ距離を稼ぎ、火炎放射器を放射させる。
炎を浴びたグラスコンチェルは……しかしそれに構わず右手のグレネードランチャーを発射。再び高火力の爆熱弾がグレンブレイズに襲い掛かかった。
それをグレイブレイズは右へダッシュの向きを変え、直撃を避ける。
さっきと同じように距離を稼ぎながら、今度はレーザーライフルを「控えめに」撃つ。

空中でグレネードを発射し、着地したときに衝撃を吸収しきれなかったのか、大きく着地体制を取ってしまった。
そこに紫色の光が命中、僅かな攻撃だが、確実にAPを奪っている。


『両グリッド、接戦を展開!!』

地上で距離を稼いでいたグレイブレイズに向かって、レーザーライフルの攻撃をもらいながら、その場でグラスコンチェルはブレードを振った。その振った先から、高速でエネルギー光波が放たれる。
回避動作をしようとしていたが少しタイミングが遅れジャンプしたグレイブレイズの脚部にブレード波が命中してしまった。

「グレイブレイズ残りAPが3000、相手は残り3400!イルスさん……!」
「大丈夫、このままいけば……絶対いける!!!」

「DEF-3」、その名を「ハードディフェンス」。攻撃を控えるように行動し、回避と防御に専念する。
もともと距離を少し離すようにベースAIを調整してあったので、回避行動を取りながら距離を離し、さらに回避に必要なENを圧迫しない程度の「控えめ」なレーザーライフルでの攻撃を、この戦術チップで可能にしていた。

片方は回避に専念、片方は接近戦をしようと執拗に追い、中遠距離から小技を出し合う形となった。
グラスコンチェルはグレネード弾を放ったが、それはことごとく回避されてしまう。途中弾が切れてしまったのか、グレネードの爆音は消える。


そんな接戦を繰り広げていた両ACだが、それは長くは続かない。



『まもなく、開始90秒を経過!!』


お互いの戦術が変わる瞬間。お互いの距離が大きく離れたときに90秒を経過したアナウンスが告げられた。

グラスコンチェルは、4脚の弱点である消費ENの大きさからか途中で息切れをしてしまい、ブースト移動が控えめになってしまっていた。
そしてグレイブレイズはその隙にアリーナの端の方へと逃げおおせた。

だが、この機体は遠距離戦それほど強くはない。火炎放射器を積んでいるなら、接近戦をするほうがいいだろう。
それなのになぜ遠くに離れたかというと、理由はふたつあった。
ひとつは相手の武器を無駄に撃たせ、弾切れを誘発させること。高火力グレネードは、なんだかんだいってもやはり脅威だ。
これを早く無力化させたかった。そのために、着弾まで回避する時間を稼ぐため、遠距離へと一時的に離れるようにしたのだ。

そしてもうひとつは、ここから別の「攻撃」をするためだ。


遠くに離れた位置で、グレイブレイズの動きが変わった。右手武器から、右肩に搭載されていた多弾頭ミサイルに武装変更された。
そして、モニターの現在使用チップに映るのは「MAM-2」。


近づくグラスコンチェルに向かい、ロックオンを開始する。
離れた位置からグレイブレイズがミサイルが発射、それが1が2に、2が6に分裂し、敵機に襲い掛かった。
グラスコンチェルは、そのハイパワーブースターの威力を駆使し、持ち前の瞬発力で回避する。
が、僕はミサイル自体に対してそれほど攻撃力を求めてなかった。

グレイブレイズがミサイルを撃つ、それはまた6分裂をしグラスコンチェルへと殺到する。そのミサイルを追うように、グレイブレイズも一緒にグラスコンチェルへ一気に接近していく!

接近されたグラスコンチェルは、持っていた弾切れのグレネードをパージ、先ほどよりも数段鋭い動きでブレードを振りかざして対抗した。
空中から火炎放射器を構えて襲い掛かる赤い炎と、地上から勢いよく襲い掛かる赤い炎へ立ち向かう白い硝子細工。

空中で絡み合う赤と白。

『あぁッ!?これは、アクシデント発生か!?』

両機が空中でぶつかった瞬間、予想だにしない出来事が襲った……!




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