時刻は午前11時。
今日は晴天なので、天井はオープンにされ、自然の日差しがドーム内に入り込む。
もうすぐ正午なのもあってか、お天道様は高々と上がってその力を燦々と降り注いでいる。
だがその日差しよりもさらに強いのは、このドームを埋め尽くさんばかりの勢いを持った、人の歓声。
今日は晴天なので、天井はオープンにされ、自然の日差しがドーム内に入り込む。
もうすぐ正午なのもあってか、お天道様は高々と上がってその力を燦々と降り注いでいる。
だがその日差しよりもさらに強いのは、このドームを埋め尽くさんばかりの勢いを持った、人の歓声。
ドームの両端に、それぞれ一体のACが姿を現した。
北のゲートから現れたACは、白い4脚のAC。
重量4脚で、右手にグレネード、左にマシンガン、右肩にチェイガンに左肩に軽量グレネードという、かなりの高火力機体。
だが、破壊力を秘めたそのACは、まるで透明なガラス細工のような透き通った印象を受ける。
どこか“儚い”と思わせるその外見には、頭部からコア、脚の先まで、丁寧な装飾塗装が施されているからであった。
そして、左肩にはそのACを送り出したチーム『グラスバード』のエンブレムであるこれも、蒼いガラス細工の鳥が描かれてあった。
さらに軽量コアの右やや前には、機体名でもあり、スポンサーの名である『グラスコンチェル』の表記エンブレムが張られている。
北のゲートから現れたACは、白い4脚のAC。
重量4脚で、右手にグレネード、左にマシンガン、右肩にチェイガンに左肩に軽量グレネードという、かなりの高火力機体。
だが、破壊力を秘めたそのACは、まるで透明なガラス細工のような透き通った印象を受ける。
どこか“儚い”と思わせるその外見には、頭部からコア、脚の先まで、丁寧な装飾塗装が施されているからであった。
そして、左肩にはそのACを送り出したチーム『グラスバード』のエンブレムであるこれも、蒼いガラス細工の鳥が描かれてあった。
さらに軽量コアの右やや前には、機体名でもあり、スポンサーの名である『グラスコンチェル』の表記エンブレムが張られている。
儚く脆く、幻想の中に在りながらも、その煌きの中に力強さが湧き出ている。そんな印象を受ける。これはまさしく「美しい」と言える代物だ。
『現Bリーグ12の王者に君臨するアーキテクト、女王シルティが送り出す硝子細工、グラスコンチェル!!』
司会のアナウンスが場内スピーカーを通して、そう発せられたとき、グラスコンチェルは前足を一歩前へと力強くズシンッと踏み込み、右手のグレネードを前へ構える。
それと同時に、場内の歓声が一層ワァァーッ!と激しくなる。試合前の、ACによる場内アピールだ。
それと同時に、場内の歓声が一層ワァァーッ!と激しくなる。試合前の、ACによる場内アピールだ。
『そして、己を見つめなおし、負けが続きながらもその闘志を決して絶やさず、今日まで不屈の精神で這い上がってきた挑戦者、アーキテクト、イルスが駆る、グレイブレイズ!!』
あ、そういえばアリーナだと試合前アピールがあったっけ。
すっかり忘れてた僕は、アピールさせるためのAI動作プログラムを組んでいなかった。
別に無理に動かさなくてもいいんだし、アリーナで戦う他のアーキテクトの中にもあえて動かさないで機械的な無言のアピールをするのも多いのだが。
すっかり忘れてた僕は、アピールさせるためのAI動作プログラムを組んでいなかった。
別に無理に動かさなくてもいいんだし、アリーナで戦う他のアーキテクトの中にもあえて動かさないで機械的な無言のアピールをするのも多いのだが。
でも、せっかくの初アリーナドーム戦なんだから、ACにアピールくらいさせてやればよかったなぁ……
そんなことを思ってモニターに移っていた赤と黄色の迷彩塗装を施したグレイブレイズが、突如その場に垂直ジャンプをして、ブースターを吹かして空中で静止、そして着地したかと思うと左手の火炎放射器をブレードのように右から左へ火炎を放射しながら薙ぎ払った。
そして薙ぎ払った火炎放射器を持つ左腕が薙ぎ払った先でピッタリと動きを止めたまま放射を止める。
静まり返った歓声が、その放射をやめて一瞬の間が開いたかと思うと……さっきのグラスコンチェルの時よりも大きい歓声がドーム内に響き渡った。
そして薙ぎ払った火炎放射器を持つ左腕が薙ぎ払った先でピッタリと動きを止めたまま放射を止める。
静まり返った歓声が、その放射をやめて一瞬の間が開いたかと思うと……さっきのグラスコンチェルの時よりも大きい歓声がドーム内に響き渡った。
突然の出来事に驚いた僕は後ろを振り向くと、妙にニヤニヤしている整備員がそこにいた。
後ろにいた整備員だけでない、隣で別の計器をチェックしていた整備員も、データ採集していた人も、みんなニヤニヤしてる。
「あのーこれは一体……?」
ニヤニヤしていたひとりが話す。
「これは、俺たちからのささいなプレゼントってやつでさぁ。」
後ろにいた整備員だけでない、隣で別の計器をチェックしていた整備員も、データ採集していた人も、みんなニヤニヤしてる。
「あのーこれは一体……?」
ニヤニヤしていたひとりが話す。
「これは、俺たちからのささいなプレゼントってやつでさぁ。」
プレゼント……つまり、この試合アピールのAIプログラムを彼らが今日まで内緒に組み上げたってこと?
「つまり……」
「つまり俺たちひとりひとりが気持ち込めてこの試合に向けてこっそり作ってたAIプログラムってやつさ。」
「伊達にイルスさんと一緒にこの世界を歩いてきたわけじゃないぜ。それなりにAIについての知識だってついてきてるんだぜ?」
「つまり俺たちひとりひとりが気持ち込めてこの試合に向けてこっそり作ってたAIプログラムってやつさ。」
「伊達にイルスさんと一緒にこの世界を歩いてきたわけじゃないぜ。それなりにAIについての知識だってついてきてるんだぜ?」
「皆……!!」
「ささイルスさん、試合に集中しましょうぜ。嬉し事ならあとで聞きますから!」
感動のあまりちょっと我を忘れかけた僕だったが、すぐにメインモニターの前に戻った。
ドーム内では司会がまだ喋っている。その間にパフォーマンスで使った弾薬の補給が行われている。ドームでのアピールで使った弾薬やEN武装のエネルギーパックや荷電粒子パックなどは、よほど過剰なものでない限りFFAが補充してくれることになっている。
司会が何か言っていて、僕達は微妙な待ち時間を持て余していた。
ドーム内では司会がまだ喋っている。その間にパフォーマンスで使った弾薬の補給が行われている。ドームでのアピールで使った弾薬やEN武装のエネルギーパックや荷電粒子パックなどは、よほど過剰なものでない限りFFAが補充してくれることになっている。
司会が何か言っていて、僕達は微妙な待ち時間を持て余していた。
―――――――――――――
そのとき、僕のモニターになにやらアクセスする者が。
『初めまして、えぇと……イルス・ブレームさん?』
モニターに映し出されたのは、ひとりの女性。
肩までかかる長さの白に近い金髪、「蜜のような髪」とはこういうのを言うのだろうか?
そのとき、僕のモニターになにやらアクセスする者が。
『初めまして、えぇと……イルス・ブレームさん?』
モニターに映し出されたのは、ひとりの女性。
肩までかかる長さの白に近い金髪、「蜜のような髪」とはこういうのを言うのだろうか?
対戦相手であるグラスバードのアーキテクト、シルティその人だった。
「え、ええっと……初めまして。」
あと数分後に戦う相手が、なんの用だろうか?
『すいません、対戦直前に。私、対戦相手には礼儀としてあいさつしてるもので……ええっと、いつもは対戦前にするんですけど。』
少々慌て口調のまま、彼女は続ける。
『それで、こんな形であいさつすることになってしまいまして……申し訳ありません。』
普通に考えたら、ちょっと常識に外れてる気がしないでもないが……がなんか申し訳なさそうな顔を見てたら、
「あ、いや、そんな、気にしなくていいですよ……?」
と、なんとなく答えてしまった。
すると、とたんにパァッと顔を明るくして、
『あ、ありがとうございます!』
っと微妙に首をかしげて明るく微笑む顔がモニターに映る。
あと数分後に戦う相手が、なんの用だろうか?
『すいません、対戦直前に。私、対戦相手には礼儀としてあいさつしてるもので……ええっと、いつもは対戦前にするんですけど。』
少々慌て口調のまま、彼女は続ける。
『それで、こんな形であいさつすることになってしまいまして……申し訳ありません。』
普通に考えたら、ちょっと常識に外れてる気がしないでもないが……がなんか申し訳なさそうな顔を見てたら、
「あ、いや、そんな、気にしなくていいですよ……?」
と、なんとなく答えてしまった。
すると、とたんにパァッと顔を明るくして、
『あ、ありがとうございます!』
っと微妙に首をかしげて明るく微笑む顔がモニターに映る。
……何かの心理作戦か?
とりあえず、後ろの整備員はとろけているが。
すると、モニターの先にもうひとりの声がして、
『コラァッ、シルティ、これから戦う相手にいつまで喋ってるの!?』
っと怒鳴り声が聞こえてきた。そういえば、グラスバードのアーキテクトは「硝子の姉妹」とか、地元リーク誌で言われていたが……?
『あ、姉さん、ゴメンッ……あ、と、とにかく、お互い全力でいい戦いをしましょ…ガッ!』
最後まで言葉を告げる前に、どうやら強制的に切られてしまったようだ。
『コラァッ、シルティ、これから戦う相手にいつまで喋ってるの!?』
っと怒鳴り声が聞こえてきた。そういえば、グラスバードのアーキテクトは「硝子の姉妹」とか、地元リーク誌で言われていたが……?
『あ、姉さん、ゴメンッ……あ、と、とにかく、お互い全力でいい戦いをしましょ…ガッ!』
最後まで言葉を告げる前に、どうやら強制的に切られてしまったようだ。
とりあえず、心理戦でもなんでもなく、あれが彼女の素のようだ。途中で聞こえたのは、おそらくサブアーキテクト姉だろう。
礼儀には礼儀で「こちらこそ、宜しくお願いします」と言いたかったのだが……
『お待たせしました、これより遂に始まります、過去Bリーグ最高峰とも言えるこの戦い!!』
その前に、決戦のときはきてしまった。
『さぁ……勝つのはどっちだ!!女王シルティのグラスコンチェルか、それとも挑戦者イルスのグレイブレイズか!?』
――――――――――――――――――
街の大通りのひとつ奥の道沿いにある、静かな町並みに構える小さなバー。
「CLOSE」の看板がかかった扉の奥では、ひとりの初老マスターと、ひとりの大柄で無精ヒゲ男がいる。
「CLOSE」の看板がかかった扉の奥では、ひとりの初老マスターと、ひとりの大柄で無精ヒゲ男がいる。
「今回も……ここにお邪魔させてもらうよ。」
「あ、あぁあぁ、気にせんでいい。ブラウ君ならいつでも大歓迎さ。」
「あ、あぁあぁ、気にせんでいい。ブラウ君ならいつでも大歓迎さ。」
店の中にはマスターとブラウのふたりが、例によって店の雰囲気とは少しズレた大型テレビモニターに向かっていた。
「俺の元に来る前に、こんなに人気になっちまうとなぁ……」
「ふぉっふぉっふぉ、よかったじゃないか。ブラウ君の目は正しかったってことだぞ?」
「いや、そうなんだが……」
昼間から、それも午前中から酒をやるわけにもいかないので、仕方が無くジンジャエールを片手に、試合を見守ることにしているブラウ。
灰皿には、待ってる間に吸ったタバコが3本、灰と化していた。
「……人気になりすぎて、俺のとこ来るのがやっぱ無し、ってことにならなけりゃいいがなぁ。」
「ふぉっふぉっふぉ、よかったじゃないか。ブラウ君の目は正しかったってことだぞ?」
「いや、そうなんだが……」
昼間から、それも午前中から酒をやるわけにもいかないので、仕方が無くジンジャエールを片手に、試合を見守ることにしているブラウ。
灰皿には、待ってる間に吸ったタバコが3本、灰と化していた。
「……人気になりすぎて、俺のとこ来るのがやっぱ無し、ってことにならなけりゃいいがなぁ。」
――――――――――――――――――
メインモニターにカウントダウンが表示される……
……5
……4
……3
……2
『REDYE・GO!!』
さまざまな人の思惑の中、遂に戦いの火蓋が切って落とされた。