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「う……ん~……」
重い瞼をこじ開けると、そこは暗闇だった。
度重なる戦闘で疲弊した体を休めるために、確か仮眠を取ったはずだ。
気が付けば、本当に眠ってしまっていたようだ。
もっとも、時計を確認すれば、それほどの時間は眠っていないようだったが。
重い体を引き摺って、簡素なベッドから這い出る。
ぼぅっと光る端末のモニターには、どうやら次なる依頼が舞い込んでいるようだった。
バーテックスの襲撃予告まで、もう時間は少ない。
だが、彼にとってはそんなこと、どうでもよかったのだ。
ただ、知りたかった。今この世界で巻き起こっている、数多の謎の真相が。
恐らくは、自分がそのど真ん中にいるのだろう。
正確にはその隣、本当のど真ん中はジャックだと思うのだが。
どの道、明らかに騒動においてほとんど中心地にいることは変わりない。
ジャックから色々聞きだしてみたいものだが、向こうから依頼が時々来る程度で、到底話し合うような雰囲気ではなかった。
だが、彼の後を追っていれば自ずと真実にたどり着く。そんな気がする。
「バーテックスからの依頼か……」
メッセージを受信、最初はよくわからなかったが、最近はジャックの意図も何となくわかる気がして来た。

選別……という奴なのだろう。

旧・ナイアー産業区。
それが今回の戦場だ。
昔はクレストの本社ビルが入っていたそうで、その警備システムは今でも稼動しているらしい。
ただ、最重要拠点らしいからか、今までの戦闘によって防衛システムはほぼ停止しているそうだ。
そのほどに、かなりの数の戦いが、ここで行われている。
同時に、かなりの数の命が、ここで奪われていった。
そして、今回もまた……。
「……来たか」
果たして、散るのは自分か。
それとも、彼の相手……ヘヴンズレイとかいうACを駆るレイヴンか。
どちらにせよ、これに勝利したものが、ジャックの思惑を知ることになるのだろう。
そして、全ての真実を。
(……負けられないな)
システムは起動していく。
戦闘開始の合図だ。
『敵ACを撃破して』
言われなくてもわかっている。

「見えたっ!!」
ビルの合間を通る大きな道路。まともに動き回れるのはこの、ACには少し狭く感じるここだけだ。
相手の横に回ることは難しいだろうから、正面決戦しかない。
ヘヴンズレイの姿を捉えると同時に、両腕に装備された銃器が火を噴く。
まだ、距離の詰め方は十分ではないだろう。牽制程度に留め、素早く接近する。
『バーテックスのくだらない計画など……絶対に実現させません!!』
心までアライアンスに染まっていると言うのだろうか。しかし、彼からは確固たる意志を感じる。
だが……今、一つだけ自分の意志が揺らいだのがわかる。
それは、バーテックスもアライアンスも関係ない。
「……そうか……お前がレイヴンになっていたとはな……」
飛来するミサイルを、左右への切り替えしと引き付けにより回避しつつ呟く。
恐らくは、この声は届いているだろう。
そもそも声で誰か判別できるかどうかすら、謎なのだが。
まぁそこは、幼馴染みとして是非とも気付いてもらいたいものだ。
『なっ……ディート!?』
「おっと、ここは戦場だ。呼ぶならお互い、この場に適した名前があるだろう」
不思議と、彼は冷静だった。彼の中に、予感が無いわけではなかったのだ。
あいつ――今はジャウザーだったか――の親父さんは、ミラージュとの関わりがあるはずだ。
もしあいつにレイヴンとしての才能があったなら、奴は迷わずアライアンスに行くだろうと思っていた。
もっとも、才能があればの話だったのだが。
(……ここにいるってことは、才能があったんだろうなぁ)
と、悠長なことを考えている暇はない。
マシンガンを乱射しながら、少しずつ接近する影を見て、素早くオーバードブーストで射程圏外へ離脱する。
『あなたが……バーテックスについているとは、意外でしたね』
「最初はお前のことも考えてアライアンスにつくのが妥当かと思ったんだがな。正直、どうでもよくなった。
そもそも、俺はバーテックスについているわけじゃあない。真実が知りたいから、ジャックを追いかけているだけだ」
『同じことです!!』
素早い接近。面倒な起動を描くミサイルを上昇で避けると、いつの間にか構えられていたスラッグガンがこちらへ口を向けていた。
軽快かつ、壮大な轟音。特色ある音と共に吐き出された無数の弾丸が、自分に襲い掛かる。
素早く横に回避するも、半分ぐらいは被弾した気がする。左腕のダメージが心配だ。
「チッ!!」
素早く旋回し、リニアライフルを乱射。それも軽快な挙動で回避され、眼前に迫ったところでオレンジの閃光が見えた。
「おぉぉおおお!!」
本能的に後退。刀身の直撃は避けたものの、光波が爆発し、視界を奪う。
少し油断したか、今のところあまりダメージを与えることが出来ていない。
それとも、やっぱり心の中では、友を傷つけることが怖いのだろうか。
(……今はただの敵同士だ……それに……俺は負けられない)
結局、あの化け物がなんなのかはわからず仕舞いだ。
どうしても、それだけは知りたい。それさえ知れば、別に誰に命を狙われても構わない。
もっとも、それを知った時には、もう全てが終わっているだろうけど。
うまく攻撃の射程外へ逃げたり、死角を狙いながらライフルとマシンガンを連射。
向こうも負けずに反撃を繰り出す。一進一退の攻防。
それは突然だった。誰かがこの勝負水を差すなんて、これっぽっちも思っていなかったのが甘いのか。
『何……?熱源反応!?』
丁度シーラからも通信があったところだ。反応の方を見れば、ゆっくりと扉が開くのが見えた。
増援……にしては、ジャウザーも驚いているからそれはないだろう。
じっと見つめたその先に、あの蒼い影が現れた。
「パルヴァライザー……!!」
正体不明の悪魔。粉砕するもの『パルヴァライザー』
このタイミングで乱入してくるとは思わなかった……。
ともかく、野放しにしておくのはまずいだろう。
「一時休戦だ。俺は奴をぶっ飛ばす」
『ちょ、ちょっと待ってください。何なんですか?あれは……』
「俺が聞きたいぐらいだよ」
疾走する蒼い機体。自分には、半分生物に見えてしょうがないのだが、システムが正体不明機と言うのだから機械なんだろう。
よく見ると、機械らしき部分も見られる。と言うか、大分部がそうなのだが。
たまに生物か何かと錯覚するのは、奴らに自我のようなものが見えるからだろうか。
ともかく、詳細はジャックにでも聞き出してやるとする。そう決め、彼は突撃を開始した。
振り上げられるブレード。そのスピードが異常すぎて、反応に戸惑ってしまう。
後ろか?上か?それとも横?回避運動すら、通常のAC戦とはワケが違う。
だが、目の前に敵がいるならすべき行動は一つだ。
「喰らいやがれ!!」
火を噴くライフルとマシンガン。
肉を切られようが骨を断ってしまえばいい。
「うおっ!!」
これはまずいかも知れない。パワーが違いすぎた。
先程の戦闘によるダメージも合わせて、いつの間にか装甲はかなり削られている。
「えぇい畜生め!!」
オーバードブーストによる急速離脱。猛スピードで追いかけてくるが、もうなりふり構っていられない。
「どうにかならんのかこいつ!!」
『そう言われても……今までとは武装が異なるからまだわからないわ』
確かに違う。今まで見てきたのはタンク型と4脚型だし、こいつはどうやら2脚タイプのようだ。
そうこうしている間にも大量のレーザーは襲ってくるし、恐ろしい機動力で追い回しても来る。
機動力を活かしたブレード攻撃と、連射力の高いレーザーキャノンが主武装といったところだろうか。
まだ何が隠されているかわからない。十分に注意してかかるべきだろう。
今までの経験から、ミサイル迎撃装置の関係でミサイルが有効なのはなんとなくわかる。
しかし、機動力が高いためタイミングを逃せば恐らく大外れだ。
(ともあれ、有効な手がそれぐらいしか思い浮かばんな)
右肩に装着されたミサイルを構え、じっくりと狙ってロック。
飛来するレーザーを回避しつつ、反撃のミサイルを一気に叩き込む。
瞬間、動き出すパルヴァライザー。虚しくも地面に消えていくミサイル。
「この野郎!!素直に受け止めやがれ!!」
なんて無茶苦茶な言葉を吐いてしまう。避けるななどと、戦場で言うこと自体間違っているが。
『ハァッ!!』
その瞬間、割り込んでくる機影。オレンジの閃光を伴って突撃してきたそれは、ぶつかるような形でパルヴァライザーへと一閃を喰らわせる。
「ジャウザー……」
『あなたが死んでは、あれがなんなのか説明してもらうのに厄介ですからね』
さっき「俺が聞きたいぐらいだ」って言ったのが聞こえていないわけではないだろう。まぁ、冗談に聞こえるのも頷けるが。そう聞こえるように言ったのだから。
しかし、彼が死んでもジャックが教えてくれると考えられる。たぶん彼が死んだら、彼の代わりにジャウザーが選ばれるはずだ。
何も言わず、識別信号を敵対勢力から友軍へと切り替える。二対一なら、それなりに被害は抑えられるはず。
抑えた結果がマイナスだと、意味はない。そうならないように、肩に担がれたミサイルをロックした。
「終わったらさっきの続きだぞ」
『その前に、話を聞くのが先ですよ!!』
火を噴いて飛行するミサイルと、パルヴァライザーを引き付けるジャウザー。
無情なる蒼い凶刃がヘヴンズレイへと襲い掛かり、その左腕を奪う。
『くそっ!!』
ワンテンポ遅れて、直撃するミサイル。その瞬間、攻撃元を確認するためか、一瞬動きが止まった。
どちらも隙は逃さない。瞬間的に放たれたスラッグガンが、パルヴァライザーの胴を抉る。
合わせて放たれたリニアライフルがしっかりと蒼い巨体を捉え、着実にダメージを与える。
挟み撃ちに対抗するのは、パルヴァライザーとて大変なのだろうか。どことなく、混乱している印象を受ける。
が、それも束の間。状況を理解したのか、素早く距離を取った。
「案外頭はいいんだな」
『随分と余裕がありますね……わけのわからない相手が襲ってきているというのに』
「初めてじゃないからな」
レーザーを避けつつ接近。蒼い閃光を横目に見つつ、マシンガンとリニアライフルを連射。
後ろからはジャウザーがミサイルを放ち援護する。
流石は幼馴染みというところか、連携は完璧である。
射撃を止め、パルヴァライザーが走り出す。それと同時に大きく上昇してパルヴァライザーの頭上を一気に飛び越える。
待ち構えていたジャウザーのマシンガンが唸るが、蚊とも思っていないように突撃する。
至近距離は、ジャウザーの絶好の間合いであるとも知らず。
(まぁ武器が単純だから仕方ないのか……)
瞬間に、スラッグガンの轟音が響く。大きな傷を負いつつも、パルヴァライザーは気にせず刃を振りかざす。
奴はジャウザーしか見ていない。これほどに大きな隙を、みすみす逃すわけにはいかん。
本能的にオーバードブーストを始動させ、一気にゼロ距離へと持ち込む。
いつの間にか弾の切れていたマシンガンをパージし、格納からブレードを取り出す。
格納できる物の中では最も強力なその光の刃を、パルヴァライザー目掛けて思い切り振った。
「俺の獲物に手を出してるんじゃねええええええええええ!!」
ほぼ、無意識で言ってたと思う。

『ディート……いや、今はアベルでしたか。結局あれは何なんですか?』
「だから言っただろう……俺が聞きたいぐらいだ、と」
本当に、あれに関してはわかっていることなどほぼ皆無じゃないかと思う。
わかってることと言えば、タンク型と4脚型と、今回の2脚型がいて、正体不明。
そして、パルヴァライザーという名前がついているぐらいだ。
「俺はあれのことが知りたい……今世界で何が起こっているのかを知りたい。だからジャックを追う」
その意志を曲げるつもりは、彼にはない。例え幼馴染みであろうと、彼を止めようとするならば力ずくで道を切り開く。
『あなたは……昔から強情ですからね。止めたって、無駄なんでしょう?』
よくわかっていらっしゃる。
『それより……さっきの最後の言葉は何なんでしょうかねぇ』
「……いや、つい勢いで」
何となく、情けない。

『それでは、私はしばらく身を隠すことにしましょう』
結局出た結論はこうだった。
ジャウザーはここで死んだことにして、彼は引き続きジャックについていく。
元々ジャウザーは、ミラージュの社長に才能を買われただけらしく、世界の行く末には興味が無いと言う。
だからこの場は譲ってもらうことにした。ただし、ジャウザーに懸けられた懸賞金は後に山分けだと言う。
『あなたが私を倒したわけではないのですから、当然でしょう?』
お金のことにしっかりしているのは、流石あの人の息子といったところか。
「ジャウザー」
『はい?』
「これが終わって、もし生きてたら飯でも食いに行こうぜ」
まるで、放課後の寄り道に誘うような気分だった。
なんとなく、学生時代を思い出してしまう。
『いいですね』
彼もまた、昔のように淡々と答えるのみだった。
『最後に、これだけ聞いてもいいですか?』
「何だ?」
『よく、声だけで私だとわかりましたね……』
「幼馴染みの声を忘れると思ったか?」

そして、最後の戦場へと……彼は向かう。




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