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「……何から、話そうか……」

膨大な情報を、機密保護の為に隠し続けていた。
作戦の当事者であるレイヴンにすら、隠さなければならない機密。
飛ん・で・レイヴンの面々には多少話してあるが、補充された残りの四名は何も知らない。
それを、全てのレイヴンが集うこの場所で、全てを包み隠さず話す必要がある。

「とりあえず自己紹介をしておく。私はウィルソン。君達のクライアントだ。
 ……まずは、君達を雇った理由と、何故君達が雇われたのかを説明しよう」

いきなり作戦の詳細やキサラギ社の内情を話すより、
まずは彼等が“何故”集められたのか、それを話すことにした。
その方が、彼等がこれから話される事を理解し易くなると判断した為だ。

「君達四人は、始めから我々の選び出した候補者だった。
 我々は未知の物の怪(もののけ)に対抗する為には、組織としての力が必要だと判断した。
 ……元々、レイヴンというのは、単独で戦況を変える存在として活躍している。
 しかし、今回の敵はとても個人の力でどうにかなる相手ではない。
 例えトップランカーと呼ばれるレイヴンを掻き集めたとしても、奴には歯が立たないだろう。
 だから、レイヴンの中でも異質な、『組織力』を持ったレイヴンを集めたのだ。対抗する為の力として」

ラッシュ、コルト、トーマス、そしてプロジェクター。
補充要員の名目で集められた彼等は、既に何度も共同戦線を張っている。
決してその共同戦線は、偶然では無いのだ。言わば必然……思惑によって意図的に生まれた事なのだ。

「それって、俺達が変わりもんだって事かよ?」
「平たく言うとその通りだが、決して馬鹿にしている訳では無い。評価しているのだ」

つっけんどんな態度のラッシュに、素早くフォローを入れた。
もちろん社交辞令の類ではなく、本心から彼はそう言っている。

「集めた……って言いましたよね? そりゃどういう事なんです?
 それも、始めから選んでたとか何とか。もちろん説明してくれますよねぇ?」

ラッシュとは対照的に、トーマスはあくまでも丁寧に、しかしやや刺のある口調で尋ねた。
先程から黙って聞いているコルトも、その問いについての返答を心待ちにしている。

「少々長くなるが……君達は選ばれたと言っても、実は君達以外の候補者はいなかったのだ。
 やはり、レイヴンというのは馴れ合いを好かんのだろうな。
 ……君達は、依頼を通して我々が選定していた。簡単に言えば、仕事振りを見ていた」

あまり期待はしていなかったが、しょうもない出落ちだった。
流石に、候補者が自分達だけだとは思ってもいなかった。最低でも三組はいると思っていた。
だが、ウィルソンは構わずに言葉を続ける。
「ノルト・ハイランドの座標AP-29地下施設襲撃……この依頼から、我々の選定は始まった。
 それ以降の君達『レイヴン三銃士』の仕事は、全て我々が仕組んだものだと思ってもらって結構だ」
「嘘ぉ……」
「マジかよ!?」
三銃士の面々に動揺が走る。当然の反応だ。
自分達は自分の意思で依頼を選び、自分の意思で仕事をしていた筈なのだ。
それが、全て仕組まれた事だったなどと、考える訳が無い。

「……なら、アークを通じて俺達の依頼受諾権を剥奪させたのも……」
「我々だ」
ウィルソンの即答に、怪訝な表情をしていたトーマスは、呆れた様子で溜息をつく。
これでは全てお見通し、いや全て彼等の掌の上の事なのだ、と納得せざるを得ない。

「続けよう。これから話す事は、君達にも関係がある。しっかり聞いてくれ」
と、ヘクト達の方向へと頭を動かし、静聴を促す。
彼は、キサラギの発見した過去の遺産、それを巡る社内の内部分裂と双方の対立を改めて解説した。

「……あの怪物には、今まで我が社が研究・開発を続けてきた全ての生体兵器の技術が使われている。
 正に集大成とも言えるが、それが我等に、人類に有益なモノでなければ、ただの化物だ。
 その上、強行派の奴等は『ディソーダー』の技術すら、その化物に盛り込もうとしたが、
 成功はしなかったようだ。恐らく、ディソーダーの本質が生体ではない事が幸いしたのか……
 失敗し、破棄されたディソーダーは非常に脆弱だが、増殖の危険性を無視する事は出来なかった。
 だから、三銃士の諸君に排除の依頼を出したのだ」

ギエンクレーターで行なわれた、ディソーダー排除の依頼。
三銃士はその依頼を一度は拒否したが、結局は報酬のアリーナ出場権に釣られる様に出撃した。
「あれもおたくらの仕組んだ仕事だったのか」
「じゃ、あの時の黒いACは、強行派って所の刺客か……?」
ギエンクレーターでの二つの依頼、両方に出現した黒いACアントリオン。
通常では考えられない戦闘力を持ち、三対一の状況で辛くも撃破したあの機体だ。

「向こうもレイヴンを雇っていた。
 だが我々とは反対に、単独での任務遂行率を重視していたようだな。
 恐らく、『フリー』の種を蒔いたのもそのACだろう。
 そして、『フリー』はディソーダーの残骸を糧として成長・繁殖した……」
ディソーダー排除と同じギエンクレーターで行なわれた、『デストロイヤ・フリー』排除作戦。
二機のACによる強襲、プロウセイル大破、満身創痍の勝利と過酷な任務となったあの作戦だ。

「あれは大変だったぜ。おっさんなんか半分死んでたじゃねぇか」
「正に九死に一生だったからな……」
「全くだ。俺はあの仕事で一回死んだよ。あの世も見てきたしな」
本当に死にかけたというのに、既に彼等の中では談笑すら出来る話題となっていた。
本人ですら、まるでちょっとした旅行の思い出と同等に扱っている。

「って事は、あれに映っていた緑のACは、あんたが乗ってたのか!?」
ガタンッ、と大柄な身体を考慮せず、飛び上がるように立ち上がるジョー。
『フリー』戦の記録映像は、飛ん・で・レイヴンの面々も目を通していた。
そして、その映像には確かに熱線の直撃を受け、蒸発したACが映っていたのだ。
あの状況下における生存の可能性はほぼゼロに等しいと思っていただけに、四人の受けた衝撃は凄まじい。

「そういや、『組織力』のあるレイヴンを探してた、って話じゃないか。
 俺が選ばれたのはどういう理屈なんだ? 俺はチームも組んでない独り身だったんだが」
これまでの話からふと湧き上がった、自分の存在という疑問をぶつけた。
ウィルソンによると、レイヴン三銃士の選定中に割り込む形で入ったのがプロジェクターだと言う。
最初の選定任務であったノルト・ハイランド地下施設襲撃の際に、偶然表れたのが彼だった。
もちろん、プロジェクターは偶然通りかかった訳ではなく、正式な依頼で撤退支援に向かった。
最初の選定任務ではまだ根回しが不十分だった為、三銃士のクライアントが独断で彼を介入させた。
結果的に三銃士との接点が出来た為、プロジェクターも飛び入り参加の形で選定された。

「それに、君達は若い。一人位は経験を積んだ人材が欲しかった。
 その後は君達も知っての通り、幾度も共同戦線を張らせ、チームとして馴染ませたのだ」
バロウズヒルの熱砂が広がる大地で繰り広げられた、巨大な蟲退治。
そして、『チーム戦』の主旨で開催されたスペシャルアリーナ。
その戦場を共に乗り越えた四人は、今や戦友として強固な絆を結んでいた。

「……そうだ、確かその後、君には我が社の左腕武装パーツを支給させてもらったが、
 使い心地等何か意見があれば、全てが終わった後聞かせてくれ。顧客の意見は大事だからな」
「はぁ……」
何もこんな所で言う必要も無いだろうに。商魂たくましいのは結構な事なのだが。
改めて目の前の人物が、キサラギ社の中でも商人として生きる人物だという事を思い知らされた。
そうでなければ、反対派の代表など出来はしないのかもしれない。

「そして、最後の選定試験が、オールド・アヴァロンにて開催されたアリーナだ」
『チーム戦』という主旨の元開催された、全傭兵派遣組織共催のスペシャルアリーナ。
地上の傭兵派遣組織、レイヴンズ・アーク。
地下、かつてレイヤードと呼ばれていた世界の派遣組織、グローバルコーテックス。
火星、人類の第二の故郷として開拓された星の派遣組織、コンコード。
日に日に増加していくレイヴンを志す者を効率的に管理する為、
各派遣組織は地域ごとにそれぞれのルールを定め、レイヴンの行動範囲別に所属する派遣組織を定めた。
なお、その際ナーヴスコンコードは解体され、地球のコンコード本社が丸ごと火星へと移された。

「……そして君達は、見事決勝戦まで駒を進めた」
今、この円卓に座っている八人のレイヴンは、その決勝戦で銃火を交えた後、同志として集められた。

「しっかし、何も本当に戦わせなくてもいいじゃねぇか。死んじまったらどうすんだよ」
「その程度でくたばるような奴なら、いないほうがマシだ」
スペシャルアリーナの決勝戦は、それまでのVR空間での戦いとは違い、本当の戦場で行なわれる。
折角集めたレイヴンを、下手すれば失ってしまいかねない戦場だ。
それでも、ウィルソンの本心はスウィフトと同じだった。
出来るだけ、運を味方に付けた人材が欲しかった。運も実力の内だと考えていたから。

「随分と時間が掛かってしまったが、これで背景の説明は終わりだ。
 聞いての通り、結局は我が社の内ゲバにすぎない。
 君達の雇用も含めて全て我が社の、キサラギの謀(はかりごと)となってしまった。
 あまり良い気分ではないだろうが、報酬はきっちりと払う。その力を、貸して欲しい」

「……作戦の詳細だが、もうしばらく準備に時間が掛かる。
 準備が整い次第、説明しよう。レミントン、半時間程したら司令室へ皆を連れて来てくれ」
「わかりました」

そう言って、ウィルソンは退室して行った。
残された八人のレイヴン達は、やや気まずい雰囲気の中、しばらくの間沈黙していた。
本来なら、共闘する仲間としての挨拶の一つもあるのだろうが、お互いに決勝戦で戦った関係だ。
ある意味、初対面よりもやり辛い環境とも言える。

「あのッ!」
静まりかえっていた部屋に、突然ヘクトの声が響いた。
気まずい静寂を破った彼女は、意を決して言葉を続けた。
「……あなた達の中で、白い二脚ACに乗っているのは、誰ですか?」

『あなた達』が指すのは、無論三銃士とプロジェクターの四人の事だ。
何故、彼女はいきなりそのような事を尋ねるのだろう……?
それが分かるのは、現時点では本人だけだ。四人には、ただ返答する事しか出来ない。

「……俺だよ。で、それがどうしたってんだ?」
肩の高さまでというやる気の無い挙手と共に、くだらない事を聞くなと言わんばかりの態度を取るラッシュ。
その横柄過ぎる態度に、残りの三人はうろたえ、フォローすら出来ずに見守るしかなかった。

「あなただったの……あ、ごめんなさい。珍しい戦い方をするものだから、つい興味が沸いちゃって」
「……そいつは、まさかあの紫のバッタ、いやACは君が!?」
決勝戦、ラッシュは常に一機のACと対峙し、その機体以外とは交戦すること無く試合は終わった。
機動力を生かした高機動戦に長け、味方との合流を捨て、一対一での戦いを挑んできたあのACだ。
しかし、そんな度胸のある戦法を取っていたのがまさか同年代の女の子とは思っていなかった。
その事実に、ラッシュの心は急激に目の前の女の子を、『一人のレイヴン』として認識し始めた。
「へぇ……見た目より気合入ってる訳か。気に入ったぜ」

先程までの態度とは打って変わって、急に友好モードに入るラッシュ。
そして、彼女の前で左手を差し出し、握手を求めた。

「……仕事だからな。馴れ合いって訳にはいかねぇけど、裏切り無しで頼むぜ!」
「お互い、後ろからは撃たれたくないからね。よろしく」

ラッシュの手を強く握り、握手が成立する。
思ったより堅い彼女の手は、紛れも無い戦士の証だった。

(――悪くないな、こういうの。たとえ作られた関係でも、悪くない……)
握手を交わす二人の姿は、両チームの同盟関係を改めて成立させる象徴のようにも思えた。
たとえ仕事としての、かりそめの関係だとしても、悪い気はしない。




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