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 大規模な電子戦の真っ只中、戦場のど真ん中で不敵に笑うメガネが一人。
 依然として論理爆弾もウイルスだってスタッフたちは手際良く処理していき、同時にたった一個の敵を打ち倒すために一秒でも一瞬でも休むことなくプログラムの改良、作成を行い、さまざまなフォルダを行ったり来たりするカドルの迎撃に全力を尽くす。
 半数のスタッフがカドルの迎撃に回り、もう半分は侵入者の監視。通常の万倍は強い電波が基地内を飛び交っていて、カメラも通信も使い物になりやしない。
ジャミング如きにへこたれる研究部ではないが、さすがに合計四方向からの挟み撃ちはきつい。
 第三階層を通過中のACが一機。ジャミングされる前のデータからするとリムファイヤーのバレットライフな事は間違いない。しかしスペック上のデータ通りならそれほど長期戦を行える機体でもないはずなのに、今もMKシリーズの一体が撃破された。相当な長期戦になっているはずなのにへこたれる兆候も見せない。
 それと第七階層を進むグループが二つ。両方とも全く違う潜入ルートを通っており、地図がなければ確実に迷う大本営の中をターミナルエリアに向かって最短距離で突っ走る。
 グループの片方に戦術部隊専属レイヴン、ジャウザーのヘヴンズレイはどうやら間違いなく本物で、彼が裏切ったのは間違いないようだった。エヴァンジェからは彼は潜入任務に出ているとのことだったが、そのジャウザーがここにいると言う事はもしかしてエヴァンジェまで裏切っている事の証明になってしまうのではないだろうか。
 片方のグループはジャウザーとやたらでかいトラックが一台。トラックは衛星と交信するためのアンテナユニットを溶接してあって、そのユニットを介する事でジャミングを行っているのだろう。トラックではあるまじきスピードで曲がり角をドリフトしながらヘヴンズレイにぴったりと引っ付いている。
 もう一方のグループはドミナント候補と名高いノブレスのカラスと同じくドミナント候補のジナイーダが駆るファシネイター。ファシネイターの持つハンドレールガンは表示スペックをはるかに超えた威力と弾速でつい先ほどMTを二機一気に撃破。カラスにはさしたる違いは見られなかったが、うわさの通りの死神っぷりでMTを血祭りにあげる。
 ドミナント候補の戦闘データはメチャメチャ貴重で、例えて言うならばUFOとかUMAとかどうしようもない部類のオカルトに近い。
 現実問題戦闘を開始すればデータをとり始める前に殺されてしまうのが関の山だから、ジャミングされていようとなんだろうと目の前で行われる戦闘のデータを採集したいとスタッフ達は考えている。
 そのせいでカドルに幾分かの余裕を与えてしまっている事には気付いていないと見える。
 つい先日、親を殺して責任者となったメガネはその事に気付いてるかもしれないが、何も指示を出さないでカメラを見つめるばかりだ。
「主任、侵入者Aが第四階層に突入します! MKシリーズの損耗率は述べ十パーセント。待機モードの部隊は残り三十機!」
 カドルのハックしたカメラと目を合わせていたメガネは切れ長の目だけを動かして、スタッフに告げる。
「第五階層以上のフロアにいるシリーズを呼び戻してください。直通ルートでメインサブ、両方のターミナルへ」
 この期に及んで冷メガネはちっとも焦っていない。まるで既に勝利条件は達成しているかのような余裕を見せている。
「ダメです! ジャミングが邪魔して遠くのシリーズまで指令が届きません!」
 カドルの最低限の勝利条件はシリーズの指揮権の奪取だ。追加のボーナスとして奴らの秘密兵器も破壊できればなおよいのだが、多分それは無理だと思う。
 問題になるのは敵の勝利条件で、カドルはメガネにとっての勝利条件は研究の成果と共に生き延びる事だと思っている。
 あまいあまい。
 マッドサイエンティストというキレたやつらは常識では測れないものばかりを考えているのだ。サイエンティストに限らず、先を切り開いていく奴等は常識では測れない。
 一足す一は二がわからないクズもいたし、自分の考えを証明しようとするあまり人の好意を何度も踏みにじり、あまつさえ人の信じるものを壊してしまいそうになったクズもいる。
 常識人には理解できない領域こそマッドでありクレイジーだ。ジェイソンとガリレイの間には紙一重の差しかない。
 それを踏まえた上でならメガネ野郎の勝利条件は見えてくるのだが、それがカドルには見えていない。
 カドルは手に入れた余裕を使ってモニターの一つをハック。これによリ相手の戦力を削ぎ、こちらの真の宣戦布告を表明する腹だ。
 スタッフの追撃プログラムの精度は下がり、威力も速度も数も三分の二ほどになった今、カドルにとってこの研究所の中を両手を広げて走り回る事だって不可能でなくなった。
 様々なフォルダを蹂躙し尽くし、ウイルスをばら撒きダミーを何百とばら撒く。ばら撒いた端からダミーは撃墜されていくが、同時に論理爆弾が起動して追跡プログラムを幾つも道連れにする。
 モニター制御のプログラムに頭を下げながらどでかいナイフを突きつけて、ごめんなさいごめんなさいと謝りながら首をかっ切って、傷口から噴出する0と1の残滓もろとも死体を加工する。
 死者への冒涜に見えるが、生きる事に使うのならばそれは冒涜ではないと最後まで信じたいとカドルは思う。死体まで偽装する自分の手はどれくらい汚れているのだろう。そんな手で謝られるジナイーダはどんな目で自分を見るだろう。
 モニターを制御。怠け者の電子に命令してモニターに映すものを全てシャットダウンする。モニターの一つは真っ暗になって、そのモニターを使っていた迎撃組の奴等は戦況の判断をとりづらくなる。戦場のど真ん中に絹で目隠しして突っ立っているようなものだ。
 手元の情報を頼りに必死に抵抗するがスタッフは成す術もなくなり、もはや嬲られるだけ。それでも抵抗するスタッフはなんともいじらしい。
 カドルは確保した後偽装して連れて来た情報組み換えプログラムとリンクして、自身の顔のデータを作り出す。それは不完全なものだったが急いでモニターに流し込んだ。
 初めに映ったのは能面のような何も付いて無いつるつるした顔。遅れて目と鼻と髪と、耳とか小じわとかがついて、最後に肌の質感が与えられる。
 その顔を研究者全員が検体Aのものだと理解するまで数秒のときを要して、その数秒の後に検体Aの顔をした何かが口を開いて言う。
『あなた達に勝ち目は無い。素直に降参する事をお勧めしますが、まだやるというのなら私は止めません。当方にはあなた達の積み重ねを全て無にする用意があります』
 見事な降伏勧告だった。スタッフの半数は手を上げてしまいそうになったが、もう半数はデータの採取に気をとられていて聞いていなかった。
 半数があきらめれば時間のかかる論理爆弾の威力調整も随分と楽になる、そう踏んで仕掛けた降伏勧告だったが、
「何を言ってるんです? あなたは神ではない。断言できる立場にあるわけでは無いでしょう。諦めが悪いのが人間です、プログラム化されたから忘れたわけではないでしょうに。それでも忘れたように振舞うあなたは悪魔でしかない。悪魔は聖者に滅ぼされるべきものです」
 メガネが言ってニヤリと笑う。科学者とは思えない言だったが、戦意を高揚させるにはバツグンの効果があったようで、スタッフ達は戸惑いながらも迎撃を再開する。
 このままだと論理爆弾の調整が出来ない。大規模爆破でないと最重要機密の蓋をぶち壊す事は出来ないが、大規模爆破だと機密内データごと吹き飛ばす危険が常に付きまとっている。百パーセントを超えなければならない成功確率を実際そうさせるには調整の時間が必要不可欠だった。
 次に隙を作る事が出来るのは一体いつの事になるだろう。早くしないとジナイーダとの待ち合わせに遅れてしまう。デートとの待ち合わせには一度も遅れたことの無いのが自慢だったのに、それだってなくなってしまう。
 それでも頼みの綱はジナイーダ達、レイヴン達なのだ。
『僕だってあきらめない。絶対に』
 タイミングを計ったようにデータ採取班の男が叫ぶ。
「侵入者、ターミナルエリアに侵入!」
 ターミナルエリアは各フロアへの入り口でありながら、同時にMKシリーズの待機ポイントでもある。現在メインターミナルには二十機の、サブターミナルには二十五機のピンチベックが待機している。
 


 地図と照らし合わせたところによると、もうターミナルエリアに着いたらしい。最短距離で進んできたせいか妙に短い道のりだったように思える。敵も少なかったし、抵抗はほとんどしていなかった。
 ターミナルエリアは六階分ぐらいぶち抜きの超巨大フロアである。天井の照明は最高級品の一般家庭なら目ン玉が飛び出るくらいの大W数だが、今ノブレスが立つ地の底にはほとんど光が届いていない。
 たくさんの簡易廊下と渡り廊下がフロアの数だけあって、トビラもフロアの数だけあった。特殊IDがあればこのエリアを使って数分で地下八階から表層までいけるのだろう。
 地上にこんな大きい空洞があるなんて信じられなくて、ただただ呆然とするジナイーダ。
 壮観だとは思うが、ノブレスは心のどこかに引っかかりを感じる。ターミナルエリアはどこかで見たような半球体で、何故かとても懐かしい気がした。
 開きっぱなしの回線から声が漏れてくる。
『ねえ、ノブレス、これってもしかして……』
『VRアリーナで見たような気がしますが……』
 。
 いやな予感がする。何故こんなに広いのか。デッドスペースの広さに唖然とするばかりのはずなのに、そのデッドスペースはまるでコロシアムのような。
 がっちゃん。
 どかん。
 がしゃり。
 いずれも鋼の軋む音。その後ACが起動する時特有のある種のノイズが検出される。
 直後に
 がっちゃん。がっちゃん。がっちゃん。
 一つ一つが小さなノイズでも、束になればバカに出来ない。束になるような状況が生まれるなんてあってはならない事だが、実際に起きてることを否定する事は誰にも出来ないはずだ。
 頬を汗が伝う。
「いやな予感がするんだが」「いやな予感がする」『いやなな予感がするんだけど』『いやな予感がしますね』
 見事にはもった声の直後にスピーカーからブチリと音が聞こえて、モニターに点滅するLOSTの文字。バカみたいに強い電波はいまだに撒き散らされているというのに、通信相手だけが雲のように消えてしまった。
 いやな雰囲気がいやな予感を生んで、いやな結果を呼ぼうとしているのがわかる。
 そうはさせない。先手必勝の心構えにしたがって、FCSの管轄を離れて構えたままになっている左腕のマシンガンをワンマガジン丸ごとはるか遠くの暗闇に向かって撃った。
 予想通りの鋼がへこむ音がだだっ広いターミナル内に響いて、ブーストを噴射する音が続く。一秒もしないうちに人型ACの一機が明るみに飛び出して、膝もつかないでグレネードランチャーを肩に担いでいる。
 始めて見た構えながらブーストをふかす中量二脚ACの姿に一瞬唖然とするノブレスと唇をかんで目を伏せるジナイーダ。
 反応は全員異なる。

 走ってくる黒いACがグレネードを構えている。全身の危険信号が一斉にアラームを飛ばし始めて、シーラもジャウザーもアクセルを全開。
 シーラはハンドルを左に切ってトラックにドリフトさせ、ジャウザーはそのまま突撃した。
 まだまだ黒いACとヘヴンズレイの距離は離れているのに、黒いAC、以前エドからもらった情報によるとモリ・カドルの駆るピンチベックは無造作にグレネードを撃つ。
 へなちょこ弾に当たるようではレイヴンとは言えない。
 つい最近一流の仲間入りを果たしたジャウザーは軽くグレネードを左に避わして見せた。
 それ以降もジャウザーはペダルを踏んで加速を続けたが、ピンチベックが方向転換をする兆しを全く見せないのが気になる。
 ざらざらしたいやな感覚を覚えたが、そっちから来るのならお返しをするべきだと、ジャウザーはそのままヘッドオンして左腕をコックピットブロックに押し当てて、一秒以上ブレードを発振した。
 ノブレスの使う杭ほどではないが、ブレードの発する高熱に一秒以上も耐えられる装甲なんてそうそう無い。コックピットの中の、おそらくオペレーションシステムもパイロットも灼いて、ピンチベックは動く事が出来なくなったはず。
 このACには指一本動かせなくなったはずだ。ヘヴンズレイは左腕をACの腹から抜いて、前傾姿勢のピンチベックは地に伏した。が、
 ここからが問題だ。倒れたピンチベックは、ACの内部で信号の喧嘩でも起こっているように、死ぬ直前の人間がするようにもがき苦しみ、あまつさえジェネレーターが異常稼動して悲鳴を上げた。
 機能は停止したはずなのに。動くはずが無いのにACは動いた。
 ジャウザーの頭の中に幽霊という単語が生まれた。
 ACの有り得ない動き云々以前にモリ・カドルは一日戦争の時に死んだはずだ。ここ一ヶ月は間違っても姿なんて見かけなかったし、データも抹消されていたはずだ。声だって……
 声?
 思い出す。エヴァンジェが言っていた。イヤホンを投げてよこして聞かされた。リアルタイム通信だった。最後の
 ――『……ザッ……ジ、…ないー……だ』
 それとエヴァンジェの
 ――「嵐が来るかも知れんぞ」
 脳みその演算装置がフル稼働。認められないものをすさまじい回り道をしながら順序だてて認めていく。
 つまるところ、エヴァンジェの言っていた嵐とはこれの事だったのだ。もしくはこれを含む何かの事に違いない。
 目の前の奴等の正体はわからないが、種も仕掛けもきっとどこかにあるという事だ。エヴァンジェはきっとそれを既に知っていたからこそジャウザーに忠告したのだろう。
 そうとわかればこいつらの相手をせねばなるまい。
 しかしこの場には一体何機のピンチベックがいるのだろう。十はくだらないアイカメラの光がヘヴンズレイを見つめている気配がする。
 おまけにジャミングをとめることも出来ずに逃げ回るしかないシーラのトラックを守らなければならない。彼女がやられてしまっては途端に成功確率が駄々下がりになる。
 先手必勝。こちらのペースに相手を巻き込まなければ勝ち目は無い。勝ち目がなければ自分の正しさが証明できないし、それはあってはならない事だ。
 ENマシンガンを構える。バッテリーからの供給を絞って、手近な、そうとはいってもかなりの距離は離れているが、OBをチャージしながら一機に連射する。
 青い人魂の色の光が何条も何条も群れを成して一つの目標に殺到して、それを回避するべくピンチベックがエネルギーをブーストにぶち込んで、ジャンプもしない恐ろしく単調な機動で加速を始める。
 もちろん単調な機動ではFCSからだって逃れられない。着弾点の予想できる弾丸を一発みすみすもらったピンチベックは加速すらもやめて姿勢を変えないままでバランスを崩してずっこける。二発目三発目が続いて当たれば、感電したように痙攣して動かなくなった。
 カドル以下の動きだ。カドルだって、落下地点の確認と設置圧の関係によるジャンプ後の隙の潰し方とかFCS付きの弾丸の避け方ぐらい知っているはずなのに、えらくらしく無い機動。
 カドルの亡霊にしか過ぎないのだ。幽霊にはこの世のものにうまく干渉できないのだろう。だから操縦だってうまくいっていない。
 好都合だ。一気に畳み掛ければいい。
 そう思った矢先に残ったピンチベックの半分が示し合わせたように一斉に動き出す。
 いくら相手が弱くても、いくらレイヴンが常軌を逸してても、立った一機っきりで十機を相手に、しかも護衛対象に傷をつけないでするのは不可能に近い。
 デク人形に近い亡霊といえども、完全にデク人形になったわけではない。
 一機のピンチベックがそのブーストに物を言わせて安全を確保するべく壁際を走るトラックの前に立ちふさがる。
 
 


一機一機ならMTと同じぐらいの歯ごたえしかないが、十機を超えると話は別だ。十発同時発射のグレネードを全部避けようと言うだけでも寿命が縮む思いをする。
 カラスとファシネイターを包囲するように散開したピンチベックの群れは、相変わらずの有り得ない構えでグレネードの狙いをつける。
 さっきから通信機の向こうでは
『やめてよ、なんで急に……』
 とかなんとか。わけのわからない事を言っていた。吹っ切れたのかと思っていたらこの状態。一体何が起こったのかはこっちが聞きたい。
 とにかく、注意を引くためにカラスが前に出る。いくらノブレスが常識外れ、仕事とあらば人をゴミ虫のように殺すレイヴンであろうともジナイーダに死んで欲しいと思うはずが無い。
 ノブレスには助けられる命ならば最大限助ける努力をする以外の道が見当たらないのだ。
 十本の長大なグレネード方が火を噴く。同時にカラスのOBをチャージ。一発一発を避けるのがいかに楽だろうと十方向からの砲撃をOB無しで避け切るのは難しい。
 ほぼ真横から飛んでくる弾は前進すれば避けられる。斜め前からの弾は上昇して回避。それにも対応してきた弾はどうするか。
 数度こっきりの誤差修正は勘でする。一種の計算式を瞬時に解いて、一気に10G加速。視界が滲んでほんのり赤く染まったがそんなのはいつもの事で慣れっこだ。体が異常を訴えかけても精神が耐え切れるなら問題はどこにも無い。
 横から飛んできた弾。斜め前から飛んできた弾はそれぞれにカラスに狙いをつけていて、左右対称に並んだAC達が放つ弾は当然のように弾同士でぶつかって、火と風を撒き散らした。
 巨大な火の玉が合計四個。その分の煙も生まれてその場にいる全員の視界は完全に埋もれたが、直後に火と煙をまとった黒いACが飛び出す。腕に付いた杭の一つが更に多くの煙を巻き付けていて、鋼の擦れあう音が耳障りだ。
 最後、極限まで正面に近い二機のピンチベックが放つ火の玉も、カラスが通るはずの地点で交差する弾道を寸分たがわぬ弾速でゆく。放たれたパンチを見てから避けるほどの荒業。カラスは旋回用ブースターに火を入れて、弾丸が交差するその点に到達する直前に体の軸までずらす。
 もうOBは切っていて、慣性だけで飛び続ける。コクピットのすぐ横でグレネード二発分の爆風が巻き起こり、ノブレスは機体の制御で手一杯。慣性の力は簡単には消えず、正面のピンチベックの後ろまで飛んだが、それすらもノブレスの計算の上だった。
 杭の回転はもう限界に達しているので後は撃ち出すだけ。旋回用ブースターで百八十度回転済み。ノブレスからはピンチベックの背中が丸見えだ。
 右脚で大きく踏み込んで、右腕を限界まで伸ばす。たかが右腕なのに、信じられないほどの射程を発揮して見せて、ピンチベックのコクピット裏にぴったりと狙いを定めて杭を撃ち出す。
 当然のように、ピンチベックは腹に穴を開けて倒れ伏し、ノブレスはその向こうの光景も見る。
 されるがまま。無抵抗だったジナイーダは目の前で黒いACが左のブレードを振り上げても無抵抗のままである。
 その時ノブレスは自分が何を叫んだかは覚えていない。
 
 

 広大な砂漠の真ん中でACとACが出会う確立なんてほんの数パーセントも有り得ない。それなのにあったと言う事は、相手がそれを狙っていた事を示す。
 思い立ったら一直線なのはリムファイヤーの常で、とりあえずは全力を持ってアライアンスを潰そうかと言うときにエヴァンジェに出会ったのは不幸であったのだと思った。
 こうなれば最小限の被害でやるしかない。どうせアライアンスの大本営で戦う事になるのかもしれないのだったら、今殺してしまえばいい。
 そう思ってアクセルを一番右のペダルを踏もうとしたときに通信が入ったのだ。
 ――お前の援助をさせてもらおうと思う。アライアンスに襲撃をかけるのなら作戦の一つや二つ、共に戦う者の一人や二人は欲しいところだろう。
 正直何を言っているのか、理解までには数秒を要した。彼の話し方ではまるで彼自身がアライアンスに反逆しているように聞こえる。
 戦術部隊隊長、エヴァンジェはそれ自体がアライアンスに染まりきっているものだとリムファイヤーは思っていたものだから、その言葉を信じる事は容易ではない。
 彼の物言いは一方的でしかなく、戦意の欠片も感じられなかった。その声は、その目はリムファイヤーでは無くその向こうの何者かを見ているようにも思えたが、果たして何を見ていたのか。
 彼を純粋だと評した人間がいる。
 戦闘狂エヴァンジェ。一日戦争の時にアライアンスとバーテックスの区別無くレイヴンを狩り続けた彼はいつしか通り名で呼ばれるようになっていた。
 最も多くのレイヴンを殺した男。それは何かを求めての事だろうか。
 人は何かを求めているからこそ何かをするのだと言う。エヴァンジェですら何かを追い求めたからこそ、周りに与える影響を無視してまでレイヴンを殺し続ける事が出来たのだ。
 それが純粋だと言う。目的のために他のものをかなぐり捨てる事が出来るのは不純物の無い透き通った思いあってのことだそうだ。
 なるほど理に適っているかもしれない。それならば親の仇をとる為に戦う俺は純粋ではないのかとその男に問うたところ、その男はそれを否定した。
 自分は不純らしい。リムはレイヴンを殺す事に別の何かを見つけていると男は言った。ずっと親のことを思い続けながら戦い続けてきたと自分自身で思い込んでいるリムには、男の言っている事が最後まで理解できないかもしれない。
 エヴァンジェが言った。
 ――今からそちらにIDデータを送る。俺がアライアンスで身分を証明するために使うものだ。それを使う事でターミナルエリアへの侵入は容易くなる。かなりのショートカットが出来るだろう。
 そんなバカな。同じIDが二つあるとアライアンスに知れれば即刻ばれてしまう。エヴァンジェには悪いが、こんなものは使い方にならない。
 ――明日、朝方にジナイーダとノブレス=オブリージュとジャウザーがアライアンス本部に襲撃を仕掛けるはずだ。ジャウザーにはジャミングを行うための高周波アンテナを持たせてある。ノブレス達の襲撃前からアライアンスに侵入し、ジャミングが開始されたのを確認したらそのIDを使え。
 それだけを一方的に伝えたエヴァンジェは無線操作のトラックを一台だけ置いてアライアンス本部のある方向に去っていった。トラックのコンテナの中には極小口径弾頭と大口径機銃専用弾頭が山ほど詰まっていて、ACの腕や体に弾頭を巻きつける為の固定具が入っていた。
 彼にとってこの行動はいかなる意味があったのだろうか、エヴァンジェが純粋であって自分が純粋で無いことと関係があるのか。
 敵の大本営に突入し、血液が沸騰してからはそんな事はどうでもよくなった。腕にフィンガーの弾頭を巻きつけて、ドラムマガジンを幾つも繋げた不恰好なチェーンガンをぶら下げて警備用のMTといくらも出てくる亡霊を狩る。
 カスのような手ごたえしかなくても戦っている事実がリムの心を沸かせたし、自分の力を確かめる事に酔った。
 正面から大本営に突入して地下四階まで一気に下る。先ほどジャミングが始まったので、IDと一緒に渡された地図どおりに現在地から一番近いターミナルに向かう。メインで無い。
 見え始めた扉にはでかでかとサブターミナル直通路と書いてあった。IDを脇の受信機に飛ばした瞬間からめんどくさそうに口が開いていき、広大な空間への道を示す。
 爆発の音が聞こえる。どうやら先客がいるようで、扉を開けた瞬間からバカみたいに強くなったノイズの群から考えるにジャミングを行っているらしいジャウザーグループの方が居るのだろうと推測。
 ――今はレイヴン同士で争っている時じゃない。
 別に仲良しこよししようってんじゃなくて、アライアンスを叩き潰すためには協力せねばなるまい。自分以外にレイヴンの命を狙う者がいなくなったその時になってから、ヤツラに俺の力を見せつけてやる。
 一直線の搬入路だからこそどんな敵が出てこようとバレットライフの敵じゃなかったが、コロシアムそっくりのターミナル内ではデク人形が相手だろうとなかなか厄介な筈だ。
 大量のデクとジャウザー一人を戦わせれば勝負がどうなるかわからない。万が一、ジャウザーが負けてしまってはリムが力を見せ付ける相手が一人減ってしまう。そうなってはならない。
 今日の味方は明日の敵だ。
 今日の味方の救援をすべく、リムはペダルを踏み込んで広場へ飛び出していく。
 



 目の前で見覚えのある黒いACが左手をかざしている。
 その姿を私は知っていて、その姿を私はぶち壊した。
 自分が求める理想の欠片を自分自身の手でぶち壊したのに、今またこうしてそれを拾いに大本営(こんなところ)まで来ている。
 ずうずうしいったらありゃしない。
 黒いACの中で体を燃やしていく恋人の姿を私は見た、にもかかわらず私はその相手に対する不誠実を表すようにここまで来た。
 もしかしてカドルは怒っていたのかもしれない。自分自身の自己中心的な納得で命を奪った私を許す気が無いのかもしれない。
 そう思うと私には何も出来ない。目の前で力をかざすカドルに逆らえば、私は最後まで彼を裏切り続ける事になる。
 裏切ったのはずっとカドルだったと思っていたけど、ひょっとしたらカドルは私が裏切ったんだって思っていたのかもしれない。
 私には理解し合う気が無かった。理解しようと思えば理解できたかもしれないカドルの事情を理解しようとしなかった。
 カドルだってそうかもしれないけど、もしかしたら私が理解しようとしていたら彼は死ななくても済んだかもしれないのに……
 カドルは不甲斐無いヤツだった。カドルは臆病者だった。カドルは不器用なヤツだった。でもカドルは何事にも一生懸命なヤツだった。
 そして、私はそんなカドルが好きだったのだ。だからこそカドルを守ってあげるべきだったのだ。ディルガン流域で戦ったときならまだ取り返しが付いたかもしれないのだ。
 責任は私にあるように思える。私の努力が足りなかったからこそのカドルの死だったのだ、きっと。
 彼が乗っていたACが今私の目の前には何機もいて、その様はまるで彼が何人にもなって私を責めているみたいだった。
 私には彼を責める事が出来ない。受け入れる努力をしなかった私には。
『ジナイーダ! よけろぉ!!』
 なんで今更私の名前を呼ぶ? 私が決着をつけるべき事なのにお前が口を出



 ノブレスの見ている前でジナイーダの命の火が消えようとしていた。
 でも、ロウが完全に溶け切ってしまわない内は火は消えないと信じたかった。
 そんなときに左手を振り上げたピンチベックの横っ腹を大出力のEN弾が貫く。エメラルドグリーンの光はコクピットブロックの横に大穴を開けて、電子回路に高エネルギーを通して引火した。一拍おいてピンチベックは横にくの字に折れ曲がって、穴からだけ火を噴いて吹っ飛ぶ。
 弾丸の飛来した方向にいるのは青い、最近は戦闘狂の名前で知られているエヴァンジェが操るオラクル。
 エヴァンジェが出てこないことをいぶかしんでいたノブレスは心配事の一つがようやく減ったような錯覚を覚えるが、安心は出来ない。なにしろエヴァンジェはアライアンス戦術部隊の隊長だ。普通に考えれば彼は自分達に攻撃を仕掛けてくるはずだ。
 しかしオラクルはそんな考えをあざ笑うように、ファシネイターに近い位置にいるもう一機のピンチベックの方を向いてクラウチングスタートのような姿勢をとった。
 キャノン砲の反動を打ち消しつつ、即座に行動するための姿勢だろう。OBがある機体ならば構えの隙を減らす事も楽なものだが、EOを装備した機体ならば隙を減らすためにパイロットは肩装備の選定をかなり絞る事となる。
 そのことを考えればクラウチングスタートはかなり効果的な姿勢だった。完成された戦術の一つであるかもしれない。
 次に撃つのはリニアカノン。貫通力よりも衝撃を考慮したホローポイント弾はリニア機構により高速で発射される。ジナイーダに向けてライフルを構えていたピンチベックは成す術もなくリニアカノンの餌食となり、あられもない醜態をさらす。
 とんでもない隙、大きくよろめくピンチベック目がけてすぐにブーストに火を入れたオラクルは高速でファシネイターの前を通り過ぎ、よろめくピンチベックと距離を詰めるや否や左拳でカメラを叩き割る。
 次いで名刀と名高いブレード「ムーンライト」を起動させる。青く高温のENの光は袈裟懸けにピンチベックを切り裂き、黒い機体は半身を大地に落として動かなくなった。
 あっという間だった。その場にいる誰も一機目のピンチベックがやられるまでエヴァンジェの存在に気付かなかったし、気付いてから対応する暇も無い間に二機目のピンチベックが大地に沈んだ。
 レイヴンとは伊達と酔狂で世を渡る生き物なのだ。気が狂ったように見えたって、それはレイヴンの気が変わっただけに過ぎない。
 アライアンス戦術部隊を率いる男が何をするというのか。何を思ってアライアンスに楯突くのかは本人しか知ることの無い事実だ。
 少なくとも今、エヴァンジェは多分自分達を攻撃してこないとノブレスは思う。
 オラクルが無差別通信。先程からジャミングの電波が少々薄くなっている。トラックから距離が離れたからかどうかはわからないが今ならば比較的クリアな通信が出来る。
 にもかかわらずファシネイターにはワイヤーを伸ばして接触回線を試みるオラクルが見えた。
『ジナイーダは先に行け、最下層への扉をくぐったら一本道だ。データ解析の時間も惜しい、扉を開くためのIDもこちらから転送しよう』
 対するジナイーダの語調が強い。何か不満があるのか。不満があるとしてそれは何だ。
『エヴァンジェ! ……どけ、私はカドルとのケリをつけなければ……』
『そのカドルが中央コンピュータールームで待っているはずなんだろう? 長距離通信を傍受する事くらいワケではない』
 長距離通信を使うものはこの頃めっきり少なくなった。通信の暗号化技術が進んでいないせいで、すぐに他の誰かに傍受されてしまうからだ。角度を絞った通信が出来るような技術はもう失われて久しい。
 そういえば、決闘の前日ぐらいか。妙な電波が飛んでいた気がする。つけっ放しのラジオにノイズが入るような事態はジャミングか電波がぶつかってしまったときぐらいのもので、長距離での電波のやり取りがなされなくなった昨今ラジオはいつもクリアな音を届けてくれる。
『今カドルは研究室で戦っていて、お前にはできることがあるはずだ。アレを手伝ってやれるのはお前を置いて他は無いだろう』
 また手近な敵に向き直り、EOを浮遊させて右腕のリニアガンを構える。
『あのピンチベックはなんだ。あれはカドルじゃないのか?』
『それもアレが教えてくれる。ここはエヴァンジェとこの』
 エヴァンジェが軽くコンソールパネルを叩いて、自分の力そのものを指し示して 
『オラクルに任せてもらおう』
 EOの起動は案外遅い。時間をかけてゆっくりと規定高度まで浮遊してから機体との距離を保つために赤外線でリンク開始。
『これはお前が俺個人の依頼を達成した事への対価だ。早く行け!』
 ノブレスは不覚にもエヴァンジェをカッコイイと思ってしまった。随分といいところを持っていってくれてむかつく野郎だ。しかもそれはどうせ戦闘狂の目的を達成するための芝居でしかないのだろうと思う。
 見あげた根性なもんでつい笑ってしまう。良くそんな事が堂々といえたものだ。
「腹立つヤローだ」
 オラクルのEOが目標をロックして小型の弾丸を撃ち始める。針のような弾丸はしかしなかなかの貫通力を持っていて、侮ってはならない。
 エヴァンジェに負けてはいられない。戦ってるのはやつだけでないことを証明してやろう。男は誰の目の前であろうとかっこよくありたいのだ。
「忘れんじゃねえ! ジナイーダ、ここは俺たちに任せてさっさと元彼をぶん殴ってやれ!」
 強く粘っこく糸を引く男と女の関係なんてそれしかなくて、さらにジナイーダがカドルを追っかけていた事まで重なると、過去に彼女達がアレな関係だったのも想像に容易い。
 無粋な事であるが、それだって今はどうでもいい話だった。
 押せば押されたものが進まなければならないのに駄目押しまでされた大の女が進めなくてどうする。
 ジナイーダはペダルを踏み抜いて一気に加速する。飛び交う弾丸を全てものともせずに避け切って、ターミナルエリアの出口にIDコードを送信すると扉が音を立てて開き始める。
 もう後ろは振り返らない。情けない事にさっきはまた動揺していたけども、今度こそ前だけを見つめて、そして自分を置き去りにしていったカドルをぶん殴ってやるのだ。



 目の前にACの巨大な脚が立ちふさがって、直進すれば間違いなく正面衝突。
 しかしだからと言って止まる事は出来ない。曲がって壁から離れれば相手に一方向分多く付け込む隙を与えてしまう事になる。
 シーラは思い切りがいいのが自分のいいところだと信じている。思い切りがよければこそ負けの色合いが強い勝負にも出るし、そのときは座右の銘通りに勝ち残ってやる。
 トラックはまっすぐ直進。ハンドルを握る手に力が入り、無意識の内にアクセルを壊れそうなぐらいに強く踏んだ。
 瞬間、雨が降ったのかと思った。
 ピンチベックの真上から赤い鉄の雨が降り注いだ。マシンガン程度の量では水が滴ったようにしか見えなかっただろうがそれはどこから見たって雨で、ただのマシンガンなんかより勢いも強く数も段違い。
 その鉄の雨に全身を打たれるピンチベックは刹那の内に何十もの弾丸に装甲をへこまされ間接を潰されて、力無きマリオネットさながらに踊り狂う。
 腕も首もはねて何時しか吹き飛んで、ただの鉄の塊に姿を変えた時に雨が止んだ。
 ひどい破壊だ。人の形をしていたものは見るも無残に穴だらけになって晒し者になっている。
 その直後に見覚えのある四脚のACが鉄の塊の脇に着地した。硝煙の立ち上る特殊マシンガン、通称「フィンガー」を両手に携えて鋭いアイカメラで全方位を見張っている。
 データで見たときとは姿が違っていて、腕には見た事も無いほどにチェーン状に弾が巻きつけられていて、その端はフィンガーの中に姿をもぐりこませている。
 肩に背負ったチェーンガンの形もおかしなもので、これまた妙な形をしたやたらにでかくて重そうなドラムマガジンがつけられている。一体何発の弾がこの中に入るのだろうか。
 リムファイヤーはレイヴンを狩り続ける、ある意味エヴァンジェに最も近いレイヴンだ。そしてこの大本営には現存するレイヴンが全員集結している。
 簡単な話だ。要するにリムファイヤーはいっぺんにレイヴンを狩るためにここにきたのだろうとシーラは当たりをつけた。ならば危ないのは自分達だ。ただでさえ敵の数が多くててんてこ舞いなのにこれ以上に敵が増えてしまっては目的達成だって不可能になる。
 考えた事はジャウザーも同じだったらしく、ENマシンガンをバレットライフに向けて構えている。
「こんなときにレイヴン狩りとは随分余裕がありますね!」
 声がもうやる気だった。血気にはやる若者は度し難いが、リムファイヤーが敵として現れた今、リムファイヤーを真っ先に潰す事には賛成する。
リムファイヤーは何も返事をしない。しないが、バレットライフが構えたチェーンガンは敵意の証明のようにも思えた。シーラはジャウザーを狙うには随分とおかしなところを狙ってるな、位の事は思ったが、ジャウザーはトリガーしようとした。
 間に合わない。リムファイヤーがチェーンガンを撃つ。連射砲の割には随分とぶっとい音があたりに響いて、でかい弾をジャウザーの左肩越しに背後を狙う。
 さすがのジャウザーもそこまでされればおかしい事ぐらい気付く。決して斜線上に入らないように右に平行移動して振り返った彼の目には左腕を吹き飛ばされたACの姿が映る。
『貴様らレイヴンを殺すのはこの俺だ! 邪魔するヤツはそいつから殺してやる!!』
 宣言するように言い放った。その強い語調は不思議とノイズまでかき消して、シーラにもジャウザーにもはっきり聞こえる。
 ヘヴンズレイはブーストを噴かしてリムファイヤーの正面から逃げるように側面へ回り込む。
 ちょうど側面からリムファイヤーを狙っていたピンチベックの一機に体当たりしてよろめかせた後即座に回りこみ、ピンチベックも目標を追って回る。ピンチベックのアイカメラがヘヴンズレイを捕らえたときにはもうヘヴンズレイは片ひざをついている。
 肩部兵装発射体制をとったヘヴンズレイが構えるのはスラッグガン。平たく言えばショットガンの強化版のような武装だが、その威力は桁が違う。
 まずショットガンは一つのシェルの中にいくつものつぶてを入れる事で、発射時に大量の打撃を生むものだ。対するスラッグガンはその特殊な発射機構により、全ての弾を鉄甲弾としている。一撃一撃の威力が比べるべくも無いのだ。
 盛大な音と反動を生み、打ち出された鉄甲弾はフィンガーとはまた違った形でピンチベックを蜂の巣にする。マシンガンと違って、弾丸の一つ一つが装甲を深く傷つけ、その総力の強さにピンチベックの体は軽く吹き飛ばされた。
「休戦、と言うわけですか」 
 ヘヴンズレイはそのままOBのチャージする。その隙を狙うピンチベックは五機をくだらなかったが、その全てを横殴りの突風が襲った。
 リムはFCSの電源を落とし、バレットライフの背負う二門のチェーンガンを両方とも前面に構えさし、さらにフィンガーまで構えてトリガー。一かける二足す五かける二、合計十二の火線がピンチベックを襲う。
「亡霊風情が人間を殺そうなんてなあ!」
 逃げ場なんてなかった。ヘヴンズレイの前に立ちふさがる敵のほとんどが嵐に巻き込まれて、ある機体はコクピットを失くし、またある機体は五体を失くして倒れた。
 かなりの数のACを倒し、このホール内の機体はかなり減った。このまま押せばターミナルエリアの敵は全滅させられるが、ここは敵の本拠地のど真ん中だ。何が起こるかわからない以上無駄な弾丸を使うのは避けたい。
 ヘヴンズレイが加速しながら残りの敵にENマシンガンを掃射して動きを止める。
「リムもジャウザー君もお手柄!」
 調子のいい事でもうリムファイヤーを愛称で呼んでいる。
 こうとなったらシーラは落ちた速度を最高速度まで引き上げるべくギアを上げてアクセルを踏んだ。
 追いかけるようにバレットライフが続いて、扉の前へ。
 リムファイヤーが呪文を唱えるとおとぎ話の岩戸のように案外あっさりと扉が開く。
「俺が殿を勤める!」
 ジャウザーが一番に扉に飛び込んで、トラックがその後に続く。
 ブーストを吹かしながら旋回したリムファイヤーは体にくくりつけてあったフラッシュグレネードをもぎ取って、ホールのど真ん中に投げる。
 影響を受けないようにすぐに振り返って扉に滑り込む。
 グレネードは何機かのピンチベックが見守る中、さしたる問題もなく順調に破裂。ノイズと圧倒的な光を撒き散らしてACのセンサーとモニターを焼いて行動不能にする。
 さらにリムファイヤーは扉のキーコードまでもシャッフルして、IDを通しても簡単には開かないようにした。当面は前から来る敵だけを相手にすればいい。




 その二終わり。その三へ続く





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