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「ちょっと、そりゃどういう事だよ!?」
「おかしいじゃねぇか!納得のいく説明をしろよ!」
「だー! 脇から吼えんなっつーの!」
ネオ・アイザック郊外の巨大ACガレージ兼居住施設。
レイヴン三銃士、又の名を『ARMORED GUNNERS』本拠地。
ラッシュとコルトを大荒れさせた事の発端は、アークから送られてきた一通のメール。
その不可解な内容に疑問を抱いた彼等は激怒し、今こうして抗議の通信を送ったのだが、
アークからの返答は、彼等の怒りの炎に油を注ぐ結果となってしまった。

アークから最初に送られてきたメールの内容は、
『依頼によって、依頼の受諾が一時的に不可となる』という不可解な内容だった。
これに対し、トーマスはレイヴンズ・アークの規則の一つ、
『個人的な依頼の受注、企業との専属契約の禁止』に違反しているとの指摘と共に、納得の行く説明を要求したが、
アークからの返答は、『問題は無い。正式な依頼である』と、あまりにも理不尽な内容だった。

「ざけやがってッ!!」「うわっ、バカ!」「止めろ!」
怒りのあまり、端末に振り下ろされかかったラッシュの拳を、二人がかりで止める。
感情を機械にぶつけて何になるのか。たとえ気が晴れたとしても、後に残るのは痛みと請求書位なものだ。

「ああもう、ラッシュ! お前は外で頭冷やしてろ」
悪態をつきながら、渋々ラッシュは退室した。蹴飛ばされたゴミ箱が、中身を撒き散らしながら宙を舞う。

「依頼によって、依頼受諾権利が剥奪された……?な~んか大人の事情を感じるねぇ」
「俺達だって、もうガキじゃないのにさ。それなのにこの仕打ち。世の中荒んでるな」
「どうする?」
「向こうは話す気が無いみたいだしな……まぁ、しばらくは休業だろ。」
仕事をしたくても出来ない状況。子供の頃、あれほど憧れていた環境の筈なのに、居心地が悪い。
やりきれない気持ちを抑え、コルトはラッシュと気晴らしに出かけた。
一人部屋に残ったトーマスは、真剣な表情で端末と格闘を始める。

(……俺達に、依頼を受けさせたくない、って事だよな。ってことは……)

――輸送ヘリに揺られる事数時間。プロジェクター達は、未だヘリの中に押し込められていた。
「……まだ、ですかぁ……?」
青い顔をして、ビニール袋を片手に握り締めたヘクトの質問には、非情にも『沈黙』という返答が返ってくる。
ただでさえ、ACの頭部に張り付くという苦行の後だ。その後何時間もヘリに乗っていては酔いもする。
弱り切った彼女も痛々しくて見ていられないが、目的地を言えないパイロットも気になった。
(どうせ行く事になるのにさ。何で口止めされてんのかね?)
(……まぁ、お互い仕事だもんな。身軽じゃない分、彼等の方が辛いだろうな)

結局、深く考えるのは止めた。所詮は傭兵家業、与えられた役割を果たせばいい。余計な事は考えるな。
ヒールから数え切れない程言われた言葉だが、案外それが、自分には丁度良いのかもしれない。

ラッシュ達の行き付けのバー、『夕暮れから夜明けまで』
その名の通り、夕方から朝にかけて営業している店なのだが、この日だけは違っていた。
(――やっぱりな)
店主は三銃士と非常に仲が良く、まだ三人共駆け出しだった頃からの付き合いだった。
そう、彼等の頼みならば、営業時間を多少曲げる事も出来る気前のいい店主が経営している。

アンティーク趣味の店長が取り付けた障子を勢い良く開け、これまた風流な音楽が優しく流れる店内へと入る。
「ケンさん! あいつら来てないか?」
「よ~う、トーマスじゃねぇか。これで、悪たれ三人組が揃ったって訳か」
店主の言葉通り、ラッシュとコルトはカウンターに座っていた。
たたみが苦手な二人は、この店ではいつもカウンターにしか座らない。
「お先にやってるぜ……」
「おいおい、飲んでんかよ? ったく、仕事だ。早いとこ戻って来いよ!」
そう言い残し、トーマスはさっさと帰ってしまった。

「……仕事ぉ? 俺達が依頼を受けれねぇって話はどうなったんだよ……」
「まぁ良いじゃないの。ケンさん、お勘定置いとくよ」
先程まで目の前でくだを巻いていた二人は、あっさりと帰ってしまった。
(若いっていいねぇ……昔が懐かしい歳になっちまったなぁ……)

――彼の名はケン・ファストリバー。何をやらせてもアークNo.1だった男……だがそれは、また別の物語……

物語を戻し、ラッシュ達は出来るだけ急ぎ足で、自分達の根城へと戻った。
――仕事。確かにトーマスはそう言った。
だが、今の自分達にはそれが出来ないとわかっていたから、昼間から飲みに出かけたのだが……
「おっし、戻ってきたな。いいか、良~く聞けよ」
「なんだってんだよ」
既にやや酒の入っているラッシュは、だるそうに体を思い切りソファーへと降ろす。
使い古したソファーから、ガキッと木材が軋む音が響いた。
「仕事だ、って言ってたよな?」
「ああ。まぁ、予定通りって事だな」
予定通り……?と、思った通りの反応を帰す二人に対し、トーマスはニヤリとニヒルな笑いを浮かべる。

「まず、俺達から依頼の受諾件を剥奪した件……これは、俺達が他の仕事をしないようにする為の、言わば根回しだ。
 つまり、どっかが俺達をご指名してる訳さ。だから、他の連中に持ってかれないように首輪を付けた……」
戦場の渡り烏から翼を奪うなどという事は、普通の状態では考えられない。
コンコードやコーテックスならまだしも、規律の遵守を何よりも優先するアークではまず不可能。
だが、そのアークが規律を曲げてでも行なう意義と、それをアークに強制できる権力があれば可能だろう。

「……って訳で、一つだけ依頼が来ている。
 クライアントはアーク。報酬はなんと400000C! ヒュゥ! キナ臭いねぇ。けど、俺達に選択肢は無い」
そう言って、二人の顔を見回す。
二人の目からは、否定の意思は感じられない。酔いなんぞ吹き飛んでしまったようだ。

「――決まり、だな」


約六時間ものフライトを堪能し、合流地点へと到着したプロジェクターとヘクト。
指定された場所は、割と大きな前線基地のようで、一通りの設備が揃っている。
アルフライラをガレージへと運び込んだ時、彼の目に衝撃的な物が飛び込んできた。
(あ、ありゃ……確か、ルシャナ! 何でこんな所に……!? しかも複数……!)
『RUSYANA』キサラギ社が、自社製作のパーツのみで製作した企業用AC。
キサラギ製外装フレームパーツ自体の希少性が高く、完全な姿ではそうそう見る事は出来ないシロモノ。
そのルシャナの肩に刻まれたエンブレムと、これだけの数のルシャナが配備されているという事実は、
依頼主の素性を予測する上で、非常に大きな要素となった。もはや疑いようが無い程に。

「プロジェクターさん、何やってるんですか? 仲間を紹介しますから……ほら、早くして下さいよッ!」
早速目的も忘れ、近くの整備員にルシャナのデータをせがんでいると、
ヘクトに文字通り襟首掴まれて引き剥がされてしまう。
そのままずるずると引きずられるという間抜けな姿勢のまま、ガレージの奥で稼動している生産ラインが目に留まった。
ACを、ルシャナを組み立てているようには見えない。
見当も付かない鉄の塊を、自動化されたロボットが囲んで作業している様子は、彼の心を掴んで離さない。
始めて玩具工場を見学した男の子のような気持ちが、今の彼を支配している。
ガレージが彼の視界から消えても、ヘクトは襟首を掴んで離さずに引きずり続けてくれた。
そんな彼女の優しさ、いやノリの良さだろうか、にしばし甘えてみる事にした。

「……そろそろ歩いてくれません?」
そう言って彼女は手を放した。地面と頭がぶつかる鈍い音が、耳鳴りとなって響く。
――世の中それ程甘くは無い。おふざけの代償として、彼は後頭部に大きなタンコブを作る羽目になった。

キサラギ反対派前線基地、現地警戒室。
常に目標を監視・観察し、偵察機の無線操縦や作戦決行準備等、いわゆる外堀を埋める為の部屋だ。
四六時中の厳しい監視体制のもと、目標の監視は途絶えることなく続けられる。
この部屋の奥のゲートの向こうが、巨大端末と巨大スクリーンに覆われた研究室。
もちろん研究対象は、バルガス空港『だった』場所。そして『母』と呼ばれる生命体センチュリオン・マザー。

――まるで巨木のように地下深くに根を張り、バルガス空港を糧として育った巨大な半機械生命体、マザー。

人が創り出し、人を超え、そして人に仇をなす存在と化したその『怪物』は、静かに目覚めの時を待っている。




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