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『スイーパ1よりクライアントへ。作戦領域に到達したが目標の姿が見えない』
『こちらクライアント。レーダーにも姿が捉えられない、スイーパ隊は現状維持せよ』
『スイーパ1了解…まて、なんだコイツは?
クライアント、映像を転送する。解析をたの…』
『こちらスイーパ2、スイーパ1が殺られた。コクピットをいちげ』
『どうしたスイーパ2、応答しろ!スイーパ3はどうした!?…クソッ!!!』

時はサイレントライン事件からバーテックス紛争までの空白の半世紀
地上に於いて人類を束縛する線が無くなり
企業が最も活発になった時期
この短い話はその半世紀の1コマを飾ったある専属レイヴンの話である

「残骸から回収された映像を解析した所、スイーパ1の物に
謎の浮遊物体が幾つか映っている事が判明しました」
「浮遊物体だと? あの区域でテストされているのはAC用の新装備ではないのか?」
「もしかすると、新型のEOキャノンの実験が行われていたのかも知れませんね」
「ふむ…分かった。報告御苦労、調査を続けてくれ」
「畏まりました」
「むぅ…」

ミラージュ本社の一室、窓から地上の都市が一望出来るというだけで
この部屋の主、デスクで頭を抱えている男の地位が相当のモノである事が分かる

「相手はキサラギ、テストされていたのは新型AC用武装、
全滅したこちらのMT小隊は敵の姿を何処にも捉えていない…
そして、謎の浮遊物体…実行したのは恐らくは専属レイヴンだったのだろうが…
キサラギの専属レイヴン達の全容は全く持って謎…
今回の作戦で敵レイヴンを捕縛出来ればと思っていたが、失敗か…」



『鷹目、今日の試作品はどうだった?』
「はっきり言って使い難い…が、凡人レイヴンにとっての話、
俺の様な狙撃屋には持って来いの装備だ。コイツが有れば
地平線を跨がない限り、ACにはどんなターゲットでも狙撃出来る様になる」
『お前にしては珍しい高評価だな、テスト結果は上に報告しておく。
その装備はもう好きにして良いぞ』
「了解した、帰還する」


ガレージの扉が開き、光と共にACが入って来る
右手には折り畳まれた銃身を展開すれば
機体全長の1.5倍はあろうかという巨大なライフルを持ち
左手にはシンプルな長方形のブレードデバイスを付けた
白い中量2脚の機体だ

『鷹目、機体を降りたらすぐにダグラス女史の所に行ってくれ』
「了解…鷹目ってのは止めてくれ」
『何故だね?』
「俺にはちゃんとした名前がある」
『そうかそうか、君はそっちの方がいいのか。鷹目』
「…」
『君が何と言おうと鷹目は君の異名であり愛称なんだ。気を悪くしないでくれ』

コアの後部が迫り出し、開いたハッチから対Gスーツと
ヘルメットを着用したパイロットが出て来た
身体つきは逞しいとは言えないが、分かる者には分かるであろう
ACの操縦に必要な筋肉は十分揃っている様だ
彼はヘルメットを着用したまま、機体から飛び降りると
受け身をとって、何事も無かったように立ち上がった

「…そちらからお出迎えか、レイ」

そして彼は機体に群がる整備員達とは反対の
方向を向き、ガレージの入り口から入って来た白衣の女性に声を掛けた

「あら、若い女が恋人の帰りを出迎えちゃいけないわけ?」
「お前の恋人って言うのはコイツか?」

男はそう言うと指でヘルメットをトンと突いた

「その子のこともあるけど…残りの7割は貴方だから安心してね」
「3割は他人の体を利用して作った自分の作品か。
やはりキサラギの研究者だな、安心したよ」
「つれないわねぇ…まぁいいわ、研究室まで来て貰うわよ」
「俺に拒否権は無い、言われなくとも分かっている」


男の名前はタカヤ・ヤマミ、キサラギの専属レイヴン

「眼としての機能に不調は無い?」
「問題無い」

物心が付いた時にはもう名前と共にキサラギの孤児院に居て
孤児院で育った男だ

「コレに換えてから生身に異常は?」
「問題無い」

左目は幼少時に事故で失い、それ以来ずっと義眼である
そして光が戻ったのはつい最近、新システムの実験台となってからだが

「こっちの機能は…?」
「自然な流れで触ろうとするなケダモノ」
「ほんっとにつれない男ねぇ…こんな絶世の美女に
ナニ触られても無反応しかも拒否ってどーゆうことよ?」
「俺にはただの頭の狂った科学者にしか見えないね。人の身体を何だと思ってやがる」
「私は他の奴等みたいに被検体に投薬実験を繰り返したり、
内臓を全て人工物に取り替えたりなんかしないわよ…
それに、私は貴方が気に入ったからこうやって好意で義眼を作ってあげてるんじゃない。
ヘッドパーツとのリンクが完成してからは狙撃の精度が高まったって聞いてるけど?」
「何が好意だ…猫は元気か?」
「あの子なら元気よ、貴方と違って素直で可愛いんだから」

先程から彼の左目をチェックしている女性はレイ・ダグラス
キサラギ重役の娘にしてキサラギ兵器研の一部門の主任研究者である
専門は義体全般、現在はタカヤの義眼――人体-AC間情報リンクシステム「SENRI」の研究開発を行っている
ちなみに、猫というのは前足が義肢のレイの飼い猫である

「そうだ、今夜私の部屋に来ない?貴方ならあの子もきっと喜ぶわよ、私も退屈しないし」
「ふむ…そうさせて貰おうか」


『鷹目、昨夜は女史とお楽しみだったそうじゃないか。疲労でミッションに支障を来すなよ』
「マイケル、残念ながら俺が寝たのはレイじゃなくて猫だ。
そして、俺にはミッションを失敗する気など毛頭無い」
『それは頼もしい。鷹目の実力拝見と行こうか』
「言ってろ」
『さて、そろそろ作戦領域に入る。準備をしてくれ』
「了解した」

「SENRI起動」

ヘルメットのバイザーが下ろされると共に、赤い義眼が機体と繋がり
「SENRI」が起動、左目がACのヘッドパーツと視界を共有する
人体-AC間情報リンクシステムの一部である

『機体を投下する。健闘を祈る』

機体が輸送ヘリより解き放たれ
白いAC―ピクシー―が地面に降り立った


「オービット射出」

ピクシーは着地と同時に、背部のオービットを射出
放たれたオービットはSENRIによって左目と間接的にリンクし
ターゲットへと向かって移動を開始した

「ターゲットはキサラギ領域へ進軍しているミラージュ侵攻部隊の先遣隊。数はMTが7体…見つけた」

オービットが移動中のターゲットを捕捉
多数の方向から映像をACに転送、コンピューターの処理を経て
義眼にターゲットの立体映像と各種情報が表示される
ピクシーは右腕のライフルの銃身を展開すると、構え
一発目の赤い閃光を放った
極限まで収束されたエネルギーは先頭のMTの動力部を貫き、MTは飛び散った

『攻撃だと!? 何処かっ…』
『1番機に続き3番機大破。2番機が指揮官代行となる』
『作戦本部了解。各機、2番機へ続け』
『5番機より作戦本部へ、4番機撃破時の映像を転送する。敵の方角を解析してくれ』
『作戦本部了解。映像の受信を確認、これより解析作業に移る。
また、今回の敵には専属レイヴンを充てる。貴様らは作戦の遂行に専念しろ』

オービットに搭載された装置が敵の無線を傍受
為す術も無くレーザーに貫かれて行く仲間達の中で
取り乱さずに指揮官の移行、報告を行えたということは感嘆に値する

「ミラージュの精鋭レイヴンか、厄介だな」
『鷹目、今からヘリを出しても間に合わない。迎撃は可能か?』
「俺に不可能は無い」
『頼んだぞ』

淡々とした言葉の中には自身が満ち溢れていた


「データ解析完了、敵の所在方角は被弾地点より北西の方角と思われます」
「一番近いと思われる位置に居るこちらのACは?」
「サウスノーブル-サイレントラインシティ間で新型輸送機のテストに
従事している奴が一人居ます。腕も確かです」
「ハイ・トリッパーか。敵勢力を始末させろ」
「了解しました」

ミラージュの1作戦の作戦本部の権限は規模に比例して強くなる
それが今回の様な他社領域侵攻ともなると、他の管轄にも介入することが出来るのだ

『HT、緊急任務だ』
「なんだい?」
『何時ものテスト空域に向かう筈だったんだが、急遽友軍支援のために進路を変更することになった』
「友軍支援?…あー、キサラギか」
『本機はこのままこの高度を維持し。指定された領域へ向かう』
「了解した」

ミラージュのスタッフと専属レイヴン
彼らが登場しているのは試作型多目的輸送機「スレイプニル」と呼ばれる機体で
成層圏上層を高速飛行することによって敵機や対空火器の脅威を無くすことを
目的に開発が進められている大型の爆撃機兼輸送機である
後に完成はするものの、生産に莫大なコストが掛かることが判明
2~3機のみが作られ、一部実戦投入された程度で計画は終ってしまった
彼らはこのすぐ後、鷹目と交戦に入ることになる


『指定区域上空に到達、地上にACを確認。ポッドを射出する』
「ハイ・トリッパー了解、最高の速度を期待する」
『ポッド射出5秒前…2、1、射出!』

「イイィィィィィィィヤァッハァァァァァッァーーーーー!!!!!!」


『鷹目、高高度から落下してくる物体を探知。恐らくACだ気を付けろ』
「輸送機は居ないのか?」
『それが、見つけたのは落下してくる奴だけだ』
「ふむ…了解した、何にせよ破壊するだけだ」

通信の直後、ピクシーのレーダーも落下物体を捉え
コクピット内に電子音が鳴り響く

「…沈め!」

敵のロックと共に鷹目の指が操縦桿のトリガーボタンを押し
上空に向けてライフルが灼熱の光を吐き出す
そして時間差無く初弾が命中、ポッドが溶解した

が、それと同時にポッドからACが脱出
内部の目標には傷一つ付けられなかった

「チッ…無傷か」

脱出した敵ACは尚も地面へ向けて降下
しかもブースターで加速しており、弾を当てるのは困難だった


「この速度!このG!スピードが俺の魂を燃やすぅぅぅぅぅ!!!!!!!!」

ハイ・トリッパー、レイヴンの管理がグローバルコーテックスから
レイヴンズアークに移行して間も無い頃にレイヴンとなった男
レイヴンとしてはかなり異質な人物で、ブースト移動や垂直落下時に
の体感速度に並々ならぬ執着を持つ。ミラージュとの専属契約の動機は専ら
ミラージュの技術と莫大な契約金を利用した、愛機の更なる高速化と噂されている

「今日の任務はカラスの駆除だっ!!!!!!」

地面との衝突直前、エクステンションを使って強引に機体を引き上げ
運動の方向を落下から前進へと変換し、ピクシーに向かって驚異的な速度で迫る
右手の小口径マシンガンは初速が高く、貫通力のある弾で弾幕を張り
左手のミサイルランチャーはオートロックのミサイルを放つ
スピード狂の紅い機体は戦闘機の如く、鷹目の妖精に襲い掛かった


「…この敵、疾いっ!」

こちらに対し、一撃離脱を繰り返す敵は予想外の難敵であった
照準を合わせようにも、敵の速度に間に合わず
光は見当違いの方向に飛んでいってしまう

『どうしたどうした、どうしたどうしたどうしたぁ!手前の実力はそんなもんかぁぁぁぁぁ?』
「その戦法と口調、ハイ・トリッパーか。正々堂々と真正面から打ち合う度胸の無いニワトリがっ」
『ハッ、何とでも言えよ、どうせお前はここで死ぬんだ。ベイルアウトも間に合わずになっ!!!!!』
(さて、ライフルが当たらないならば…どうする?)

鷹目は機体を身体で操りながら、頭で方法を考える
こちらのヘッドオンを許さない敵に対する必殺の一撃

【AP90%】

スナイパーライフル
速射には向かない、パージ

【AP80%】

左肩部オービットシューター
機体を重くする、パージ

【AP70%】

右肩部長距離レーダー
左同様に重い、パージ

【AP60%】

必要なのは

【AP50% 機体ダメージが上昇しています】
「左腕一本、ドスのみ」

警告音声と鷹目の独り言が重なり
それと同時に不要と判断された兵装――スナイパーライフル、オービットシューター
長距離レーダーが機体との接続を解除される

『血迷ったか?狙撃屋がそんなブレード一本で何が出来る!!』
「出来るさ、何もかもな…!」

敵が向き直り、瞬時に機体をオーバードブーストで横に吹き飛ばす
軽量化された機体は通常以上の速度を叩き出し、強力なGをパイロットに掛ける

「くっ…」
『随分とゴキゲンな速度じゃねぇかぁ!!!!』

ハイ・トリッパーは急に距離を離したピクシーに直に反応し
速度を維持したまま機体を旋回させ、ヘッドオンが可能な向きに調整
急激に迫ってくると共に、鷹目も機体を半身に構え
左腕部を後ろに引き、貫手の構えで敵を待つ

『うおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁっぁあ!!!!!!!!』

喧しい叫び声を上げながら敵が急速に接近
集弾率の悪い、マシンガンの弾が機体の表面に当たり、断続的に音を立て
ミサイルが右腕部に当たり、轟音と共に装甲を剥ぎ取る
しかし、その間にも鷹目は心を沈め、敵を貫くことのみに集中し
ブレードを展開、エネルギー刃が形成される
刃渡りは丁度、クレストのLB2とLB3の中間程度だろうか
まさにドスの名が相応しいブレードだった


極限まで高められた集中力によって
僅かな瞬間までも悠久に感じられる

機械仕掛けの左目、白い妖精の眼に映っていたのは
ゆっくりと迫ってくる紅い軽量2脚

鷹目は身動ぎ一つせず
冷静に、敵との距離を測り

最も得意とする間合

自分の領域に敵が入り込んだ瞬間に

腕を前に振り抜き

敵の腹部を貫いた


擦れ違いざまに、モニターにピクシーの横顔が写る
まるで笑っているようだった

「ば…馬鹿な…馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なぁぁぁぁぁ!!!!」
『HT、脱出しろ!』
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
『ベイルアウトするんだHT!』

腹部を貫かれ、コクピット内に炎が広がる
生まれてこの方、欲しい物は何でも、自分の力で手に入れて来た
負け、失敗を知らなかった男が初めての敗北した瞬間
脱出装置を作動させなければ命を失うことになる
しかし、脱出装置の作動は完全に敗北を認めるという事
二つに一つの極限状況
そして彼が選んだ選択は――


『ベイルアウト!ベイルアウト! 回収班を向かわせろ!!』


ミラージュ社の一角にオペレーターの叫び声が響いた


「…」
「どうだ、悔しいか?初めて負けたんだろう、他人に。初めて失敗したんだろう、依頼を」

荒野に二人の男
どちらも背格好は同じくらいで、同年代の声
まだまだ少年から青年といった所だろう
一人は燃え盛るACの残骸を見ながら、茫然自失と座り込み
もう一人は太陽を受け、白く輝くACを背に男を見下ろしている

「俺はレイヴンになる前も、なった後も、自分の力で全てをやり遂げて来た」
「お前は生まれてからずっと、挫折を知らずに育って来た」

浅く、深い
シンプルで淡々としていながらも、質量を持った会話

「盗みも、女も、ギャンブルも、ミッションも、何一つ失敗したことは無かった」
「…」

「一つ教えてくれよ」
「何だ?」
「何で俺は、お前に負けたんだ?」
「そうだな…お前は勝てなかったのさ、自分に。心の中であぐらを掻いている完璧な自分に」
「心の中の…自分か…」
「挫折は人生の終着点じゃない、折り返し地点だ。自分を見つめ直して、再出発してみろ」
「…最後に一つ、お前の名前を聞きたい」
「名前?そうだな…」


「鷹目…俺は鷹目だ」


その後、鷹目は戻るべき場所へと帰還し

「任務ご苦労様、疲れてるでしょ?コーヒー淹れて上げるからちょっと待っててね」
「偶にはコーヒー以外のモノも楽しみたいものだな…レイ…」
「ちょ…ちょっと…ん…はぁ……もうっ、強引なんだから…」
「偶には良いだろう?」
「何時もとキャラが違わない?」
「俺は気紛れなんだよっ……」

恋人と呼べる女と共に時を過ごした




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