「さぁ、行くぞ!」
桃白々一号の声が響く。
自由を勝ち取る為、クーゲルシュライバーは前へと進む。
その中で、ディオは何かを悟った。
無事に帰って来られるのか、なにより管理者に勝つ事が出来るのか。
それでも彼は前に進むしかなかった。
彼らは傭兵、戦いの中に身を投じる者達。

数日前、ディオは全てを話した。
桃白々一号は彼の話を聞き、考え込んだ。
「黒幕…というか管理者だと解っても、どうしようもできないな」
一号は実に歯がゆい気持ちだった。
「第一…管理者とは…また、なんだ。デカいな、色々と…」
一号の言葉を最後に、暫く沈黙が続いた。

「レイヴンを排除する、って事は…何か策があるんだよな」
ハンスが呟いた。
(アルーシャスとか…MTを研究者に提供してたし…)
「だろうな…だから、ただ待ってる訳にも行かない」
ディオが心なく答えた。
「でも、管理者が何処にいるかなんて解らないんでしょう?」
マリアが答え、それで皆がまた沈黙した。

二度目の沈黙を破ったのはリウェッタだった。
「ねぇ…スタードラゴンってさ、どんなの?」
思いもよらぬ質問に、皆が困惑した。
三号が傍らの機械を操作し、画像を表示させた。
「これがスタードラゴンだよ」
リウェッタは、画面を覗き込むと驚きの表情を浮かべた。次いで、発言。
「これ?私これがアルーシャスだと思ってた」
「…どういう意味だ?アルーシャスも直接見てないんだろう?」
ディオの問いに、リウェッタは答える。
「だって、私の夢の中にはこれがたっくさん居たんだもん」

彼女は自分の夢について語りを始めた。
何か大きな施設の更に地下、更に広大な施設。
スタードラゴンが何体も居て、それ故にアルーシャスだと思い込んでいたとの事。
研究者の夢の時は、研究者の姿とその場所だけが現れた。
彼女も企業の被験者。研究者の顔は解った。
そしてリウェッタが気づいた。皆も気づいた。
この夢こそ、管理者についての夢なのではないか、と。
「リウェッタ。場所は…場所はどこだか解るか?」
ハンスが問う。リウェッタは頭を抱え、悩んだが。答えは出なかった。
「わかんない…」
どうにか答えを出そうと悶絶するリウェッタを、マリアが優しく抱きしめた。
「焦らないで、大丈夫。そう…何か特徴は無かった?」
あ、とリウェッタが声を出し。皆の方を見て言う。
「壁に文字が書いてあった!F-9とか、D-4とか!」

(F-9!)
ディオはその言葉に覚えがあった。
初期隊長・マグナがスタードラゴンに襲撃された場所。
その施設の中にあるゲートに書かれていた名称。
ディオとハンスが同時に飛び上がり、お互いの顔を見た。
『あそこだ!』
同時に叫ぶ。二人が、最初に出会った場所でもある。
リウェッタが語った夢の内容、スタードラゴンが沢山居た場所。
大きな施設の、更に地下。
(現れたんじゃなくて、あそこが本拠地だったのか)
だが、同時に無視していた一つの脅威を思い出す。
「スタードラゴンが…沢山だって…?」
ディオの問いに、リウェッタは平然と答える。
「うん、いーっぱい」

それから数時間後、クーゲルシュライバーは慌ただしく動き出した。
人があちこち走り回り、通信機に向かって何やら打ち込む人も多い。
桃白々一号が他のレイヴンにも協力を求めたからだ。
管理者相手に小さな同盟集団だけでは力不足だと判断した。
そんな所へ、今しがた到着した一人の男は困惑していた。
レイヴン・マグナである。元々クーゲルシュライバーの隊長を務めていた。
スタードラゴンと交戦、重傷を負い入院していたが。今しがた退院した。
「なんだ…何が起きてるんだ?」
近況報告を受けていたものの、彼には現在の状況がまったく把握出来ていない。
棒立ちする彼を桃白々一号が見つけ、声をかける。
「マグナ!どうした!体は大丈夫なのか?」

走りよる一号に、マグナは答えた。
「ああ、大丈夫だ。直ぐに復帰できる…それより、なんなんだこの状況は」
話す最中にも、人が行ったり来たり急がしそうにしている。
「ああ、これはそうだ。ええと…あ!隊長…いや、まぁいい!」
一号は早口で色々喋ったあと、マグナを別室へと案内した。
そこで桃白々一号がマグナへ全てを説明した。
マグナは信じられない、と行ったが。一号は真実だ、と念を押した。
「そうだ、隊長の事なんだが。俺は臨時だったな」
一号がマグナに言うが、彼は首を振った。
「此処までになると、今更俺が隊長には戻れないさ」
丁度その時、桃白々3号が部屋へ入って来た。

「リーダー、メンバーを借りても良いですか?」
3号の問いかけに、一号は困惑した。
「…何をするつもりだ?」
3号の顔に少しだけ微笑みがともった。
「俺の専門分野ですよ、アルーシャスのAIの解析も終了したので」
一号は察した。
「まさか、AIを組み上げるのか?今からか…?」
「だから、メンバーを貸して下さい。と」
一号は暫く考え、悩んだ。
「皆が了解したら、それで良い。思う存分やり込め」
3号はそれだけ聞くと、笑顔で部屋を後にした。

彼はその後、研究室に他のメンバーを呼び、AI作成を開始した。
メンバーには機体の作成、AIの作成。それぞれで手伝ってもらっていた。

更に数日が経過、相変わらずクーゲルシュライバーは慌ただしく動いていた。
今度は様々なレイヴンがガレージ内を歩き・走り回っている。
ディオはと言えば、行き交う人々の中で呆然と立っていた。
見た事もないレイヴンが歩き、巨大ガレージは殆どACで埋まっている。
「世界を救う、ヒーロー。俺に相応しい大役だな」
前方から男がやってくる。やけに芝居がかった台詞だ。
隣で歩く女性もまた奇妙だ、仮面を被っている。
「私の美しき華麗なる戦いを、披露する最高の舞台ね」
彼女もまた、芝居がかった言葉を吐いた。
そして、すぐそばに知人を見つけ、声をかける。

「あー…ワイズさん。久しぶりです。やっと知ってる人が…」
ディオはワイズと握手を交わした。
「さっきも変な二人組が…」
ワイズがああ、と声を出す。
「ヴァンダムとプリンセス777だな、深く関わらない方が良い。正気を失う」
ディオは聞いた事のない名前だった。
ワイズが構わず言葉を続ける。
「それにしても、結構な数集まったもんだな」
最中、二人の美女が目の前を通って行った。
「お、今のは…ジャンヌダルクとロビンフッド姉妹か」
これもまた、ディオの知らない名前だった。
苦笑いを浮かべながら、ディオはその場を後にした。

少し歩くと、今度はハンスとグーを見つけた。
二人で何かを読んでいるようだった。
読みながら、机を指先で何度も叩いている。何度も何度も。
「…何してるんだ?」
ディオが声をかけると、ハンスが振り向き答えた。
「モールス信号っていう…まぁ、音だけで会話する方法だ」
なるほど、とディオは納得する。
「グーの手話が見えないからさ、新しい会話手段をとろうと思ってな」
それに、とハンスは言葉を続ける。
「レイヴンになる為にも、必要だし」
グーは隣で微笑みを浮かべながらディオとハンスを見つめていた。

「レイヴン…なるのは大変だっていってなかったか?」
ディオが問う。
存在しないとされている彼らがレイヴンになるのは難しかった。
(俺は…孤児扱いだったから…良かったけど)
≪ワイズさんがなんとかしてくれるらしいんです≫
グーが手話と思しき動きを取ったが、ディオには解らない。
「ワイズがなんとかしてくれるんだ、凄い人だよ。なんでもできそうだ」
ハンスがグーの手話お解き、ディオに伝える。
「あの人そんな事も出来るのか…」
ふと、目線を横にやるとそこに黒尽くめのティラが立っていた。
会話を切り上げ、ディオはティラの元へと歩み寄る。

「ティラさん…来てくれたんですね」
ティラは相変わらず黒フードで顔を隠している。
「協力すると言ったはずだ。さんはいらない、とも」
「ああ…ごめん。なんか凄い人っていう感覚が強くてさ…」
フードの中から自嘲気味た笑い声が声が聞こえて来た。
「ただのレイヴンだよ、君も私も…」
(レイヴン…レイヴン、か)
「管理者か、厄介なモノが出て来たな」
ティラが小さく声に出した。
「だが、これだけのレイヴンだ。戦力は十分だろうな」
ハンスが不安げに応えた。
「でも、管理者については良く解ってないんだ。それに…」
「それに?」
「スタードラゴンがまだ居るらしい、それに…沢山」

また自嘲気味た笑い声がフードの中から聞こえて来た。
自分の肩くらいまでしかない小柄な女性だが、やけに怖く感じる。
(やっぱ…なんか特別な感じがするな。悪いけどちょっと変だし…)
「愉快だな」
それだけ言い残し、ティラはその場を後にした。

今度はチーム桃白々メンバーが集まっているのが見えた。
何やらACを前に話し合っている。
「なんですか…この機体」
ディオが思わず聞いた。見た事も無い機体だった。
「ああ、ディオ君。これはAIACだよ」
3号が答える。2号が胸を張って宣言した。
「凄いぞ、こいつは。なんせ、チーム桃白々プロデュース!」
Ⅳ号が2号を小突いた。
「私たちは手伝っただけでしょ。ほとんど3号がやったんだから」
ディオは機体を見上げた。
「肩にリニアガンが積んである。大丈夫ですか…?」
3号が自信満々に答えた。
「大丈夫だよ、AIだから無理をさせても問題無い」

「今迄の僕の技術の集大成なんだ、このルキフェルは」
ルキフェルと呼ばれた黒基調のACを再度見上げるディオ。
(確かに…なんか強そうだ)
「3号さんはこれを操作するんですか?」
「そうだよ、僕じゃないと無理だし」
そこへFIVE号が口を挟んだ。
「こいつを量産できれば凄かったんですけどね」
「そりゃあ無理だ」
と笑う3号。
同時に、ラモンが大きく叫ぶ声が聞こえる。
「集・合フォー!!!」
桃白一号がミーティング開始の合図をラモンに伝え。ラモンが叫ぶ。

桃白々一号とマグナは大勢のレイヴンを前に、説明を始めた。
目的の場所、敵の情報(こればかりは少ない上に、不確定だが)
レイヴンをいくつかのグループに分け、それを発表した。
地下へ通じる場所を発見するには、あの施設は巨大すぎた。
個別に各々自由に活動してもらい、探索する。
スタードラゴン他、未確認の敵も存在する。危険極まり無い調査だった。

ミーティングを終え、皆が次々自分のACへと乗り込んで行く。
自分の機体を見上げ、ディオは考える。
(管理者…管理する存在。人類に…必要な…存在?)
管理者の言葉が頭に響き、困惑するディオ。
ふと周りを見渡すと、多くのレイヴンが居る。
管理者を討伐しようと、これだけのレイヴンが居る。
(管理者なんて…必要ない。これが証拠かな)

「ディオ」
乗り込もうとしたディオを呼び止める声がした。
声をかけたのはラモンだった。
サングラスを外している。ディオは彼の素顔に驚いた。
(こんな顔してたのか…なんか、普通だな)
「バッチリ整備しときましたよーぅ、安心してゴゥだ!」
素顔でも、彼の奇妙な言動には変わりない。
「ありがとう、ラモン」

輸送用ヘリに吊られ、目標施設へと近づくレイヴン達。
通信機から鈴の声が聞こえて来た。
「いよいよね、気分はどう?」
「微妙だな、でもなんか…ちょっと怖かったり、嬉しかったり」
苦笑を浮かべながら応えるディオ。
「嬉しい?」
「これで全てが終わると思うとさ。なんかちょっと嬉しい」
「そうね、これで終わりね」

「作戦領域へ到達、AC投下と同時に離脱します」
一号が声を張り上げる。
「よし!行くぞ」

彼らは降り立った、自由を勝ち取る為に。
世界の中心・ディオは今、世界の終焉を感じつつあった。





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