フェリアルギアスの死から数日。
ヴェルギリアスはショックの余り、体調を崩した。
ハンスとマリアは主に様々な準備、後始末をした。
リウェッタは夢と現実の二重の苦しみを味わった。
グーはマリアの代わりにリウェッタの面倒をみた。
桃白々一号は責任を感じ、一時は辞職まで考えた。
チーム桃白々を始め、隊員達は一号を引き止めた。
ラモンは今迄以上に整備、そして警備を強化した。

ディオは正直な所、何が何だか解っていなかった。
何故、自分が此処に居るのか。
何故、自分の周りで人が次々死ななければならないのか。
何故、自分の中で埋もれていた過去の記憶が戻りつつあるのか。
何故、そう、何故。
スタードラゴンなんてものが現れなければいけなかったのか。
アルーシャスなんてものが現れなければいけなかったのか。
ディオには解らなかった。何一つ。
だから、早くこんな事は終わらせたい。そう、願い。そして行動した。

彼女の死から更に数日後。事態は急展開を見せる。一人の少女の手によって。
だが少女は何もしていない。見ただけで、何もしていない。
少女・リウェッタは夢を見た。
広い、大きな建物の中。その中で様々な声を聞き、様々な物を見た。
飛び起き、今迄見ていた夢の内容をしっかりと思い出し、心に刻む。
彼女は自分の中で整理をつけると、傍らに眠る女性の肩に手をかけ、揺さぶる。
「マリア!起きて、マリア!」
「…何ですか、リウェッタさん?」
欠伸をしながら聞くマリア。間髪いれずにリウェッタが声を荒げる。
「見た!見たの!」

彼女が飛び起きたのは早朝。
彼女の話を聞いたマリアは、とりあえずリウェッタを落ち着かせた。
マリアが桃白々一号にその話をさせたのは、それから数時間後。昼間の事だ。
「…見た…その、研究者のいる場所を。夢で?」
一号が不信そうに聞き返す。リウェッタが答える。
「そう、見たの」
真剣な顔のリウェッタだが、一号は流石に信じられない。
「リウェッタさんの夢は良くあたるのよねぇ」
「あたる…たって。夢…なんだろ?」
抗議しようとしたリウェッタを、どこからか現れたラモンが制した。
「セイセイセイ…隊長、この子の夢は。本当ですよ」
普段の彼からは想像もつかない真剣な態度だった。

一号に様々な経緯を説明するセヴンビークス一同。
にわかには信じがたい話だが、こうも本気で話されれば認めざるを得ない。
「ああー…まぁ、あれだ。合ってればもうけもんだしな」
ディオが提案する。
「情報…というか、今はこれしかないんだから。行くしか無い」
皆が頷いた。
本日、リウェッタが夢で見た場所の調査が決定した。

彼女が夢で見た場所は大きな研究所のような場所。
AC規格で作られており、かなり大きいものだという。
ホーム近くの山脈から、研究所に入る為の隠しゲートがある、とのこと。
研究者討伐に乗り込む部隊はかなり多い。
チーム桃白々、セヴンビークス、そしてディオ。
前回の襲撃を考慮し、残りの隊員は各々警備についたりなどしている。
情報が夢という不確定なものなので、殆ど身内で固めた編成だった。
研究者にはスタードラゴンと繋がりがある。
彼らを捕らえる事は、スタードラゴンへの近道でもあった。

「領域に到達、ACを投下します」
久々の仕事である鈴。ディオも彼女のオペレータとしての声を聞くのは久しい。
多種多様な9機ものACがホーム近くの山脈へと投下された。
「まずは…入り口を見つけないとね」
桃白々Ⅳ号が提案する。だが、数人がこの状況に疑問を感じた。
「なんで此処まで近くにいるのに奴らの反応がないんだ?」
声に出したのはディオだったが、彼以外にもこの疑問は抱いていた。
「やはり…此処には何もないのかしら?」
通信機から鈴の気落ちした声が聞こえて来た。次いで、言葉を続ける。
「とにかく調査ね。気づいてないだけって可能性も無いとは言えないし」

当の研究者3人はこの状況に勿論気づいていた。
気づいてはいたが、どうしようも無かった。
調査している連中からすれば、夢なんてものを根拠に調べているだけだが。
実際は、完璧な奇襲である。研究者は度肝を抜かれた。
「なぜこの場所が解ったんだ…いや、まずはこれをどうするかだ」
陰鬱な声が叫んだ。研究者の一人、ガルーシャという男。
「この場所は絶対に解らないはずじゃなかったのか!」
アレフが取り乱す。最後の一人も何かの機械に話しかける。
「どうなってるんだ、答えろ」
機械からの返事は無い。
何度も試みるが、反応は一切返ってこない。
「おい…まさか、俺達は見捨てられたってのか?」
言い終える前に、通信機を思い切り叩き付ける男。
「止めろ!レグナス。そうさ…きっと壊れたんだ。故障だよ…」
陰鬱な声がレグナスを制止する。
「そうだ…俺達は、協力者だ。新世界へ旅立つ人間だ!」
アレフが狂った笑い声を上げた。
今もディオ達が頭上に居る事などすっかり忘れ、笑い続ける。

「あった!あった!これじゃないですか?」
叫んだFIVE号の元へ、集まるレイヴン達。
「良くやったFIVE号!」「本当に…あったのか」「やったな!これで」
口々に喜びの声を上げる。
中でもハンスは心中歓喜の声を上げていた。
(やっと…俺の、皆の敵を討てるのか)
彼らは地下研究所へのゲートをくぐっていった。

「侵入者警告…奴ら、ここに気づいた…」
ガルーシャが普段より一層陰鬱な声を出す。
「繋がらないのか…本当に故障なんだろうな…俺達は、一体」
アレフの問いに、機械をいじりまわしていたレグナスが答える。
「駄目だ、受送信を拒否されてる」
絶望を形にしたその声は、研究所の一室にやけに響いた。

地下研究所へと入って行ったディオ達を待ち受けたのは、無数の無人MT。
彼らのACの前には力無く崩れさるばかりだが、数が多い。
たった3人の研究者が個人レベルで所持できる多さではない。
また、その種類も多彩・かつ協力で明らかに可笑しい。
もっと言えば、この施設そのものが可笑しい。
彼らはどうやってこの施設と無人MTを手に入れたのか。
様々な疑問がディオの頭にと浮かんでは消える。
(奴らに聞けば…解る事か)
ガードメカをブレードで斬りつけ、先へ進む。
新たなゲートを通るディオをハンスとマリア、グーが追いかける。
チーム桃白々達は別行動、2チームに分けて施設内を回っている。

「ディオ、桃白々達がアルーシャスと接触したわ!」
鈴からの通信を受ける。咄嗟に計算を開始するディオ。
(全部で9機…いや、それ以上あるかもしれないな)
元々の数が定かではないので、結局ACアルーシャスの数は把握出来ない。
(仮に9機だとすると…残りは5機くらいかな)
先日クーゲルシュライバーを襲撃したアルーシャスの内、3機を撃墜。
ホーム跡で桃白々が撃破したものと合わせると撃破総数は4。
桃白々達の無事を祈りつつ、彼らは歩を進める。

『アルーシャスを撃破した、こっちは全員健在だ』
一号からの通信、ディオは内心ほっとする。
続いてハンスの声が通信機から聞こえて来た。
「やるねぇ、こっちはまだ…じゃねぇ!来やがった!」
叫ぶハンスの目の前に、漆黒のACアルーシャスが現れた。
(Ⅰ機だけか、良し!行ける)
直ぐさま応戦するハンス、ディオ達も加わろうとするがそれを制する。
「ディオとマリアさんは先に行け、グーと二人居れば大丈夫だ」
「ハンスさん、大丈夫なの?」
マリアが不安げに答えるも、ディオは相変わらず陽気な声で答える。
「だーいじょーぶ。それより、奴らに逃げる時間を与えちゃ駄目だ!」
承知したのか、AC閃花もアルーシャスに攻撃を加える。
マリアとディオは、先へ進む。

当の研究者三人は逃げる事など一切考えていなかった。
目の前に状況に絶望し、アルーシャスが撃破された事にさらに絶望する。
アレフは狂ったように笑い続け、ガルーシャはその場に項垂れ、何もしない。
唯一レグナスだけがまだ機械と格闘を続けているが。それも無意味だ。

道が二手に分かれていた。ディオは直ぐに鈴に助けを求めた。
「左側は…どこか別の場所へ通じているのかしら?とにかく、進むのは右ね」
了解、と短く返しディオとマリアは施設奥へと更に進んで行く。
「ディオ、クーゲルシュライバーの応援が到着したわ」
残りの隊員達も続々とこの研究所へと入って行く。
完全に研究者三人の命運は尽きた。
もとより、彼らは既に戦意も生意も喪失していた。
AIで動くACアルーシャスと無人MTだけが、空しく抵抗を続けるばかり。

『あー…王兄妹。未確認ACと接触、撃破する!』
『弾薬が切れた!誰か助けてくれ!』
『未確認ACを撃破した!よっしゃあ!って、うわっ!なんだ』
『なんであんたが此処に…って、おい!』

(何だ?何が…とにかく、アルーシャスの数は減って来ている)
「ディオ!そちらに二つの熱源を感知、別方向から来るわ!」
この言葉にマリアがすぐにレーダーを確認する、点が二つ。
だが、一つは友軍信号を示している。もう一つは敵反応・アルーシャスだろう。
「ディオさん、左側からくるのはどうやら味方のようです」
マリアが告げる、が鈴がそれに反応した。
「味方?味方なの?だって…こんな反応…」
(なんだってんだ?)
左側のゲートが開く、反射的にディオは銃口を向けた。
現れたのはデモリッシュ。レイヴン・ティラの機体だった。

「え…?」「あら!?」
驚きの声を出す二人。デモリッシュは動かない。
確かに友軍信号を出している。あのデモリッシュが、だ。
「デモリッシュ…?でも、味方?あ!アルーシャスが!」
鈴の叫びと同時に、右側のゲートから勢いよくアルーシャスが飛び出した。
応戦したのはデモリッシュ。立て続けに銃弾を浴びせる。
「これは…任せても大丈夫かな」
呟くディオ。意外にも、それにティラが反応した。短く、一言だけだが。
「行け」

突如現れたティラを跡に、ディオとマリアは進む。
暫く進むと、ひときわ大きなドーム状の場所へと辿り着いた。
ディオのACのちょうど目線あたりに、ガラスが見える。
その中には、研究者3人が居る。
「奴らを発見。どうすれば良いんだ…?」
思わず助けを求めるディオ。
「実質、既に拘束状態にあります。まず、聞きたい事が沢山あります」
マリアの少なからず怒りのこもった声が響く。

『ディオ…そいつらの様子はどんなんだ?』
ハンスの通信を聞き、ガラスの方へとカメラを移動させ、更に近づく。
目の前の画面の中央で、3人の男がこちらを見据える。
(こいつらが…ハンス達の…いや…俺も…なのか?)
ディオの思考を遮るように、通信が入った。即座に受信する。
「ハ…ハハ、ようこそ。レイヴン諸君」
狂った声だった、何かが可笑しい。
「貴方達に、聞きたい事があります。それも沢山」
マリアが冷ややかに宣言する。男達は動じない。

「"彼"との関係は?」
肩装備のグレネードの砲門を研究者達の方へ向けながら問う。
先ほどまでまだらに聞こえていた通信機からの声が途絶える。
「スタードラゴン。伝説のレイヴン・アルス。ハハッ、そんなのも居たな」
研究者の一人、アレフが答えにならない答えを返す。
「俺達は、利用されてただけなんだ…俺達は…新世界から見放された」
ガルーシャが陰鬱な声を出す。少々の狂みをおびている。
「…新…世界?」
聞いた事の無い言葉に思わずディオが問いかける。
「そうだ…新世界だ。ハハッ!でももう関係無いんだよ!」
両手を広げ、叫ぶアレフの姿がディオにも確認出来た。
隣で、何も喋らない男が何かの機械で何かの操作をした。

「皆…そこから脱出して!早く!熱源反応…自爆だわ!」
鈴の叫びが聞こえた。瞬間、様々な声が通信機から聞こえて来た。
(自爆…だって!?)
直ぐさま引き返すディオ。だが、鈴鳴は動かない。
「マリアさん!何してるんですか!」
「彼らを…彼らを…」
呪文のように呟くマリア。そして、ハンスの叫び声が聞こえる。
『マリアさん!そいつらはどうだっていいんですよ!もう!』
「…でも!」
『貴方も死ぬ気ですか!?リウェッタをこれ以上悲しませないでくれよ!』
「早く!」
ディオも叫んだ。マリアは…名残惜しそうにその場を後にした。
ひと際巨大なゲートをくぐり抜けた直後、ゲート奥から爆音が響いた。

彼らの居た場所はほぼ最新部。誰よりも脱出に時間がかかる場所に居た。
施設中の赤いランプが点灯し、けたたましく警報まで鳴っている。
「急いで!時間に余裕が無いわ!どんどん施設が埋まって行く…」
爆発により、次々と施設が地中へと沈んで行く。
連鎖的に崩壊するよう設計されているらしい。
(なんだってこんな自爆する施設なんか!)
逃げながら、やり場のない怒りを覚えるディオ。
そしてあの分かれ道まで戻って来た。
先ほど鈴に右に行け、と言われた分かれ道。
マリアが先へと進んで行く、後を追いかけようとしたディオは、見た。
正面ゲートが開き、その先に、青いACスタードラゴンが居るのを。
先ほど鈴がどこかへつながっている、と言った事も思い出す。
(スター…ドラゴン…なんで…この先に…何が)

「ディオ!どうしたの!?」
「スター…ドラゴンが…」
「え?…そんな、熱源反応は…何も…ディオ?」
崩れ行く施設を感じながら、ディオはスタードラゴンを見続ける。
スタードラゴンは振り返り長く続く通路の奥へと消えて行く。
まるでディオを誘うかのように。
「俺…行って来る」
「ディオ!?何言ってるの、今はそれどころじゃないのよ!?」
鈴の叫びを途中から遮って声が聞こえた、マリアの慌てる声。
「ディオさん!!ゲートが…閉まっ…ロックが!」
道は、一つしか無かった。

『ディオ!』
色んな人の叫ぶ声が聞こえる。自分の名を呼ぶ声が聞こえる。
彼はその声を後に、スタードラゴンが消えて行った通路を進む。
途端、通信機から一切の音声が途絶えた。外界と一切遮断されたのだ。
(この先に…答えがある)
胸の中に生まれた何かを感じ、彼は進む。
その奥に待ち受ける真実と、スタードラゴン目指して。
そして、眩しいくらいの光が、彼の眼前に広がった。





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