※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

彼の為の晩餐会、何時か招く、彼の為の晩餐会。
名目上は晩餐会だが特別何かあるわけでもない、一種の会議。
「どーするよ?奴ら、マジで討伐に乗り出したぜ?」
最初に聞こえて来たのはやたらと陽気な男の声。
返したのはまた男の声、最初の男とは違う低く静かに強い声。
「…放っておけば良い、我々には直接関係無い」
「そうね、あたしたちの邪魔になるなら話は別だけど」
今度は女性の声、澄み切ったアルトだ。
「僕たちが早く"彼"と接触出来れば良いんだ」
また、男の声。声に少し幼い感じの残る少年の様な響きだ。
「でもねぇ、それができれば苦労はしないのよ?」
柔らかく、優しさの塊のような女性の声。
「俺たちは今迄散々苦労してきたろー?」
「それもまた、関係のない話だ」
「皆で楽しく笑っていたいよ。だとさー」
「その為に頑張ってんじゃないの、あたしだってそうしてたいの」
「そうねぇ、楽しく皆で過ごしたいわねぇ」
この会議はこの後暫く続く。7人で5色の声をちりばめながら。

朝日。この間も目覚めたら朝日が差していた。
別段変わった事じゃない、朝になれば朝日が差すのは当然の事だ。
だけど今日は少しだけ違った。朝日は二人の人間を照らしていたのだ。
2人の内の男の方、ディオが寝ぼけ眼を擦りながら眠たそうな声を出す。
「鈴…朝早くから…なんのようだ?」
言い終えると大きな欠伸をしながら得意技ボーっとする、を披露する。
「貴方に会いたいって人が居るの、なるべく早くっていうから起こしに来たの」
鈴は酷く汚された部屋をなるべく認識しないようにディオの顔だけを見る。
「俺に会いたい…なんだ、女の人…か?」
かすかな希望と欲望の入り交じった声で鈴に問いかける。
「いいえ、男よ。それも貴方と同じレイヴン」
「なんだ…男か、一体何の用があって俺と会いたいんだよ」
「スタードラゴンの事で話がある。っていう人物」
この言葉を聞いてディオから眠気が全て吹き飛んだ。鈴の真剣な顔を確認する。
鈴もまた、ディオの真剣な顔を確認して詳しい内容を告げる。
「スタードラゴンのアルスに関して最も詳しいレイヴン、マグナ」

彼、マグナはディオのACガレージに来ていると言う。
常にディオより早く鈴が居るため、最初に彼女と出会い。ディオを連れて来た。
広く長く続く通路、彼は自らのガレージに向けて歩を進める。
「そのマグナってのはどんな人なんだ?アルスに詳しいって?」
「自称、アルスのライバルを名乗っていたレイヴンよ。」
「自称?どういうことだ?なんか胡散臭いぞ」
「大丈夫よ。自称ってのはアルスが気にかけていなかっただけの話」
「気にかけていないって事は…もう、わけがわかんないぞ」
「詳しい事は気にかけなくて良いわ、彼がアルスと深い繋がりがある。それで十分」
「そうか」
「そうよ」

ディオが自分のガレージに着くや否や、すぐにマグナに声をかけられた。
妙に存在感のある、いかにも実力派レイヴンという感じの男性だった。
「良いACだ、本当に新人かと最初は疑ったよ。よろしく、俺がマグナだ」
「どうも、ディオストラーダです。長いからディオで良いです」
握手を交わし、二人とも椅子に座る。目の前にはディオの愛機がある。
応接室等に案内等といちいち気を使うような事はしない。
レイヴンは細かい事を気にしない。例外も居るが、大体はそうだ。男性なら尚更である。

「君が先日スタードラゴンと交戦した、と。一応だが、本当か?」
「ええ、本当です。それが何か?」
マグナはふむ、とだけ小さく言葉を漏らし。続けた。
「奴と交戦したレイヴンで生き残りは居ない。君を除いてな」
「えっ?」
「奴と戦ったレイヴンは1人残らず死んでいるんだ、君だけが無事に生き残った」
「しかも、だ。大した傷も負わず、奴の方から逃げ去ったというじゃないか」
ディオは自分が対峙した謎のACがどういうものだったのかを思い知らされた。
伝説のレイヴンというアルス。それだけの実力者と戦い、生き残ったという事実。
実際は彼が搭乗しているかどうかは解らない。
だが、奴と戦ったレイヴンは1人残らず死んでいる。そんな相手だった。
「だから俺は君に興味を持ったんだ、一体どんなレイヴンなのかと」
「調べてみたら…君は最近レイヴンになったばりだと言うじゃないか。驚きだ」
「はぁ…で、俺に会いに来た理由はなんですか?興味だけじゃ…ないんでしょ?」
「俺は君に協力して貰う為にやって来たんだ。直に会ってみたかったのも事実だが」
予期せぬ言葉にディオは一瞬固まった。

「協力?」
「そう、協力だ。俺は今、対アルス調査隊の隊長を務めている」
「対アルス調査隊?やっぱりアルスってレイヴンが乗ってるんですか?」
「いや、それは定かじゃない。ただスタードラゴンだと呼ぶのに長いだろ?」
「もっとも、ちゃんとした名前があるんだ。調査隊の」
「協力…俺も調査隊のメンバーになれって事ですか?」
「そうだ、我々…クーゲルシュライバーの一員になって欲しい。その為にここへ来た」
ディオは少々悩んだ。答えは既に決まっているも同然だった。
わけもわからず襲われたなぞのAC、自分が対峙し生き残ったと言う事実。
避けては通れない道、まさかレイヴンとなってすぐこんな大きな事に巻き込まれるとは。
「解りました。やりましょう」
「ありがとう、ディオ」
二人は再度固い握手を交わした。同時に、マグナの携帯用通信機に連絡が入った。

「早くも、面倒な事になったな。いや、嬉しい事か…。どちらにせよ予想外だな」
AC輸送機の中でマグナが語る。
彼に入った連絡はアルス目撃の情報だった、クーゲルシュライバーの隊員からのものだ。
アルスとは関係無く依頼をこなしていた隊員が偶然アルスを発見したというものだ。
発見したのは共闘した隊員であり、二人で依頼遂行中に片方が教われる形になった。
「その…襲われたレイヴンってのは…?」
ディオが恐る恐る聞く。
「撃破が確認された」
そうか、と項垂れるディオ。だが、マグナは淡々と言葉を続けた。
「これ以上、犠牲者を増やすわけにはいかない」
「大体、あいつの機体ってだけで俺は怒りが収まらないんだ。あいつが…生きて…」
そこまで言った後、マグナも口を閉じた。
だが、数分してからまた口を開いた。
「これは奴を止めるチャンスだ」

スタードラゴンが現れたのは巨大な閉鎖空間構造の施設だった。
内部はいくつものブロックに分かれていて、巨大なゲートで仕切られている。
施設が大きいだけに再発見は難しいが、だからといって諦めるわけにもいかない。
マグナとディオが連絡した隊員と合流。
「隊長、他の隊員にも応援頼んでおきました。俺は機体の損傷が激しいので帰還します」
「解った、ありがとう」
大分ボロボロになったACを後にディオとマグナは施設奥へと進んで行く。
「さて、此処から大きく二つに施設が分かれる。二手に分かれよう」
「1人で相手には出来ないと思うんですが…」
「俺たちが倒さなくても良い、応援が来る迄時間稼ぎくらいは出来るはずだ」
「奴は強い、正直サシじゃ勝てないだろう。人海戦術で消耗させていくしかない」
「解りました」
二人は別々のゲートをくぐり、スタードラゴンの捜索を開始した。

(やけに広いな、早めに遭遇しちゃったら駆けつけるのに時間がかかりそうだ)
(第一、応援ってのはどれくらいで着くんだ?俺のガレージは此処に近かったが…)
ゲートをいくつくぐっても気配さえ感じられない。移動音さえ聞こえてこない。
何度目かのゲートをくぐった時、もう逃げられたんじゃないかとさえ考え始めていた。
「鈴、応援ってのは後どれくらいで到着しそうなんだ?」
「もう少しかかりそう、此処って結構辺境だからね」
「そうか…」
答えながらゲートをくぐると、目の前には多数の無人MTの群れがあった。
(うわ!忘れてた、依頼を遂行中だったんだからMTくらいいるよな!)
即座にEOを起動させ、リニラライフルとブレードでMTを駆逐していく。
(そういや…あの時EO起動させるの忘れたな。まぁ、だからって…)
思案の中途でマグナからの通信が入った。
「ディオ、見つけたぞ。奴だ!F-9に急げ!」
(———見つけたッ!)

無人MTの群れを急いで殲滅する。
「F-9へはこのまままっすぐ進めば着くわ!そう遠くないはず!」
「解った。応援が来るまでもう少し待って欲しかったけどな…」
「逃げられなかっただけでも良しとしましょう」
ゲートをくぐり、マグナの元へと全速力で進んで行く。

眼前にそびえる青いACを前に、マグナは震えていた。
恐怖からのものなのか、それとも何か別のものなのか。
先ほどディオには連絡を入れた、直ぐにでもこちらへ向かって来るだろう。
「本当に…おまえなのか?アルス…生きてたのか?」
スタードラゴンは何も答えない。ただ、静かに立っているだけ。
「そうだな…何を聞いても…お前を…倒せば解る事だな!」
両手のハンドガンを連射し、スタードラゴンへと突撃するアクシズバレット。
瞬間、開戦を察したスタードラゴンもライフルで応戦する。
ハンドガンの銃弾を大きく動いてかわしつつ、的確にライフルの銃弾を放つ。
マグナも銃弾を極力躱しつつ反撃するが、全ての弾は躱しきれない。
スタードラゴンも少なからず被弾してはいるが、大きなダメージは無い。

暫くの銃撃戦の後、スタードラゴンの動きがピタリと停止する。
マグナも思わず操縦する手を休めてしまう。
死んだはずのライバル、アルスの言葉を期待していたのかもしれない。
だが、スタードラゴンは何かをする気配はない。搭乗者の言葉もない。
聞こえるのは自分の鼓動と静かな起動音だけ。
ふと、マグナは気づいた。スタードラゴンの方から奇妙な音が聞こえて来る。
(なんだ…奴に一体何が?)
奇妙な音が止んだ、と同時にスタードラゴンが再度動き出した。
今度は見違えるようなスピードでマグナの方へと向かって来る。
「ちっ!何が起きたっていうんだ!」
全力で後退して距離を離したが、多量のミサイルが向かって来る。
「…ぐっ…!」
まともにミサイルを被弾し、コクピットの中でよろめくマグナ。
(奴は…どこだ、くそっ見失った!)
肉眼で確認できない事を悟り、とっさにレーダーを確認する。
そして彼は見た、赤い光点が自分の真後ろにあるのを。

(F-8…もう少しだ!絶えてくれよ、マグナさん!)
(もっとスピードでないのかよ!急いでくれ!)
焦りながら全力で進んで行く、流石にブーストは吹かし続ける事が出来ない。
チャージング状態に陥ってしまえばそこでおしまい。
既にマグナはスタードラゴンと交戦中。無駄に時間を食う事はできない。
眼前に広がる巨大なゲート。F-9と表記されている。
(此処だッ!)
————ゆっくりと開いて行くゲート。
その先にディオが見たものはミサイルに直撃したアクシズバレット。
リニアライフルを構えたものの、スタードラゴンの姿が見えない。
「マグナさん!?」
奴に逃げられたのかと思い、マグナに近づこうとした。
瞬間、マグナの後方から青い閃光が一閃。
アクシズバレットの上半身と下半身は別れを告げ、裂け目から青いACの姿が垣間見える。

(嘘だろ…凄い実力派のレイヴン…って、なんだこれ…)
「う…うわぁぁぁぁぁぁ!」
叫びながらリニアガンを乱射するディオ。
信じられない速度で機体を左右に振り、これを避けるスタードラゴン。
「お前は、お前は一体なんなんだよ!畜生ッ!」
声の限り叫ぶが、リニアライフルの弾はかすりもしない。
だが、それとは関係無しにスタードラゴンから破裂音が聞こえて来た。
何かが壊れたのだろうか、スタードラゴンは急に後退し、ゲートの方へと進んで行く。

「逃がしてたまるかッ!」
「待って!彼はまだ死んじゃいないわ!」
(な…んだって?)
「機体はまっ二つになったけど爆発もしてないし、コアも大した損傷は見られない」
「でも、あいつを逃がす訳には!」
「貴方一人が戦ってどうにかなるわけないでしょ!応援もまだなのよ!」
「この状況じゃ仕方が無いわ、奴の事は諦めて、彼を助け出さないと!」
「…」
彼は短い時間で多くの事を考えた、生まれて初めて脳をフル活動させた。
ここで奴を追ってもやられるだろう、応援までの時間稼ぎも不確定だ。
マグナの命を優先するか…調査隊の為にも、彼は必要な人間だ。
だが、ここで奴を逃がすとまた犠牲者が出る。
またいつ奴をこうして捕捉できるか定かじゃない。
でも今の自分にはどうする事も出来ない。
(答えは…一つしか無い…か)
「お前は…何が…したいんだ。答えろ、アルス…いや…スタードラゴン…!」
答えは無い、閉まるゲートの奥で青いACが遠く小さく消えて行く。

彼を中心に周り出した世界は加速することを止めない。
ただ、速度を上げ、力無きものを振り落とす。
彼はまだ、何も知らない。自分が中心である事も知らない。
彼が何を知らずとも、世界はただ回り続ける。静かに、速度を上げながら。




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー