キサラギ戦術AC部隊 通称「六道」
他企業の勢力の増大に懸念しての会議が発端となり発足
部隊人員にはかねてから研究されてきた強化人間達を編成
総勢部隊員6人。操縦者のケアサポートにはキサラギ攻性工学研究特務隊(通称キ研)が就く
部隊員の移住空間はキ研のルームを使用、ACガレージも同様にキ研施設内に設置
主要任務は他企業への対抗行為(偵察、防衛、工作等)

なお、当部隊の存在はレイヴンズ・アーク及び他勢力にも秘匿とする




ドーム状の戦闘場の中心に、一機のACが鎮座している。
いわゆる「試作機カラー」でカラーリングされた機体だ。
キサラギ戦術AC部隊の弐号機「極楽」だ。特異な形をしている。
コア部から隆起した外殻板が頭部を半ば覆っている。
大きく前方にせりだしたコア部とは対照的に脚部は細い。
鳥の脚の様な逆間接が一見して機体の印象に奇妙なアクセントを加えている。
背中には取ってつけたような不釣合いなレーダーレドームが一基装備されている。
武装は一見施されていないように見える。

実験スペースの隔壁が開き、6体のMTが配置される。
一般的な逆関節MTだ。ライフル砲とロケットを装備している。
AIが搭載された施設防衛用の無人機だ。
MTの配置が終わると同時に、「極楽」が動き出す。
素早い挙動で、肉薄する。
MTは部隊を展開するとすぐさまライフル砲を一斉に発射する。
「極楽」は一瞬身を沈めるとMT部隊の頭上高く跳躍した。
ドームの天井すれすれまで跳躍している。通常のACには考えられない跳躍力だ。
MTのAIが反応できないでいるうちに「極楽」が凄まじい速度で降下する。
ちょうどMT部隊の中心だ。中心にいたMTの上に着地する。
じたばたと脚部をばたつかせるMTをもう一度踏みつぶす。妙に人間的な動きだ。
残った5機のMTが応戦しようと「極楽」に砲塔を向ける。
「極楽」が武術の構えをとるように左手を引く。
刹那、その手の先から青い光が伸びる。それは巨大な刃の形を形成していた。
およそ見たこともないような長大なエネルギー刃だ。
その長大さたるはACとほぼ同じだ。
限界まで引き絞るように腕を震わせ、そして振り払う。
長大な刃が円周状に空間を切り裂く。
一機、一機、青い刃が弧を描くごとに切り刻まれていく。
ほんの数秒の時間だった。
「極楽」が動きを止めると同時にMTが崩れ落ちる。



「どう?機体の調子は?」
「上々ですね、これなら問題ない」
研究員の問いに、「極楽」のパイロット――襟島はそう答えた。
ガレージ内に先程の機体「極楽」が搬入されている。
肩部の装甲板におなじみの「キサラギ印」がタイプされている。
白い整備服を着た作業員が目まぐるしく動き、先程の戦闘テストのデータを解析している。
戦闘時間20秒。
MT6機全機大破。一機あたりの平均撃破秒数:2秒
「あまり体への負荷もないようだし、これなら安心だな」
解析データに目を通し頷いている研究員の横を通り過ぎ、ガレージを出る。

キ研の研究施設はどこまでも清潔だった。
塵一つ落ちていない、となると嘘になるが少なくとも見てくれは清潔感たっぷりだ。
白い廊下、白い壁、人工的な観葉植物に白衣を着た研究員達。
大抵の研究員は襟島が通ると手を振ったり、体調を聞いてきたりする。
施設内で生まれ、施設内で育った襟島にとって慣れた日常のひとつだった。
襟島は冷房の効きすぎた通路を足早に進みながら、ちらりと施設内を眺める。
強化ガラス張りの窓から見えるのは様々な「実験武装」のテストだった。
先ほど「極楽」が装備していたブレードもその一つである。
パーツ名は「聖天」。命名者はもちろんキ研の技術者だ。
ミラージュ製の「月光」シリーズを、キサラギ独自の技術でリメイクした。
要は「インスパイア」というやつだ。
キサラギ兵器開発の変態的技術は神懸り的な冴えを見せ、威力、ブレード範囲は倍以上の威力になっている。
もちろん元々高かった消費エネルギーもさらに膨れ上がり、通常のACでは使用に堪えない。
襟島の愛機「極楽」は「聖天」を実用するためにチューンされた特殊機だ。
自社のAC部隊にそういったものを使わせるところがなんともキサラギらしい。
襟島はそれ以上の興味を失い、「六道」のねぐら――ルームへと足を急がせた。



「おかえりー、どうだったー?」
ルーム内に入った途端、襟島よりも一回りほど小さな少女が駆け寄ってきた。
彼女の名前はシュナ。年は襟島の3つほど下だ。
栗色の髪に、大きな眼とあどけない表情。年相応の可愛らしい少女だ。
ただこのシュナも「六道」の構成員の一人。戦術AC四号機「浄土」のパイロットだ。
「うん、もうすっかり体調も持ち直したよ」
「よかったねー、もうあの痛い注射もお終いだねー?」
にこにこと、悪気なく彼女は微笑む。
襟島はシュナを抱きかかえると、ルームの奥に入っていった。
ルーム内はあくまでも簡素だった。
両端に2段ベットが3個置かれている。綺麗好きの襟島以外のベットはどれも雑然としている。
部屋の中には3人の男女が気ままに過ごしている。
研究員から拝借したと思われる漫画雑誌を捲る男、ケージ。
その横で転寝をしている若い中国系の女、フェイ。
部屋の隅を筋トレ道具で占領している黒人男、ラッド。
全員キサラギ戦術AC部隊「六道」のメンバーだ。
「ケージ」
「なんだい、襟島」
ぱらぱらと雑誌もめくりながらケージが答える。
呼びかけられても雑誌から眼を離さない。書痴なのだ、この男は
「隊長は?」
「さっき上に呼ばれてった、襟島も後でこいとの事だ。」
「上が?何の用で?」
「お仕事だろ」
「そうか」
腕の中ではしゃぐシュナをケージに押し付けると、襟島は部屋を後にした。
ちらりと後ろを振り返るとシュナがケージの長い髪の毛を引っ張って遊んでいた。



ブリーフィングは、すでに始まっているようだった。
襟島は扉のすぐそばに直立不動になり、部屋内の様子を伺う。
どうやら部屋にいる大半がキ本社のエージェントとキ研の研究員のようだった。
あとは数人の戦闘員、オペレーター。それと「六道」の部隊長ハンドレットだった。
ハンドレットは襟島と同じように直立不動のまま横に立っていた。
どこの人種か区別のつかない顔だが、たいていの者が見れば美形と評価するだろう。
襟島の知りうる単語で表現するとすれば――王子様といった感じだ。
ハンドレットは襟島に一瞥をくれると前を見るように促した。
「・・・といったわけで、こちらでは動きようがないわけで」
「ふむ・・・厄介な事だな」

要約すると――こうだ。
キサラギがかつて実験場に使用していた大きな洞窟があった。
今は維持費の関係で遺棄されて廃墟同然だが、施設機能は未だに稼働している部分があった。
僅かな施設維持機能と、防衛装置。
かなり厄介な防衛装置らしく、本社の方は「めんどくさい」と放置してきていたらしい。
だが洞窟内の電子反応を察知したある武装グループがいた。
そして彼らはその反応を財宝だと勘違いし、洞窟内に入っていった。
その様子は洞窟内で稼働していた監視カメラがしっかりと捉えていたらしい。
つまりは、その武装グループの抹消、もしくは「保護」してこいとの命令だった。

「隊員の配置は?」
ハンドレットが本社のエージェント訊ねる。
「おおまかな配置は判断に任せるが・・・大事をとって洞窟前に何機か待機させて欲しい。」
「・・・」
「それでは任せたよ、「六道」の隊長副隊長くん」

襟島とハンドレットは無言で敬礼した。



輸送ヘリ「クランウェル」が低空で渓谷内を飛行している。
そのハンガー部には、二機のACがクラッチされている。
一機は「極楽」もう一機は壱号機「番天」だ。
「極楽」とほぼ同フレームを使用しており、構成的にもほとんど違いはない。
ただ「番天」には腕部が存在せず、替わりに大型のパルスキャノンが搭載されている。
これも「実験武装」のひとつで「遮那仏」と呼ばれている。
高出力のパルス機構と共に、牽制用のマイクロミサイルが同時発射可能という新機軸のパーツだ。
だが「極楽」の「聖天」と同様に機体負荷が高すぎるため、かなり特殊なチューンナップがなされている。
現在のところ、「遮那仏」を積載して戦えるのは「番天」だけだ。

「聞こえるか、各員」
「はい、隊長」
既に渓谷の下に降下していた仲間達からも応答が入る。
「私と襟島が武装グループを担当する。フェイとシュナは現場待機。近づいた反応は
民間企業区別無く迎撃しろ、ケージとラッドは防衛装置の方を破壊しろ。
表側は監視センサーが作動しているらしいから別ルートだ、異論はないな?」
「ケージ了解」
「フェイ了解です」
「ラッド了解ぃ」
「シュナ了解でーす」
「襟島、了解」
「当時刻より作戦開始・・・ヘリ、投下しろ」

渓谷の中腹あたりに怪物の口のような洞が開いている。
まるで犠牲者を待ち受ける巨大な深海魚のように。





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