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蒼い四脚ACが、襲われた街を舞う。
餓えた狼は、ただひたすらに己の敵に対し牙を剥く。
ビルを飛び越え、行軍していたMTを後ろからブレードで突き刺す。
奇襲を掛けられた3機のMTは、ACに向かって発砲、しかしその先にACはいない。
ドゴォォンッという爆音と共に空中から降ってきたのは、右肩から発射されたレールガン。爆音と共にまた一機MTが鉄屑に変わる。

再度、凍狼が唸りを上げる。地上でレールガンがチャージングを始め、熱光が集まる。
チャージが始まると同時に、蒼いACは空中へ跳んだ。
死の跳躍。地上にへばりついているMTが慌てて空中へバズーカを向けたが、時既に遅し。直撃を喰らう。
ACはそのまま小刻みにブーストを制御しながら地上へ着地、流れるような動きで残りのMT一機のコクピットにブレードを突き刺した。

後ろに倒れたMTを尻目に、次の獲物を求めて跳躍する。

――あいつのいる……俺の唯一の家族がいるこの街は護りきらねえとな、絶対に。
――例え俺の命に代えても…な。


――――――――――――――――――――――――――
今から1時間前、鉱山街の防衛戦がついに始まった。
ミラージュは集めるだけ集めた大軍団を率いて、鉱山街攻略戦を挑んできた。
その数は圧倒的、数だけで言えばクレストが配備していた防衛軍の約5倍は軽く超える。
睨み合いが続く中、クレストは戦術部隊に支援要請を出していたが、味方の防衛部隊が到着する前にミラージュは進軍を始めた。
おそらく、支援要請を送ったのがバレたのだろう。

やむを得ず、クレストは街に残っている部隊だけで迎え撃つ事となった。


ミラージュは、この大軍団を持ってすれば、クレストは降参して逃げ出すと考えていた。
事前に調べていた情報では、この街にはそれほど強力な部隊は存在していないはず。
大量のMT、攻撃ヘリに戦闘機、数の暴力で攻め落とせば、被害も少なくなる。

だが、その考えはクレストの部隊「だけ」いれば、の話。ミラージュ側にとって予想外の“敵”が潜んでいた。

戦闘が始まって半刻、当初の予定通りミラージュ側に状況は傾く。
戦況はどう考えてもミラージュが有利、クレストは地の利を生かしてはいるものの、防戦一方。消耗戦になるのは目に見えている。
このまま押し切られると思いきや、突如ミラージュの航空部隊の半分が姿を消す。
さらに先攻したMT部隊が次々と倒されていく。
クレストはどこからともなく、レイヴンを雇ったらしい。

たかがAC、されどAC。
ACの戦力は、MT一個大隊…いや、それ以上に匹敵する。
しかも、この敵ACはかなりの手腕を発揮している。司令塔の超長距離レーダーから次々と味方の反応が消えていくのが見えた。

目には目を、レイヴンにはレイヴンを。
ミラージュは保険として雇っていたレイヴン2人を、すぐさま向かわせた。
目標は敵ACの撃破。手駒が減っているとはいえ、未だ戦力に問題はない。例えACが障害として待ち構えていたとしても、それ以上の戦力を出せば問題は無い。
大量のMTに空対地戦力。さらにAC2機。ミラージュ側は勝利を確信していた。


「彼」は、空陸の部隊を殲滅しながら、レーダーでこの戦場に高速で接近してくる飛行物体を見つけた。
おそらくミラージュ側が雇ったレイヴン。そしてレーダーの中で動いているこの敵反応は3つ。
ひとつは輸送ヘリだが、残る二つはおそらく……ぶら下がったAC。

「彼」は、残りの弾薬、APを確認する。
APは75%以上をキープ、弾数もまだ半分はある。
先ほどクレストに補給を手配するように頼んだから、思う存分暴れられる。
ACを高速接近してくるヘリへと向かわせる。

次第に視認できる距離となり、その目に映っているのは……やはりACが2機。
この街には広い公園がある。おそらくそこにACを投下させるつもりだろう。
蒼いACは、高層ビルの屋上へと跳ぶ。高度はヘリが飛行するのよりも高い位置にある。
狙うは、ヘリがACを投下するときにスピードを緩めたとき。
ハンガーにセットされたACは、ヘリから分離されなければただの的。
投下するまえに攻撃できれば、先制攻撃をしかけられる。

蒼い狼は、その瞬間を待ち構える。


ヘリは目標地点へと到達した。あとはACを投下して帰還するだけだ。
いつもどおりにハンガーのロックを解除、AC投下と同時に離脱――――できなかった。

高高度から、“なにか”がヘリに向かって落下してきた。
その複数の“なにか”は、ヘリのプロペラに当たった瞬間、小爆発を起こした。
戦場へ出向く輸送ヘリだから、多少の攻撃には耐えられるようになっている。が、この“なにか”がもたらす破壊力は、輸送ヘリを破壊するのには十分。
バランスを崩したヘリは、ACをくっ付けたまま、目の前のビルへと突っ込んでいった。

ヘリの半分がビルに突っ込み、爆炎を撒き散らしているところに、レールガンによる容赦ない一撃が放たれた。
無論、撃ったのは凍狼、狙ったのは、後ろにセットされていた軽量フレームの二脚AC。
哀れACは何も出来ずに直撃、下半身を不能にされハンガーから外れて堕ちていった。
戦闘モードに起動はしているが、ACの脚が動かないのであろう。軽量ACは羽をもがれた鳥のようにバランスの失い地面に叩き潰され、潰れた。

「彼」の蒼いACは、公園に着地した。
もう一機のACはまだ息の根があるのか。それを確認しようとしたとき、焦げ茶色の煙の中から光線が走る!

咄嗟に攻撃に反応して回避しようとしたが、左腕に命中、思いっきり吹っ飛んでいった。
『左腕部破損』の音声と共に、目の前に現れたのは、なんとか自力で脱出したもう一機のAC。
その右手にはハンドレールガンが真っ直ぐ構えられていた。


2対のACは、すぐさま次の行動に移る。

凍狼は公園の中心地へバックブースト、黒い2脚のACは、再度ハンドレールガンを撃つ。
荒々しい轟音を撒き散らしながら発射されたハンドレールガンの光線は、高速で凍狼に向かって走る。
一度目の不意打ちのときとは違い、レールガンのチャージングから発射の瞬間までのタイミングを計り、逆方向に小ジャンプしながら方向を変え、巧みに避ける。

そのまま凍狼は敵を前にしながら、公園の中央へと下がっていく。
これを逃がすわけにいかない黒いACも、蒼い4脚ACを追ってあちこちから火が上がっている公園の中へと入り込んでいく。

が、これは狡猾な狼の罠だった。
黒いACは、公園の大多数を占める人工芝に足を踏み入れた途端、足元に衝撃を受けた。
足元で強い衝撃を受け、よろめいた先でまた爆発。
前、後ろ、前、と非常にノックバックしながら強い衝撃を受けた黒のACは、すぐさま大地を蹴り空中へ飛び出す。
が、飛び出した瞬間、すぐ目の前に蒼いACが飛来する。その肩には……すでに構えて発射準備をしていたレールガンが。

もし、黒いACのレイヴンがもっと注意深く戦場を観察する能力があれば気づいたかもしれない、
蒼いACが後ろへ下がりながら“なにか”を発射した後の「カチッカチッカチッ」という音。
これこそが、今彼自身を空中へおびき寄せるための布石である“足元の爆発”の正体であり、そして空中から輸送ヘリを目掛けて飛来してきた物体、
すなわちインサイドの吸着地雷であった。

脚部へのダメージを恐れて飛んだACは、まんまと誘い出された。
その先にあるのは当然、必殺の一撃、強力な熱量を誇るレールガン。
コアに直当てをされ、いとも簡単に溶解させられ……飛び上がった黒いACは、胴体に穴を空けたまま、無様に公園の噴水に墜落した。


左腕を失ったが、難なく2体のACを撃破した凍狼。
「彼」はコクピットの中でふぅー…っと一度大きく深呼吸をした。
MT相手ならまだしも、プラスでレイヴン2人はさすがに精神的にも疲れる。

早いとこ終わらせて、帰らねえとな。
……あいつにも相当心細い思いさせてるだろうし。
それに薄々俺の“仕事”が何なのかについても気づいているだろうしな。

そう思いながら、クレストから随時送られてくる戦力差データに目をやる。
「彼」の活躍から士気が高まったのか、勢力パーセンテージはすでにクレストが上回っていた。
残りはクレストの防衛部隊と増援だけでなんとかなるだろう。


ミラージュはこの街と鉱山を占領下に置くために、かなり大掛かりな準備をしてきた。
今回の襲撃に失敗すれば、これ以上手出しはしてこなくなるはずだ。
それがクレストの見解。「彼」も同じ考えだった。

ミラージュの襲撃は今に始まったことではなく、過去何度も小競り合いがあった。
長引く戦況を打破するために、今回の一大襲撃作戦が展開される。
かなりの出費をし、レイヴンまで雇ったこの作戦がもし失敗すれば、さすがのミラージュも手を出す気が無くなる。
そして、すでに戦いはミラージュ敗北の方向へと進んでいた。


これ以上自分の出番はないな、と「彼」は帰還しようと思い、管制室に向けてその旨を伝えようとした。

そのとき、「彼」の元に急速接近してくる敵勢力をレーダーが捕らえた。
その数は1。この速度はおそらくオーバード・ブーストの高速移動。

…またACかよ。
「彼」は悪態をついた。さすがに3体目の相手はしたくなかった。
が、そうも言ってられないし、敵がこっちの都合どおりに動くはずもない。
すぐに臨戦態勢に入り、待ち構える。

敵はすぐ現れた。
そして堂々と「彼」の目の前に着地する。
純白という名が似合いそうな、白い重二脚のAC。
その右腕にはハイレーザーライフルであるKRSWを構えている。

そして、通常無線回線で「彼」に若い声語りかけてきた。抑えきれない怒りと侮蔑を乗せて。

『待っていた、貴様を殺せる日が来るのを……ずっと待っていた……』

「彼」は、このAC――通信の相手の声を聞いたとき、軽い眩暈のような感覚を覚えた。
……まさか、まさかこいつはかつての俺と同じ………

『追い求めていた……探し続けていた……僕の家族と……ヘレナを殺した貴様を……!!!』

無拍子の一撃、動作が見えなかった。いや、彼から発せられる怒気が、それを感じさせなかった。
ハイレーザーライフルから放たれた一撃は、凍狼に直撃した。
予期せぬ攻撃を受け、「彼」は頭を振った。ボーッとしている場合じゃない。余計な考えを起こす暇があったら応対しろ!
そう自分に言い聞かす。が、目の前のレイヴンから放たれた憎悪の言葉が、「彼」の、蒼い4脚ACの動きを鈍らせる。

――人を呪わば、自分も……か。
目の前のレイヴンは……かつての復讐に燃えていた若い自分そのものだった。




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