―――さーて、今日のお仕事は
今日届いた依頼内容を斜め読みをする、いまいち食指が動かない。
べつに貯金はまだあるし急いで仕事をしなくても大丈夫だろう。
ガタン!と自分の座っている椅子が揺れた。
下をみると赤毛の少年が涙目でこっちを見つめている。
「ゆうにー・・・りーねーが・・・」
その赤みがかかった瞳からは大粒の涙がこぼれそうだ。
「はいはい、ユーリ、またリーになにかされたのか?」
赤毛の少年、ユーリはコクンとうなずいた。
「ふーしかたがない」
ユーリの頭をぽんと叩きユーリの姉、リーを探した。
リビングに出るとソファーの上に少女がだらんと手足を投げ出していた。
「なーリー、お前ユーリになにかしたか?」
黒髪のショートカット、に切れ長の目がいかにも機嫌が悪そにギロリと
こっちを睨んだ。
「弟のアイスは私のアイス、私のアイスは私のアイスよ!」
めちゃくちゃだ、こんな姉をもって苦労する。
「りーねーがむりやりとったんだ・・・」
ユーリはズボンの裾をぎゅっと握りしめる。
「あー、あーわかったよ、にいちゃんのアイスをやるよ」
リーがガバッと起き上がり講義の声をあげる。
「ずるーい!私のはー!」
「お前は食っただろ、二つも。」
リーがブーブーと文句を言っている、ほんとにユーリは苦労する。
「あっそうだ、ハルさんから電話があったよ、緊急の依頼だって」
ハルというのは自分専属のオペレーターの名前である。
いけねぇと思いすぐに電話を入れる。
「おはようございます、坂本祐二さん」
「フルネームはやめてください、ハルさん」
そんな俺の願いを無視して依頼内容を読み上げる。
「武装集団の排除、これが今回の依頼です、急を要する依頼のため
すでにガレージに輸送ヘリが向かっています、ちなみに逃げたらどうなるか
わかってますね?」
なんとクールな口調でなんと恐ろしいことを言うのだろう。
「ちなみにヘリは後十分ほどで到着しますよ?」
急いでガレージに走る、遅れたらエライことになるだろう。
ガレージに格納されている自分のACを見上げる。
―――スカイ
これが、この自分のACの名前だ。
青空のような、色でカラーリングされた軽量機体。
接近戦を主体にした機体でなかなかいいバランスだと思う。
――先生の機体は遠距離型だったしな・・・
急に悪寒が奔る、思い出したくもない!
あの頃は地獄だった・・・・
祐二が恐ろしい思い出に浸っているとガレージにけたたましいベルが鳴る。
―――ヘリが着陸します、繰り返す―――
おっといけないと急いでACに乗り込む。
遅刻はだめだよなーと思いつつ出撃する。
「依頼内容を確認します。キサラギも研究所内に進入した武装勢力を撃破
してください、武装勢力が最深部に到達される前に撃破しなければ任務は
失敗です。」
最深部に到達される前にか・・・
「ハルさん、敵勢力の規模は?あともうどれくらいまで進行してます?」
「敵勢力は七機、進行状況は十層ある中の第五層まで進行されています、
施設の部隊がいますが、もう持たないでしょう」
もう時間はないか・・
「わかりました、出ます」
ヘリのロックがはずれスカイが投下された。
研究所内をOBをふかし全速力で駆け抜ける。
インターネサインの事件の後バーテックス、アライアンス共に解体された。
共に指導者がいなくなってしまったのだ、戦う理由もないだろう。
その後アライアンスは元の企業の形に戻り停戦協定が結ばれた。
表向きには平和が訪れたが、裏では資源をめぐる戦いがまだ終わっていなかった。
人類とはなんと愚かなんだろうか?おびただしい血を流しても学習すること
さえない、本当に救われない生き物だ。
とわいえこの事件でほとんどのレイブンたちが命を落とした。
生き残ったレイブンたちの居所は知る物は少ない、そのままレイブンとして
生きている物もいるが行方を眩ました物も多いという。
インターネサインを破壊した彼も今は行方をくらましているという。
――――先生も何処にいってしまったのだろうか?
いたるところにキサラギのMTの残骸が転がっていた。
―――ひどいな・・・・
いくらMTだと云えどキサラギは一流の企業だ、その企業の部隊に選ばれた
エリート達だ、その彼らがこんなにも軽々とジャンクにするなんて・・
ガガ・・・
無線機から雑音が漏れ出す、どうやら武装勢力とキサラギの部隊が近いようだ。
俺たちが最後だと!?上の奴らはどうしたんだ!!
全滅!?・・敵部隊来ます!!
畜生!撃て!撃て!
大変なことになってるじゃないか!
ブースターが全開にして速度を上げる。
―――間に合ってくれよ・・・・!
前方に敵のMTが見えてきた。
重武装の拠点制圧用のMTか・・・・
なるほど、キサラギのMT部隊じゃ歯が立たないわけだ。
なんでACがここにいるんだ!?
迎撃しろ!ちくしょう!?せっかくここまで来たのに・・・・!
どうやらこちらに気が付いたようだがもう遅い。
彼らがこちらを振り向く前にMTの懐に入り込み膝から肩にブレードを
通過させる。
いくら重武装だといっても所詮はMTのレベルでのことだ、対AC用のブレード
の出力に耐えられるわけがない。
二つに解体されたMTは一瞬で爆散してしまった。
気が付くと回りはMTの残骸が散乱していた。
――もう、居ないよな・・・
気が付くとすでに施設の最深部に入っていた。
さすがは研究所だよなーわけのわからん機械だらけだ。
祐二のまわりには何かの実験につかう機械や巨大なフラスコの
ような物が沢山並んでいた。
「レイブンか!助かった!」
扉から何体かのMTが姿を現した、おそらくキサラギの残存部隊だろう。
「感謝するよ、さぁ出口はこっちだ。」
MTに先導されて出口に向かう、ふと視線の端に何かが止まった。
―――カプセルだ、人が一人ちょうど入るくらいな大きさの・・・
その時は気にも留めなかった、いやこのときに気づくべきだったのだ・・
「おかえり――!!!!!」
「おおう!?」
扉を開けるや否や二匹の子供が飛び出してきた。
「ねぇ、お土産は?お土産は!?」
リンとユーリが目を輝かせながら聞いてくる」
「わかったよ、はい」
ぽん、とリンの手にキサラギの社員からもらったアレを置く
「・・・・なにこれ?」
「AMIスター、AMIDAのハムスター版だって」
なんと、あのAMIDAがペットに!?
なんとキサラギがAMIDAのペット化に成功!
ハムスター程の大きさまでにするこに成功しました。
オスとメスの二種類がありますが、つがいで飼うと交尾後にオスを
メスが捕食してしまうので素人の方にはお勧めできませんので
まずはオス同士かメス同士の飼育をおすすめします。
「ゆーにー!ハルさん来たよー!」
「了解、今行くよ。」
妹に起こされ眠気眼のまま下に下りてゆく。
祐二が住んでいるのはACのガレージだ。
つてで格安に手に入れたガレージの生活部分を増設した。
しかし、育ち盛りの子供が二人いるので少し狭くなったかもしれない。
「おはようございます、坂本祐二さん」
「だから、フルネームはやめてください」
リビングにはスーツをきたポニーテールの女性が座っていた。
「それでは、これが今回の決算報告です。」
ハルさんがバッと書類を机の上に広げる、・・頭が痛くなってきた。
「今回の任務では、銃弾の使用はありませんでした、ブレードのみの戦闘
でしたね。」
決算の書類を見ながら一つ一つ説明をしていく。
「それで今回の・・・・って聞いてます!?」
「あっああ、聞いてますよ、それでハルさん。」
ハルさんが小首をかしげる。
「あれは調べてもらえましたか?」
「ああ、はい調べてあります」
またハルさんが書類を広げる、正直書類はやめてほしい。
「ここ数年での行方不明者のリストです、貴方の読みどおりの結果ですね」
ハルさんにはキサラギの会社の周辺の行方不明者を調べてもらったのだ。
「他の地域に比べてやはりキサラギ周辺の方が多いようです、さらに行方
不明者の身辺を探ってみたところキサラギの病院に通っている人がほとんどですね」
「ふーやっぱりか・・・・」
「けれど、最近は強化人間は法令で禁止されていますよ?断定をするのは・・・」
インターネサインの事件後、企業間での法令が結ばれ軍の縮小、や兵器類の製造制限
、強化人間や生物兵器の禁止などの法令が結ばれたのだ。
「彼らがその程度であきらめるとは、思えませんよ、それにあのカプセル・・」
研究所の最深部にあったあのカプセル、あの中に入っている物を確かの見たのだ。
はっきりとは見えなかったがアレはやっぱり・・・
「どうしました?」
ハルさんが怪訝そうな顔で覗き込んでくる。
「いや、何でもありませんよ」
小会議が終わり、祐二は外をぶらぶらと歩いていた、ハルさんにはガキ共のお相手を
お願いした。
ふと気が付くと前の電柱にナイスミドルのおっさんが立っていた。
「こんなとこで何してんすか?ロイさん?」
「いや、お前がよんだんじゃないか」
ロイが苦笑する。
「ここじゃなんだな、こっちだ」
ロイにつれられ近くの喫茶店に入る。
「チョコパフェ」
「あってないっすよ、おっさん」
祐二の煽りを無視してロイが三枚の写真を手渡した。
「これですね」
渡された写真にはあるものが移っていた。
「ああ、三日前の任務で取った写真だ。」
「どこでのですか?」
「ミラージュの施設の護衛任務だ・・」
ロイの顔色が少し青くなる。
「任務が終わる瞬間にこいつらが出てきたんだ」
写真には三つの風景が移っていた。
一つは跡形もなく廃墟と化した施設。
一つは紅い兵器
後一つは・・・・
「逆白十字か・・・・」
「わかるだろう?なんでそれがコイツについてるか・・・」
「はい・・まだ終わってないんですね。」
「ゆうにー・・・・」
家に帰るとユーリの瞳から涙があふれていた。
「うわっと!?どうした!またリンにいじめられたか?」
ふるふると首を振り否定した。
「AMIスターが・・・・」
ユーリに手を握り飼育箱を見に行く
「なんてこった・・・・」
食われてる・・・・しかも増えてるよ・・・
「なんでまだこいつらがいるんだ!!?」
スカイが悲鳴を上げ、ところどころ煙さえ出ている。
「もう機体が持ちません!撤退を!」
空はとても赤く、紅く染まり紅い雨を降らしている。
そして祐二の目の前には英雄の亡霊がじっとこちらを見つめていた。
「居住区の護衛を?」
その日、朝から言われた依頼はミラージュが管轄している居住区の護衛だった。
「けどゆうにー、理由というか、護衛内容が書かれてないよ?」
祐二の方からリンとユーリーが書類を見ている。
しっしと手で払うとにやにやとした顔をして別の部屋に下がっていった。
「けどハルさん、たしかになにかありそうな依頼ですよ?」
「けれど、付近には武装勢力のアジトもありませんしミラージュの私設部隊も
護衛に当たるそうです、リスクは低いとおもわれますよ」
けれど・・・・
「なにかがひっかかるんですよ、ほかに情報はありませんか?」
「はい、作戦領域の近くをキサラギの部隊が通ることになっています」
キサラギが?
「それじゃ、ミラージュはそれを警戒して?」
ハルさんが少し怪訝そうな顔をして首を横に振る。
「それが・・すでにキサラギ側がミラージュに通知されています。」
「それじゃ・・・」
「はい、ミラージュは別の敵を警戒しているようです」
―――別の敵?
「警戒して望むことに越したことはありませんね」
「それで、俺は受託したわけじゃないんですけど・・・」
祐二はスカイに乗り作戦領域を見回っていた。
「けど受けないとも言ってませんでしたし・・・」
無線機からハルさんの申し訳なさそうな声が聞こえてくる。
昨日の依頼の話を聞いた次の日に朝起きたら有無を言わさずに連れだされてしまった
「なんでまだ寝てるんですか!?もう時間ありませんよ!?」
「ちょwwwwハルさん待ってwwwww」
とこんな具合で。
「無理やりひっぱってくんですもん、ひどいよなぁ」
「だからあやまってるじゃないですか・・・」
そろそろかわいそうになってきたのでやめることにする。
任務を開始してからすでに数時間、なにも起こる気配もないのだ。
「キサラギの部隊が通過します」
遠くにキサラギの部隊が通過するのが見えた。
キサラギのトラックが何個かのコンテナを運んでいるのが見えた、それに・・・
「また、カプセルか・・・」
また、カプセルが厳重に護衛されて運ばれていた。
どうしました?と無線機から疑問の声がきこえてくる。
いや、と言いじっとカプセルを見つめる。
―――ん?
スカイの横に立っているマンションから生体反応が出ている。
「!?ハルさん逃げ遅れた子供がいる!」
「えっ!・・祐二さん保護できますか?」
そっと窓から身を投げ出している子供にスカイの手を伸ばす。
コックピットを開け子供を招きいれた。
その子は少女だった、だが目にまったく生気が無くまるで人形のようだった。
「なぁ、なんであんなとこにいたんだ?」
まったく反応をしない、そとを一心に見つめている。
ふーと息をつき、空を見上げる。
その時だった
―――空が、あんなにも蒼かったそれが紅く、血のように紅く染まっていた。
「!?なんだこれは!!」
ドン!
と爆発音がなり、ミラージュのMTが一体吹き飛んだ
なんだ!一体どうした!?
わかりません!空があかく・・・
だれか!たすけてくれ!!!!
辺りに悲鳴が響く。
「特攻兵器です!撤退を!」
特攻兵器だと!?これは彼が、滅ぼしたんじゃないのか!?
周りの建物が無残に壊されていく。
「くそ!ふざけるな!?」
必死にマシンガンで特攻兵器を打ち落とし、ブレードで切れ伏せていく。
だが雨のように降り続いてくる特攻兵器には焼け石に水だ、すでにスカイは
何発も被弾して煙を上げていた。
このままじゃぶっ壊れる!離脱しなければ!
OBを全力で吹かし、作戦領域から離脱をする
あと少しだ!あと少しで逃げられる!
あと200・・・150で離脱というところで蒼い光によって遮られてしまった。
「!?」
光の走った方向を見ると黒いACが居た。
そのACの足元にはキサラギのカプセルが転がっていた。
――これが目的なのか?
ライフルの標準がスカイに向けられる。
やべぇ!
ぎりぎりでエネルギー弾をかわ・・・・せなかった。
弾が左腕に当たり一発で消し飛んだ。
「うそだろ!?」
なんという、めちゃくちゃな威力だろう、こんなライフル聞いたこと無いぞ!?
やばいぞ・・・これ・・・
スカイは瀕死寸前だ、もう持たないかも知れない。
いきなり膝の上の少女が声をあげて黒いACを指を指した。
「あー!あー!」
しゃべれないのか、この子?
彼女の指先の方向を見る。
――白十字・・・ちがう、逆白十字か!
その瞬間特攻兵器の雨が止んだ。
煙を上げながらも撤退をする。
黒いACは動かずにじっとこちらを見つめていた。
「が!ぐ・・・」
体中が悲鳴を上げている、痛みで体が吹き飛びそうだ。
「ゆうにー!しっかりゆーにー!」
誰かが自分の名前を呼んでいる、目がかすみよく見えない
―――あの子は?
首をなんとか動かし辺りを見る。
隣に彼女は居た。
その姿はあまりにも痛々しい姿だった。
体中に包帯を巻かれその所々からは血がにじむ出していた。
気が付くと彼女の瞳がじっと祐二を見つめていた。
その目には何も映していなかった。
――虚無
なにも映したくも無い、なにも見たくも無いというような瞳
それで居て何もかもを見通しているような瞳だった。
――頼む、見ないでくれ・・
彼女は祐二を見て離さない
――見るな・・・見ないでくれ・・・
「見るな!!!!!」
バッ!
飛び起きると其処は病院のベットの上だった。
なにがあったんだ・・・?
――そうか・・負けたのか・・・
あの黒いACは・・あのエンブレムは・・・
――白十字、インターネサインの英雄のエンブレム
しかし、彼はもう居ないはずだ・・けどアレは彼の愛機だった。
隣のベットに寝ている少女を見る。
腰まで伸びた蒼い髪と緑色が入った目。
とても人間離れした容姿だった、それほどこの少女は美しいのだ。
「ゆうにー!!」
リンとユーリがベットに飛び込んでくる。
「いてててぇぇぇ!!?傷が!傷が開くー!!?」
「ねぇゆーに起きて平気なの?」
ユーリが心配そうな顔で見てくる。
「お前たちのお陰で重症です」
後ろで控えていたハルさんがゆっくりと聞いてくる。
「祐二さん、だいじょうぶなんですか?」
はいと答えハルさんの目を見て願いを言った。
「ハルさん、昨日の作戦領域に連れてってくれませんか?」
「なんてこった・・・」
ハルさんに車椅子を押されながら昨日の町を見て回る。
すでに町では逃げ遅れた人達の救助活動が始まっていた。
が、すでに手遅れだろう、あれだけの攻撃を受けたのだ生きている人間など・・
「生存者だー!生きてるぞ――!!!」
ハルさんに車椅子を押してもらい、その場所につれてってもらう。
そこには二人の少年と少女がタンカに乗せられていた。
「助かるみたいですね。」
ハルさんがほっとした表情で姉弟を見つめていた。
ふと、リンとユーリの顔が頭を過ぎった。
――あいつらもあの子達とおんなじなんだな・・・
そうだ、カプセルは?
あのACがいた場所に目を向ける、だが、其処にはカプセルはなかった。
もう持ち去られたのか?
キサラギはあのカプセルを運んでいた、なぜ?しかもあんなにも護衛を付けて?
しかもそこに特攻兵器の襲来――なにが起こってるんだ?
その瞬間、横にあったビルが吹き飛んだ。
「なっ!?」
そこには紅いACが立っていた。
「あれは、バグラム!?なんで奴が!」
バグラムはランカーACでBクラスでの上位を守り抜いている。
二脚重量型の機体でバズーカと大型ミサイルと高機能レーダーを装備している。
相手をスクラップにするまで痛めつめることから付いた名が
バグラム――「暴炎竜」
「悪いな、「天空」お前は邪魔らしい、生身の人間を遣るのは気が引けるが
しかたない」
バグラムの外部スピーカーから男の声が流れてくる。
バズーカの標準が祐二に合わされた。
「ハル!!逃げろ!!」
「消えてもらうぞ、天空」
―――間に合わない・・・!
覚悟を決めた瞬間、バグラムのバズーカが吹っ飛んだ。
なにが起こったんだ?狙われてるのは俺らのはずだ、なんでアイツの武器が
ぶっ壊れるんだ!?
「丘の上!もう一体居ます!!」
ふざけるなよ!と丘の上に目を向ける、そこには中量級のACが立っていた。
橙色の機体に燃え盛るような太陽のエンブレム。
「生身の人間を狙うなんて関心しないわねぇー」
若い女性の声が当たりに響く、ACの右手には巨大なスナイパーライフルが握られていた。
――あのエンブレム、巨大なスナイパーライフルと武器のみを狙う腕前・・・
バグラムの右腕が吹き飛ぶ。
「ちぃ・・・!」
「スナイパーライフルだと思って舐めないほうがいいわよぉ、これは特別製なの」
あの間延びした、声・・・間違えない!
「しかも私の生徒に手を出したなんて楽に死ねると思わないことね」
―――先生・・・!!
先生は「レイピア」は圧倒的だった。
バグラムの雨のような銃弾とミサイルの嵐を一度も被弾せずに装甲の
弱い間接部を左腕のスナイパーライフルを使い解体をしていった。
十分もしない内に勝負は付いてしまった。
バグラムは行動不能に先生は無傷でそこに立っていた。
「ひさしぶりねぇ、祐ちゃん」
腰まで伸びた金髪の髪にぱちりと大きな瞳、知らない人が見たらこの人が
レイブンだとはわからないだろう。
「先生も・・お久しぶりです。」
「もーそんな他人行儀な子ねぇー」
後ろを見るとハルさんが目をぱちくりさせている。
「ああ、ハルさん、この人は俺の先生で名前はジョイ、ローズ先生です」
ハルさんがぺこりと頭を下げる。
「貴方が祐ちゃんのオペレーターねぇ、祐ちゃんがお世話になってます」
どこの母親の挨拶だ、ちなみに年齢は俺もわからない。
「あっ、先生・・」
「わかってるわ、アレが出たのね」
すこし驚いた、もう知っているのか。
「だいじょうぶ、私もわかってるわ」
先生がにっこりと微笑んだ。
「なにかあったら連絡するわ、また会いましょう」
先生はACに乗り込み去っていった。
病院にもどるとユーリがテレビを見ていた。
ドドド、ドドド、ドーミナントー♪
「超人戦隊ドミナントか、懐かしいな」
インターネサイン事件の際にアライアンスが広報活動のための放送していた
戦隊物だ、リーダのエヴァンジェの戦隊物で巨大ロボットのオラクルを操り
敵を倒してゆく、痛快活劇ものだ。
オープニングのドミナント勇気の証とEDのドミナント愛のテーマは共に
ミリオンヒットになり特に愛のテーマは今でもカップルの中では良く聞かれている。