レイヴン抹殺~IF~

[ある企業がレイヴンを送り込んできた。このレイヴンを抹殺してほしい。]
これが今回の依頼の要約だ。
レイヴンズネスト経由の正規の依頼、依頼主はウェンズデイ機関・・・
ある事情から俺がコンビを組んでいるレイヴン"スミカ・ユーティライネン"の敵となる組織だ。
それがわかっていながらも俺はこの依頼を受諾し、ネスト所属の輸送機で作戦領域へ向かっている。
ウェンズデイ機関の尻尾を掴むためにスミカが情報収集をし、俺がその情報を元に機関の勢力を叩く。
それがこれまでの関係だが、今からは違う。
この依頼で俺も機関に探りを入れるのだ。
しかしこのことはスミカには伝えていない。
機関のために俺が動く、それはスミカが知って喜ぶようなことではないだろうから・・・
回想はこれぐらいにして、現状の最終確認を始める。
今俺が乗っている機体は、今回の依頼のために機関から支給されたものだ。
スティンガーという男の機体"ヴィクセン"のコストを削減した量産型らしい。
武装はレーザーライフルにレーザーブレードと貧弱だが、気にするほどでもないだろう。
やがて輸送機が作戦領域の演習場に着陸。
俺はヴィクセンを輸送機の外に移動させ、待機を始める。


「レイヴン、いる?」
私はパートナーのレイヴンの部屋をノックし、声をかける。
しかし返事がない。
いつもならすぐに出てくるに。
「入るわよ?」
私がドアに手をかけると、ドアはすんなりと開いた。
(全く、不用心なんだから・・・)
鍵をかけているところを見たことはないし、彼の不用心さには呆れる。
レイヴンというのは命を狙われやすい職業だというのに。
(まあそんな不用心なところも、悪くないかな?)
何を考えてるんだろう、私?
彼とはただの仕事のパートナーだ。
「ねえ、私のコーラルスター知らない?」
部屋に入るなり、私は大きめの声で用件を伝える。
コーラルスター、ムラクモミレニアム製のAC"有明"をベースにカスタマイズした私のACだ。
「ガレージからなくなってたんだけど、知らない?」
さらに詳細を伝えてみるが、返事はない。
「レイヴン、まさかあなた・・・」
私は思ったことを声に漏らしていた。
お互いにレイヴンとはいえ男と女、彼にそんな性癖があっても・・・
「ま、ちゃんと帰ってくるよね!」
私は大声を出して自分を元気づけたが自分の部屋に帰る気にもならず、部屋の隅っこに座り込む。
そして彼を待つことにしたのだ。

『レイヴン、敵の反応を確認した。突入してくれ。』
「了解、作戦行動を開始する。」
[メインシステム 戦闘モード、起動します。]
戦闘モードを起動し、レーダーの反応を頼りにヴィクセンを演習場内部へ向かわせる。
反応は1機だけ、間もなく目視可能位置に・・・
「あれはスミカの・・・?」
俺は疑問を声に漏らしていた。
有明ベースのピンクのAC、これは間違いなくスミカのコーラルスターだろう。
それがなぜここに?
「スミカ、スミカなのか?」
俺は目の前のコーラルスターに通信を入れる。
『・・・。』
しかしコーラルスターからの返答はない。
コーラルスター自体、動く気配がない。
「どうしたんだ、スミカ?」
万が一の事態に備え警戒をしながら、ヴィクセンをコーラルスターへ近づける。
『これは・・・!?』
輸送機のパイロットからの通信だ。
レーダーを見ると輸送機の周囲に多数の敵反応が出現している。
『レイヴン、どうやら我々ははめられたようだ。』
このコーラルスターは恐らくスミカのガレージから盗まれたものだろう。
俺はこの事態を理解し始めていた。
敵対する人間に依頼を出すほど、機関の危機管理能力がないとは思えないしな・・・

『空中の敵を掃討してくれ、その隙に離脱をはかる。』
「了解、敵を掃討する。」
戦闘開始、俺はまず敵戦力の分析を始める。
敵戦力は飛行ガードメカ"ファイアフライ"、大型戦闘バイク"太刀風"が多数。
それぞれマシンガンを装備し、地上を縦横無尽に走り回る太刀風にはミサイルも装備されている。
太刀風のミサイル以外は大した脅威ではないが、数で押されればいくらACとはいえ長くはもたないだろう。
特にこの量産型ヴィクセンは軽量級で装甲は厚くないみたいだしな・・・
敵の動きを分析すると、太刀風が俺の気を引き、その隙にファイアフライが輸送機を攻撃する作戦のようだ。
太刀風か鬱陶しいが、それがわかっていて太刀風の相手をするほど、俺も馬鹿じゃない。
上空を飛び回るファイアフライの撃破を優先する。
だが困ったことに、なかなか撃破できない。
レーザーライフルの出力が低すぎて、数発連続で当てなければ撃破できないのだ。
その間にも太刀風から放たれるミサイルが飛び交い、俺はEN管理に苦戦する。
『レイヴン、このままでは機体がもたない!敵を排除してくれ!!』
「くそ!」
俺は回避行動を捨て、ファイアフライをブレードで叩き落としていく。

[AP50%、機体ダメージが増大しています。]
ダメージが蓄積し頭部COMの警告がコックピット内に響くが、それを気にしている場合ではない。
輸送機が撃破されては意味がないのだ。
ファイアフライを撃破していき、やがて上空からファイアフライの姿がなくなる。
それと同時に輸送機のハッチが閉まり、輸送機が離陸した。
「おい、待て!」
[AP10%、危険です。]
機体損傷の激しいヴィクセンで残りの太刀風に応戦しながら、俺は輸送機に通信を入れる。
『レイヴン、悪いがこれが私の仕事だ。恨むなよ。』
その一言を最後に、輸送機は通信を受け付けなくなった。
[敵増援を確認。]
「増援?どこから・・・」
レーダーを見ると演習場の中だ。
高速で飛び出してきたそれは飛行可能なハイスペックMT"スーパーシミター"の編隊。
そして遅れて出てきたのは重装備MT"サガルマタ"だ。
その数は今のこのヴィクセンの火力と装甲ではとても対処できるものではないことが明白だ。
「ここまでか・・・」
スーパーシミターから放たれるプラズマキャノンとサガルマタから放たれるミサイルの光を見ながら、最後の言葉を漏らす。
「愛してると言いたかった、スミカ・・・」
そして俺の意識は途切れた。


「レイヴン、どうしたの・・・?」
真っ暗になったレイヴンの部屋の隅っこに座り込んだまま、私はつぶやく。
食事も摂らずにずっとこのままだったが、私は動く気になれなかった。
「私のコーラルスター、返してよ・・・」
彼の性癖をどうこう言うつもりはないが、コーラルスターがないと私は困るのだ。
「そんなにコーラルスターに乗りたいならもう1機買って作ってあげるからさ、帰ってきてよ・・・」
こんなところで言っても彼に聞こえるわけがないが、私は独り言を続ける。
「ねえ私、悪いことした?」
「もししてたら謝るからさ、帰ってきてよ・・・」
「寂しいよ・・・」
ウェンズデイ機関の研究施設から脱出してから私は明るく振る舞っていたが、それは彼の存在があったからだ。
研究施設での嫌な記憶を、彼の存在が埋めてくれていた。
もし彼がいなくなったら、私は壊れてしまうかもしれない。
そう考えると私は怖くて仕方がなかった。
「朝になれば、帰ってくるよね・・・?」
「私はずっと、ここにいるからね・・・」
そして私はそのまま眠りについた。
朝になれば彼が帰ってきていることを夢見て・・・

~Fin~

解説とか
最初はNX収録のミッション「レイヴン抹殺」で単に輸送機に置いていかれるだけのネタ。
でもそれだけだとつまらないから、スミカとの絡みとかを入れて大幅修正。
演習場にコーラルスターが置いてあった理由も妄想。
世界観の背景ベースはNXリメイクではなくPPのつもり。
PP主人公が量産型ヴィクセンに乗せられていたのは、機関が確実にPP主人公を撃破できるように仕組んだため。
PP主人公を男だと明言したのは、NXエピソード終了時のムービーに"あの男"という描写があったから。
所要時間は2時間半くらい。
さくさく書けて気持ちよかったなあ。





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