老兵の回帰

明け方の人里離れた小さな村の小さな家で2人の老人が密会を開いていた。
「この情勢だ、お前はどうする?」
老人の1人、烏大老がもう1人の老人に聞く。
アライアンスとバーテックスの2大勢力に世界が分かれている今、組織の後ろ盾なしに生き延びるのは厳しい。
烏大老はバーテックスの主要幹部だ。
「俺はもう現役じゃない、どっちにもつかん。」
もう1人の老人、G.ファウストはそう返した。
2人は昔からレイヴンを続けていた老兵レイヴン仲間である。
G.ファウストは既に前線から身を引いていたが、烏大老はまだ現役だ。
「どっちにもつかんか。私はお前を殺したくはないのだがな。」
「確かにその可能性は否定できんな。だが、どちらもこんな小さな村に用はなかろう?」
「私もそうだと信じたいがね。」
烏大老はそう言いながら時計に目をやる。
「おっと、時間だ。悪いがもう帰らせてもらおう。」
烏大老は慌てて帰り支度を始める。
「そうか。たまには孫にも会ったらどうだ?」
「今日は時間がない、また今度になるな。孫をよろしく頼む。」
「バーテックス幹部は大変だな。あの子の面倒は任せておけ。」
少し間をおいて、去り際の烏大老にG.ファウストはこう続ける。
「死ぬなよ。」
しかし烏大老はそれに反応もせずに去っていった。

「今日もおじいちゃんがきてたの?」
目をこすりながら、烏大老の孫が起きてきた。年は6歳くらいだ。
「ああ、だがまだ忙しいからなかなか会えないみたいだな。」
「おじちゃんは、僕と一緒にいてくれる?」
「もちろんさ。少し早いがご飯にするか。」
「うん。」
「よーし、じゃあお前も手伝え。自分で作ったご飯はうまいぞ。」
「うん。」
烏大老の孫の家事の手際はとてもいい。
全てG.ファウストが教え込んだものなのだが、飲み込みが非常に早いのだ。
(これならこの子1人でも生きていけるな。)
義孫の手際のよさを見ながら、G.ファウストはそう感じていた。
この子を1人にするつもりなど元よりないのだが、G.ファウストも烏大老も既にかなりの高齢なのである。
2人ともいつ老衰で倒れるかわからない。
しかも烏大老はまだ現役レイヴンだ、いつ死んでもおかしくはない。
2人がいなくなってしまえば、この子にはもう身寄りがない。
だからこの子が1人立ちできると確信が持てるというのは、非常に大事なことなのだ。
「おじちゃん、どうしたの?」
義孫が不思議そうな顔をしながら、G.ファウストに聞いてくる。
ずっと自分のことを見つめられているのに疑問を感じたのだろう。
「いや、なんでもないさ。お前なら大丈夫だ。」
「? 変なの!」
「ははは。さて用意も終わったことだし、食べるか!」
「うん!いただきます。」
「よし、行儀正しくてよろしい。では私もいただ」
G.ファウストも「いただきます」と言おうとしたのだが、玄関の呼び鈴が鳴った。
「誰だ、こんな早朝に。先に食べててくれ。」
朝食のお預けを食らい、不満げな表情で玄関へ向かう。

「誰か知らんが、こんな早朝から何の用だ?」
「早朝より失礼します。」
玄関を開けた先には好青年が立っていた。見ない顔だ。
「誰だ?」
「申し遅れました。私はアライアンス所属レイヴン、ジャウザーと申します。」
「アライアンスのジャウザーか。何の用だ?」
「お聞きしたいこととお伝えしたいことの、2つがあります。」
「先に質問を聞こうか。」
G.ファウストは玄関の外に出て鍵をかける。
「わかりました。今後のあなたの立場についてです。」
「俺の立場?」
「あなたもご存知とは思いますが、アライアンスとバーテックスの対立は激化する一方です。」
「そのようだな。」
「あなたは今は前線を退いているとしても仮にもレイヴン。あなたの出方次第では我々も対応を考えねばなりません。」
「俺はどっちにもつかん。」
「どちらにもつきませんか。独立レイヴンということでよろしいですね?」
「俺はもうレイヴンではない!ただの一般人の立場など、どうでもいいだろう!?」
G.ファウストは思わず声を荒げる。
「おじちゃん?」
義孫の声が玄関越しに聞こえる。
怒鳴り声を聞いて心配してきたのだろう。
「何も心配いらないさ。お前さんはゆっくりご飯をお食べ。」
G.ファウストは玄関越しに優しい声で義孫に語りかける。
義孫がリビングへ戻る足音を聞きながらジャウザーの方を向き直り、話を再開する。
「今の俺にはあの子がいるんだ。もう戦場には出向けんのだよ。」
「そうですか、わかりました。G.ファウストは既にレイヴンではない、報告はそういうことにしておきましょう。」
G.ファウストは非常に不快だったが、義孫を心配させないためにも感情を押さえ込んだ。

「で?伝えたいことは何だ?」
「アライアンス本部が、この近くに小規模な武装勢力の拠点があるとの情報を入手したのです。」
「武装勢力の拠点?」
ここは人気のない場所だ。武装勢力の拠点には手ごろだろう。
「はい。そしてその制圧・接収が近日中に行われます。」
「だからなんだ?この村は関係ないだろう?」
「拠点がこの村の近くにある以上、戦火がこの村に飛び火する可能性も否定できません。」
「なるほど、確かにそうだな。」
G.ファウストは納得しながらもこう続ける。
「だがもし仮にだ。俺がその武装勢力に通じていたらどうする?」
「関係ありません。大変失礼ながら、それも考慮した上で、あなたにこの話をお伝えしたのです。」
ジャウザーの顔は確信で満ちていた。
「彼らがいくら戦闘に備えたところで、アライアンスとの戦力差は歴然です。」
「確かにな。」
「それに彼らがこの情報を入手して武装放棄するのであれば、お互いに無駄な血を流さずに済みますから。」
「そうだな。だがあいにく、俺は本当にその武装勢力とやらは知らんのでな。交戦は避けられんだろう。」
「状況をご理解いただけたのならば、避難をお勧め致します。」
「悪いがそれはできんな。俺はこの家とあの義孫を守ると、友と約束しているからな。」
「そうですか。警告はさせていただきました、幸運を。」
「ああ。用が済んだならもう帰ってくれ。」
「ではこれにて。早朝より、失礼しました。」
「ジャウザー、お前はまだ若い。命を無駄にするな。」
「胸に留めておきます。」
ジャウザーは一礼をして去っていった。

(戦火は避けられんか・・・)
家の中に入り玄関の鍵を再び閉めてリビングへ向かいながら、Gファウストは考え込む。
「おじちゃん、顔怖いよ?」
リビングに入ると義孫が心配そうに見つめてきた。
「ああ、すまん。何でもないさ。俺も今ご飯食べるから少し待ってな。」
「うん。」
(この日常も、今日で終わりかも知れんな・・・)
朝食を食べながら、G.ファウストはそう考えていた。

「おじちゃん、今日は何するの?」
朝食とその片づけが終わり、することがなくなった義孫がG.ファウストに聞いてくる。
「今日は天気がいい。散歩でもしてきな。」
「うん。おじちゃんは?」
「俺は今日はこのあと少しやることがあってな。散歩の後で一緒に何かしよう。」
「約束だよ?」
「ああ、約束だ。」
「じゃあいってきます!」
義孫は元気にそう言って、玄関を飛び出していった。
「気をつけてな!」
G.ファウストもそれに答えて元気に見送った。

「さて始めるか・・・」
義孫の姿が見えなくなるまで待ったあと、G.ファウストは家の裏の倉庫へ向かった。
義孫には立ち入りだけでなく近寄ることすら禁じている倉庫。
倉庫の中にはG.ファウストの愛機のAC"パンツァーメサイア"と、その予備パーツや弾薬など一通りが雑多に置かれている。
「まさか再びこいつを動かすことになるとはな・・・」
複雑な気持ちのまま埃まみれのパイロットスーツに着替え、パンツァーメサイアに乗り込む。
昔の勘を頼りに計器類を操作し、ACを通常モードで起動する。
パーツの状態を確認すると全て良好だったが、武器までは確認できない。
もうかなりの年月放置してあったものだ、弾があっても火薬が湿気で使い物にならない可能性が十分にある。
だがここで実際に銃器を撃って確認するわけにはいかない。
比較的音のしないブレードのみを稼動テストしてみると、ちゃんとレーザー刃が形成される。
「ブレードがあれば十分だ。」
最低限の戦闘力があるのを確認して安堵したあと、テストモードで操作の感覚を思い出す。
最初は戸惑ったが、繰り返すうちに昔と変わらない操作を行うことができた。
「これならどうにかなるか。」
ACの通常モードを終了させ、降りて普段着に着替えて倉庫の戸締りをしっかりして家に戻る。

玄関に近づくと、ちょうど義孫が散歩から帰ってきたところだった。
「おじちゃん、汚ーい!」
それが義孫がG.ファウストを見ての第一声だった。
今着てる普段着は埃まみれの倉庫内に置いておいたのだ、確かに埃まみれで汚い。
「ああ、ちょっと掃除をしてたんだ。着替えないとな。」
G.ファウストはそう言いながら、義孫と一緒に玄関に入る。
「俺はこの汚い服を着替えてくる。悪いがお前は先に昼食の支度をしててくれないか?」
「うん、わかった!」
義孫は走って台所へ向かう。元気なやつだ。
G.ファウストも別の服に着替えたあと、台所へ向かい、義孫と一緒に昼食の支度をした。

「おじちゃん、何するの?」
昼食とその片づけが終わったあと、義孫がG.ファウストに聞いてくる。
「そうだな、お前は何がしたい?」
義孫と過ごす最後の1日かもしれないと考えると、G.ファウストには何をするか決められなかった。
「お勉強は嫌!」
「じゃあお勉強以外で考えよう。何かやってみたいことはあるか?」
「うーん、あの倉庫に入ってみたい!」
「あの倉庫に入りたいのか?」
G.ファウストは思わず顔が引きつる。
「うん。だってこの辺りで行ったことないの、あの倉庫だけなんだもん!」
義孫は満面の笑みだ。
なにがあるかわからないからこそ、あの倉庫の中に入れるのが楽しみなのだろう。
「少し待ってくれ、あの倉庫はおじいちゃんのなんだ。入っていいかおじいちゃんに聞いてくる。」
「うん、わかった!」
楽しげな義孫の笑顔を見ていて心が痛む。

G.ファウストは自室に入って通信機を起動する。
「烏大老か?ファウストだ。」
「ファウスト?何の用だ?」
突然の通信に、烏大老は非常に驚いているようだった。
「少し面倒なことになった、話を聞いてくれ。」
「どうした?」
「この村の近くに武装勢力の拠点があるらしい。」
「ああ、そうだな。バーテックスにもその情報は入っている。」
「アライアンスがその拠点の制圧・接収を近日中に計画しているらしい。」
「それは初耳だ。」
「場所が場所だけにこの村にも飛び火しかねない。」
「そうかもしれん。バーテックスがアライアンスの部隊を押さえるか?」
「バーテックスは関係ないだろう?アライアンスが動き出したら、俺がACを出す。」
「お前がACを!?」
烏大老が声を荒げる。
「それしかないのだ。」
「アライアンスの部隊に手を出す気か?」
「そうなるな。」
「馬鹿が!アライアンスに手を出せば、お前は奴らの標的になるだけだ!!」
「だがお前の孫を守るにはこれしかない!」

「・・・」
G.ファウストの気迫に押され、しばらく黙り込んだ烏大老はこう続けた。
「・・・バーテックスに来い。」
「お前の孫を捨てて、バーテックスに入れと言うのか?」
「そうじゃない。孫はバーテックスの孤児院で預かる、そのほうが安全なはずだ。」
「孤児院か・・・」
「孤児院の安全は私が保証する。バーテックスに来ればお前の身柄の安全も保証する。」
「そうか、それが一番なのかも知れんな。」
G.ファウストは高ぶった気持ちを落ち着かせ、自分を納得させる。
「ああ、それが一番安全だ。今日にでも私が迎えにいこう。」
「いいのか?」
「何を言う。お前に孫を預けたのは私の責任だ。死ぬまでしっかり面倒を見るさ。」
「孫が死ぬまでか。まだまだ長生きするな、お前は。」
「冗談のうまいやつめ。とにかく今日の夜に迎えにいく、準備しておけ。」
「了解。それともう1つ聞きたいことがある。」
「なんだ?」
「お前の孫に、私のACの倉庫を見せてもかまわないか?」
「どうしてだ?」
烏大老が不思議がる。
「見たがってるんだよ、あの倉庫を。」
「まあ最後だ。状況の説明と一緒に見せてやってくれ。」
「了解。どうなっても、恨むなよ。」
G.ファウストはそう言って通信を切った。

「どうだったの?」
リビングに戻ると、期待に満ちた笑顔で義孫が聞いてくる。
「ああ、見てもいいらしい。」
「本当!?」
「本当だとも。それと少し話したいことがある。」
「何?」
「話は倉庫でだ。行くぞ!」
「うん!」

「汚ーい!!」
それが倉庫の中に入ってすぐの義孫の感想だった。
「あまり使わない倉庫だからな。何があるかわかるか?」
「大きくてかっこいい。何なの?」
「これはな、アーマード・コアって言うんだ。」
「アーマード・コア?」
「ああ、すごく昔は作業用の汎用重機みたいなもんだったが・・・」
G.ファウストは続きを言うか迷ったが、続けた。
「今は武器を積んで殺し合いに使われてる、戦争の道具だ。」
「戦争?」
この子は戦争というものを知らない。
物心つく前に戦争で両親を失い、G.ファウストに預けられたのだ。
「ああ。戦争ってのはね、たくさんの人が死んじゃうんだ。」
「どうして?」
「どうしてだかね・・・。理由はいろいろあるから、俺には何とも言えん。」
「例えば?」
「大事なものを守るために戦う場合もあれば、憎い相手を倒すために戦う場合もある。」
「それはいけないこと?」
「理由だけなら、いけないことだとは言い切れんな。」
G.ファウストは間を空けて続ける。
「だがその結果、関係ない人まで死んでしまう。これはいけないことだ。」
「じゃあ戦争はいけないこと?」
「ああ。戦争は本来、ないほうがいいんだ。」
「じゃあどうして戦争するの?」
「全員が同じ気持ちというわけじゃないからな。考え方の違いとかで争った結果起こるのが戦争だ。」

「お前にはまだ難しいか。今は深く考えなくていい。」
G.ファウストはしゃがみこんで、義孫と視線の高さを合わせて続ける。
「だがすぐに戦争で物事を解決しようとするような大人にはなるな。約束してくれ。」
「・・・うん。」
「おじいちゃんもおじちゃんも、今日から世界から戦争がなくなるように戦うんだ。」
「おじいちゃんもおじちゃんも?」
義孫は不思議そうに聞いてくる。
「ああ。だが、おじちゃんまで戦いに行くとお前が1人になってしまう。」
「・・・」
「だから今日、おじいちゃんが新しいお家にお前を連れて行ってくれる。」
「・・・」
義孫は何も言わない。
「新しいお家にはお前と同じぐらいの子がいっぱいいるはずだ。仲良くしてくれよ。」
「おじちゃんは?」
「ん?」
「おじちゃんは来ないの?」
「ごめんな。おじちゃんは一緒には行けないんだ。」
「・・・」
「だが時間を見つけて会いに行ってやる。約束だ。」
「本当?」
「本当だ!」
「約束だよ?」
「ああ、約束だ。だからもう、出かける準備しないとな。家に戻ろう。」
「うん。」

その日の夜、烏大老が車で孫を迎えに来た。
「おじいちゃん!」
烏大老が車から出てくるなり、孫は烏大老に飛びついた。
「おー、大きくなったなぁ。」
烏大老は孫の頭を優しくなでながら、G.ファウストに話を振る。
「ファウスト、準備はできているか?」
「ああ、荷物はここにあるので全部だ。」
「そうか。じゃあ積み込もう。お前は先に車の中で待ってな。」
烏大老はそう言いながら、孫を担いで車のシートに乗せる。
孫は言われたとおりに車の中でおとなしくしていた。
「ファウスト。」
荷物が積み終わったあと、烏大老はG.ファウストに話しかけた。
「何だ?」
「あれからアライアンスの動向を探っていたが、武装集団の拠点制圧作戦は今夜行われるそうだ。」
「今夜か・・・」
「機体の状態はいいのか?」
「問題ない。昼間チェックした限りでは良好だった。」
「そうか。戦闘が落ち着いたら私に通信を入れろ。すぐに迎えを向かわせる。」
「了解。恩に着る。」
「礼には及ばんさ。孫のことは私に任せろ。」
烏大老はそう言って、車の運転席へ向かう。
「死ぬなよ。」
烏大老がそう言うと同時にドアが閉まり、車が走り出す。

そして深夜、烏大老の言ったとおりにアライアンスの部隊が姿を現した。
旧ミラージュ製のハイエンドMT"OWL"3機で構成された強襲部隊だ。
武装は左腕部のロケットに右腕部のライフル。
ECMを展開して高機動を生かして距離を詰めながら加速加算されたロケットを拠点へ撃ち込んでいく。
襲撃に気がついた武装集団も応戦するが、展開されているECMのせいで迎撃もままならず、次々撃破されていく。
OWL部隊は村の建物を盾にしながら侵攻していく。
双方の流れ弾が次々とG.ファウストの住む村に被弾し、やがて村は火の海に包まれる。
「アライアンス、所詮は企業の集まりだな。目的のためには民間人などどうでもいいのか?」
G.ファウストの口から思わず独り言が漏れる。
「企業の犬が、失せろ!!」
G.ファウストはパンツァーメサイアを戦闘モードで起動し、OWL部隊へ向け通信を入れる。
暗視スコープがないので視界は真っ暗だ。
「何だ貴様は?」
「乱入してくるとはとんでもない命知らずだ。」
「これは警告だ。我々の邪魔をするのであれば、抵抗勢力とみなし、排除する。」
OWL部隊の通信を無視し、OWL部隊のほうへパンツァーメサイアを向かわせる。
「警告は無駄だったか。抵抗勢力と認定、排除を開始する。」
「了解。」「了解。」

武装勢力の拠点は既に壊滅状態、OWL部隊の作戦目標はとっくに達成できたのであろう。
通信終了と共に、OWL部隊全機がパンツァーメサイアのほうへ進路を変える。
G.ファウストはライフルとロケットで迎撃を試みるが、どちらも撃てない。
やはり湿気で火薬がやられているようだ。
ブレード以外の武装をパージし、OWL部隊を迎え撃つ準備を整える。
チャンスは一瞬。
G.ファウストは集中力を高め、目を凝らし、耳を澄ます。
ロケットとライフルが次々被弾するが、パンツァーメサイアは動かない。
G.ファウストはこの攻撃を避けれないのではない、避けないのだ。
視界が限られレーダーも使えない以上、頼れるのは自分自身の体だけなのだ。
だから弾にわざと当たり、敵の位置を読むのだ。

目の前に動く影を捉えた瞬間、G.ファウストは一気に機体を走らせ、ブレードを叩き込んだ。
うまく当たったらしく、ブレードを食らったOWLは上半身と下半身が分離したようだ。
暗闇の中から上半身を見つけ、腕部を切り落とす。
G.ファウストは再び暗闇に目を凝らし、耳を澄ます。
ロケットとライフルが飛んでくる方角、その弾速、発射音・発射光の位置を落ち着いて整理し、OWLの位置を割り出す。
そしてOWLがいるであろう位置にパンツァーメサイアを走らせ、ブレードを叩き込む。
再びブレードは直撃し、OWLの上半身と両腕部を同時に切り落としていた。
間髪空けずにもう1機のOWLがいるであろう位置にパンツァーメサイアを走らせ、さらにブレードを叩き込む。
しかしライフルを持つ右腕を切り落としただけだった。
それを確認したG.ファウストは再び石のように動かなくなる。
残されたOWLも、これがこのACの戦術なのだと理解したのか攻撃の手を緩め、やがて全く攻撃しなくなる。

戦場に静寂が続く。
G.ファウストの耳に聞こえるのは、パンツァーメサイアが大破寸前ということを表すAPアラート音のみ。
自分の息遣いや心臓の鼓動まで耳障りに感じるほどに、G.ファウストは集中していた。
これは恐らくOWLのパイロットも同じだったのだろう。
OWLも停止していたが、痺れを切らしたのかOWLの移動音が突如戦場に静かに響く。
G.ファウストはその僅かな音も、聞き漏らさなかった。
反射的に音のした方角とその移動先に向けてパンツァーメサイアを走らせ、ブレードを振りかざす。
そしてパンツァーメサイアの前にはOWLの残骸が転がっていた。

「終わりか。」
G.ファウストはそうつぶやき、深呼吸を行った後、通信を入れる。
「G.ファウストだ。烏大老、聞こえるか?」
「ああ、聞こえる。」
「迎えを頼む。」
「了解。すぐに向かわせる。」
今の彼は、ここ何年も感じ得なかった充実感に包まれていた。
(戦場で死ぬのも悪くないな。)
(いや、戦場で死んでこそ本望だ。)
そんなことを考えながら、バーテックスの迎えを待った。

~Fin~

所要時間
 6時間ぐらい?
解説とか
G.ファウストと烏大老は2人とも老兵である
→2人ともバーテックス所属だから接点がある?
 →接点に子供を用意してこじつけよう!
  →そしてこのSSを書き始めました。
OWL部隊の台詞が少し聞き覚えあるのはきっと気のせいだよ!
2人とも老人ということで一人称に少し困った。
ファウストが「俺」というのがなんか違和感あるけど、それしかしっくりくるのがなかった。





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