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 「世に平穏のあらんことを」――という念仏を毎日のように唱えていた頃は既に過去のことである。
 しかし自分はその時、その経典に感心していたし、信じていた。今でも私の心の拠り所である。
 この前、お湯をもらったのはいつだっただろうか。二週間前にシャワーを浴びた。
 少し黄色く錆びたお湯だったけど、それなりにあったかかったから汚れは取れなかったけどリラックスして疲れは取れた。
 今は疲労が溜まってる。まあとにかくどうしよう。
 十四分ほど私は空気で膨らませたビニール製のベッドに腰をかけたままだったがやはり寝ておくべきだろうとコンバットブーツを脱いだ。
 ザラザラ。ぼこりがかぶっている簡易ベッド。この汚れはなかなか落ちない。こびりついている。舐めるとしよっぱい土の味がする。
 ちょうど半年前と八日と二時間くらい前、ご飯が食べられなかった。
 四日ほど何もなかったからベッドを舐めてミネラルを、栄養を欲している身体を慰めた。わずかな塩気でなんとなく元気にはなったな。
 冷たいビニールの風船に見を横たえて、目をつぶる。サバイバルガンは腰に掛けたままだ。マガジンに弾丸は入っていない。
 私に弾丸は必要ないなんてきざなこと思ったことはない。
 もちろんただたんに弾丸を持っていないからだ。教団が崩壊して三ヶ月後に使いきってこのかた弾丸を手に入れていない。
 銃の腕はそこそこだと思っている。動いていないマトならまず外さない。教団が訓練してくれた。
 潰れてからも訓練を毎日していたから、そのせいで実践にまわす弾丸がなくなっただけである。
 でもこのサバイバルガンで人を撃って殺したことはまだなかった。
 銃で人を殺したことはないが、いや、あれも銃なのか。もっと大きな、別の兵器ではたくさん殺していたし、今でも殺す。これからも生きるために殺そうとは思う。
 しかし生きるために人を殺すとはなんか矛盾というか。いや矛盾であるはずないのであるが、自分には語彙が少ない。
 十の頃から教団に見を置いていたから、あまりそういうのを勉強していなかった。
 でもとりあえず経典を読んで読み書きは覚えた。私の人格の中心、柱は教団によって作られた。
 私はかつてワーカーと呼ばれていた。正確にはワーカー0589だ。この番号は常に流動していたから、これが絶対の番号というわけではない。
 最後に付けられた私の番号がそれだった。
 人間というものは戦って自分の証明をするものであるが戦うだけでは生きられない。
 戦いに勝たねば生きることは出来ない。死なないために戦っていくのである。
 大昔の人はどうだかしらないけど私の知っている多くの聖人の考え方は戦いとは嫌なもので、ゲスなもので、何とかしてやめ無くてはならないというものであった。
 私の私の信じていたビーハイヴという教団の宗教は戦うことを否定していない。ただ、戦いの現況であるチカラを何とかして排除しようとしていた。
 敵は武力であると明確に定め、それを上回る武力でねじ伏せる。
 もし我々が最後に残って、ただひとつの力という存在になったしたら、という事は経典には書かれていなかった。
 多くの信者がそれを問題にあげ、クイーンに伺いを立てたことがあった。
 クイーンはそのことについてこう言った。我々が最後に残るパワーであるという確証は何処にもない。
 もし我々が力尽きてしまったら、その時に残った武力は前よりも少なくなっているはず。
 だから世界は平穏に近づくだろうって、この言い訳にはなにか無理があると私は思った。
 そう、実際、教団が世に平穏をもたらしているわけではないことは私は感じていたけど特に他の人にそのことを話したりはしなかったし、他の人も私にそんな話をすることはなかった。
 クイーンが死んで、キラービーという男が教団を作ったことを知った。彼は教団を金儲けのために作ったのだ。
 私は確かにその時怒りは感じたけどやはりこの信仰心を捨て去る気にもなれなかった。
 私がACを動かして、目標を倒せば、その分平和になる。私が倒す敵は自分にとって害になるものであるため、私が生きるにつけては敵を排除しなければならないのは当然のことである。
 この前まで私には何人かの仲間がいたし、彼らのためにもなんとかして物資を手に入れねばならなかった。生きるために殺すのだ。問題はない。
 しかし自分は生きるのに向いていないと思ったことはあるか。自分は何のために、生きているのか。
 生きることが殺すことであることは重々承知であるが殺すために生きているわけではあるまい。
 人を殺したくはないのだ。私は何人殺したのか。そして何人を救ったのか。救うために生きているのだ。
 私はきっとそうである。私は世に平穏をもたらす者の最後の生き残り。
 だが誰を救うのか。今の私には仲間はいない。他人のために生きていたということではないが、やはり仲間がいたからこそ、私がこれまで生きてこられたのだと思う。
 まあとりあえずは眠ろう。また起きる時に備えて寝よう。自分が目を閉じるのは他人のためではない。自分のためだ。
 目をつぶる。これが自分が人のためではなく自分のためだけに出来る唯一の事だと思う。
 私は見つけたのである。人のためではなく、自分自身のために出来ること。これは良いことであるな――世に平穏のあらんことを……世に平穏のあらんことを……

 //普通の人間が出来るメンテが装甲板の張替えと関節に油をさすくらいしか出来ないだけであるが、ACは長時間の駆動が可能である。 

 かつて、年代をいうともう百年以上も前のことだが砂漠は採油で賑わっていた。もちろんその時は採掘場の多くは戦場となっていたけれど。
 石油が出なくなってからはもう人はそこを無理に所有しようとは考えなくなった。
 錆びついたタンクにはまだ石油が残っていたがもう劣化しているし再精製する設備もないしで放置である。
 他の地域もそうで、人の創りだした叡智が砂に埋もれて消えてゆくのである。
 ワーカーはそのずっと北の汚染地域に出向き、新たな物資を探していた。新たなといってもその名の通り新しいものという意味ではない。もはや人類に創造の力はない。
 過去にすがって生きるしか無いのだ。ワーカーはAC乗りの単独ミグラントである。四脚の黄土色に塗装されたACを駆る。
 まだまだ汚染地域には未確認の兵器が稼動状態のまま放置されているので少し危険な気がするが物資を持ち上げたりするために両腕に武器は装備していない。
 タンク型の脚部であれば、ショベルマニュピレータが装備されている機種もあるから、武器を持ちながら安心して物資を探すことが出来るのだが。
 いざというときになったら右のハンガーには銃口が溶けてふさがったレーザーライフルが装備されている。
 この前、旧シティの低層区に放置されていたジャンク品であるが
 戦闘になった時はチャージをして銃口に熱を持たせれば自然と開口されるので使用には問題はない。
 むしろ、砂が中に入ってレーザーの発振器が壊してしまわないため、ふさがっていたほうが都合がよかったりする。
 左ハンガーにはかつて襲撃したミグラントの領地に配備されていたスナイパーキャノンを転用したものを装備している。
 大型で重いためハンガー切り替えのためのアクチュエータが動かないので
 ボルトを爆破してパージしてから武器を構えるという面倒な手順を踏まなければならない。
 AC用スナイパーキャノンはFCSと同期が取れず自分で狙いを付けなければならないが、
 これはプラントから電力を供給すればFCSと通信が取れるため命中率が格段に上がる。
 とはいってもそんな機能をつけるためにこれを拾って装備させたわけではないし、まだその機能を使ったことすら無い。
 背部には回収した物資を搭載するために追加ハンガーを増設している。
 既に積載分の物資を回収し終えていた。その多くは破壊されたOOTHECAとAMONの自爆破片である。
 市場にあまり出ない金属が使用されているから、買取価格も高い。
 ワーカーはACをスキャンモードに切り替え、周囲の探索をおこなう。目指できる範囲にまだ回収できるものは残っていたが、
 とりあえずヘリに戻り、今までの分を整理しておこうとブースタを起動した。

 ミグラントの多くは自身が所有する大型ヘリに乗り、各地を移動する。ワーカーもヘリにACを吊り下げてここまでやってきた。
 ワーカーは回収した物資の積み込み作業を終え、ヘリのコクピットに座った。
 ローターの回転数を上げる。 ガクガクとぎこちなく、スムーズに浮上させることは出来ないがなんとか高度を上げることが出来た。
 二ヶ月と五日と五時間と三十分と少し前ならヘリの上手い仲間がいたのになあとワーカーは思った。
 汚染地域をすぎるまでは手動で操縦しなくてはならない。ワーカーは周囲に警戒しながら安全運転を心がけた。
 しかし汚染地域を抜けるその直前であるが集中力が切れた。
 ワーカーは操縦をオートパイロットに切り替えて、ヘルメットを外し、背伸びをした。
 この物資を売り払ったら、たくさんのお金が手に入る。まず風呂に入り、それから少し贅沢なご飯を食べようそう思った。

 ワーカーの予想通り、汚染地域で回収した金属は高く売れた。
 所有している領地も少し売ってしまおうと、山岳地帯の地下街でワーカーは食料を買い込みながら思った。
 もうひとりきりなので、飛び地の見回りも十分にできないだろう。領地の砲台に食わせる燃料もバカにはならない。
 一週間はこの街に滞在するつもりなのでそのあいだに決まればいいなと仲介所の掲示板に買取募集の張り紙をしてもらった
 その一時間後には十件以上の申し込みがあった。
 ワーカーはそこで募集を打ち切り、一番高く買ってくれる人と、一番安い金額の人と、その中間の人の三人をピックアップした。
 その日のうちに彼らに連絡をつけ、まず一番高い人と会う約束をした。夜の九時、場所はあるバーである。ミグラント御用達らしい。
 次の日、昼前に起きたワーカーはとりあえず遅い朝食を取り、回収した廃品の中にまぎれていたデジタルの腕時計を治していた。
 配線の多くが切れていて、何処がどうつながるのか難儀したが最後の配線を繋ぎ終えた時既に約束の時間に遅れそうだった。
 ワーカーはせっかく直したのだし、この時計を付けていこうと電池をつないだところ、時計の文字盤には何も表示されなかった。
 配線以外にも部品はあったし、そもそもそのつなぎ終えた配線があっているのかさえ疑問に思ってきた。
 やはり自分にはこういうのはむかないなあとワーカーは思った。
 朝起きてそのままのワーカーは急いでパイロットスーツに着替えた。
 床に脱ぎ散らかしたパジャマを見てあいつらに、こういうだらしがないのよく注意されたっけと思った。
 サバイバルガンが腰のホルスターにちゃんと入っていることを確かめた。
 ワーカーにとって自身で商談を行うのは初めてであり、すこし気後れしてしまったが、自分はもうひとりだがこのグループの代表であるのだと自覚しなくてはと思った。

 ワーカーが人ごみをかき分けながら紹介された場所に向かい、そこについた頃には約束の時間を十八分もオーバーしていた。
 ミグラントは信用が第一だ。ドアを開ける。たばこの匂いが漂う店内に入った。
 店内にいるのは三人。バーテンとカウンターの端に座っている一人の客と今入ってきたワーカーだけだ。
 とりあえずその客とは逆側のカウンターの端に座り、バーテンに飲み物を注文した。
 バーテンが材料をまぜてステアしている時、客が立ち上がり、ワーカーの隣に一つ席を開けて座った。
 バーテンが酒をワーカーに渡し、ワーカーはコインをひとつバーテンに渡した。バーテンは用がすんだと奥に引っ込んだ。客が話しかけてきた。商談だ。
 その男によると、自分はここにワーカーを呼んだ一番高く買ってくれる人でないし、その人物に近しい関係でもない赤の他人であるという。
 なら何故ここに来たのか、ワーカーは彼に問うことはなかった。理由は分かりきっていた。
 男の提示した買取金額はもともとの金額よりだいぶ少なく、一番安い金額の人よりはマシな程度だった。
 男はニヤケ顔で商談成立かと言う。ワーカーもそれに同意した。ワーカーは金と管理キーを交換し席をたった。
 ドアを開け、バーを出る。数歩歩き、ドアが閉まる前にかけ出し、自室に戻るまで振り返ることはなかった。
 街を出る時、その男が死んだことを噂で聞いた。元々彼は周りによく思われていなかったようで、彼が殺したミグラントの仲間に捕まりリンチにされたのだという。
 やはりミグラントは信用が第一だとワーカーは修理し終わった腕時計をつけながら思った。

 既に日をまたぎ、朝日が登ろうとしている。
 遠隔領地に仕掛けたウォッチャーが敵襲の連絡を寄越したのは昨日の夜のことである。
 意識が眠りに落ちはじめた頃、無線機のスピーカが焼き切れるかと思うくらいのけたたましいサイレンが鳴り響いた。
 オートパイロットに設定された大型ヘリはワーカーを乗せて、居を構える鉱山地域から渓谷地域への長い距離を突っ走る。
 ヒュージキャニオン全体は生存環境もいいし、まだ使える旧施設も多数残っていた。
 しかし、場所が場所だけに攻め込むミグラントもあまりいなかった。
 領地の拠点の真上はヘリの天敵であるスナイパーキャノン砲台がカバーしているし、谷を吹き抜ける風が機体を揺らして安定しないからだ。
 だから敵は拠点からすこし離れた場所に舞台を投下せざるを得ない。
 また、地上から進行しようとしてもところどころがけ崩れが起きているため、足であるトラックはそれ以上進めないし、それを乗り越えたとしても
 撤退する場合を考えるととても難しい天然の要塞なのであるのだから、買取価格も高い。
 アルペンベースに集まるミグラントはあまりお金を持っていないため、別の機会に売り払おうと思っていたのだ。
 あれからもう随分経つが、まだ踏み切れないでいた。  
 しかし領地は今頃どうなっているのであろうか。並のミグラントなら配備した砲台で追い払えているだろうが、
 このままその領地は放棄してしまおうかとワーカーは考えていた。
 敵を撃退できていたとしてもそれなりの損害は覚悟しなければならない。
 高い金で買ってもらえるためには壊された砲台を修理しなくてはならないからだ。
 ただ、敵の襲撃を教えてくれたウォッチャーは希少だし、その重要性も高い。
 回収した廃品の部品を継ぎ足してなんとか修理を終えたものだ。あれだけは壊されてたまるものか。
 壊されたとしてもその残骸は回収しておこうと思っていた。
 ガコガコと係留したACの振動が大きくなってきた。だんだん風が強くなってきたのだろう。
 型が古いこのヘリのオートパイロットはあまり信用ができない。ワーカーはヘルメットの留め具を締め直し、ヘリの操縦桿を握った。

 領地を襲った敵はもう撤退しており、そこに残ったものは残骸だけであった。
 倉庫の扉はこじ開けられており、もともと少なかったが物資が全て奪われていた。
 壊された砲台もその多くが回収されて残っているのは動かせない台座だけだ。
 しかし、台座に取り付けられていた柵やハシゴなどは持っていかれていた。
 ワーカーは愛機の四脚ACに乗り、領地全体を見まわった後、スキャンモードで目的のウォッチャーの探索をするが見つからない。
 やはり、敵に持っていかれたのだろう。その破片ひとつすら回収することは出来なかった。
 仕方ないのでワーカーはACを降り、施設内の探索することにした。
 敵は手際は良かったが、何か見落としていったものもあるかもしれない。

 施設に入る時、屋上に取り付けられていたパラボラアンテナも綺麗に持っていかれてたのに気がついた。

 この施設内の大部分についてワーカーはよく知らない。というか誰も知らない。
 施設が放棄された際、ほとんどのドアには固いロックがかけられて開けることが出来なかったからだ。
 作戦会議に使った部屋、ご飯を食べた部屋、眠った部屋、自分の部屋、仲間たちの部屋を順々に回ったがもう何も残ってないし、
 残っていたとしてもそれはもうグチャグチャに壊されていた。
 ワーカーは土足で踏み荒らされたかつての生活の場をあとにしようとしてロックされていたはずのドアが一つ爆破されているのに気づいた。
 そういえば前に仲間も爆薬で吹き飛ばしてドアを開けたことを思い出した。
 固いし、バールとかで開けようにも突き刺す場所がなかったからだ。
 でも中にはめぼしいものは何もなかったし、ものすごい悪臭がした。
 多分、この山岳地域が放棄された理由は天然のガスか人が作った兵器かしらないけどそんなものが谷に充満してしまったせいなのだろう。
 ガスは年月が経てば薄まるし、それまで戻るのは待とうと思ったけれど、人はそこまで待つことが出来なかったのだ。 
 ワーカーはそんなことを思い出してその部屋に入った。以前のような悪臭はしなかった。
 床に積もったホコリにくっきりと誰かの足あとがついていた。襲撃者の足跡だ。
 薄暗い部屋。ワーカーはポケットからペンライトを取り出した。白いハイビーム。そこでワーカーは面白いものを見つけた。
 穴だ。直径が自分の身長くらいある。足跡はその前で途切れていた。部屋を出る方向についている足跡は無い。
 おそらく襲撃者の一人はその穴に落ちたのだろう。穴の縁に禿げた爪と血がついていた。ワーカーは穴を覗く。
 ライトの光は穴の底の暗闇に吸い込まれてしまう。ものすごい深さだ。
 もしこの穴に落ちたならと考えるとゾッとする。ワーカーはずりずりと後退った。
 もう、ゆっくりと見て回っている時間はない。もうここに用はない早めに撤退しよう。
 用があるのは敵だけだ。襲撃者達は物資の強奪だけが目的なわけではないはずだ。
 ワーカーが部屋を出ようとしたその時、外から大きな音がした。何か大きなものがが投下される音、そして爆発だ。
 攻撃されたのはこの施設ではない。ワーカーのACだ。金属に突き刺さり、その内部を粉々に打ち砕くミサイルの音。
 圧迫されたジェネレータがその熱いエネルギーを外部へ放出するあの爆発音だ。
 襲撃者が戻ってきたのだ。この領地を我が物とするために。ワーカーはホルスターからサバイバルガンを抜いた。
 激震!建物が振動する。
 奴らだってばかじゃない。ワーカーが施設内にいることぐらい想像がつく。
 ワーカーは這いつくばってその振動から身を守った。
 ワーカーは爆発とは別の音がすることに気づいた。それに伴う微動。床がたわむ。
 ワーカーはそれに気づいて立ち上がったがもう遅かった。部屋の床が崩れた。ワーカーは奈落の底に落ちていった。

 ワーカーが意識を取り戻したそこは地底湖だった。
 幸運なことに穴の底は地下水脈につながっており、ワーカーは固い岩に身体を激突させることはなかった。
 ワーカーは打ち上げられた岸からゲロと水を吐きながら手探りで離れた。
 何も見えない。ワーカーはヘルメットの暗視ゴーグル機能をオンにした。巨大な地下空洞だ。
 牙のような鍾乳石がいたるところに生えていた。自分はどれだけの深さにいるのだろう。
 ワーカーは岸にそって歩き、壁にトラックが入れるくらいの道を見つけた。
 とりあえず、進もう。そこが出口に繋がっていなくともとりあえずここには長居したくない。
 鍾乳石に何かが突き刺さり、水の色が濁っているような錯覚が見えたからだ。

 教団の教えに従い今まで生きてきた。私の仲間は私の宗教に理解を持ってくれたがそれを信仰するわけではなかった。
 それは個人の意思とか、信念とか、もう既に持っている宗教とかの理由で、残念というわけではないけれどなんとなく変だとは思った。
 彼らは私を受け入れてくれてはいたが、なんとなく私を阻害というか腫れ物というかなんというかそんな風に扱っているように感じた。
 そのことで喧嘩したこともあった。私を普通に扱ってくれと。それは思春期の子供のような、なんというか駄々っ子で、今では理解し難いものだった。
 彼らは私に普通とはどういうものなのか問うた。私は答えられなくて、代わりに泣いて、それから寝てしまった。
 起きた時にはいつものベッドの上で、毛布をかぶっていた。腫れぼったい目をこすって、恐る恐るキッチンに行くとみんながいた。
 それで昨日はごめんと謝るとあいつらも気にするなよと言ってくれた。それでまた涙が出てきて、なんかどうしようもなくて、私はまた大きな声で泣いてしまった。
 それっきり泣かないことに決めた。けれど、やっぱりみんなが死んでしまったときは泣いてしまった。今までのよりずっと悲しかった。
 世に平穏のあらんことをだっけか……、彼らの一人がそう呟いて事切れた。なんとか守れたなあと彼は言って死んだ。私の手を握る力がゆっくりと弱くなって彼女は死んだ。
 私一人が生き残った。血まみれの私は絶望して銃を咥えて自殺しようとしたけど弾が入ってなかった。カチンとハンマーが落ちる音だけだった。
 泣き虫な私を慰めてくれる人はもういなくなった。
 だから強く私は生きていくのだ。でも仲間なんていらないなんて思うほど強い心は持っていない。
 仲間に信頼されていける、愛していける人間になろうと思った。

 どうしようもない空腹の中ワーカーは目を覚ました。放置されたトラックの中でワーカーは寝ていた。
 このトンネルは人工的に作られたものかどうかはわからないがあの地底湖までの通路であることがわかった。
 いたるところに赤錆びたトラックや作業用機械が放置されていた。ここは何かの施設の一部らしい。
 ACや他の兵器と同じ時代に作られた施設。
 水に濡れて機能低下をおこした暗視ゴーグルはたびたびちらついた末にお釈迦になった。
 それから胸ポケットにしまってあったオイルライターの小さな火を頼りにワーカーは進んだ。。
 これも濡れて使い物にならなかったらどうしようかと思った。
 ワーカーは寝ぼけた頭でまさか動くわけなかろうとトラックのスターターを押し続けるとなんとエンジンが始動した。
 ライトのスイッチを入れる。
 サスが軋んで車体がばらばらになりそうなくらい振動するが、足で歩くよりはだいぶ速い。
 ここが人間の施設なら何処かに出口はあるはずで、それを見つけ出さなくてはならない。
 かつての遺跡。人類の科学がピークを極めた時代の異物。ACとか、兵器の発掘現場は実際に見たことはないがこんな感じらしい。
 いたるところに人がいた痕跡が残っている。作業用機械に踏み潰された空き缶や、読めない文字の書かれた雑誌。
 急にゴトゴトとした振動が小さくなった。ここから道がちゃんと舗装されている。巨大なエレベータが目の前に現れた。
 ACの二倍以上の大きさの機械も余裕で入れそうだった。ワーカーはがラックを降りた途端、ボンネットから煙が吹き出した。ここからはまた歩きかもしれない。
 ヴンヴンと電磁石が鈍く唸っている。まだ電源が生きている。ワーカーは固く閉じられたコンソールのロックにナイフを突っ込んだ。
 ホコリが積もった床。しかし分厚い層に一段下がる、薄く足跡。ここ数年のものか、この施設が放置されてからの年月に比べればだいぶ最近だ。
 ステアボタンが光る――地下、205F。まじか。ワーカーは笑った。


 空腹はパサパサの保存ビスケットでなんとかもたせている。
 水はいたるところから染み出している。のどが渇けばそれを舐めつつ先に進む。

 金属だ。見渡す限り金属で囲まれている。部屋なのか、多分違う。ここは箱
 地下に埋められた巨大な箱のなかだ。








子話し案
 都市部 教団の残党
 海上 警備隊残党の残骸 

ここまで書いた
アーマード興味心が湧いてくれば
またがんばろうとおもう




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