http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1343141592/
「これは……面倒なことに……なった……」
熱い。どうやら機体が燃えているようだ。面倒だ。
もうこのファンタズマは動かない。俺とファンタズマは、たった一機のACに敗れたのだ。
機体の温度は高く、熱くて仕方がない。
身体と呼べるものなどないというのに、面倒なことだ。
ファンタズマは動かないものの、少なくとも搭乗者である俺に命の危険がある状態ではないらしい。それはそれで面倒だ。
とは言え、今更元の体には戻れないのだ。脱出するという選択肢など、初めからない。
既に肉体は『人間』として機能できるだけの能力を失っているのだから。
ただ熱いと感じることは十分に可能らしい。
逃げることも出来ないとは、またしても面倒だ。
さてどうしたものか。それを考えることすら面倒だ。
ファンタズマ、これが完成し、この俺が搭乗することになろうものなら、この世のあらゆる面倒事は排除できるはずだった。
だが実際、俺は一機の面倒なACすら排除することは出来なかった。
『最強』。そう思っていたものは、余りにも脆かった。面倒なことだ。
ファンタズマがもっと強力であればこんなことにはならずに済んだというのに。全く、俺の人生はどうしてこうも面倒なのだ。
このまま機体の機能が回復するのを待ち、今度こそ奴を殺すか?
面倒だ。機能の回復がいつになるかもわからない、まして一度敗れた相手だ。
奇襲でもすれば勝てるかもしれないが、奇襲するのも面倒だ。
あぁ面倒だ。
奴が存在するというだけで、俺の人生に支障が生じるというのか。
しかし奇襲せずに正面から奴と戦って勝てる保証がどこにあるというのか?
それになにより、奴を倒すためには奴を探さなければならないということになる。
手掛かりの一つもないというのに、それはとても面倒だ。
ファンタズマは着実に機体温度を下げていた。
流石に奴らが精を出して開発していただけのことはあるらしい。
今はもう機体に問題がない温度かどうか気になったが、確認するのは面倒なのでやめた。
動けるようになったらこのアビスから出るか?
いや、それまでただ待つというのも面倒だ。
そもそもアビスから出て、そのあとどうするというのだ。
この力は最強ではなかった。これではこの世の面倒事は残ったままになる。
面倒なAC一機に負けるようでは、先が思いやられるというものだ。
アビスから出たところで、結局面倒事は尽きないのだ。
わざわざ出るのも面倒だ。アビスに留まっていればいいだろう。
そうだ、ファンタズマを奪われた機関の連中は、今ごろ血眼になってこのポンコツを探しているだろう。
それならわざわざ俺が動くまでもない。このポンコツも奴らにとっては大事なはず、手厚く保護してもらえるだろう。
機関の連中ごときに保護されるというのは癪だが、考えてみればこの俺を出向かせることの方がおかしいのだ。
さっさと回収に来ればいいというのに、奴らはどこまで無能なのか。
機体各部のアラートが少しずつ止み始めた。機体温度も熱いと感じるほどではない。
機関の連中は一向に来ない。なんて面倒な奴らだ。回収に来たら、少々面倒だが文句を言ってやろう。
ちょっと待てよ、回収されたところで、そのあとはどうなんだ?
奴らの実験だの開発だの面倒ごとに付き合わされるなど言語道断だ。面倒極まりない。
しかし、これを回収しようものなら間違いなく改修作業や修理があるだろう。
それに付き合わされるのはそこはかとなく面倒だ。奴らを待つのも得策ではないということか。
アラートはほとんど鳴りやんでいる。もう機体は動くだろうが、確認するのが面倒だ。
そもそも動いたところで行くあてがないのだ。考えてみれば、動く必要すらないのではないか。
ここから出たあとの行くあてを考えるなんて面倒なことはゴメンだ。
あぁ、結局解決策の一つも浮かんでいないということか。
ここまで色々考えたのは全て無駄と言う訳か。面倒だな。
考えたのが無駄だというなら、もうこれからのことを考えること自体が無駄ということじゃないか。
わざわざ無駄なことに時間を割くなど、そんな面倒なことは断じてゴメンだ。
あぁそうか、そうだったのか。
俺はこんなことにも気づいていなかったのか。
面倒は嫌いなんだ。面倒なことなど、この世から消えてしまえばいい。
全ての面倒事をやめてしまえば、俺にとっては消えると同義だ。
もう機体を動かすなんて面倒なことをする必要はないのだ。
呼吸をするなんて面倒なことをする必要はないのだ。
考えるなんて、そんな面倒なことをする必要はないのだ―――
――
―
終わり
スティンガーさんよりも遥かに面倒が嫌いな人が出てくる小説を読んだので、
それのパロディのつもりだったんだが、ほとんど原型がないのでもうオリジナルかパロディかわからん。そんな面倒なことは考えたくないし
元ネタをわかってくれる人はいないと思うので先に書いておくと
『セピア色の凄惨』/小林泰三 に入ってる「ものぐさ」
40ページしかない短編なので、面倒嫌いの究極系が見たい人は古本屋の立ち読みでもどうぞ
それは面倒だというなら好きにしてくれ
「これは……面倒なことに……なった……」
熱い。どうやら機体が燃えているようだ。面倒だ。
もうこのファンタズマは動かない。俺とファンタズマは、たった一機のACに敗れたのだ。
機体の温度は高く、熱くて仕方がない。
身体と呼べるものなどないというのに、面倒なことだ。
ファンタズマは動かないものの、少なくとも搭乗者である俺に命の危険がある状態ではないらしい。それはそれで面倒だ。
とは言え、今更元の体には戻れないのだ。脱出するという選択肢など、初めからない。
既に肉体は『人間』として機能できるだけの能力を失っているのだから。
ただ熱いと感じることは十分に可能らしい。
逃げることも出来ないとは、またしても面倒だ。
さてどうしたものか。それを考えることすら面倒だ。
ファンタズマ、これが完成し、この俺が搭乗することになろうものなら、この世のあらゆる面倒事は排除できるはずだった。
だが実際、俺は一機の面倒なACすら排除することは出来なかった。
『最強』。そう思っていたものは、余りにも脆かった。面倒なことだ。
ファンタズマがもっと強力であればこんなことにはならずに済んだというのに。全く、俺の人生はどうしてこうも面倒なのだ。
このまま機体の機能が回復するのを待ち、今度こそ奴を殺すか?
面倒だ。機能の回復がいつになるかもわからない、まして一度敗れた相手だ。
奇襲でもすれば勝てるかもしれないが、奇襲するのも面倒だ。
あぁ面倒だ。
奴が存在するというだけで、俺の人生に支障が生じるというのか。
しかし奇襲せずに正面から奴と戦って勝てる保証がどこにあるというのか?
それになにより、奴を倒すためには奴を探さなければならないということになる。
手掛かりの一つもないというのに、それはとても面倒だ。
ファンタズマは着実に機体温度を下げていた。
流石に奴らが精を出して開発していただけのことはあるらしい。
今はもう機体に問題がない温度かどうか気になったが、確認するのは面倒なのでやめた。
動けるようになったらこのアビスから出るか?
いや、それまでただ待つというのも面倒だ。
そもそもアビスから出て、そのあとどうするというのだ。
この力は最強ではなかった。これではこの世の面倒事は残ったままになる。
面倒なAC一機に負けるようでは、先が思いやられるというものだ。
アビスから出たところで、結局面倒事は尽きないのだ。
わざわざ出るのも面倒だ。アビスに留まっていればいいだろう。
そうだ、ファンタズマを奪われた機関の連中は、今ごろ血眼になってこのポンコツを探しているだろう。
それならわざわざ俺が動くまでもない。このポンコツも奴らにとっては大事なはず、手厚く保護してもらえるだろう。
機関の連中ごときに保護されるというのは癪だが、考えてみればこの俺を出向かせることの方がおかしいのだ。
さっさと回収に来ればいいというのに、奴らはどこまで無能なのか。
機体各部のアラートが少しずつ止み始めた。機体温度も熱いと感じるほどではない。
機関の連中は一向に来ない。なんて面倒な奴らだ。回収に来たら、少々面倒だが文句を言ってやろう。
ちょっと待てよ、回収されたところで、そのあとはどうなんだ?
奴らの実験だの開発だの面倒ごとに付き合わされるなど言語道断だ。面倒極まりない。
しかし、これを回収しようものなら間違いなく改修作業や修理があるだろう。
それに付き合わされるのはそこはかとなく面倒だ。奴らを待つのも得策ではないということか。
アラートはほとんど鳴りやんでいる。もう機体は動くだろうが、確認するのが面倒だ。
そもそも動いたところで行くあてがないのだ。考えてみれば、動く必要すらないのではないか。
ここから出たあとの行くあてを考えるなんて面倒なことはゴメンだ。
あぁ、結局解決策の一つも浮かんでいないということか。
ここまで色々考えたのは全て無駄と言う訳か。面倒だな。
考えたのが無駄だというなら、もうこれからのことを考えること自体が無駄ということじゃないか。
わざわざ無駄なことに時間を割くなど、そんな面倒なことは断じてゴメンだ。
あぁそうか、そうだったのか。
俺はこんなことにも気づいていなかったのか。
面倒は嫌いなんだ。面倒なことなど、この世から消えてしまえばいい。
全ての面倒事をやめてしまえば、俺にとっては消えると同義だ。
もう機体を動かすなんて面倒なことをする必要はないのだ。
呼吸をするなんて面倒なことをする必要はないのだ。
考えるなんて、そんな面倒なことをする必要はないのだ―――
――
―
終わり
スティンガーさんよりも遥かに面倒が嫌いな人が出てくる小説を読んだので、
それのパロディのつもりだったんだが、ほとんど原型がないのでもうオリジナルかパロディかわからん。そんな面倒なことは考えたくないし
元ネタをわかってくれる人はいないと思うので先に書いておくと
『セピア色の凄惨』/小林泰三 に入ってる「ものぐさ」
40ページしかない短編なので、面倒嫌いの究極系が見たい人は古本屋の立ち読みでもどうぞ
それは面倒だというなら好きにしてくれ