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http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1323124186/

「まさか、これほどとはな……」
眼前には一機のAC。武装を減らし、機動力に特化した機体が一機。
そいつを撃破するのがジャックから与えられた俺への任務だった。

「私の目に狂いがなければ、奴は強敵だ。だが、まだ奴との実戦でのデータが少ない。
 奴が『真の強者』かどうか、戦ってみればわかる。遠慮はいらない。ライウン、君は全力で奴の撃破にあたれ」

奴に勝つ自信は、あまりなかった。
俺はジャックを信用している。ジャックが強者だというなら、強いことは覚悟していた。
例え俺が死んでも、ジャックの為になるというのなら、死など怖くはない。
だが奴の実力は、俺の予想を、そして恐らくジャックの予想をも、軽く上回っていた。

俺の駆る機体「ストラックサンダー」に未だ損傷はない。そもそも奴の攻撃は、一度たりとも命中していないのだから。
しかし、最早機体の損傷など無関係で、俺は奴に『敗北』していた。

「弾切れ……か」


施設から出てきたときから、奴の挙動は妙だった。
決して俺のACに近寄ろうとせず、一度も攻撃をしない。最初は戦意を失っているのかと思った。
俺は任務のため、ひたすら奴への攻撃を続けた。

しかし、まるで命中しない。

奴は『回避』することだけを考えているのだ。そう気付くのに、長い時間はかからなかった。
逃げようとはせず、接近もせず、攻撃もしない。奴はただ避けている。

―――遊ばれている。

ならば可能な限り接近し、一発一発を当てることだけを考えればいい。そう思った。だが、それは甘かった。
結果は御覧の有り様だ。敵も無傷ではないが、恐らくまだAPが半分かそれ以上は残っているだろう。

一切攻撃を仕掛けることなく、あらゆる攻撃を避け、弾切れとなり何もできない俺を笑っているのだ。
圧倒的な『強者』の余裕だった。


奴が動き出した。
自慢の機動力を生かし、一目散に俺の機体に接近してくる。当然だ。俺に出来ることはもうないのだから。
―――だが、逃げるつもりはなかった。
すぐさま逃げ帰り、奴の強さを報告すること。それは恐らく、ジャックの望んでいる事ではない。
なんとなくだが、それは理解していた。
奴が圧倒的に強いなら、どれだけ圧倒的な強さをしているのかを実感させることこそが、俺のやるべきことなのだ。

奴はマシンガンを持った右手を上げようともせず、俺に向かってくる。その銃を使うつもりはない、ということか。
俺は弾切れしたパルスガンを、奴に向かって全力でブン投げた。せめてもの悪あがきだ。
奴は当然のようにそれを避け、初めて俺の前で武器を使う素振りを見せた。
掲げ上げられた左手には、ブレードが発光を始めていた。

マズイ。たとえ既に負けているとしても、俺は全力で抗うべきなのだ。そう易々と撃破される訳にはいかない!!
俺はあえて奴の機体に向かって突撃した。奴の軽量機体よりも、ストラックサンダーの方が遥かに重い。
体当たりだ。悪あがきなのは百も承知。当たれば無傷とはいかないだろう。今の俺には、それが精一杯だ。
奴の機体に、傷の一つでもつけてやればいい!


俺から接近したことが予想外だったのか、距離を見誤ったか。奴のブレードは空振りに終わった。
俺の体当たりも勿論空振りだ。だがもう恐れることは何一つとしてない。向き直り、奴に突撃を敢行する。
奴は既にこちらに突進してきている。一瞬だ。一瞬のタイミングを見計らい、攻撃を避け突進する。
例えこの機体が真っ二つになろうとも、その破片の一つでも奴にぶつけることができれば、それでいい!!

至近距離まで接近し、奴の動向を観察する。左腕のブレードが直撃する事態は避けたい。
その前に一撃でも叩き込めば。

奴が飛びあがり、左腕を上げる。
一撃だ。一撃で十分だ。この機体を武器にして、奴に一矢報いることができればいい。
奴が水平斬りの構えを見せた。俺はその一瞬を逃さない。逃すわけにはいかない。
死角となる奴の右足が俺の狙いだ。右腕の前に構えたあのブレードをかいくぐればいいのだ。
奴がブレードを振る瞬間、一瞬だけ身を引く。これで避けきれるか……?

ブレードが右肩を掠めた。致命傷にはならないが、装甲が焼き斬られたのがわかる。
構わず、俺は左脚を蹴り上げる。この分厚い装甲の脚で蹴られれば、あの細い脚には致命傷だろうからな!

だがまたしても空振り。奴は瞬時に上空へ飛び上がった。
機体が回転しそうになりながらも、態勢を立て直し、奴を見る。俺の頭上から、そのままこちらへ降下してくる気だろう。
上下の差はあるが、機体の軽い奴に背後を取られたことになる。奴の接近は、俺が向き直るのとどちらが早い?


斬られた右肩の損傷は思ったよりも軽微だった。俺が見誤ったのは、奴のブレードがデュアルブレードであることだ。
普通のブレードよりも、僅かだが範囲が広かった為、肩を掠めたのだ。

俺の後ろ上空、敵はこちらを見下ろしながら、そのまま向かってくる。
機体の重い俺のストラックサンダーは、距離を離しつつ奴の方を向く。しかし、当然奴の接近の方が速い。
まだ奴を真横に見ているというのに、奴はもう十分に近い。このままでは斬られる……!

奴の正面にあたる、俺の右半身の方から、あのデュアルブレードが光った。
この速度では逃れられない。まして向き直る暇もない。―――ならば、覚悟を決めるだけだ!!

俺は即座に左手で右肩を握り潰した。
ブレードでの損傷を受けていた右肩は、ズタズタになり垂れ下がる。もう右腕は動かない。
奴がブレードを振りかぶる刹那。左手で右手を強く握り、そのまま引きちぎった。腕はコアの接続部から見事に千切れた。

右半身を、コアごと奴にぶつける様に突撃する。
奴の振ったデュアルブレードが、俺のコアを真一文字に焼き斬っていく。
コックピットが壁面ごと斬り裂かれ、俺の頬を熱風が撫でる。

これが本当に最後だ。
構えていた左手を、奴に向かって全力で叩きつけた。


左手には、引きちぎった右腕があった。
その右腕をハンマーの如く奴の機体に叩きつけた。確かな感触と、鈍い鉄のぶつかり合う音が聞こえる。
焼き斬られたコアの隙間から、カメラを通さずとも奴の機体が見える。
その右腕には、俺の右腕だったLEMUR2が突き刺さってた。

これでいい。十分だ。

俺は笑みを浮かべた。今更コアの各所でアラームが鳴り響く。もう遅い。
どこか遠くで爆発音がする。熱い。俺の体が熱いのか、この機体か、あるいは両方か。それすらわからないほどに熱い。
一撃。それで満足だ。奴がどれほどの『強者』であったか。これでジャックは理解してくれるだろう。

これでいい。

―――これで、全て終わりなんだ。



                           終わり




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