http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1316432653/63-
ACのパイロットシートに腰を落ち着かせながら、俺は覚悟を決める。
もう、後には引けない。
可能な限り高度を高く保ちながらオートパイロットに設定した輸送機が静かに目的地へと俺を運ぶ。
輸送機のエンジン音しか聞こえない中、俺はこれからのあるミッションのプランを綿密に再確認する。
「・・・まもなく目標地点上空、時間通りだ。」
輸送機のレーダーから転送してある広域マップで位置を確認し、俺は通信を入れる。
このミッションを共に遂行する、同志2人の改造を施したMT2機に。
「カウント開始・・・5、4、3、2、1、ミッション開始だ。」
俺はそう告げると輸送機のハッチを開き、同志2人と共に地上へ飛び出す。
輸送機という足場を失った俺たちは慣性に流されながら、重力の思うままに地上へ引き付けられる。
残り高度5万・・・3万・・・2万・・・
自然の摂理通りに落下していく機体が空気を切り裂く轟音の中、数発の銃声がほのかに聞こえる。
同志のMT[ローバスト-Sr]が目標の防衛機構を高高度からスナイパーライフルで狙撃して撃破しているのだ。
この機体は本来は地に足をつけて運用するものだが、同志たちの狙いは確実に、ターゲットを射抜いていく。
残り高度1万・・・5千・・・
俺の機体のレーダーの索敵範囲に入るが、敵反応は見当たらない。
同志たちが防空レーダーを含む全ての防衛機構を破壊したのだろう、予定通りだ。
残り高度2千・・・
「残り高度僅かだ。方位を北に合わせ、合図と共にOBを起動して着地に備えろ。」
「3、2、1、OB起動。」
俺の合図と共に同士たちのローバストも背面部に括り付けた簡易OBユニットを起動し、着地硬直を回避する。
「ポイントAに到着次第OB解除、ミッション開始だ。」
ポイントA、この作戦領域である都市セントラルオブアースの隔壁で機体を強引に停止させる。
超高速で堅固な隔壁に衝突させた期待の損傷は大きいが、これも予定通りで問題はない。
「さあ、宴の始まりだ・・・」
恐らく俺にとって最後になるであろうミッションの開始を自らに告げ、俺たちは機体の歩を進める。
最後になるであろうミッションといえど、さほど複雑なものではない。
単に目標を殲滅していくだけの簡単な仕事だ。
ターゲットは全てビルの内部、全て生体反応だ。
俺たちの機体は各種生体センサーの感度を極限までチューンし、人間に反応するようにしてある。
目標は政府関係者の周辺人民の虐殺。
政府関係者本人には一切手を出さない。あくまでも周辺の人間だけだ。
だが無関係な人間は殺さない。彼らには俺たちと同じ思いをさせたくないからだ。
まあ、こんな高尚なビル街に住んでいるのは大半が政府関係者だろうが。
俺たちの家族は政府の軍に殺された。
不法武装集団インディーズ廃絶の名目の下、俺が不在の間に家屋に突入して容赦なく撃ち殺したのだ。
俺がその頃に受けていた依頼がインディーズのものが多かったことが背景にあるようだった。
同志2人も同じような事情だ。
しかしこれは冤罪だ。俺たちにはインディーズとの直接の繋がりはない。
だがこれを政府に訴えたところで、俺たちの家族はもう二度とこの世には帰ってこない。
武力行使で直接排除しようとしたターゲットの話すことなど、奴らは信じようともしないだろう。
いつか奴らに復讐をする、俺たちはそう心に誓った。
そして今、その復讐の時だ。
家族を失う悲しみを味わうがいい。
俺たちは政府関係者の家族の住居と顔を徹底的に調べ上げた。
カメラで顔まで確認してから、1発の誤射もなくターゲットを確実に仕留めていく。
ビル内や少数のターゲットは同志のローバストが狙撃。
路上を大人数で逃げ惑うターゲットは俺のAC[ヘイズ]の肩に装備したチェインガンで一掃する。
どちらも生身の人間に対してはオーバーキルだが、政府関係者の家族への情けはかけない。
かつて俺たちの家族を撃ち殺した連中がそうであったように、俺たちはただ冷酷にターゲットの命を奪う。
罪悪感など感じない。
冤罪であろうと容赦なく俺たちの家族を殺したあんな連中の家族などに、そんな感情を抱くわけがないのだ。
俺たちは淡々とミッションを遂行する。
『そこのACとMT!直ちに武装を放棄しろ!』
広域通信が入る。どうやら騒ぎを聞きつけたシティガードのお出ましのようだ。
『それ以上の殺戮行為を行うのであれば、こちらも武力にて鎮圧する。』
だがこれは形式上の警告であり、次々と輸送ヘリで運ばれたシティガード部隊がシティ内部に展開する。
場所が場所なだけに一般的な逆関節MTではなく、高性能なMTの数々。
「ミッションプランAからBへ移行、ターゲットの排除は続行しつつ障害を排除しポイントBへ向かう。」
ポイントB、そこは政府中枢だ。
シティガードの追撃以外にも政府中枢直属部隊が障害になる。
だが政府中枢への侵入がプランB、つまり俺たちの最終目標だ。
俺たちが政府中枢からこの事を全世界に発信すれば、全てが明るみになる。
だがその前に大規模な部隊による奪還を行えば、政府中枢への侵入を許した政府の信用問題に発展する。
どちらにしろ政府中枢への侵入さえ果たせば、政府への大ダメージを与えることができる算段なのだ。
俺たちはジェネレーターのリミッターを解除し、OBで政府中枢を目指す。
政府中枢の防衛部隊は予想よりも大したことはなく、大きな障害もないまま政府中枢への侵入を果たした。
案の定、政府は大規模部隊の投入を戸惑っているようだ。
だが俺たちの機体の損傷は激しく、弾数も残り少ない。
生き残ることなど不可能だろう。だがそれでいい。
復讐はもう果たしたのだ、死ねば家族の元へと逝ける。
しかし俺たちは自らの生命を絶とうとはしなかった。
俺たちの家族は恐怖と戦いながら死んでいったのだ。
それなのに俺たちが易々と自殺などしては家族に合わせる顔などない。
最後の最後までこの政府中枢で抗戦し、その上で死ぬことを俺たちは望んでいた。
そしてついにその時は着た。
政府がレイヴンに俺たちの排除を依頼したのだろう、敵はAC1機だけだ。
敵は無傷、俺たちはかなりの手負い・・・
「もう逃げられんな・・・」
俺は思わず言葉を漏らした。
「お前だけでも道連れにさせてもらおうか!」
そう、俺たちはただでは死ねない。
今このレイヴンを殺すつもりで戦って、その上でこの場で殺されるのが俺たちの本望なのだ。
そしてもうすぐ家族のところへ逝けると感じた俺は心が躍った。
さあレイヴン、俺たちの最後を派手に迎えさせてくれ。
~fin~
ACのパイロットシートに腰を落ち着かせながら、俺は覚悟を決める。
もう、後には引けない。
可能な限り高度を高く保ちながらオートパイロットに設定した輸送機が静かに目的地へと俺を運ぶ。
輸送機のエンジン音しか聞こえない中、俺はこれからのあるミッションのプランを綿密に再確認する。
「・・・まもなく目標地点上空、時間通りだ。」
輸送機のレーダーから転送してある広域マップで位置を確認し、俺は通信を入れる。
このミッションを共に遂行する、同志2人の改造を施したMT2機に。
「カウント開始・・・5、4、3、2、1、ミッション開始だ。」
俺はそう告げると輸送機のハッチを開き、同志2人と共に地上へ飛び出す。
輸送機という足場を失った俺たちは慣性に流されながら、重力の思うままに地上へ引き付けられる。
残り高度5万・・・3万・・・2万・・・
自然の摂理通りに落下していく機体が空気を切り裂く轟音の中、数発の銃声がほのかに聞こえる。
同志のMT[ローバスト-Sr]が目標の防衛機構を高高度からスナイパーライフルで狙撃して撃破しているのだ。
この機体は本来は地に足をつけて運用するものだが、同志たちの狙いは確実に、ターゲットを射抜いていく。
残り高度1万・・・5千・・・
俺の機体のレーダーの索敵範囲に入るが、敵反応は見当たらない。
同志たちが防空レーダーを含む全ての防衛機構を破壊したのだろう、予定通りだ。
残り高度2千・・・
「残り高度僅かだ。方位を北に合わせ、合図と共にOBを起動して着地に備えろ。」
「3、2、1、OB起動。」
俺の合図と共に同士たちのローバストも背面部に括り付けた簡易OBユニットを起動し、着地硬直を回避する。
「ポイントAに到着次第OB解除、ミッション開始だ。」
ポイントA、この作戦領域である都市セントラルオブアースの隔壁で機体を強引に停止させる。
超高速で堅固な隔壁に衝突させた期待の損傷は大きいが、これも予定通りで問題はない。
「さあ、宴の始まりだ・・・」
恐らく俺にとって最後になるであろうミッションの開始を自らに告げ、俺たちは機体の歩を進める。
最後になるであろうミッションといえど、さほど複雑なものではない。
単に目標を殲滅していくだけの簡単な仕事だ。
ターゲットは全てビルの内部、全て生体反応だ。
俺たちの機体は各種生体センサーの感度を極限までチューンし、人間に反応するようにしてある。
目標は政府関係者の周辺人民の虐殺。
政府関係者本人には一切手を出さない。あくまでも周辺の人間だけだ。
だが無関係な人間は殺さない。彼らには俺たちと同じ思いをさせたくないからだ。
まあ、こんな高尚なビル街に住んでいるのは大半が政府関係者だろうが。
俺たちの家族は政府の軍に殺された。
不法武装集団インディーズ廃絶の名目の下、俺が不在の間に家屋に突入して容赦なく撃ち殺したのだ。
俺がその頃に受けていた依頼がインディーズのものが多かったことが背景にあるようだった。
同志2人も同じような事情だ。
しかしこれは冤罪だ。俺たちにはインディーズとの直接の繋がりはない。
だがこれを政府に訴えたところで、俺たちの家族はもう二度とこの世には帰ってこない。
武力行使で直接排除しようとしたターゲットの話すことなど、奴らは信じようともしないだろう。
いつか奴らに復讐をする、俺たちはそう心に誓った。
そして今、その復讐の時だ。
家族を失う悲しみを味わうがいい。
俺たちは政府関係者の家族の住居と顔を徹底的に調べ上げた。
カメラで顔まで確認してから、1発の誤射もなくターゲットを確実に仕留めていく。
ビル内や少数のターゲットは同志のローバストが狙撃。
路上を大人数で逃げ惑うターゲットは俺のAC[ヘイズ]の肩に装備したチェインガンで一掃する。
どちらも生身の人間に対してはオーバーキルだが、政府関係者の家族への情けはかけない。
かつて俺たちの家族を撃ち殺した連中がそうであったように、俺たちはただ冷酷にターゲットの命を奪う。
罪悪感など感じない。
冤罪であろうと容赦なく俺たちの家族を殺したあんな連中の家族などに、そんな感情を抱くわけがないのだ。
俺たちは淡々とミッションを遂行する。
『そこのACとMT!直ちに武装を放棄しろ!』
広域通信が入る。どうやら騒ぎを聞きつけたシティガードのお出ましのようだ。
『それ以上の殺戮行為を行うのであれば、こちらも武力にて鎮圧する。』
だがこれは形式上の警告であり、次々と輸送ヘリで運ばれたシティガード部隊がシティ内部に展開する。
場所が場所なだけに一般的な逆関節MTではなく、高性能なMTの数々。
「ミッションプランAからBへ移行、ターゲットの排除は続行しつつ障害を排除しポイントBへ向かう。」
ポイントB、そこは政府中枢だ。
シティガードの追撃以外にも政府中枢直属部隊が障害になる。
だが政府中枢への侵入がプランB、つまり俺たちの最終目標だ。
俺たちが政府中枢からこの事を全世界に発信すれば、全てが明るみになる。
だがその前に大規模な部隊による奪還を行えば、政府中枢への侵入を許した政府の信用問題に発展する。
どちらにしろ政府中枢への侵入さえ果たせば、政府への大ダメージを与えることができる算段なのだ。
俺たちはジェネレーターのリミッターを解除し、OBで政府中枢を目指す。
政府中枢の防衛部隊は予想よりも大したことはなく、大きな障害もないまま政府中枢への侵入を果たした。
案の定、政府は大規模部隊の投入を戸惑っているようだ。
だが俺たちの機体の損傷は激しく、弾数も残り少ない。
生き残ることなど不可能だろう。だがそれでいい。
復讐はもう果たしたのだ、死ねば家族の元へと逝ける。
しかし俺たちは自らの生命を絶とうとはしなかった。
俺たちの家族は恐怖と戦いながら死んでいったのだ。
それなのに俺たちが易々と自殺などしては家族に合わせる顔などない。
最後の最後までこの政府中枢で抗戦し、その上で死ぬことを俺たちは望んでいた。
そしてついにその時は着た。
政府がレイヴンに俺たちの排除を依頼したのだろう、敵はAC1機だけだ。
敵は無傷、俺たちはかなりの手負い・・・
「もう逃げられんな・・・」
俺は思わず言葉を漏らした。
「お前だけでも道連れにさせてもらおうか!」
そう、俺たちはただでは死ねない。
今このレイヴンを殺すつもりで戦って、その上でこの場で殺されるのが俺たちの本望なのだ。
そしてもうすぐ家族のところへ逝けると感じた俺は心が躍った。
さあレイヴン、俺たちの最後を派手に迎えさせてくれ。
~fin~