夜明けも迫り、バーテックスのアライアンス襲撃まで残り2時間を切った頃、私のもとに一つの依頼が届いた。
差出人は渦中のバーテックス主賓。ジャック・O。 ――その内容は「インターネサインの破壊」。


恐らく、今生き残っているレイヴン全てにこの依頼は出されているのだろう。と私は思った。

この戦いに付きまとった先天的戦闘…… 戦闘、なんとか? ……だとかいう戯言は もはや関係ない。
幻想に踊らされ、自らを過信して力を誇示し続けた哀れな男はもういないのだ。


弱者か強者か。敗者か勝者か。 ――そして、食うか食われるか。
レイヴンの間ではそれが真理で、それが全てなのだと…… 半年前、現実はそう痛感させてくれた。



なんであろうと、最後に立っていた者。生き延びた者が強者であり、勝者なのだ。

……もっとも、私自身と依頼主であるジャック・Oを除くと 残ったレイヴンはたった一人しかいなかったが。




サークシティの地下を進み、インターネサインと呼ばれる部屋に辿り着いた私はいささか拍子抜けしていた。
ここに来るまで、他のレイヴンは愚か 一つの攻撃兵器とも出会わなかったのだ。

……先程から天井が不規則に振動しつづけている所を見ると、どうやらこの上で戦闘が行われているようだった。


馬鹿馬鹿しい…… 私一人だけ抜け駆けをしてしまったみたいだ。
まぁいい。アイツとの決着はこの仕事を終わらせて、邪魔するものがいなくなった時にゆっくりと付けよう――

そう夢想しながら、最後のエネルギー源にロケットを打ち込み その機能を停止させる。
それとほとんど同時に天井の振動も止み、インターネサインもその永い役目を終えたようだった……

……さぁ、これでお仕舞いだ。 早く決着を――



「目標内部に高エネルギー反応! 避けてください、ジナイーダ!!」


「……何っ?!」

任務を終え、一息ついたのもつかの間!
不意を突かれて 私とファシネイターは正面からの衝撃を喰らい、吹き飛ばされた!!



敵、該当データ無し。分類、UNKNOWN。
補助AIが示しているのは以前と同じ不明だらけの役に立たない情報……
撃破する度に進化を重ね、以前とは別物になってしまうために いつまで経っても『正体不明』らしい。


「だが…… まさかこれほどのものとは……」

今までのヤツは ACを模し、劣化した戦闘力を振るうだけで 大した脅威では無かった。
だが、私の目の前に立ちはだかった『パルヴァライザー』は…… 明らかにACを逸脱し、異形の兵器と成り果てていた。


「フフフ…… はははは…っ!!!」

小耳に挟んだ話だが…… パルヴァライザーという兵器は「以前負けた相手」を模倣して新しい個体を生産する。それが「より、強く。」の近道だからだ。
……だが、この個体は明らかにACを模してはいない。……つまり こいつの先代のパルヴァライザーは「ACと闘っていた」とは認識していないのだ!

明らかな規格外! 明らかなるイレギュラー!! 私はコイツの後、そんな相手と闘う事になるのだ…… これが笑わずにはいられるものか!!




「…… ジナイーダ……ナノカ?」


「なっ……?!」

突然、目の前の異形の怪物が「口を開き」、私の名を呼んだ。
その声が 戦士として昂っていた私の心に…… 古く、苔むした子供時代を想起させた……


「……パパ?」

優しく、聡明だったが 家に帰る事の少なかった父…… 母はいつも私を腕に抱き、泣いていた。
その腕の力が弱くなり、その体に血が通わなくなってしまった時も、父は帰って来なかった。


「ジナイーダ…… 」


「……ビョウキハシテナイカ?」「……オオキくなッタナ」「カあさンハゲンキカ?」「イツモミていたヨ」
「ワタシヲ、撃ツノカ?」「苦シイ助ケテクレ」「いつモ見てイタヨ」「イマまで会いたカッた」
「ズットイッショニイヨウ」「オマエをアイシテイルよ」「ずっトイッショにいよウ」「ずっト一緒にいよう」


矢継ぎ早に繰り出される、父の声と言葉…… 緊張でも、焦りでも無い感覚が私の体を駆け巡り、支配する。


ひょっとしたら。


ひょっとしたら。あの中にパパがいるのかも知れない。

もし助けられたら。……助けられたら、こんな事やめて また一緒に……



「ジナイーダ、何を考えているんですか?!」


「?!」

オペレーターの声に引き戻され、間一髪で身を捩り 放たれたレーザーの直撃を免れる。
……免れるも、ファシネイターは大きく吹き飛ばされ だいぶ後ろに尻餅をつかせてしまった!

ACの姿勢を崩すなんて、普段では絶対に有り得ない事だ! まったくもって弛んでいた!!
すぐに立て直して反撃……いや、次の攻撃の回避を……!!


「ジナ……」

「……!!」

ダメか!
……パルヴァライザーは既に距離を詰め、今 まさに腕のブレードを振り下ろさんばかりに構えて……



まさか。 

私は気づいてしまった。
もしかして、パルヴァライザーは人の思考を読み取る術や…… 人の心までもを習得したのだろか……?
それで私を動揺させて、事を有利に進めようと……!!


「……ジナ」

『コレ』が父でないと分かってなお、私を呼び続ける甘い声は まるで魔法のように体を凍りつかせてしまう!
まさか、ここで……ここで終わりなのか?! ダメだ、嫌だ! まだ私には闘わなくちゃ…… 会わなくちゃいけない人が……!!


「ジナ…… よぉし、パパ…… ジナの乳首、ダブルクリックしちゃうゾォ……!!」

「やだ、やめっ……!!」


ファシネイターのコアは…… パルヴァライザーに貫かれ、爆散した。
夢か現か…… 死にゆく彼女が最期に見たものは 知らぬうちに恋焦がれていた、あのレイヴンのACだった。   [了]





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