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海上都市・ラインアーク。
過去の栄華は今はなく、ゴロツキの溜まり場という表現が相応しい。
企業連に対する抑止力と言えばホワイト・グリントのみであり、
それを失ったラインアークはもはや抵抗する術を持たない。
そしてそうなった犯罪組織の温床を、企業連が放っておくわけがない。

「そう」するために企業連から送られた3機のネクスト。
ランク1、オッツダルヴァ。
ランク2、リリウム・ウォルコット。
そしてトーマ・ラグラッツ、ランク外。
一名の矛盾を除けば、カラードの戦力として最高のものであった。
後に歴史の大きな転換点となるこの戦いは、海にまたがる大きな橋の上から始まる。

///


オッツダルヴァ「まったく、企業連の年寄り共も心配性なことだ。私だけで足りるというのに、
        デコイを2つもよこすとは」

トーマ「あん? 誰がデコイだコラ。ローゼンタールはそうでもねえが、俺はオーメルは嫌いなんだよ。
    一応援護してやるが、流れ弾にゃあ気をつけろよ?」

オッツダルヴァ「ふん、うるさい空気だ」

トーマ「デコイの次は空気だァ? 言うに事欠いて、この……」

リリウム「そこまでです、トーマ」

溜め息交じりで、リリウムは口を挟む。

リリウム「オッツダルヴァ様も、今はお控えください。遺恨があるのであればミッションの後、
     私のいない場でご存分にお願いします」

ランク1にも毒を吐くリリウム。
いいぞもっとやれ。

トーマ「ケッ……まあ、お前よりイラつく奴が敵なんでな。今回はこの辺にしとこうや」

オッツダルヴァ「まあ、邪魔だけしてくれなければ構わんさ。私は私で、私の仕事をするだけだからな」

オッツダルヴァ。
毒舌家という噂は聞いていたが、噂通りだ。
リリウムとタメを張れる。

トーマ「へいへい。……しかし、さっきからビービーと警告音がうるせえな。
    ラインアークめ。警告だけして、真打様はまだ出てこねえのかねえ?」

リリウム「間違いなくホワイト・グリントはここにいます。彼らが無抵抗のままというわけも
     ありませんし、早ければ、そろそろ――」

『――ザザッ――こちら、ホワイト・グリントオペレーターです』

リリウム「……ほら」

フィオナ『貴方達は、ラインアークの主権領域を侵犯しています。速やかに退去してください。
     ――さもなければ、実力で排除します』

当方に迎撃の用意あり、と、通信が入る。

オッツダルヴァ「フン、フィオナ・イェルネフェルトか。アナトリア失陥の元凶が、何を偉そうに……」

こちらにも、応戦の用意はある。
レーダーを見ると、赤いマーカーが2つ。
前方に見える橋の脇にそびえる2つのビルの上に、それぞれ機影を確認する。

オッツダルヴァ「ホワイト・グリントは私が沈める。貴様等はもう一方を片付けろ。
        お互い、横槍を入れられるのは嫌だろう?」

リリウム「了解しました。では、私たちは――ストレイドを」

ストレイド。
ホワイト・グリントと並んで立つそのネクストは、前回戦ったときとは趣を変えていた。

ナナシ「かははっ、いらっしゃーい。雁首揃えて、ご苦労さまだねえまったく」

WG「……」

ナナシ「うちの大将も準備万端だってさ」

オッツダルヴァ「野良犬か、相手をする価値もないな。貴様らは勝手にじゃれているがいい」

ナナシ「……言ってくれんじゃん、愛玩動物ちゃんのくせしてさあ」

この2人、根から合わないみたいだな。
しかしお互いに自分の相手を理解しているようで、手を出すことはしない。

オッツダルヴァ「さて、お前ら、行けるな?」

リリウム「はい、いつでも」

トーマ「万端だ」

オッツダルヴァ「それはよかった。――それじゃ、行こうか」

///


ステイシスは、ライールフレームを主とする機体だ。
アサルトライフル、レーザーバズーカ、PMミサイルと、機動力を損なわずに火力を維持している。
どころか、その速度は全ネクストの中でも飛び抜けている。
相手が止まって見えると言うが――真に恐ろしいのは、それに乗るオッツダルヴァの方か。
ランク1は、伊達ではない。

オッツダルヴァ「知っているか? 貴様がリンクス最強だと信じている者もいるらしい。
        ――が、そんなことはどうでもいい話だ。だろう?」

ホワイト・グリントのカメラが、応じるように妖しく光る。

オッツダルヴァ「重要なのは私が貴様に銃口を向けているという事実。
        まあ、ついでに疑いを拭っておくのも悪くはないがな」

WG「……」

オッツダルヴァ「生きる伝説だそうだが、それは今日で終わりだ」

///


ナナシ「かっはっは、久し振りじゃん、BFF。今回はお前らのために装備を新調してやったんだから、
    ちょっとは光栄に思ってくれよ?」

今回のストレイドは、混成機体だった。
初見である武装も多く、一見しただけでは方向性を判断しにくい。
アルゼブラの逆脚を使用していることから、空中戦を得意としていることは分かるが。

リリウム「独立傭兵ゆえの機体構成と言えますね」

一般に、混成機体は扱いにくいとされる。
あちら側が「こう使え」と示してくれる純正フレームと違い、方向性を自分で定め、その上で
バランスを考慮して機体を組む必要があるためである。

トーマ「どっちつかずのグダグダ機体……」

だが、恐らく奴はそんな失敗はしないだろう。

トーマ「……ってこたあ、ねえんだろうな」

ナナシ「いろんなとこから依頼受けてるからさ、パーツは余ってるんだ。
    ちょっと面白い試験兵装ももらったから、その実験も兼ねて、ね」

リリウム「その試験は失敗になりますね。装備した機体が撃墜されては、
     結果も持ち帰れませんでしょう」

ナナシ「いやあ、僕の性能に見合う武装か、ってとこだね」

ビルの上から跳躍し、夕日を背に飛ぶストレイド。
アンビエントとスペキュラーは左右に分かれ、中央を開ける。

ナナシ「いっくぜえ! 今度こそ、引導をプレゼントだ!」

狼煙を上げるかのごとく、橋に突き刺さる青い閃光。
インテリオルのハイレーザーライフルである。加えて、左腕にはレーザーバズーカが視認できた。

トーマ「EN武器主体か……!」

それで消費の低い逆脚を選んだか。
実弾主体のスペキュラーとは、お互いに相性が悪いようだ。
まあ、相性が悪いぐらいでちょうどいいが。

いち早く距離を取ったアンビエントが、着地したストレイドにレーザーライフルを撃ち込む。
――が、ストレイドは跳び上がり、逆にアンビエントへトップアタックを仕掛けた。

リリウム「三次元戦闘ですか……。なるほど、ロケーションも考えているようですね」ドヒャアッ!

ショートブーストを吹かし、アンビエントは橋から跳んだ。
すかさず橋の裏へ逃げると、ECMを起動させ、敵の目を隠す。
アンビエントはアンビエントで、ロケーションをうまく利用していた。
そんなリリウムの行動に俺が感心していると、

ナナシ「かははっ、ちゃーんとこういうとき用の武器も、積んでるもんね!」ドシュウッ!

ストレイドの左肩が、火を噴いた。
GAではお馴染み、BFFではめっきり見なくなった武装――グレネードキャノン。
アルゼブラの新作まで手に入れているとは。
有澤製よりも小型だが、その破壊力は敵をいぶり出すには十分。
グレネードは橋そのものを破壊し、その瓦礫にたまらずアンビエントは外へ出てきた。

ナナシ「おぉら、もういっちょォ!」ドシュウッ!

リリウム「……くっ!」

トーマ「リリウム! ――くそっ!」

注意を逸らそうとライフルとスナイパーライフルを撃ち込むものの、空中ではやはり当たらない。
ゆらゆらとした挙動のまま、ストレイドはハイレーザーライフルを放つ。

QBでの回避にも限界がある。
レーザーライフルを使っているため、アンビエントの回避は甘くなり、
青い光が2つアンビエントへと突き刺さった。

トーマ「ちくしょ……ッ!」

ライフルではダメだ。
兵装をミサイルへ切り替え、少しでもアンビエントからストレイドの攻撃を離そうとする。

その、兵装を切り替える瞬間。

ナナシ「……いつからアンタが狙われてないと思ってた?」

一瞬の隙を狙って、ストレイドのレーザーバズーカがスペキュラーに放たれた。
反射的にQBで回避する。

ナナシ「僕の狙いは、最初ッからてめェだよ!」

ストレイドの右肩は、ミサイルユニットだった。
しかし、その弾頭は今まで見たどのミサイルとも異なり、緑色の噴射炎をしていた。

何だあれ。
緑色? 変な炎だな。
綺麗な色だ。
いや、待て。
あの色は、まるで、アサルト――――――――――――――――――――――――コジマだ。

コジマだ。

コジマだ!

バカ野朗なんて兵器作りやがるどこのどいつだ作りやがったのはアクアビットかトーラスかああトーラスか
あんちくしょう今度トーラスのネクスト見つけたらタダじゃおかねえあんな危なっかしいもん作りやがって
だいたい発想がおかしいだろ何だよそれミサイルにコジマ積むとか普通の思考じゃねえだろもっと常識的に
考えろってコジマだぞコジマ直撃したらどうなると思ってんだよもし直撃なんかしたらそりゃあマズいだろ

――マズい。

トーマ「う、お、おおおおおおおッ!」

膨大な量の情報が、一瞬で脳を駆け巡った。
それら全てを処理した結果、出された結論は――ヤバい、逃げろ。と、その2つだった。

またも反射的にQBを吹かし、海へと続く空中に身を躍らせる。
コジマミサイルが、それを追い切れずに橋の角へと着弾した。


緑。


アサルトアーマーの比ではない高濃度のコジマが、スペキュラーを包んだ。

///


ナナシがトーラスから譲り受け、ストレイドへ積んだ実験兵装。
XYLEN、というコードで呼ばれていた。
コンセプトは「アサルトアーマーの攻撃力のミサイル弾頭への圧縮」である。
まだ安定性の向上には至っておらず、ミサイルユニット1つに弾頭は1つしか搭載できなかった。
爆風より先にPAが削ぎ落とされるため、直撃すればネクスト1機など塵も残らず消し飛ぶ危険な代物だ。
それを譲る方もどうかしているが、自爆の危険も孕むこれを平然と撃つナナシもまた――
――どうかしている、と言うほかなかった。

///


トーマたちが戦っている、遥か上空。

オッツダルヴァ「――何だ!? これは……コジマか!」

そこまでコジマミサイルの汚染は届き、ホワイト・グリントとステイシスのPAを僅かに揺らした。
戦闘に支障をきたすほどではないが、異常な汚染量であることは明白だった。

WG「……」

オッツダルヴァ「ただ勝てればいい、か。この汚染でラインアークはほとんど
        壊滅だろうが、奴はそんなこと考えてもいないのだろうな」

WG「……」

オッツダルヴァ「ふん、あくまで鉄の仮面を被ったままか」

それもいいだろう、と、ステイシスはホワイト・グリントへ飛び掛かる。

――ピコン

オッツダルヴァ「……ん?」

レーダーを確認し、オッツダルヴァは薄く笑った。

オッツダルヴァ「驚いた。あのデコイ、なかなかしぶといな」

///


トーマ「あー……死ぬかと……思った……。ってか、これ言うの何度目だ?」

やはり俺は神から寵愛を受けているのかもしれない。
いや、逆か。
きっと「お前はもっと苦しみ抜いて死ね」と言われているのだ。

橋脚の足場に引っかかり、何とか水没だけは免れることができた。
しかし、PAは剥がれ、システムはダウンしている。

トーマ「これは……」

動かない。
致命的だ。

ナナシ「……まあ、結果オーライかな」

既に打ち切ったミサイルユニットをパージしたストレイドは、右腕のハイレーザーライフルの
照準をスペキュラーへと向けている。

ナナシ「やっぱ自分でトリガー引きたいよね。こう、実感沸くじゃん?」ジャキン!

リリウム「……トーマ、まだ生きていますか!」ドヒャアッ!

その間に割って入るアンビエント。
レーザーライフルをストレイドへ向け、応戦の構えを取る。

トーマ「ああ……、何とか、な」

リリウム「よかっ……いえ、何でもありません! あなたはそこで大人しくしていてください。
     PAの剥がれたネクスト1機、私だけで何とかできます」

幸いにもアンビエントはコジマの影響を受けていなかったようだ。
ストレイドは自分のミサイルでPAが剥がれたようで、チャージングをしている様子が見える。

ナナシ「あんたも、まあ片付けなくちゃいけないわけだしね。いいよ、相手したげる。
    ……かははっ、PAぐらい、いいハンデさ」

着いて来い、とばかりに、ストレイドはアンビエントに背を向けた。
背中に撃ち込むこともできたはずだが、やはりそこは元来生真面目なリリウムである。
ゆっくりとストレイドの後を追い、ブーストを吹かす。

トーマ「ああ、また同じパターンか……」

またリリウムに守られたのか、俺は。
守ってやるから、なんてカッコつけて。

トーマ「また何もできないのか、俺はッ……!」

///


オッツダルヴァ「ふん、ホワイト・グリント……。評判ほどではない」

――が、しかし。
さっきからホワイト・グリントの挙動がおかしい。
撃ちこめただろうタイミングでトリガーを引かなかったり、ダメージにもならなそうな
末端部ばかりを狙ってきたり。

オッツダルヴァ(間違いなく、「何か」を狙っているのは確かだが……)

その「何か」が何なのか、まだうかがい知ることはできない。
だが。

オッツダルヴァ「だが――小賢しい策など、打ち破ってこそ。
        貴様ともあろう者が姑息な手を使うとは、少々興ざめだぞ」

WG「……」

オッツダルヴァ「だんまりか。まあ構わん、死んで文句を言ってくれるなよ」

マガジンを採用しているアサルトライフルと、ホワイト・グリントの装備する通常型のライフル。
安定性では劣るが、瞬間火力ではアサルトライフルに分がある。
ラッシュからの一撃離脱を得意とするステイシスが、現時点ではホワイト・グリントを押していた。

オッツダルヴァ「どんな策かは知らんが――このまま、押し切る!」

///


ナナシ「うん、この辺でいいかな、っと」

空中でストレイドは停止し、アンビエントへ向き直る。
スペキュラーははるか眼下にあり、2機はその上空で向き合った。

リリウム「私はどこだろうと構いませんが」

最初は3対2だったが、現状は1対1が2つ、という状況だ。
不利になりはしたが、これでちょうど互角である。悲観すべき状況ではない。

リリウム「オッツダルヴァ様も忙しそうです。これで1対1、邪魔は入りませんね」

ナナシ「そうだね。でもさ、君の相手するより、ランク1を相手取りたいんだよねえ。
    ちょっとそこんとこ分かってくれない? 君ら、前座なわけ」

リリウム「ランク2を指して前座とは……。私とアンビエントも、甘く見られたものです。
     そのようなことは、まず私を倒してから――でしょう?」

ナナシ「君は、最初から相手をするつもりなんてないよ」ジャキッ

ハイレーザーライフルを構えるストレイド。
しかし――アンビエントに、ロックアラームは出ていない。

リリウム(……? ノーロックで……違う――!)

リリウム「ま、まさか、あなた……!」

ナナシ「距離500。距離減衰が起きないようにするには、こんぐらいが限度でしょ」

距離500。
それは、ストレイドとアンビエントの距離――ではなく。
ストレイドと地上、つまり、スペキュラーとの距離を表していた。

ナナシ「分かる? 君、的なんだよ。避けたりしたらあいつに当てちゃうから。
    んでもって、君を倒したらあいつを処理するけどね」

リリウム「……ッ! 卑劣な……!」

ナナシ「かははっ、ケッコーケッコー、卑劣で結構。嫌ならあいつを切り捨てりゃあ
    いいんだから、簡単じゃん? まあ、それができないって分かってるけどさ」

見捨てる。
そうだ。見捨てればいい。
見捨てればいいのだ――けれど。

リリウム「…………彼を、見逃しなさい」

ナナシ「うん?」

リリウム「条件です。彼を、見逃すのであれば……」

///


ストレイドのハイレーザーライフルが、アンビエントを捉える。
また。
また。
そして、また。

トーマ「何だよ、あれ……! ほとんどなぶり殺しじゃねえか!」

なぜかアンビエントは避けようとしない。
ただ攻撃を受け、無駄にAPを減らしているだけだ。

しかも、スペキュラーとストレイドを結ぶ直線状から、アンビエントは動こうとしない。

トーマ「いっちょまえに……流れ弾なんて、気にしてんじゃねえよ!
    お前なら勝てんだろ!? 俺なんて気にしてねえで、さっさと戦えよ!」

既にアンビエントとの通信は拒否されている。
口を出すな、ということか。

トーマ「っざけんなよ……! ざっけんなよ! 俺はさっきから、なにヘタレってんだよ!
    正念場だろうが! やらなくちゃならねえ時だろうが!」

がちゃがちゃと操縦幹をでたらめに動かす。
機動スイッチを、何度も何度も押す。

トーマ「今動かねえでいつ動くんだよ! 何のためにここにいんだよ! 動けよ! 動け!
    頼む……ッ! スペキュラァアアアアアアアッ!」

ピッ

トーマ「……スペキュラー?」

モニターに灯りがともり、見慣れない画面が映し出される。

Do You Still Do?

By Turks

それだけが表示され、機動スイッチがチカチカと点滅している。

トーマ「……タークス……? はっ、ははっ!」

まったくあいつも、趣味が悪い。

トーマ「……恩に着る!」

他の何も考えずただ機動スイッチへ手を伸ばす。
聞きなれた機動音とともに、コックピットが一気に明るくなった。
操縦幹からは、スペキュラーの鼓動が感じられるようだ。

トーマ「そうだよな。まだ暴れ足りねえもんな。終われねえもんな」

本来ありえるはずのない、ネクストの再起動。
しかし――ありえるなずのない、とか、そんなことより。
もう一度動ける。まだ飛べる。
そっちの方が、トーマにとっては重要だった。

トーマ「待ってろ。今度こそ、助けに行ってやるからよ。
    今度こそ、イイ所見せてやるからよ!」

しっかりと足場を踏みしめ、全推力を上へ向け。
スペキュラーは、大空へ舞った。




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