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ナナシ「さて……何発、撃ち込んだっけ?」

数えてなどいない。
敵に避けられることまで計算に入れての「残弾数」だ。
敵が避けないのなら、多いも少ないもあるわけがない。

リリウム「……ごめんなさい……アンビエント……」

痛いだろう、辛いだろう。
何もやり返せないで、悔しいだろう。

既にAPは10000を切った。
そろそろ、終わりも見えてくるころだ。

ナナシ「かははっ、前座にしちゃあなかなかのシチュエーションだったよ。
    んじゃそろそろメイン食ってきたいから、さようなら――かな?」ガショッ!

――死ぬ。
殺される。
恐らく自分の後、トーマも殺されてしまうだろう。
頷きはしたが、この男は約束を守るような男ではない。
分かっている。
分かっているのに。

リリウム「でも……」

奇跡というものがあったらいいのに、と思う。
もしかしたら何とかなるかもしれない。もしかしたら助けが来るかもしれない。
戦場に「もし」はないと、分かっているのに。

それでも――期待をしてしまうことは、悪いことだろうか。

ナナシ「ま、時間も惜しいし、いたぶって楽しむ趣味もないし。安心しなよ、
    サックリ終わらせてあげるからさ」

リリウム「……っ」

ああ、もうダメだ。
諦めよう。そっちの方が気が楽だ。
でも。

リリウム「……トーマ」

でも、一度だけなら。
叶わない夢を見ても、バチは当たらないだろう。

リリウム「……助けて……っ!」

チャンネルは繋がっていなかったはずなのに。


――ズキュウッ!


狙ったようなタイミングで。

スナイパーライフルの弾丸が、ストレイドをえぐった。

まさか。
スナイパーライフルを装備しているネクストは。
まさか。
ホワイト・グリントは装備していない。
まさか。
ステイシスも、装備していない。

まさか。

「――ザザッ――間に合ったか――! 悪いな、待っただろ」

リリウム「――この、バカァッ!」

トーマ「だから悪いっつってんだろ。スペキュラー、これより前線に復帰する!」

///



子供のころ、本で読んだ物語。
悪い奴に襲われるお姫様。
そこに、颯爽と現れる白馬の騎士。

少しだけそんなことを思い出してしまった。
といっても――こっちの場合、臙脂色のネクストに乗った、口の悪いチンピラだが。

それでも、物語の中のお姫様の気分を、少しだけ味わえた気がした。

///



ナナシ「……何でだよ……機能停止、したはずだろ! 何で生き返ってんだよ……。
    何でてめえ、ここにいんだよ!」

トーマ「知るかよ。動いちまったもんはしょうがねえ――だろ!」ガウッ!ガウッ!

来るなりライフルを乱射するスペキュラー。
アンビエントとストレイドの間の距離を空け、そこへ割り込んだ。

ナナシ「ダニが……潰したはずだろ! 湧いてくんじゃねえよ!」ボシュウッ!

半ばヤケクソ気味で、ストレイドはグレネードキャノンを撃ち込む。
しかし冷静さを欠いた弾道である、当たるはずもない。
遥か下の水面に着弾し、大きな水しぶきを上げた。

トーマ「おおっとォ!? おいおい、何だビビったかァ!?
    ちゃんと狙わねえと、当たんねえぞっと!」

ミサイル、チェインガン、ライフル、スナイパーライフル。
今までの憂さを晴らすかのように弾を消費するトーマ。
外れたものも多いが、それらは確かにストレイドを削り取る。

ナナシ「ダニが……ダニがダニがダニがダニがァ! ッくしょ……おおおッ!」

向かい来る弾丸の群れに、グレネードが打ち込まれる。
誘爆が誘爆を誘い、一気に滞空していた全ての弾丸が消し飛んだ。

ナナシ「あああああああああああああッ! ちくしょオオオ! ……ッ!
    ――ふうッ!」

ひとしきり叫んだ後、大きくナナシは息を吐いた。

リリウム「……彼、落ち着きを取り戻したようですね。このまま押し切れれば
     よかったのですが……厄介です」

トーマ「構わねえさ。そんならフツーに戦えばいい話だ、問題はねえよ」

ナナシ「何でてめえが生き返ってきたかは知らねえけど、もう関係ねえ。
    もう1回、手抜きナシで、確実に、ぶっ殺したらいいんだからな」

そう言うと、ストレイドはグレネードキャノンをパージした。
背部武装を取り去り、ハイレーザーライフルとレーザーバズーカが両腕に残る。

トーマ「そうだ」

ナナシ「何も」

トーマ・ナナシ「「問題は、ねえ」」

スペキュラーも背部武装を取り去り、ライフルとスナイパーライフルを構えた。
もともと、ミサイルとチェインガンまで装備し、機体の応用力を高めているのはミッションのためである。
ネクスト1機を相手にするなら、武装はもっと簡素でいい。
むしろ速度を上げる方が大事になる。

トーマ「リリウム、行くぞ。合わせろ」

リリウム「分かりました」

アンビエントとスペキュラー、APは合わせてストレイドと同じくらいだろう。
しかし、数の上で負けていても、ナナシには確かな勝算があった。

///



ナナシ(話をしているフリをしながら――分析は、もう済んでいるんだ)

APは約5000。
PAは剥げ、一度チャージされたENも一定量から増えることはない。
恐らくはバッテリーのようなものがあり、そこから緊急チャージをしたのだろう。
天井は既に見えている。
ENは、もう減るだけ。

ナナシ(通常戦闘を続けるとしたら、あれのENが尽きるまでは……)

5分。
いや――激しい戦闘になる。もって3分!

ナナシ(逃げ切りゃあ、あの機体はまた機能停止する)

ナナシ「……かははっ、どっちにしろ、勝つのは僕だ」

///



リリウム(スペキュラー……ENの増え方が悪いですね……)

何があったのかは知らないが、恐らくはかなり無茶をして再起動したのだろう。
ENも、いつかは底をつくはずだ。
このまま戦闘を続けたのなら、恐らくもって3分というところ。

トーマもそれを、恐らくはリリウムよりも理解しているはず。
制限時間いっぱいまで機体を動かし、できるだけストレイドを削る。
それからとどめをアンビエントに任せる――それがセオリー。
そう、セオリー、だ。

リリウム「そう短くない付き合いになりました……。あなたの考えそうなことくらい、
     だいたい分かるようになりましたよ、トーマ!」

///



ナナシ「3分、逃げ切りゃあ僕の勝ちだ!」

リリウム「3分、援護に回らせてもらいます!」

トーマ「どぉおおおらああああああッ!」

結局のところ。
どっちがこの男のことを理解していたか、ということだったようで。

ナナシ「何……ッ!? 何だよ……! 何だよ、それェえええッ!?」

完全に保身を度外視した、EN管理も度外視した、QBを過剰なまでに多用した動き。
もちろんENはぐんぐんと減り、「3分」という定められたラインを大きく揺るがした。
ENは減る。
しかし、その分スペキュラーのスピードはもちろん上がる。
ストレイドは面喰らい、ライフルのラッシュをモロに受ける。

ナナシ「てめえ……! じ、自分の機体の状況、分かってんのかよ!?」

恐らく、本当なら相手に教えるべきでない情報。
しかし、驚愕に続く驚愕、予想外に続く予想外。
ナナシの頭は、完全に平常の判断力を失っていた。

トーマ「ああ分かってるさ、分かってるっつーの! 3分ぐらいかァ?
    だからって、3分持たせてやる義理はねえだろ!?」

リリウム「……やっぱり、そんなことだろうと思いました」

スペキュラーに動きを同調させ、完全なコンビネーションを仕掛けるアンビエント。
その行動は――まるでトーマの考えを、理解していたかのようなものだった。

リリウム「別に3分かかるからといって、3分かける道理はありません。
     2分で終わらせればいいだけの話でしょう? ……まあ、あなたは
     思う存分やってくれれば結構です、後にはリリウムがいますから」

トーマ「いいねえ、お前もいい加減分かってきたんじゃねえの? でもなあ、
    ちょーっとだけ、足りねえよ」

アンビエントとスペキュラーが並び立つ。
1機が前衛、もう1機が後衛。それがBFFの基本的なスタイルである。
だが。

トーマ「俺とお前なら、1分ありゃあ十分だ! そして済まねえな、
    どうやら俺は、後方支援ってのが徹底的に性に合わんらしい!」

リリウム「なら、2機で前衛を張ればいいだけの話。どうせ定石というのも嫌いなのでしょうね」

異様。
ナナシもまた、ネジが飛んだような性格をしている。
しかし周りから見れば、この2人もきっとそうなのだろう。

///



オッツダルヴァ「これで――終わりだ!」

頭上を抜かれ、ターンしたホワイト・グリント。
動きが一瞬止まる――完璧なタイミングだった。
そこで、オッツダルヴァはレーザーバズーカのトリガーを引いた。
熟練したリンクスだからこそできる、残APとPAを計算した、とどめの一撃。
ホワイト・グリントは避けられず、勝負が決まる……はずだった。

オッツダルヴァ「…………なッ、何ィ!? トリガーが!?」カチッ、カチッ!

トリガーを押しても、機体が反応しない。
誤作動? いや、メンテナンスは完璧だったはず。
アサルトライフルも、ミサイルも、弾が出ない。

オッツダルヴァ「いったいどういう――ぐあっ!」

ホワイト・グリントが隣をスルリと抜けたかと思うと、背中で妙な音とともに爆発が起こった。
PAとAPが減っている。攻撃を受けた、と一瞬で理解する。

オッツダルヴァ「しかし……くっ、まだ終わらんぞ、ホワイト・グリント!」

WG「……」

すぐに振り向き、サイトに相手を捉える。
捉えようと――した。

オッツダルヴァ「アラート……? ブースターか!」

メインブースターを撃ち抜かれた、と一瞬で理解した。
どんどん機体が落ちていく。

オッツダルヴァ「クソッ、メインブースターが完全に逝ってやがる……!
        よりによって水上で……ダメだ、飛べん!」

WG「……」

見下ろすホワイト・グリント。
踵を返し、もう興味は無いという風に飛んで行った。

オッツダルヴァ「これが……これが私の最後というか! 認めん! 認めんぞ!
        落ち……クッ、うおおおおおおおおおおッ!」




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