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企業代表会議。
各企業の代表が集まり、平和のための対話を行う場である。
……建前上は。
実際は主に裏取引の場であり、戦場での出来レースを操作している。

勿論、王小龍もここに参加していた。

「――の――、譲ってはくれませんかな?」
「それなら――を貰わないと割に合いません。あそこは重要な拠点ですからね」
「それは困る。――にはうちのコロニーがあります。狙うのであれば
 人口の少ない――にしてもらえると助かるのですが」

実に、くだらない。

打算、計略で取引をするならまだしも、奴らは取引をしてそれで終わりだ。
自らの利益のみを考え、ここでの取引は絶対だとすら思っている始末。
絶対的な条件を目の前に突きつけ、完膚なきまでに屈服させる。
それこそが真の取引というものだ。

「――それで、王小龍殿、BFFはいかがいたしますか?」

王小龍「……うん? ああすいません、何の話でしたかな?」

「ラインアークを攻めるという話です。いや、一応挙がった議題ではありますが……。
 やはりどこも手を挙げませんので。――BFFも、不参加ということでよろしいですね?」

王小龍「このままどこも名乗り出なければ……」

「無論、議題は否決でしょうな」

――ラインアーク侵攻。
あのホワイト・グリントに向かい、剣を振り上げることになることを意味する。
それは、誰も参加などしたがるまい。

王小龍「……いや」

いや。
むしろこれは好機と見るべきか。
ホワイト・グリントを撃破したというブランドが付けば、BFFはGAと並べる。
――越せる。

王小龍「先ほどのお話、お受けいたしましょう」

議場全体がざわつく。
オーメルでもインテリオルでもなく、ましてやGAでもなく。
BFFが。
GAグループ傘下のBFFが手を挙げることなど、考えられないことだ。

王小龍「これを企業連の依頼として、BFFが請け負っても構いません。
    ――が、ひとつ条件を提示したい」

///



フィオナ『……というわけで、私たちには戦力が足りません。
     しかし、あなたが私たちの切り札になっていただければ、この状況は必ず
     打開できるものと思っています』

「ふうん……。どうせならあんたんとこのお抱えと戦いたかったけど、それはダメなの?」

フィオナ『この一件の後、個人的にというのであればそれは自由でしょう。
     ですが、今回だけはお力をお貸しいただけませんか? ここを乗り切れば、
     ラインアークは存命できるはずです』

「……なーんか、いまいち乗り気になれないなあ」

フィオナ『あなたが喜ぶであろう情報も、こちらにはありますが?』

「何それ、興味あるね」

フィオナ『企業連側には、ランク1、オッツダルヴァ。加えて――支援に、BFFが
     名乗りを挙げたとのことです』

BFF。
その単語に、男の表情は変化した。

フィオナ『どのリンクスが出撃するかはまだ情報を得ていません。ですがどちらにしろ、
     あなたにとっては有益かと思いますが……どうでしょう?』

「――かははっ」

ナナシ「話、詳しく聞かせてよ」

///



リリウム『ミッションです、リンクス』ピコン

トーマ「……お前はまた……俺の飯時を、いつも狙ってるんじゃないのか?」ズゾゾッ

リリウム『昼食であれば既に取ったはずでしょう。そのジャンクフードは、
     食後のデザートとして嗜むものなのですか?』

トーマ「ちげーよ。……美味すぎるもんばっか食ってると、なんか落ち着かねえんだ。
    適度に俗っぽいもん食ってねえと、いまいち調子がなあ」

リリウム『ここの料理を毎日いただいている私への、それは当て付けですか?
     ……まあ、今回はそういう話ではありません。ミッションです』

容器の中身を胃に押し込む。
先生はロックを聴くとAMS適正が上がるらしいし、もしかしたら俺にとっては
カップ麺がそういう役割を担っているのかもしれない。
だといいなあ。
であれば、公然とカップ麺を食う理由ができる。

リリウム『今回のミッションですが――正直、非常に難しいものです。
     私であっても、これほど難易度が高いものは経験したことがありません』

やけに物騒な前置きで、リリウムは説明を始めた。

リリウム『企業連が、ラインアークへの襲撃を決めました』

トーマ「ラインアーク……ってことは……あいつが相手か」

ホワイト・グリント。
一度戦ったことがあるが、あのときは決着にまで至らなかった。

トーマ「でも……、そんだけか?」

それだけ、なんて言葉、本来は言うべきでないのは分かっている。
ホワイト・グリントは確かに強敵で、勝つことは難しいのも分かっている。
しかし、リリウムの態度の仰々しさには――どこか、相応しくない気がした。
お前らもっと軽めな態度であいつと戦わせたじゃんよ。

リリウム『お察しの通り、ラインアークへ協力するネクストが現れました。
     いえ――「私たちに敵対する」という言い方のほうが適切ですね』

「あっちに協力」と「こっちに敵対」の違い。
それを、次のリリウムの一言で俺は理解することになる。

リリウム『今回のミッションの概要は、敵ネクスト2機……ホワイト・グリントとストレイドの撃墜。
     ラインアークへの直接攻撃は、企業連が行うとのことです』

トーマ「ストレイド……!」

あいつが、ラインアーク側に。
あいつとホワイト・グリントが、敵に!

リリウム『もちろん、このミッションには私も同行します。加えて、企業連からの支援もあります』

リリウム『私たちは、ランク1、オッツダルヴァ様の僚機に』

オッツダルヴァ――いくら情報に疎かろうと、リンクスならば必ず聞いたことのあるその名。
カラードランク1。それは、これ以上ない「強さ」の象徴。
どいつがどいつの僚機かというのは、まあ納得だ。

トーマ「なんつーか……オールスターゲーム、って感じだな」

リリウム『大きな戦いですから、そうもなるでしょう。カラードランク1と2の共闘など、
     カラード設立以来のことです。……言えるのは、この戦いで間違いなく歴史が
     動くということですね』

トーマ「……だな」

大舞台への緊張感が半分、自分でもよく分からないが、高揚感が半分。
嵐の前の静けさというが、その瞬間はやけに周囲の音がクリアに聞こえていた。

///



出撃前夜。
緊張で眠れない……なんてことはなく、ぐっすりと眠っていると、端末が電子音を発した。
ピピピッ ピピピッ ピピピッ

トーマ「……あん?」

外はまだ暗い。
目覚ましというわけではなさそうだ。

リリウム『トーマ……少し、いいですか?』

まあこの端末に連絡を入れる人間など、こいつしかいない。

トーマ「いいも何も、こちとら夢の中だったっての……」

枕元のメガネを手探りで探す。
いつも通りの淡々とした口調ではなく、また高慢でもなく、珍しいことに
リリウムの口調はどこかしおらしさを感じさせた。

リリウム『……失礼しました』

トーマ「で、何よ? ブリーフィングか? 情報でも入ったか?」

リリウム『いえ、そういうわけではないのですが……。ちょっと、外へ出ていただけますか?』

渋々ベッドから抜け、ドアを開ける。

――驚いたことに、そこにリリウムがいた。

リリウム「……こんばんは」

トーマ「……何をしとるんだ、お前は」

///



リリウム「抜け出したと知られると、使用人たちがうるさいのです。彼女たちは過保護でなりません」

トーマ「まあ、そりゃあそうだろうな」

過保護な周囲にうんざりするお嬢様、ね。
まさかこいつが、そんな当たり前のシチュエーションにいるとは。
最近、リリウムの人間らしい面をよく見るようになった。
間違いなく、いい傾向だ。

リリウム「ミッションも、今回は控えるようにと言われました。――死ぬかもしれない、と」

トーマ「はっ、リンクスに今更んなこと言ってもなあ」

リリウム「その通りです。同じことを言って、私も突っぱねました」

ふふん、と尊大そうに笑うリリウム。
――ふいに、うつむいて言う。

リリウム「……死ぬかもしれない、んですよね……」

トーマ「――そんなの、いつも通りだ。俺だって死ぬかもしれん」

リリウム「そう、『いつも通り』……。これまで何度だって、『いつも通り』を
     乗り越えてきたはずなのに。――なのに、なぜでしょうか」

リリウム「明日の『いつも通り』が、怖いのです」

トーマ「……分からない、ってことはねえよ。今回の相手は、『いつも通り』じゃねえ」

内心、俺は驚いていた。

リリウム「初めてかもしれません」

あの人間味のないほど淡白だったリリウムが、こうも人間的な。

リリウム「死ぬのが、怖いのです」

トーマ「死ぬのが怖い……ねえ、よかったじゃねえか」

リリウム「――よかった? ……何がですか。恐怖を感じることに対して
     『よかった』なんて……。理解できません」

お前は知らねえかもしれねえが、お前ぐらいの年頃の女の子ってのは、
みんな死ぬことが怖くてしょうがねえもんだ。
自分の見ている景色が真っ暗になるのが、怖いんだろう。

トーマ「つまりお前、死にたくない理由ができたってことだよ。
    俺に言わせりゃ、いつ死んでもいいって思ってたっつーお前の方が
    よっぽど不健康だぜ」

リリウム「いつ死んでもいいなんて思ったことはありません。BFF、ウォルコット家。
     私には背負うものがたくさんありますから」

トーマ「そんなら、大切なもんがもっと増えたってことだろ。いいことだろ? それはよ」

リリウム「……適当な」

リリウム「――ですが、そうなのかもしれませんね。生きていたいと思うことが、
     悪いことのはずはありませんし」

トーマ「……人殺しがする会話じゃ、ねえかもしれねえけどな」

トーマ「でも、人殺しのお前でも、死んだら少なくとも俺が困る。だから生きてろ」

リリウム「そっ、そんなこと、あなたに言われるまでもありません!」

トーマ「はっは、そうそう、お前はそれでいいんだよ。そっちのがお前らしい。
    だから生きてろ。死んだら悪態もつけねえだろ」

曲がりなりにも浅くない関わりを持っちまった身だ。
死んでもらっては、流石に寝覚めも悪い。
もっと分かりやすく言ってもいい。
リリウムには、死んでほしくない。

トーマ「心配すんな、前回は俺が世話になったからな。今回は俺が助けてやんよ」

リリウム「……ばっ……! 何を真面目な顔で、そんなことを!」

トーマ「ふざけた顔で言えるかよ。……ああくそ、蒸し返すな!
    とにかく! 安心してろっつってんだ!」

リリウム「だいたい、私より弱いくせに……。そういうことは、もっと頼れる男に
     なってから言うべきです。あなた、自分が頼りないことを自覚していますか?」

トーマ「う、うるせえよ! せっかくひとが心配してやったらコレか!」

さっきまでの不安げな表情はどこへやら。
いつも通りの上から目線、ネチネチとした説教口調。

リリウム「心配とは、本来上のものが下に対してするものです。あなた、まだ
     立場を理解できていませんか? 前回の危なっかしい戦い方といい……。
     そういうところが、リリっ……いえ、私はし・ん・ぱ・いなんです」

トーマ「いいよもう! 俺寝るよ! ちくしょー!」

前夜なのに、前夜なのに。
俺は心に深い傷を負い、布団に逃げ込んだ。
だってひどいじゃん、あそこまで言うことないじゃん。
……あそこまで言うことないじゃん。

///



リリウム「……まったく、騒がしい人ですね」

――でも、トーマ、ちゃんと理解していますか?
こうやって愚痴を聞かせるということは、それだけで頼られているということなのですよ?
リリウムらしくないから、そういうことは言いませんが。

リリウム「安心してください、トーマ」

リリウム「そして、心配してくれてありがとうございます」

リリウム「リリウムは、死んだりなんかしません」

///



「――というわけだ、手はずどおりに頼む」

「任せろ、と言いたいところだが……。凝りすぎだぞ。お前の完璧主義は
 知っているが、ここまでする必要があるか?」

「悪いな。だが、鼻の利くやつも多い……。どうせやるなら、完璧がいいだろう?」

「まあ、私は構わんが……。お前もちゃんと演じろよ?」

「分かっている。私の書いた脚本だ、しくじりはせんよ。
 ――それより、お前もいいのか? 知り合いがこの戦場に顔を出すようだが」

「……彼なら大丈夫だろう。こんなところで死ぬ男じゃないさ」

「ずいぶん買ってるようだな」

「ここで死ぬなら、それまでだったということさ。それより、彼が出てきたというのは
 むしろ私たちにとってのメリットだ」

「――ああ、ORCAの子供は、少しでも多い方がいい」




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