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「……ストレイドか。レオーネの娘も、面白いオモチャを手に入れたものだ」

「いかがいたしましょう。マザーウィルなど放っておいても構わないと思われますが、
 これ以上彼らの評判が上がるというのもいい話ではございません」

「ふむ……、企業としての面目もある。誰も派遣しないというわけにはいくまい」
「……クククッ、いるではないか。こういうときにうってつけの当て馬が」

「……彼、ですか」

「もともとGAから二束三文で買った使い捨て商品だ。ホワイト・グリント相手に
 生きて帰ったのは評価をしてもよいが、本来はスケアクロウとして使うべき存在。
 ストレイドと共倒れにでもなってくれればよい」

「――――わかりました。ではそのように……」

「貴様も行け」

「……!」
「……今、なんと?」

「貴様も行け。奴では足りぬ可能性もある、そのときは貴様がストレイドにとどめを刺すのだ」

「……わかりました。GA側とのブリーフィングの準備をすぐに始めます。
 カブラカンの方は、いかがいたしましょう?」

「ふん、GAから人員を引っ張ってきても構わんが、たまには顔を出しておかねばならんな」
「……面倒だが、私が出よう」

///



最近、急速に戦果を挙げているリンクスがいる。
ストレイドというインテリオル製の機体を駆り、鬼人のような強さを誇るという噂だ。
そのリンクスが、オーメルから依頼を受けた。
「アームズフォート“スピリット・オブ・マザーウィル”撃破」
BFFに、衝撃が走った。

「失礼します」コンコン

トーマ「あん?」

そもそも俺の部屋のドアがノックされることすら珍しい。
ランドクラブを撃破した後は、あの口うるさいオペレーターからの連絡はぴたっと止んだ。
リンクスとしての仕事はしばらくなく、半ばウォルコット家の食客のような扱いを受けている。
カップ麺から食事がグレードアップしたというのが、特に大きい。

メイド「急なお呼び出し、申し訳ありません。リリウム様にトーマ様を呼ぶように、と仰せつかりまして」

トーマ「……リリウム・ウォルコットが? 俺に?」

リリウム・ウォルコット。
ウォルコット家の長にして、カラードランク2の敏腕リンクス。
実力的にも、立場的にも、粗製の俺には手の届かない存在である。
BFF所属ということもあり、名前は頻繁に耳にするようになったが。

トーマ「……俺、何かやらかしたか?」

メイド「さあ、それは私には分かりかねますが」

///



メイド「こちらになります」

広い部屋に通される。
そこに、一人の少女が立っていた。

トーマ「……トーマ・ラグラッツだが」

見目麗しい銀色の髪。
戦場での姿からは想像できない、華奢な体躯。
それに何よりも、呼吸すら忘れてしまいそうになる、整った顔立ち。
彼女から放たれる「美しさ」は、威圧感すら感じさせた。

リリウム「リリウム・ウォルコットです」

歳は、「女性」よりも「少女」に近い。俺よりもだいぶ下だろう。
しかしその毅然とした態度は、俺にそれを忘れさせる。

リリウム「今回の依頼は、私から直接お話させていただくことにしました。
     我がBFFのアームズフォート“スピリット・オブ・マザーウィル”の護衛。
     加えて敵ネクスト『ストレイド』の撃破。これをあなたには請け負っていただきます」

トーマ「……了解した」

リリウム「そんなに緊張なさらないでください。あなた個人では荷が重いと判断いたしましたので、
     今回は強制的に支援機との出撃という形にさせていただきます」
リリウム「支援機の名前は『アンビエント』」

トーマ「……アンビエント!? あんたがか!?」

リリウム「BFFとして、これ以上の戦力は出せませんので。
     裏を返せば、私たちはストレイドをそれだけ危険視しているということです。
     3機しかないネクストの数を、減らすわけにはいかないのですよ」

トーマ「俺は構わねえが……」

ふと、あの感情の希薄で辛辣な言葉が思い出された。

トーマ「そうだ、俺のオペレーターに話は――通してあるんだろうな。
    あんたお偉いさんだし。悪い、いらん心配だった」

リリウム「『お偉いさん』などと、言って欲しくはないですね。立場上ウォルコット家を預かる
     身ではありますが、戦場に出てしまえばただのリンクスです。
     あなたもそれを理解しているから、普段どおりの口調でいるのかと思っていましたが」

トーマ「い、いやっ、すまん! 敬語が必要ならそうするが……。
    まだGAにいた頃の癖が抜けないらしい。あそこはもっと、ガサツだったもんでな……」

リリウム「ですから、普段どおりで構いませんよ。ああ、私はこれが普段どおりですのでお気遣いなく」

トーマ「そ、そうか……」

やりづらい。
あのオペレーターに似たものを感じる。

リリウム「ああ、それと」

トーマ「あん?」

リリウム「オペレーターがどうという話ですが……、あなた、まだ気付きませんか?」

トーマ「……何がだ?」

俺がそう尋ねると、リリウムは眉尻を下げてくすりと悪戯っぽく笑った。
やけに年頃の少女らしい、可愛げのある仕草だった。

リリウム「やはりあなた――“あまり頭がおよろしくないようですね”」

トーマ「…………っ! お、お前がか!」

全部、頭の中で繋がった。

トーマ「だったら最初にそう言えっつーの! 恥かいただろうが!」

リリウム「そうそう、あなたはやはりそういう方がお似合いですよ。
     殊勝な態度のあなたなど、見るに耐えません」

トーマ「んッとに、性格悪ィ……。ってことはなんだ、全部筒抜けかよ……ったく」

リリウム「そういじけないでください。ちゃんとこちらからオペレートもいたしますので、心配なく」

トーマ「そういうことじゃねえよ! あー! クソっ、調子狂うなあ、おい!」

リリウム「ふふっ、声で気付いてもいいはずですよ? 本当に気付かなかったのですか?」

ちくしょう、これじゃ完全に手のひらの上だ。
悔しいから俺も少しは反撃してみることにする。

トーマ「お前も、そっちの方が似合うぞ」

リリウム「……はい?」

トーマ「いや、だから、お前もそうやって笑ってた方がいい、ってこと。
    若い娘が、あんなぶすっとした声で喋るもんじゃねえよ」

リリウム「……」

トーマ「せっかく素材もいいんだしよ」

リリウム「……」
リリウム「…………」カアアアッ
リリウム「な、なにをバカなことを言っているのですか! 
     ブリーフィングはブリーフィングルームで三十分後!
     遅れたら、か、解雇ですよ!!」

トーマ「お、おいおい!?」グイッ

リリウム「せいぜい、ロケーションの確認でもしておいてください!」バタン!

背中をぐいぐい押され、部屋から閉め出されてしまった。
部屋の外で待機していたメイド達の視線が痛い。ハイレーザー並だ。

メイド「……トーマ様、リリウム様に手を出されるのは……」

トーマ「そんなんじゃねえよ! アホか!」

射抜かれるような視線を浴びつつ、俺は準備をしに部屋へ戻ることにした。

トーマ「……なんだあいつ」




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