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「――なあ、兄ちゃん」

「あん?」

アームズフォート“スピリット・オブ・マザーウィル”。
パイロットスーツを着込む男に、兵士が声をかける。

兵士「初任務だったか? そんな緊張することもねえだろ」

男「緊張なんてしてねえよ」

兵士「はっは、俺も初陣のときはガッチガチだったなあ。思い出すぜ」

男「だから緊張してねえって……」

親しげに、兵士は男の肩を叩く。

兵士「安心しろ、このマザーウィルが落ちることなんて、天地がひっくり返ってもありえねえよ。
   たとえ相手がネクスト様だろうとな」

そう言い、兵士は手を振り去っていった。

男「……ただのネクストじゃねえだろ、あいつは」

男「クイーンズランスの恨み、晴らさせてもらうぜ」

男の名はトーマ・ラグラッツ。
BFFのリンクスである。

///



「ホワイト・グリント、スピリット・オブ・マザーウィルを強襲」
そんな情報が入ったのは、割と最近のことだった。
ラインアーク単独の行動にしちゃあ手際が良すぎる、オーメル辺りの根回しがあったのかもしれない。
インテリオルという線はないだろう。いまさら地上の覇権なんて、争う意味がない。

トーマ「うっし」

俺はコクピットへ乗り込み、意識をネクストとリンクさせる。
まあ、何でもいい。
俺は与えられた任務をこなすだけだ。
BFFに所属するようになっての初仕事だから、しくじるわけにはいかない。

――それより。

トーマ「ホワイト・グリント……」

アナトリアの傭兵。

トーマ「いくぜ、スペキュラー。装備も新調したんだ、いっちょ派手にやろうや」

///



『――リンクス、聞こえますか?』ザザッ

通信が入る。

トーマ「あん? 何だ?」

オペ子『今回、あなたのオペレーションを担当することになりました。
    そう長くはないお付き合いでしょうが、よろしくお願いします』

トーマ「味気ねえ、っつか素っ気ねえなあ、おい……」

若い、女の声だ。
訓練を受けてたGAのオペレーターはいつもむさ苦しいおっさんだったから、この体験は新しい。

トーマ「あんた、名前は?」

オペ子『……はい?』

トーマ「名前。俺があんたを呼ぶときに必要だろうがよ」

オペ子『それなら、オペレーター、とだけ呼んでいただければ結構です。
      面倒な感情は戦闘には不要ですから』

……こいつ。
AIなんじゃねえのかと疑うほどに冷たい態度だ。
最初に会ったチャイニーズのジジイといい、BFFにはロクな奴がいないのか?

オペ子『まずあなたは、マザーウィルの甲板で待機していただきます。
    十中八九敵はVOBで突撃を仕掛けてくるでしょうから、マザーウィルへの着陸は許しましょう』

トーマ「おいおい、大丈夫なのか? マザーウィルの強みは迎撃機能だろ。
    近づかれないための主砲にミサイルじゃねえか」

オペ子『あまり頭がよろしくないようですね』

こいつとは仲良くなれなそうな気がした。

オペ子『それでは、VOBでそのまま逃げられてしまう可能性があります。
    ですからまず着艦させ、VOBをパージさせる――即ち羽をもぐ必要があるのです』

オペ子『それからあなたには、ホワイト・グリントを艦外へ叩き出してもらいたいのです。
    主砲の届く距離まで距離を離せれば、あとはVOBのないネクストなど楽な相手です』

トーマ「……そんとき、近くにいる俺を誤射……ってこたあねえよな」

オペ子『ないといいですね』

トーマ「…………」

オペ子『さて、そう時間はありません。まだだいぶ遠くではありますが、敵ネクスト反応があります。
    VOBのスピードも考慮して、あなたには早速出撃していただかなくてはなりません』

トーマ「クーガーはGAの子会社だろうがよ……。ったく、飼いならしておけっての」

調子の狂うことも多い。
しかし、この緊張感が俺の調子をそれ以上に上げてくれる。

オペ子『ではスペキュラー、出撃してください』

トーマ「あいよ」

やってやるさ。

///



オペ子『ID照合。やはりランク9、ホワイト・グリントです。接触まで、残り1分』

レーダーに映る赤い点が、どんどん中心へと近づいてくる。

オペ子『残り30秒』

もうカメラでも見える。

オペ子『――戦闘開始』

まず挨拶代わりのように、大量の拡散ミサイルが見舞われた。
マザーウィルの迎撃ミサイルがそれをほとんど殲滅し、残ったものは俺がライフルで撃ち落とす。
その爆炎に紛れて、白いネクストが現れた。――ホワイト・グリント。
最強とも噂される、ラインアークの切り札。そいつが今、俺の目の前に。

WG「…………」

トーマ「ホワイト……グリントォオオオッ!」

右肩のチェインガンで弾幕を張りつつ、左腕のスナイパーライフルで反動を狙う。
ホワイト・グリントもダブルライフルでそれに応じ、削り合いが始まった。
BFFパーツを多用しているため、スペキュラーは実弾防御には自信がある。
見たところ相手はEN兵器を装備していないようだ。

トーマ「おらあッ!」

これを好機とQBで距離を詰め、一気にラッシュをかける。

WG「……」

もう相手のPAもだいぶ剥がれただろう。武器を右腕のライフルに切り替え、今度は直接的なダメージを取りに行く。

オペ子『あまり近づいては危険です。旋回性能ではあちらに分があります。
    至近距離でミサイルを当てられては、いくらこの機体でも持ちません』

トーマ「当たんなきゃあいいんだろ!」

焦っていたのは確かだ。

WG「……!」

オペ子『……っ!?』

オペ子『コジマ粒子、急速収束! アサルトアーマーを使う気です!』

トーマ「バカかあいつ! 敵陣の真ん中でPAを――」

マザーウィルは大打撃を受け、俺も相当なダメージを負うだろう。
PAが消し飛んでも、それから攻撃を受けなければ問題はない!

トーマ「――クソッ、やらせるか!」

オペ子『コジマ粒子が……!? トーマ、何をする気ですか!』

トーマ「大丈夫だ! 黙って見てろ!」

こっちも同じように、コジマ粒子を収束させる。ただし使うのはアサルトアーマーではない。

WG「……!?」

オーバードブーストだ。

WG「…………!」

トーマ「おっらあああああッ!」

アサルトアーマーのチャージ中は身動きが取れない。
ホワイト・グリントを抱えこみ、コジマタンクの限り遠くへ飛ぶ。

――カァオ!

トーマ「……くうッ!」

着地と同時に撃たれたアサルトアーマーによって周囲の地形は円形に消し飛び、スペキュラーのAPも大きく削られた。

オペ子『……ザザッ なんて無茶なことを……』

しかし。
「マザーウィルと引き離す」ことに成功し、「ホワイト・グリントのPAを剥ぐ」ことにも成功した。
ラジオチャンネルをマザーウィルの司令室へと切り変える。

トーマ「今だ! 主砲、撃てぇええええッ!」

WG「……!」

マザーウィルの主砲が、それに続いてミサイルが、雨のように浴びせられる。

WG「……」

俺は必死にQBで後退し、ホワイト・グリントから距離を取る。
当のホワイト・グリントは、というと。

オペ子『……信じられません……』

WG「……!」ドヒャア!ドヒャア!ドヒャドヒャア!ドドヒャア!

トーマ「QBで全部……避けてやがる……」

WG「……」ヴンッ

オペ子『……いけません! 敵、コジマ粒子回復! PAが張られました!』

トーマ「クソッ、こっちはまだだ! もう少しかかる!」

ホワイト・グリントのカメラがこっちを向いた。
――が。

WG「……」キュウウウッ ドヒュウッ

トーマ「……あ?」

すぐに背中を向け、オーバードブーストで飛んで行ってしまった。

オペ子『……ホワイト・グリント、マザーウィル主砲の射程を離脱。戦闘終了です』

トーマ「……何だ、ありゃ」

死んだ、と思ったのに。

トーマ「……まあ、とにかく……」

オペ子『……そうですね、とにかく……』

オペ子『――作戦失敗ですね』

オペレーターはさらっとそう言った。

トーマ「何でそうなるんだよ!? マザーウィルは無事だろ!」

オペ子『ホワイト・グリント撃墜が作戦成功の条件でしたでしょう。
    敵に逃げられた以上、作戦は失敗です。何か他に言うことは?』

トーマ「」

オペ子『上にはしっかり報告しておきますので』

トーマ「おい、おいおい、ちょっと待てって」

オペ子『何ですか? 意見があるなら聞きますが?』

トーマ「いや、意見とか、そういうのじゃなくてだな」

げふぅ、と大きく溜め息を吐く。

トーマ「……お疲れさん、くらい言ってくんねえの?」

オペ子『…………』

オペ子『……お疲れ様でした、リンクス。次の任務に備えて体を休めてください』

トーマ「……あいよ」




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