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★その100

「ふぅ…」
どこを見ても砂ばかり、寂しい場所だな。
砂漠だから当然か…

所々に建物があるが全て廃墟と化している。
人工物は砂に埋もれ、人っ子一人いない。民間人を巻き込む心配は無いな。
俺は…俺は学園長の話を受けた。

―――――報酬の為に人を殺す…俺に出来るのか?

どれだけ考えても堂々巡り、答えは出ない。かと言ってスッパリ諦める事も出来ない。
宙ぶらりんな状態が長く続き、答えを出せない自分にほとほと嫌気が差した。
どっちにしろ、このままじゃ駄目になる。そう思って学園長の話を受けた。

もし無理だったら…
アリーナ専門になろうか?アリーナなら人を殺さないで済む。
アリーナに篭ってトップランカーを目指すんだ。
でもアリーナだって一歩間違えたら人が死ぬかもしれない。

思い切って傭兵を諦めようか?学園を辞めて普通の学校に行く。
普通の学校を卒業して普通に暮らす。
グローランサーを売れば一財産だ…一財産……………

「ちくしょう…」
何でこんなに苦しいんだろう。自分のACを手に入れて
何もかも上手く行くと思ったのに…甘かった。
嫌な事から目を背けていただけだ。

何の覚悟も目的も無く、学園に入ったツケが来た。
卒業後にこの状態にならなかっただけマシだと思うべきなのだろうか?
学園長に感謝すべきなのだろうか?きっとそうなんだろうな。
今ならまだ方向転換もしやすい。

ピピッ

友軍信号だ、パートナーが来たか…
簡単な依頼の上に僚機付き、俺が引き金を引けなくても
パートナーが尻拭いをしてくれる。

学園長は俺が引き金を引く事を期待しているが
無理だった場合の事もちゃんと考えている、流石だよ。
ハハッ…本当に至れり尽くせりだよな。

学園を出る時にはこう言われた。
「足手まといになった僚機は見捨てなさい。」
「危ないと思ったら僚機を盾にしなさい。」
「逃げる時は僚機を囮にしなさい。」

学園長は顔に似合わずダーティープレイもなんのその。
むしろ推奨している感じだった。
今はそのダーティー精神が羨ましい…

「あれだな。」
茶色い四脚ACが見えてきた、情報通りだ。
あれが僚機―――パートナーで間違いない。

「こちらヴァイパー。」

★その101

「こちらはグローランサーの槍杉。あなたがトルーパーさんですね?」
「ああ。」
コーテックス所属のベテランだって聞いてたけど、どんな人なんだろう。

「その…よろしくお願いします。」
「ああ、話は聞いている。」
無愛想だが、不思議と悪い感じがしない。
懐かしい感覚…誰かに似ている…誰だろう…?
なんだか無性にこの人と話したい。

「あの…ミッションまでまだ時間がありますし、一緒に夕食にしませんか?
 携行食料を多めに持ってきました。その、よければなんですが…」
俺は何を言っているんだ。ミッション前に飯とか…変な奴だと思われるだろ。
それに断られたら気まずいじゃないか、馬鹿!

「ではACを隠すか。」
「えっ?は、はい。」
よかった、オーケーって事だよな?

 ・
 ・
 ・

かくしてACを降り、トルーパーさんと一緒に飯を食べているんだが
会話が弾まない。そりゃもう全く。
しかも携行食料が不味い。凄まじく不味い。
いくら栄養重視とはいえ、もうちょっと何とかならなかったのか、これは…

「不味いですね…」
「不味いな…」
そして不味い飯を黙々と食べている俺たち。

あまりに無計画だった。
「……………」
「……………」
よく考えると俺は話しが上手い方じゃないし、トルーパーさんは無口だ。
はぁ…失敗したな。

トルーパーさんはなんて言うんだろう…ふるき良き頑固親父って感じかな?
無愛想で不器用そうだけど、どこか暖かい。
誰かに似ていると思ったら、父さんに少し似ている。
父さんが生きていたら歳も同じぐらいだろうか。

この人も…人を殺しているんだよな。
人を殺す事を楽しみそうには見えない。
割り切っているんだろうか?割り切っているんだろうな。

どうやって割り切っているんですか?そう訊いてみたい。
訊いてみたいけど、訊けない。
「……………」
「……………」

ポツ、、、ポツ、、、ポツ、、ポツ、ポツポツポツポツ…

「雨、降ってきましたね。」
「ああ、そうだな。」
「……………」
「……………」

結局、俺は何がしたかったんだろう。気を紛らわせたかったのか?
ここまで来ておいて逃げたがっているのかもしれない。
本当に馬鹿だよ、俺は…

「時間だ。そろそろ行こうか。」
「はい…」

「話せてよかったよ。無理だと思ったら直ぐに下がりなさい。」

★その102

メインシステム 戦闘モード 起動します

聞き慣れている筈の起動ボイスがいつもと違って聞こえた。
それにグローランサーのコックピットがやけに狭く感じる。
SPアリーナの時に感じた緊張とは違った何かが、全身にまとわりつく。
身体が嫌がっているんだろうな。

無理だと思ったら直ぐに下がりなさい、か…
そんな事言われたら、直ぐに下がってしまいそうだ。
何もかも諦めて―――

今なら引き返せるぞ?

「……………」
何しに来たんだよ…何もせずに諦めるつもりか?
こんな所まで来た意味が無いだろうが!

俺が気に病む必要はない。
ネオ・アイザックに進行中のテロリスト部隊を排除するだけだ。
目標はテロリストなんだぞ?殺されても文句を言えないような奴らだ。
放置すれば都市に住む一般人にも被害を及ぼすかもしれない。
先手を打って俺が殺したって…

駄目だ、この考え方じゃ駄目なんだよ。
同じ所を何度グルグル回れば気が済むんだ。
もう動き始めたっていうのに、まだ同じ事ばかり考えている。

「止まれ。」
「はい…」
ああ、とうとう来てしまった。

前方に小規模のMT部隊が見える。
人型が4機、逆関節が7機―――――情報通りだ。
こちらの存在にはまだ気付いていない。
どいつもこいつも呑気に歩いている。何て…何て無防備なんだ…

「行くぞ。」
「はい…」
腹を括れ!相手気遣う余裕なんて、俺には無い筈だ。
余計な事を考えていると自分が死ぬぞ。

ヴァイパーがOBを起動するのに合わせて、こちらもOBを起動。
テロリストが迎撃体勢を整える前に終わらせる手筈だ。
俺はトルーパーさんに続いて飛び出した。

目標との距離がどんどん縮まっていく。
突然の、しかもAC2機による強襲。MT部隊を恐慌が襲った。
圧倒的な機体性能に奢る事無く、ヴァイパーは敵の死角に回り込んで
1機、1機きっちりと仕留めていく。

この期に及んで俺はまだ一発も発砲していない。
無為に戦場を飛び回っている。
駄目だ…実弾が…トリガーが…重い。

「下がりなさい。」
「くっ…」
トルーパーさんは戦いながらも俺の動きを把握しているのか?
何度か…いや、何度も撃つチャンスはあった。
でも撃てなかった…一発も…

例えそれが犯罪者、テロリストであったとしても
MTに人が乗っていると思うと撃てない。
パイロットを殺さないように撃とうと思えば撃てるかもしれない。
でも、それじゃ意味が無いんだ。

「下がれ。」
さっきよりも強い口調で再度通信がきた。
ここまでか…これ以上は足手まといになるだけだ。
やっぱり俺には無理だった。

「……………はい。」
終わった…終わってしまった…
自分が撃てないだろうとは思っていだが、もしかしたらという気持ちもあった。
でも、ハッキリと答えを突きつけられてしまった。
撃てなかったんだ、俺は…

1人戦うトルーパーさんを残して戦場を離れた。

★その103

視界がぼやけ、頬を伝う熱い感触。
「くそっ…」
泣いているのか、俺は…?

ほっとしているのか悔しいのか、自分でもよく分からない。
只々、涙が溢れてくる、止まってくれない。
とりあえず、どこかACを隠せそうな所に行こう…

「うっ…」
今度は吐き気がする。駄目だ出そう。
ACを廃墟の陰に隠してコックピットから飛び降りた。

「うげぇぇ…」
胃の内容物がどんどん外に出て行く。
「おぇ…おえええぇ…」
雨に打たれながら俺は何度も吐いた。

キーーーーーーーン

耳鳴りまでしてきやがった…情けない、何てザマだよ。
全身を打ちつける雨が今は心地良い。
嫌な事を全て洗い流してくれそうで…

胃の中の物を全て出し切ってやっと落ち着いた。
「ふぅ…」
胃酸のせいで口の中が気持ち悪い。
雨水で口をゆすげないものかと夜空に向かって口を開いた。

キーーーーーーーーーーーーーーーーー

くっそう…耳鳴りは酷くなってるじゃないか。
音がどんどん大きくなっている。
あれ?よく聞くと、これって耳鳴りじゃない?
それに―――――大気が震えている!?

ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

爆音と同時に”何か”が視界を通り過ぎた。
民間機…にしてはあの攻撃的なフォルム。武装らしき物もあったぞ。
母艦にしちゃ小さいが、単独兵器としては大きい。
大型の機動兵器!?

あっという間でよく確認できなかったが、凄いスピードだ。
後ろ姿がどんどん小さくなっていく。
あの方角は…トルーパーさんのいる方じゃないか?

かち合うかもしれない。
いや、砂漠のど真ん中でそんな偶然は有り得ない。
必然、あの機動兵器もテロリスト側の勢力だろう。
こんな情報聞いてないぞ。

と、とりあえずトルーパーさんに知らせよう。
グローランサーに駆け寄り、回線を開いた。
「気をつけてください。そっちに何か行きました。」

「……………」
通信が返って来ない…戦闘中か?
まさか…やられちゃったなんて事は…

メインシステム 戦闘モード 起動します

★その104

考えるより先に行動していた。
最悪の場合、俺が行ってどうにかなる可能性は低い。
でも放っておけないじゃないか。

トルーパーさんはコーテックスの中でも上から数えた方が早いベテラン。
そうそう簡単にやられている筈が無い。
筈が無いのに…

「嫌な予感がする。」
物凄く嫌な予感が…
その予感に突き動かされながら俺は戦場に舞い戻った。

嫌な予感は見事に的中。
MTの残骸に紛れて四脚AC―――ヴァイパーが擱座している。
「トルーパーさん!」

「…逃げ…ろ…」
通信が返ってきた。苦しそうな声だがまだ生きてる。
当然、1人で逃げるつもりは無い。逃げるならトルーパーさんも一緒だ。
頭上の悪魔を何とかしないと。

考えろ、どうすればこの状況を打破できるかを。

トルーパーさんがあっさりやられたって事はあの機動兵器…かなり火力が高い。
形状から判断するにメインの実弾、ザブにEN武装、後はミサイ―――
「いいッ!?」

圧倒的な遠距離からミサイルが放たれた。
射程もそうだが俺が驚いたのは、その発射数。
目の前がミサイルで覆われている。避けたり撃ち落せるレベルじゃない。

「くそッ…」
驚愕のあまり初動が遅れ、既の所で廃ビルの陰に身を隠す。
ミサイルが次々と着弾してビルが震えた。
間髪入れずに更なる衝撃がビルを襲う。

衝撃の大きさから推察するに大型のグレネード?
だが衝撃の間隔が異様に短い。まさか連装グレネードか!?
ビルが削られてるぞ。遮蔽物が無くなってしまう、丸裸はマズい。

次のビルに向かって飛び出した所にENマシンガンの雨が降り注いだ。
それを掻い潜りながら、何とか新しい安全地帯に到着。
今度の廃ビルはかなり大きい。多少は時間を稼げる筈だ。

あの機動兵器、まるで空飛ぶ武器庫じゃないか。
圧倒的な火力と射程、それに加えてあの高度。
グローランサーとの相性が最悪だ、近づけやしない。

「……………」
戦うのは諦めよう。何とかして離脱、トルーパーさんを連れて逃げる。
OBで振り切れるかな?無理っぽい…どうしよう…

「?」
ふいに目の前に球体が現れた。なんだこれ?
どっかで見た事があるような…まさか…
「オービットキャノン!?」

大正解だった。力の限り目標を付け狙う小型の自律兵器。
授業で聞いたことはあったが、こんな所でお目にかかるなんて。
「ちくしょう…」

ピュン、ピュン、ピュン、ピュン、ピュン、ピュン…

まんまと燻り出されてしまった。どうなってんだ…隙が全く無い。
この機動兵器、難攻不落なんじゃないか?
逃げ回ってたって、どうせジリ貧になるなら―――やるしかない。

俺はヴァイパーの元に向かってOBで飛び出した。
ジグザグな軌道を描きながら、出来るだけ降り注ぐ攻撃を躱しながら。
躱していると言うより、無茶苦茶な軌道で当たらない事を祈りつつ
突っ走っていると言った方が正しい。

ズガーン

「くっ…」
案の定、背部に衝撃が走ったが、致命傷には至っていない。
構うもんか…もう少しだ、もう少しでヴァイパーに手が届く。

「いける…」
このままヴァイパーのコアを掴んで掻っ攫おうと伸ばした左腕が―――――消し飛んだ。
ちくしょう、最後の最後で機動兵器の攻撃に捕まった。
バランスを崩して転倒するグローランサー。

全てが終わったかに思われたが、偶然にも転倒の勢いで
遮蔽物の陰に転がり込んだらしい。
奴の追撃はグローランサーに止めを刺す事に失敗した。

だが、状況は最悪だ…
左腕部破損でブレードを失った。
背部を撃たれたせいでグレネードの砲身が展開不能、使用不可。
生きているのはリボハンだけ。

「ふぅ…」
逃げ切れそうにないし、戦うっていう選択肢も望み薄。
マズい事になった…

★その105

ブレードを失ったのが痛いな。
逃げられないなら、例によって例の如く突撃を仕掛けようと思っていたのに…
リボハンだけであいつを落とすのはキツいだろう。
完全に火力負けしているまま撃ち合うのは…そもそも近寄れるかすら危うい。

今の俺は冷静だ、落ち着いている。にもかかわらず…
頭をフル回転させても活路が見出せない。
ひょっとして詰んでいるのか?
ここでじっとしてたら、またオービットが飛んで来る。

どうする?

 《1%でも可能性があるのなら…》
⇒《力の限り逃げ回ろう…》

力の限り逃げ回ろう…
もしかしたら弾切れを起こすかもしれない。
どうせ死ぬんなら前のめりで死んでやる。最後まで足掻くぞ!

予想通りのオービット飛んで来た瞬間に俺は新しい遮蔽物を求めて飛び出した。
「くそっ…」
纏わり付くなよ、鬱陶しい。

只でさえ密度の濃い攻撃を繰り出してくる機動兵器が
自律兵器まで使うなんて反則だろ。

オービットがその効力を失い、新しい遮蔽物に逃げ込めた少しの間だけが猶予期間。
直ぐに安全地帯を削り取られ、新しいオービットで燻り出されてしまう。
正直、かなりキツい…ちくしょう、どうなってるんだよ。
あれだけ撃ちまくっているにも関わらず、機動兵器は一向に弾切れを起こす気配がない。

ピピッ

なんだ!?突然、位置情報が送られてきた。
なんで?どこから?誰が?

「コノポイントニ移動シテクダサイ。」
機械の声…いや変声機で声を変えているのか?
こいつが位置情報の送り主?

「……………」
怪しい…怪しさ爆発だ。敵の罠か?
「アノ人ヲ助ケタイノデショウ?」
助けたいし、助かりたいよ。何なんだこいつ…

よく考えろ、相手は圧倒的な有利に立っている。
こんな罠を仕掛ける必要は無いはずだ。
だが、こいつが味方である確証も無い。

賭けだな…

⇒《声に従う》
 《声を無視する》

どうせこのまま逃げ回っていても結果は見えている。
やられるだけだ。この声に賭けてみるか…
「そのポイントに移動すればいいんだな?」
「ハイ。」

「簡単に言ってくれる…」
「敵ニジャミングヲ仕掛ケマス。私ノ合図デ移動ヲ開始シテクダサイ。」
構わず急げって事か…こいつに賭けるって決めたんだ、信じよう。
「了解した。」

 ・
 ・
 ・

「今デス。」
もう迷いは無かった。指定のポイント目掛けて一目散。
不思議と機動兵器からの攻撃が飛んで来ない。
上手くやってくれているみたいだ。一縷の光明が見えた。

「なっ!?」
ここでどうしろって言うんだよ。
指定されたポイントには巨大な岩場があるだけで他に何も無い。
一縷の光明が…潰えた。ハメられたのか?

いや、落ち着け。よく見るとこの岩場…変だ。
巧妙に偽装されているが人の手が入っている。
継ぎ目のような物が所々に見える。人工物なのか?

ゴウン、ゴウン、ゴウン―――――

岩場が開いた!?
「中ニ入ッテクダサイ。」
「りょ、了解。」
驚いてる場合じゃない、今は行動。

とは言え、岩場の内部に入って驚かずにはいられなかった。
中が空洞になっていて、これって…
「ガレージじゃないか。」

長い間、人の入った形跡が無いが…ガレージだ。
ACを固定するハンガーがある。AC用のガレージだ、間違いない。
「ソコノハンガーニ機体ヲ預ケテクダサイ。」
「分かった。」

「緊急換装ヲ行イマス。」
機体をハンガーに委ねた途端、レーダーと使えなくなったグレネードは取り外され
代わりに何か物凄く重たい物がグローランサーの背中に乗せられた。
「な、なんだ!?」

『CWX-LIC-10』

ディスプレイにはグローランサーの背中に乗せられたであろうパーツの型番が
表示されていた。こいつは…背中のスロットルを両方使う大口径エネルギー砲。
通称―――『主砲』。古いタイプの型番だがこいつは主砲だ、間違いない。
どうしてこんな物がこんな所に放置されているんだ?

「ソノ武装デ敵ヲ狙イ撃ッテクダサイ。」
この主砲なら機動兵器を落とせるかもしれな―――
「って、ちょっと待て!FCSが狙撃に対応してないし、レーダーが無い。」

「目標ガ約30秒後ニ直上ヲ通過シマス。手動デ狙ッテクダサイ。」
「くっそう…」
やって見せろって事かよ。

「モウスグジャミングガ切レマス。」
チャンスは一度、ミスったら終了か。でもやるしかない…

ハンガーから離れ、ガレージの入り口でグローランサーを屈ませた。
射撃の中でも狙撃は滅茶苦茶苦手だ。しかもノーロックなんて…
少しでも精度を上げないと。

30秒後って言われてから何秒ぐらい経った?
もう来るのか?来そうなのか?焦るな、落ち着け!
失敗したらアウトなん―――――来たッ!
「いけぇ!」

ドキューン!!

機動兵器の無防備な背面に超弩級EN弾が―――――外れた!?
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
もう一発、早く次弾を…RELOAD TIMEだとッ!?
位置がバレた。奴が旋回して来る。間に合わない。

見つかったてしまった。こうなったら…相打ち覚悟で撃ち合ってやる。
せめてトルーパーさんだけでも助けないと、俺がここに来た意味がない。

「撃タナイデクダサイ!」

敵は旋回を終え止めのグレネードを撃ってきたのに、撃たないでください?
膝を突いて動けないグローランサーに只待って死ねと?有り得ない選択だ。
だが、この声を…信じるって決めた。
ちくしょー!最後まで信じてやるよ。

ズドォォォォン

ガレージ全体が大きく揺れた。ガレージが揺れたが、何故か俺はやらていない。
グレネードは直撃コースだったのにも関わらず、グローランサーはやられていない。
やってくれた…あの声が直前にガレージのゲートを閉めたんだ。
吹き飛んだのはゲートだけ、ゲートが盾になってくれた。

そういう事は先に言っておいてくれよ。
危うくゲートに向かってぶっ放してしまう所だった。
だがあんたが作ってくれたこの一瞬、このチャンス、2度は失敗しない。

「い
 け
 え
 ぇ
 ぇ
 ぇ
 ぇ
 ぇ
 !」

★その106

ドキューン!!

砕け散ったゲートの粉塵を突き抜けたEN弾は機動兵器のど真ん中
メインブロックに直撃した。
「やったか!?」

炎上する機動兵器はコントロールを失い、高度をどんどん下げている。
こ、こっちに突っ込んできた!?
「うわぁぁぁぁぁぁぁ、こっちくんな!」

射撃精度を上げる為に関節をホールドしていたグローランサー。
予想外の事態に焦りが募り、簡単な操作を難しくする。
ギリギリの所で脱出を済ませた直後、機動兵器はガレージに衝突。
やたらと火器を積んでいたせいだろう、大爆発を起こした。

「ふぅ…」
終わったんだ…
粉々になった機動兵器の残骸を見て全身の力が抜けた。

「あんたに感謝しなくちゃな。」
「……………」
「ありがとう。」
「……………」
「聞こえてる?」
「……………」

さっきと同じチャンネルで何度呼びかけても返事は返って来なかった。
助けるだけ助けて、何も言わずに消えてしまったのか?
ちゃんと礼を言って、名前も聞きたかったのに…

あの声の主は一体誰だったんだろう。
あの機動兵器の敵対勢力で、敵の敵は味方という感じで助太刀してくれたとか?
このぐらいしか思いつかないな。皆目見当がつかない。
まあ何にしろ助かった。今はそれよりトルーパーさんを助けに行かないと。

俺はACを降りて擱座しているヴァイパーに駆け寄った。
「うっ…」
コックピットハッチを開けた瞬間に強烈な鉄の臭いが
血の臭いが鼻腔に流れ込んできた。

「トルーパーさん!しっかりしてください!」
彼は意識不明で頭部に大きな裂傷があり、腹部からも血を流している。
素人目に見ても重症である事が直ぐに見て取れた。

骨や内臓もどうなっているか分からないが、とりあえず止血だ。
何か使えそうな物はないか?
コックピットの中を見回すが止血に使えそうな物は見当たらない。

かわりに1枚の写真を見つけた。こんな時に写真なんてどうでもよかったが
俺は手を止めずにはいられなかった。
「この写真に写ってるの…レジーナ?」

待て、待て、待て、ということは…トルーパーさんはレジーナのお父さん?
有り得ないって事は…ないな。年齢とかの条件は合う。
これは益々死なせるわけにはいかなくなった。

喧嘩別れしたまま死別とか最悪じゃないか。

★その107

結局、手ごろな物は見つからず、俺のパイロットスーツを裂いて止血に使った。
これでいけてるのかどうかもよく分からないが、これ以上どうしようもない。
早く医者に見せないと。

迎えの輸送機が来るまで時間が掛かるし
こんな砂漠の真ん中じゃ呼んでも救急車なんて来ないだろう。
こっちから行った方が早いか…

怪我人を動かすのはよくないって聞いたけど、致し方あるまい。
「トルーパーさん、少し我慢してくださいよ。」
「ううっ…レ……ナ…」
「気がついたんですか?」

「………レ、レジーナ…」
うわごとなのか?うわごとみたいだ…
やっぱりあの写真に写っていたのはレジーナか。
あんなに可愛い娘が家出中なんだ。父親としては辛いし、心配なんだろうな。
急ごう…

出来るだけゆっくりとトルーパーさんをグローランサーに移した。
「狭いけど、我慢してくださいよ。」
やっぱACのコックピットに2人はきつい。

今は愚痴ってる場合じゃないな、地図を見よう。
ここから一番近い病院は……………ネオ・アイザックか。
重い主砲をパージして―――

パシュン

揺らさないように気をつけながら急ごう。
「直ぐに病院ですから、もう少し頑張ってくださいね。」
よし、巡航モ-ドでとばすぞ。

___2時間後。

「―――――君、終わったよ。」
「ハッ!?」
しまった、寝ちゃってたのか?

ええっと…ネオ・アイザックの救急病院にトルーパーさんを運び込んで…
そうか、手術が終わるのをソファで待っている間にウトウトしちゃったんだ。
「先生、トルーパーさんは?」
「もう心配ない。」

「よかった…」
全身の力が一気に抜け、倒れそうになった。
トルーパーさん、助かったんだ。

「かなり疲れてるみたいだけど、大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫です。」
安心したらどっと疲れが出ちゃったみたいだ。
俺も結構キテるわ…

「彼のご家族にも連絡しておいた方がいいね。連絡先は分かるかな?」
「は、はい。俺がしておきます。」
「じゃあ、頼んだよ。」

あの写真、トルーパーさんが大事そうに置いてあったから
一応持って来たんだよな。
レジーナ………電話してみよう。

トゥルルルルルルル、トゥルルルルルルル、トゥルルルルルルル…

「はーい。もしもーし!」
「レジーナか?」
「そうだよ。」

「いきなりなんだか落ち着いて聞いてくれ。」
「どうしたの先輩?」
「トルーパーさんが大怪我した。」

「えっ!?な、なんで…えっ…先輩が父さんの事を…大怪我!?」
「心配するな、今はもう落ち着いてる。
 任務中にちょっとあってな。詳しい事は後で話すよ。
 ネオ・アイザックの救急病院にいるんだけど、来れるか?」
「……………」

「なあ、レジーナ。意地張ってるんなら止めとけ。」
「……………」
「分かってるんだろ?次は無いかも知れない。」
「……………」
「うわごとでお前の名前を何回も呼んでたぞ。」
「……………」

「レジーナ?」
「……………わかった、行く。」
よし、いい子だ。

「近くまで来たら電話してくれ。迎えに行くよ。」
「うん…」
「じゃあな、待ってるぞ。」

ぽとっ

通話を切った途端に携帯を手から落としてしまった。
「あれ?」
拾おうとしても上手く掴めない。おかしいな、今頃になって手が震えてる。

ああ、そうか…

俺は人を助ける為に、人を殺したんだ。




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